原作では須藤君が嵌められ、特別棟の監視カメラのトリックで、騒ぎを収める方向でしたね。
さて、今回は由佳が頑張ります。乞うご期待!
58. 暴力事件
7月1日の朝、プライベートポイントが振り込まれていなかった。理由はBクラスの神崎が起こした暴力事件の決着がついていないからだ。
話は10日ほど前にさかのぼる。
Cクラスの嫌がらせが日に日に目立つようになっていた。
「そろそろ、何か起きるな。櫛田を使って予防線を張ろう。」
3人で夕食を囲んでいるときに清隆が言った。
「予防線ですか。狙いはBクラスでしょうが、私たちのDクラスも同じように動かしましょう。」
「え、どうしてですか?龍園君の狙いはBクラスですよね。」
由佳が不思議そうな顔つきで清隆に質問した。
「確かにBクラスだ。でも、Bクラスだけで動かすと情報が洩れているとなる。つまり、クラス内にスパイがいると感づかれる。まだ、早い。」
「なるほど。むこうが攪乱してきているなら、こちらもということですね。」
「そ、由佳もわかってきましたね。」
清隆が櫛田に電話し、状況を確認した。やはり多くの生徒がちょっかいを出されているらしい。清隆から、目立つ動きがあったときは端末とは別にボイスレコーダーを使うようにDクラスとBクラスの生徒に徹底させるように指示した。また、Dクラスの平田、須藤、櫛田。Bクラスの一之瀬、神崎、立川には特に注意する様に伝えることも追加した。
櫛田の動きは速く、次の日にはDクラスに説明し、またその次の日にはBクラスに私も同行して説明しに行った。
「Cクラスから嫌がらせを受けてるって聞いたけど・・」
櫛田が一之瀬に真剣顔で聞くと困ったような顔をして一之瀬が
「そうなの。付け回されたり、ちょっとしたことで突っかかってこられたり。みんな滅入ってる。」
と答えた。Cクラスにしてみれば、かなり効果が出ているようだ。
「それでね、Dクラスでは何か目立ったことがあったら、必ずボイスレコーダーを持っていくようにみんなに伝えたの。もしもの時に役立つかと思って。」
櫛田はきちんと清隆の意図を汲んで、うまく説明している。
「Bクラスだと、ここにいる3人、一之瀬さん、神崎君と立川さんは標的になるかもしれない。特に神崎君は要注意だと思う。」
神崎を名指しした。清隆はここまで具体的に指示していない。実際、神崎は勉強会の時Cクラスといざこざを起こしていることを鑑み、櫛田的に構築したのだろう。
「うちでは須藤君。短気だし、すぐに血が上って手が付けられなくなる。」
神崎の方を笑顔で見た。一之瀬も同様に神崎を見た。
「神崎君、わかったかな?何があっても手を出しちゃだめだよ。」
「わかってる。」
一之瀬にくぎを刺された神崎はかっこ悪いと思ったのか、下を向いた。それにしても櫛田の頭はよく回る。今や須藤は櫛田に飼いならされているといっていいほど静かになっている。「短気なのを直さないと失敗する」と言われたのが頭に組み込まれている。でも、その須藤を引き合いに出し、神崎にわからしめた。
あとで聞いたが、由佳も櫛田の話の道筋の立て方、つまりは戦略の立て方から、その頭の良さに驚いたと漏らしていた。また、いろいろと勉強させてもらったとも言っていた。
それから数日後、事態は急展開した。どうやら神崎がCクラスの女子に呼び出され、その場に行ったら男子2人がいて、ひと悶着したようだった。
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由佳Side
「みんな、ちょっと座ろうか。大事な話があるの。」
担任の星之宮先生が教壇でみんなに声をかける。
「聞いている人もいると思うけど、神崎君がCクラスの生徒に暴力をふるったと訴えられています。私は何かの間違いだと思うけど、一週間後には生徒会によって審議があるので、それまでに解決に向けてできることをすべきだわ。」
皆が驚く。“神崎が?嘘だろ”という声もあれば“いつかやると思ってた”という声も聞こえた。
「神崎君はやってないって言ってる。みんな、神崎君を信じようよ。で、何か知っていることがあれば教えて欲しい。」
帆波が皆に向かって言うが、だれもその現場を見ている者はいなかった。
放課後、私と神崎君で帆波の部屋に行った。
「一之瀬、実はボイスレコーダーにすべて残っている。」
ボイスレコーダーを机の上に置いた。これは櫛田が提案したものだ。Cクラスの女子に声をかけられたとき、一度教室にとりに戻ったらしい。そして、呼び出されたところに行くと、男子2人がいて、いちゃもんをつけられた。胸ポケットに入れた端末で動画を撮影していたが、それは彼らに見つかって、動画は消された。でも、ボイスレコーダーはうまくごまかせたと。現場を離れるときに、靴ひもを結び直すふりをして物陰に置いて、録音は続けたと説明した。
当日、私は神崎君から呼び出され、事の次第を聞き、また、ボイスレコーダーの内容も聞いていた。そのうえで清隆君に相談していた。
「これは確実な証拠だな。多分、殴られたとかなんとかでっちあげてCクラスは神崎を訴える。そのための証拠も捏造する。」
「清隆君ならそうする。っていうことですか?」
「そうだ・・。で、そうなったとき、由佳はこれをどう使って楽しむ?」
清隆君がじっと見てくる。
「そうですね・・最後の最後までこの音声は隠します。盛り上がったところで、切り札として使うと、いいかも。」
「そうだ、それでいい。そのうえで、Cクラスにはお灸をすえる。」
「お灸ですか・・」
私は上を向いて、どのレベルのお灸がいいか思案する。
「由佳。迷っているときは、最も厳しいものを選択すればいいんです。」
お姉さまから声がかかる。
「わかりました。これ、一人で片付けます。見ていてください。」
私は決めた。今後Bクラスにうかつに手を出してこられなくするよう、最も熱いお灸「退学処分」を目指すと。
ボイスレコーダーの音声を確認した帆波は
「これがあるなら、すぐに訴えを取り下げてもらおう。先生のところに行くよ。」
上手く解決できると安心した顔つきである。
「帆波さん、ちょっと待って。私はこのまま取り下げてもらうだけじゃ、気がおさまりません。」
「え、でも、争う必要ないでしょ。この音声だけでCクラスに謝罪してもらえる。」
何を言っているのか訳が分からないといった感じだ。
「そんなじゃダメ。さんざんみんな嫌がらせされていた。その程度の謝罪では皆が納得しない。」
「俺も同感だ。目には目をだ。」
神崎君が同意してくれた。
「神崎君、これから帆波さんと少し話したいから、席を外してくれる?」
神崎君に部屋を出て行ってもらった。これから帆波をリーダーから降ろす。
「帆波」
静かに声を出す
「なに?由佳、怖いよ。」
少しおびえたような感じだった。
「今のBクラスに帆波に意見できるのって私しかいない。」
静かにゆっくりと話す。
「そうね。由佳には助けられている。」
「帆波。無理してるでしょ。」
じっと帆波の目を見ると、帆波から目をそらした。
「な、む、無理なんてしてない。」
「うそ。常にリーダーであろうと、いい人であろうと無理してる。そんな帆波を見ていられないの。」
「無理なんて・・・」
「してるよね。」
静かに言うと、帆波は頷いた。
「だって、みんな、私に期待してる。それに応えないと・・」
「そんなの間違ってる。帆波がつらいだけ。楽しくない。」
「た、楽しいって・・」
「クラス闘争。辛いだけでしょ。この前の過去問もそうだった。
」
「ズルはしたくない。」
「それで・・みんなの期待に応えれるの?」帆波がはっとする。
「・・・無理かも。」
「帆波、リーダーから降りて。勘崎君をサポートしてほしい。」諭すようにしっかりと言った。
「由佳はリーダーできないの?そっちの方がいいと思う。」
「私には彼ほどのリーダーシップがない。彼のリーダーシップと帆波のサポートでBクラスはもっと強くなれる。本来の帆波らしさでもっとまとまる。」
「それでいいのかなぁ?みんな私に期待している。裏切ることになる。」
「裏切ることにはならない。勘崎君も帆波を必要としている。」
「いいのかなぁ?」
「みんなの犠牲になって、苦しむことはないよ。」
「そうかなぁ?」
「いままで、よく頑張りました。」
私は帆波を抱きしめ、頭を撫でる。しばらくそうしていると帆波の身体が震えだした。
「うん。由佳、ありがとう。ありがとう。」
帆波の目から涙が落ちる。
「つらかった。いつも押しつぶされそうだった。楽になりたかった。」
泣きながら心の内を露呈した。私は帆波が落ち着くまで抱き締めていた。
「この件、私が預かる。帆波にはできない“あくどいこと”をするつもり。」
「わかった。私は何をすればいい?」
「この音声がないと思って行動してくれればいい。Cクラスを欺きたい。」
「わかった。」
その次の日から、Cクラスを欺くための活動が始まった。Dクラスにも協力してもらい、目撃者を探したり、掲示板で情報を集めたりと神崎君の無実を証明する手がかりを探している“ふり”をした。その中で想定外のことがあった。櫛田から「目撃者がいた。」と情報が寄せられた。詳細を確かめるため、放課後、櫛田の部屋にいった。
櫛田の部屋はよく片付けられており、可愛いぬいぐるみなんかも置いてある。典型的な女の子の部屋だ。
「ようこそ。立川さん。」
いつもの気持ち悪い笑顔であいさつされた。
「あ、櫛田さん。部屋まで押しかけてごめんなさい。人に聞かれたくないこともあるから。」
急な訪問に謝罪する。
「いいよ。Bクラスとは協力関係だから、気にしないで。」
「ところで、目撃者って?」
「うちのクラスの佐倉さん。」
驚いた。愛里ちゃんが目撃していたのか。多分、写真撮影のロケハンか何かで偶然居合わせたんだ。
「今日、クラスで目撃した人いないかどうか聞いたんだけど、後になって、佐倉さんがそこに居たって言ってきたの。」
これまでの愛里ちゃんだったら、そんなことはしない。Bクラスに私がいることを気にかけてくれたんだ。櫛田が愛里ちゃんが見聞きしたことを説明しているが、後でゆっくりと愛里ちゃんに聞けばいい。
「とても助かる。ありがとう。」
丁寧なお礼と、この件について誰に話さないようお願いして部屋を出た。その足で愛里ちゃんの部屋に行って、状況を聞かせてもらい、審議の時に証人になってもらうことを約束してもらった。これで、準備万端整った。
一週間、何も有効な手掛かりがつかめていない“ふり”をしながら過ごし、生徒会主催の審議の場に入った。
審議の場にBクラスからは当事者神崎君と、立ち合いとして私の二人が入った。入る前に清隆君に電話し、
「これから入ります。聞いていてください。」
「わかった。精一杯がんばれ」嬉しい。清隆君の励ましだ。端末の通話を切らずにポケットに入れた。
生徒室には、生徒会長、書記、クラス担任、当事者、立会人が並んでいる。
「では始めるぞ。まずは訴えを起こしたCクラスから、何が起きたか説明してくれ。」
生徒会長が威厳のある声で開会を宣言した。
「では、被害を受けた当事者から説明させます。」
Cクラス参謀の金田だ。暴力を振るわれたという二人、小宮と石崎は顔にばんそうこうを貼り、片腕をギプスで固められた、痛々しい姿だ。言い争っていると、いきなり神崎に殴られたと揃って説明した。証拠もあるといい、動画を写した。
そこには神崎君が呼び出されたところから始まった様子が映っていた。機器の調子が悪かったとかで音声は入っていない。何やら言い争っているように見えるだけだが、だんだんと神崎君がヒートアップしてきていることがわかる。次の瞬間、神崎君の手が画面に広がり、画面が揺れたかと思うと天井らしき風景を写した。これで動画は終了だ。
また、音声もある。これも言い争っているうちに神崎の声がだんだんと大きく険しいものになってきている。やがて「ふざけるな。」と大声を発したあと、何やら大きな物音がして「いて。何するんだよ。」といところで切れた。
「この時、僕は神崎に殴られました。」
「そのあと、僕の方に暴力をふるってきました。二人で医者に行き診断書も書いてもらいました。」
診断書を提示した。
神崎君は震えながら顔を赤くして黙っている。「私が聞くまで何も話さないで」と事前にお願いしてある。
「というように、Cクラスの二人はBクラスの神崎君に暴力を振るわれました。確かに、彼らがBクラスの生徒を個人的に罵ったことは謝罪すべきことです。が、暴力は許せません。ということで訴えを起こしたということです。」
さすが知将と言われるだけのことはある。理路整然とわかりやすく説明した。担任の坂上先生もやれやれという顔をしている。
「なるほど。Cクラスの言い分はよくわかった。次に、Bクラスの言い分を聞かせてもらおうか。」
さぁ、私のターンだ。少し間を取ろう。
「では、先に少し確認させてください。」
しっかりと生徒会長を見つめる。
「なんだ?」
「本校で暴力事件が起きた場合、当事者はどのような処罰になるものでしょうか?」
「暴力事件を起こした者は2週間の停学、クラスポイントの20ポイントが被害者のクラスに移る。同じクラスの場合はそのまま20ポイント減じられる。」
「わかりました。では、いじめの場合はいかがなりますか?」
「いじめの場合、当事者はいじめと認定された時点で退学。被害者のクラスに50ポイントが移される。クラス内の場合はそのまま50ポイントが減じられる。」
「わかりました。いじめというのは、言葉ないし行動によって、個人を著しく傷つけたり陥れたりする行為と考えていいでしょうか?」
「ああ、それで間違いない。」
「わかりました。ありがとうございました。」とここでいったん区切る。言質は取った。
「神崎君。あなたは今回の件について、傷つけられましたか?」
「ああ・・はい。食事ものどを通らないくらいでした。」あらかじめ神崎君には深く傷ついた演技をしてもらうように下打ち合わせもしてある。
「それはどうしてですか?」
「いわれのない罪をかぶせられ、停学処分になるとも聞いています。陥れられて、その処分を自分が受けるのか思うと・・」声を詰まらせ説明した。
「陥れられそうになっている。」私は復唱する。
「ちょっとまて。暴力を受けて傷ついたのはうちの生徒だ。」
坂上先生が大きな声をあげた。
「すみません、先生。今は私の話す時間です。」
笑顔で対応する。
「立川、何が言いたい?漠然としていて姿が見えない。」
しびれを切らすように生徒会長がいった。
「申し訳ありません。先に進めます。」
「今回の件、これはCクラスの生徒がBクラスの神崎君を陥れようと仕組まれた策略です。」
しっかりと全員に聞こえるよう大きな声ではっきりと言い切った。当事者を除き、そこに出席している全員が驚きの顔で私を注視した。
「そんな証拠があるのかよ。」
当事者の石崎が自信満々にいう。あちらには音声と動画があるが、それでも決定的なシーンのものではない。
「はい。今日、証人を呼んでいます。入ってもらってよろしいでしょうか?」
「いいだろう。」生徒会長が了承した。
「では、佐倉さん、お願いします。」
呼びかけると、静かに愛里ちゃんがはいってきた。表情は愛里ちゃんだけど、大丈夫だ。雫が見える。
「Dクラスの佐倉愛里と言います。」
はっきりとした口調だ。きっと入室前にお姉さまが励ましてくれたんだろう。Cクラスの二人の顔色が変わった。坂上先生も驚いている。
「佐倉さん。当日の様子を説明してください。」
愛里ちゃんに笑顔でいうと、軽く頷き、深呼吸を1回入れて、
「はい・・私は写真を撮るのが趣味で、その時間、特別棟で写真を撮る場所を探していました。でも、そこにはCクラスの生徒が二人いて・・、Bクラスの神崎君が少し遅れてきました。そのあと口論となっていたようです。」
「ようです。って、見てはいないのか?」
坂上先生が口を出す。
「怖くて、隠れていました。でも、口論の後、神崎君は、やってられるか。と言ってその場から出ていきました。私もそのあとすぐそこから移動したので、そのあとのことはわかりません。」
焦っていた当事者二人が愛里ちゃんの話を聞いて安心しているようだった。
「見ていないんだろ。俺たちは殴られて、そのあと、神崎が出て行ったんだよ。」
あくまで自分たちの主張を貫き通そうとしている。
「佐倉、どうなんだ?」
生徒会長が質問する。
「はい。確かに見てはいませんが、聞いているだけでわかることもあります。神崎君は暴力ふるってはいません。」
あの愛里ちゃんが物おじせず、堂々と話している。お姉さまと愛里改造計画を実行した成果だ。
「どんな話かと思えば・・・おおかた、Bクラスに絆されて、聞いていたことにして、証人として担ぎ上げられたんだろう。全く手の込んだことを。なげかわしい。」
坂上先生が愛里ちゃんを蔑む。
「ち、違います。私はほんとうにその場にいました。これを見てください。」
2枚の写真を見せる。それは愛里ちゃんが自撮りしたもので、アップの愛里ちゃんの後ろの方にCクラスの生徒が二人写っている。
「え、この子、雫なの?」
同席していた橘がつぶやくが、生徒会長が制した。
「たしかにその場にいたようだが、それでも証拠としては弱い。」
「あと、坂上先生、これ以上、生徒に対し暴言を吐くなら、退室いただきます。」
坂上先生の方を向いて言った。
「佐倉さん。勇気を出してくれて、本当にありがとう。」
丁寧にお礼を言って、退室してもらった。
「証拠しては弱い。わかりました。あくまでCクラスは神崎君が暴力をふるった。というんですね。」
「最初からそう言っている。その通りだ。」
「もし、私たちの主張通り、これが策略だったとしたら、これは神崎君を陥れるためのいじめですよ。それでもいいんですね。」
二人を見つめたあと、生徒会長の方に視線を移す。生徒会長が小さく頷いた。
「ああ、事実は変わらない。俺たちは神崎に殴られた。この怪我もそいつに殴られたからだ。」
「はぁ、そうですか。わかりました。しかたありませんね。では、これを聞いてください。」
ボイスレコーダーを再生した。
「おお、神崎、やっと来たか」
「何の用だ。」
と、やり取りが始まり、だんだんヒートアップしていく。一之瀬のことに触れられたときに神崎が
「ふざけるな。」と大声を発した。
「いて。何するんだよ。」
「な、何って、自分でつまずいただけだろ。訳わかんね。」
「ちょっと待てよ。」
「やってられるか。」
「おい、待てよ。」
ここで一旦停止する。
「お聞きのように、これまでのやり取りは先ほど佐倉さんの証言と同じです。」
二人が震えている。
「確かに、ひどく罵りあってはいるが、殴りあっている様子はない。」
生徒会長が確認する。
「では、続けます。このあと、少し音量を上げます。」
「小宮、撮れているか?」
「大丈夫だ。少し編集すれば十分に使える。あとは怪我をするだけだ。」
「じゃ、俺からな」“がこっ”
「いってぇ。でも、もっと力入れないと、も一回頼む。」“ばきっ”
「ううぅ。いってぇ。」
「大丈夫か?つぎ俺を殴ってくれ。一回で済ませてくれ。」“がこっ”
「ううぅ。結構痛いな。口の中、切れたぞ。血が出てる。」
もはや二人はガタガタ震えて、青くなっている。坂上先生も唖然としている。
「お判りいただけましたか。」
落ち着いた声で話し、ボイスレコーダーを机の上に置いた。
「これで何が起きたのかはっきりしたと思います。生徒会長、判断をお願いします。」
しばらくの沈黙の後
「ああ、はっきりした。これはいじめと認定せざるを得ない事案だ。」
Cクラスの生徒が崩れる。
「そのCクラスの二人は今日を持って、当校から退学。坂上先生、事務処理をしてください。Cクラスのクラスポイントのうち50ポイントをBクラスに移動。また、退学者1名に付き50ポイントをクラスポイントから引くのは決まりだ。以上」
生徒会長が場を閉めた。
「ば、ばかな。あの程度で俺たちが退学?いじめ?うそだろ。」
石崎が茫然自失としている。
「う、嘘つきました。ご、ごめんなさい。許してください。」
小宮が土下座している。
「もう遅いです。」
私が小さな声でつぶやいた。
参加者、立ち合い者が部屋からぞろぞろと出ていく。Cクラスの二人は泣きながらうなだれ、連れ出された。
「立川は残れ。」と生徒会長の声が聞こえた。
部屋には私と生徒会長の二人が残っている。
「さて、立川。あんな確実な証拠があるのに、なぜ、ことを複雑にした?」
「Cクラスが折れて謝罪してくれれば、と思っていました。これは使うべきでない。と」
平然と答えた。が、
「違うな。お前は最初からストーリーを持って進めていた。俺すらもそのシナリオに乗せてな。」
「何のことでしょうか?」
「あの、いじめとはという俺への質問と神崎への質問。これで落とす場所をいじめに固定し、そこから逃れられないようなシナリオを描いて、議論を進めた。」
「あぁ・・。やっぱり、ばれていましたね。途中から生徒会長の目が変わりましたので、でも、言質は取れていましたから。」
「何をしたかった?」
これ以上嘘を重ねても解放されないと思った私は
「う~ん・・。ある人に自分の実力を見せ、楽しんでほしかった・・ですかね。」
ある程度正直に答えた。
「情報統制、理論構築、思考誘導と折衝力といったところか・・・楽しんで?・・・綾小路か?」
いきなり清隆君が出てきた。でも、前々から生徒会長とコンタクトがあると聞いていたので、それほど驚かなかった。
「さぁて。どうでしょう。答えなければならない、というほどでもないでしょう。」
とにかく面倒なので笑顔ではぐらかす。
「お前たち。予想以上にキレるな。危険だ。」
「何をおしゃっているのか、わかりませんが、失礼してよろしいでしょうか。」
丁寧にお辞儀をして部屋を出た。
「由佳、上々の出来ね。愛里も頑張ってくれました。」
「予想以上の結末だ。よくやった。」
清隆君とお姉さまはずっと生徒会室でのやり取りを電話で聞いてくれていたようだ。
「清隆君。」
近くに行くと頭を撫でてくれる。なんだかお姉さまがとても嬉しそうにしている。
「ほぼ、考えた通りに誘導できたみたいね。」
「はい。櫛田さんからいろいろと学ばせてもらいました。」
「これでCクラスはしばらく静かになるだろう。」
かくして暴力事件は幕を閉じた。翌7月2日、プライベートポイントが振り込まれた。プライベートポイントから見て、クラスポイントは以下のようになる。
A 970 → 950 日常減点
B 860 → 940 佐倉+50,暴力+50,日常減点
C 780 → 600 暴力-50,退学2名-100,日常減点
D 20 → 60 佐倉+50,日常減点
ちなみに私には学食コンサル分として52万が振り込まれている。季節メニューの桜エビのかき揚げ丼が呼び水となって、全体の売り上げを押し上げたと聞いた。
「Dクラスは、先が長いな。大量に稼げるイベントがないと、苦しい。」
「そうですね、このまま、ちまちま得点を重ねても上に追いつきませんね。」
「もう少し、近づいてこないと面白くないです。せめてDクラスを入れた三つ巴くらいに」
私も会話に入る。
「そうだな、クラス順位はどうでもいいが、競り合わせないと楽しめない。」
3人は「如何に楽しむか」が重要であり、それ以外は全くどうでもよかった。
少し込み入った話になりました。
須藤君は静かにしている好青年になっています。
Bクラスに仕掛け、3人、特に由佳ちゃんにやられる。。といった感じでまとめました。
各クラスのポイントです。
A 950
B 940
C 600
D 60
そして共同アカウントです。
前回まで 2175万
由佳の学食売り上げ +50万
二人の生活費 -10万
で、現在、2215万