一日目に何とかベースキャンプを設営し、桔梗ちゃんがリーダーシップを発揮しましたね。
さて、この先無人島試験はどう進むのでしょうか。
2日目の朝、昨日確保してきた果物やトウモロコシで朝食を取った後、櫛田が全員を集めた。
「みんな、おはよう。慣れない寝床で疲れていると思うけど、頑張るよ。」
一言で皆が覚醒する。リーダー職が板についてきた。
随分とすっきりとした顔つきになっている。昨日、清隆に深くまで突かれ、何度も逝かされた効果が出ている。
「今日は役割を分担するから、それぞれ動いて欲しい。」
「まずは、食料の調達だけど、高円寺君が昨日リタイヤ前に地図にマークを入れてくれた。」
私が渡した地図を見せる。
「ここには、今朝食べたトウモロコシや果物の他にいろいろとあるらしいの。」
「おおぉ。高円寺、すげー」あちらこちらから声が上がる。
「で、小野寺さん。5人でグループを作って、収穫してきて欲しい。大丈夫かな?」
体力に余裕のある小野寺を指名した。
「わかったわ」
小野寺も反発せずに従い、周りの男子に声をかけてグループを作った。
「次、池君。釣りはできる。」
「おぅ、任せてくれ。」
「じゃ、3人ぐらいで魚を取ってきて。ここに川のせき止めがあって魚がいるらしいの。スポットは綾小路君が占有してくれている。」
「清隆、すごいな。ところで竿とかはあるのか?」
「ポイントで買える。3本購入しておくよ。」
平田がマニュアルから探し出した。
「軽井沢さん。須藤君を中心に手伝ってもらって、テントの下にこれを敷き詰めて。」
「いいけど、これって、簡易トイレの吸水硬化剤?」
「そうよ。いくつでも無料なの。触ってみて。やわらかいから。」
「あ、ほんとだ。今晩からよく眠れるかも。やっておくよ。」
すごい。各生徒に手際よく適切な役割を与えていく。これまでのリーダーとしての成果があるし、適材適所だから誰も文句は言わないし、いわゆるカリスマ性が発現している。櫛田は構築したネットワークから、いろんな情報を集めている。各個人の嗜好までも理解できているから、采配と頼み方がうまい。
以前、裏からサポートするとはいえ櫛田にリーダーが務まるかどうかを清隆と話した。清隆は櫛田なら我々の傀儡に成り下がるのではなく、自分で称賛を取りに行くだろうと。また、ポジションが人を成長させるとも言っていた。まさにその通りになっている。櫛田はリーダーとして、自分を成長させている。
「疲れている人もいると思う。絶対に無理はしないで。疲れたら遠慮なく涼しいところで休んでちょうだい。」
「余った人は何を?」
静かにしていた松下が声を上げた。
「もっと水が欲しいね、大鍋で煮沸してくれる?薪も必要だと思うから適宜、集めてもらえると助かる。」
松下も頷いた。
「みんな、いいかな?」
「じゃ、二日目。行動開始!」
号令と共に最後は天使の笑顔で締めた。皆から歓声が上がり、それぞれの役割についていった。
「桔梗、お疲れさま。」
ねぎらいの言葉をかけた。
「うん。大丈夫・・・昨日してもらったし、褒められたい。」
後半の言葉は聞かなかったことにしよう。(案外、可愛いじゃない)。
手の空いた櫛田とともにBクラスのベースキャンプを訪問した。森の中の開けたスペースにベースキャンプを張っている。ハンモックなんかをうまく利用して過ごしているようだ。
「神崎君、おはよ」
櫛田がクラスリーダーとして挨拶をする。
「おぉ。櫛田か。おはよう。」
「おーい、一之瀬、櫛田と綾瀬が来ているぞ」
神崎が気を利かせて呼んでくれた。その声に由佳も反応し、こちらに歩いてくる。
BクラスとDクラスのリーダーと参謀が集まった。
「調子はどう?」
「あ、まぁまぁかな。大変だったけど何とか形になった。まだまだやらなきゃならないことは山積みだけどな。Dクラスは?」
「こちらも同じような感じよ。」
「ところで、ハンモックってどんな感じ?」
「あぁ。テントをケチって一晩使ってみたが、だめだな。体力が削られる。」
「そうかぁ。やぱっり虫?」
「ああ、防虫剤を焚いても、厳しい。一晩、虫を追い払っていたらしい。あと、落ちるやつもいた。」
「そっかぁ」
池の経験に感謝だ。
「で、櫛田。不戦条約はまだ生きていると思っていいな?」
「うん。今日はそれの確認もしたくて。」
テスト前に話した時は一之瀬がリーダーだった。リーダーが変わった以上、確認は必要だ。
「あぁ、一之瀬からも言われている。」
「よかった。わかってくれていたんだ。」
櫛田が一之瀬に笑いかけると、一之瀬も笑顔で頷いた。
「じゃ、これ。あいさつ代わり。」
お土産として持ってきたトウモロコシを10本ほど差し出す。
「う、これ、助かる。けど、どうした?」
「探せば、あるみたいよ。」
トウモロコシ畑はかなり広い。その場所をBクラスに教えた。スポットとして占有しているが、Bクラスに使用許可を出した。
「ところで、Cクラスから誰か来ていない?」
「あぁ。金田が龍園とやりあったらしく、顔にあざを作ってたんで、保護している。」
「Dクラスは、伊吹を同じ状況で保護している。」
神崎と櫛田が目を合わせ、顔をにやつかせながら
「スパイだね。」
「う、うそ・・、そ、そんな。」
一之瀬がつぶやく。相変わらず疑うことを知らない。その二人はスパイ以外にない。
「で、Dクラスはどうする?」
「今のところ、静観。動き回れないように監視している。」
「こちらも同じだ。おそらくリーダーを探りに来ている。監視しよう。」
「何か動きが合ったら共有しましょう。」
これで、BクラスとDクラスの会議は終了だ。
由佳がもの言いたげに私の顔を見つめている。
「帆波、少し由佳と話していい?」
「うん、いいよ。」
由佳を少し離れたところに連れていく。
「どうしました?」
「Bクラスのリーダーになりました。」
思ってもみなかったが、適任と言えば適任である。
「金田にばれないようにしなきゃですね。」
「はい。でもリーダーは絶対に当てられない。」
由佳が自信ありげに言った。
「自信あるんですね。どうするつもりなの?」
「Bクラスはこのスポットを占有しないことにしました。」
「占有しなければ、ばれない・・か」
「はい。金田君が来たとき、占有機を見ていました。その時から占有しているふりをしようと、神崎君に提案しました。」
「なるほど、金田は占有されていると思い込んでいるわけですね。」
「はい。占有の継続時間になると、千尋ちゃんが占有機のところに行って手を添えます。ただ、予想できない時間に私が占有します。夜中とかです。」
うまい。期間中、一つのスポット占有で得られるボーナスポイントは約20ポイント。リーダーがあてられると、それが確保できないばかりか、50ポイント引かれてしまう。当てられないようにする方が効率がいい。だったら占有機に近づかなければいい。さらに間違いを誘うような行動もとらせている。
「いいわね。さすが由佳です。毎日、何とか会って情報交換しましょう。」
「はい。楽しみです。」
破顔しながら返事をする由佳がとてもかわいかった。
続いてCクラスに向かった。Cクラスは砂浜をベースキャンプにしていた。
「龍園さん、Dクラスが偵察に来ました。」
見張り番の生徒が大きな声で龍園に呼びかけた。
龍園はパラソルの下のビーチベッドに寝そべっている。周りでは水着で遊ぶ者、バーベキューを楽しむ者、さらには海でマリンジェットで楽しむ者もいる。
「おう、Dクラスの綺麗どころの二人じゃねぇか。ゆっくりしていけ。なんなら、俺の上に座ってもいいぞ。」
腹の上をパンパンと叩く。まるでチンピラだ。(本当に座られるとどんな反応するのかしら)。
「すごい楽しそうね。みんなと一緒に遊びたいけど、今度にするわ。」
櫛田は表情一つ変えずに、そんな龍園の煽りに応答する。私は一切口を開かない。ただ龍園の目の動きを含め、すべての意識を観察することに振っている。
「この特別試験は諦めたの?」
「あぁ。クラスポイント100,200のために1週間、耐え忍べってか?やってられるか。」
へらへらと笑いながら答える。
「海で遊びまくって、体調不良で、そのままおさらば。あの船に戻って、快適に過ごすさ」
「お、それ、いいね。それも一つの勝ち方だよね。テーマ通りだね。」
櫛田が龍園の意見に賛同するが、龍園の顔は櫛田をじっと見ている。
「それより、綾瀬よ。椎名を何とかしてくれ。数少ない椎名の友達だろ。」
「ひよりがどうかしましたか?」
ふと見ると、サイドテーブルにデジカメが置いてあるのに気が付いた。
「ああ、船にいるときからご機嫌斜めだ。雰囲気悪くてしかたねぇんだよ。」
見ると少し離れた木陰に一人で座って、海の方を見ている。私が椎名に近づくと、それに気づいてそっぽを向いた。
「ひより、どうしました?」
「どうもしない。」そっけない返事だ。明らかに不機嫌だ。
「どうもしないことないでしょ。怒ってますよね。」
声をかけると、キッとにらみながら、
「じゃぁ、聞くけど、綾小路君、佐倉さんとしたよね。」
「えっ。どこで見たの?」
「船の上、デッキで二人でお話ししてた。」
「そ、それで?」
「あの佐倉さんの仕草、した後の仕草だった。」
「はぁぁ。ほんと鋭いですね。でも、ひよりが怒ることじゃないでしょ。」
あの椎名がふくれっ面になっている。これはこれでいい。
「有栖、見せてくれるって約束した。」
「はい。覚えていますよ。」
「なんで、佐倉さんの方が先なの?私、前々からお願いしてるのに。」
あぁ、やっとわかった。「なんで佐倉を抱く機会があったのに、私に見せる方が後になったのか」ということか・・相変わらず、この子はブレない。
「ご、ごめんなさい。船から降りたら、すぐに声をかけます。」
謝罪と期日の約束をすると、椎名の顔が蕩けだす。
「ひより。顔」
「あ、ありがとう。つい。」
とにかく、これで機嫌が直ったようで、いつもの椎名に戻ってくれた。
「おお悪いな。姫の機嫌が直ったみたいだな。」
「ええ、今のところは、あまり刺激しないでくださいね。」
さも龍園に原因があるような口調で返答した。お礼にと、焼き立ての牛肉をふるまってくれたので、遠慮なく櫛田と頂いた。とてもおいしかった。
最後にAクラスに行った。Aクラスは小高い山の上の洞窟をベースキャンプにしている。入り口には垂れ幕が張ってあり、中が確認できない。
「こんにちは、Dクラスの櫛田だけど、葛城君と話がしたくて。」
見張り番と思わしき生徒に声をかけた。その声が聞こえたのか、中なら葛城が出てきた。
「おぉ。櫛田と・・綾瀬・・だっけか。偵察か?」
「そんなところ。いいところにベースキャンプを張ったね。」
「あぁ、船で回ったときにあらかた目星をつけていた。」
「さすがだね。中を見せてくれないかな?」
櫛田の笑顔攻撃だ。
「そ、それは断る。」
「そっか、じゃ仕方ないね。」
Dクラスのベースキャンプの位置を教え、来てもいいと伝えている。
「収穫なしですね。」
「そうだね。Aクラス様は保守に走ったのかな。Cクラスの行動も何かありそうだし。」
やはり、龍園の言葉をそのまま受け取っていはいない。そんな話をしていると前からAクラスの女子3人くらいが歩いてきている。私達を確認すると、明らかに警戒しているが、櫛田であることがわかるとその警戒を解いた。
「なんだ、桔梗ちゃんか。元気してる?」「この試験、大変よね」「お互いに頑張ろうね」声を掛け合う。クラス闘争なんて関係なく、強固のネットワークを構築しているだけのことはある。
「クラス闘争なんてなければ、もっと仲良くなれるのに・・」
本心だろう。櫛田として、すべての生徒が自分をほめてくれることが最高位だ。クラス闘争をしている限り、それはクラスの域を出ることはない。
すれ違う時、その中に神室がいた。目を合わせる。
「桔梗、少し用事を思い出しました。気をつけて帰ってください。」
言い残し、私は少し道を戻ると、神室が待っていた。
「有栖さん。助けてください。まずいことになりそうです。」
木にもたれて、Cクラスとの契約の詳細を聞いた。
「よくペナルティを入れ込みました。」
「あぁ、教え込まれたから、でもそこまでだった。このままだと卒業まで払い続けなきゃいけない。有栖さん何とかできませんか?」
契約の怖さを思い知ったのだろう。真剣な表情だ。少し頭を使わせよう。
「真澄さん、何をどうすればよろしいですか?」
「少なくとも、ペナルティでいくらかを相殺してもらえれば、支払いポイントを少なくできる。」
「そうでしょうか?」
「1クラス誤認させることで、ペナルティは50万。1クラスは正解で25万の支払い。資材分60万あるから、その差の25万を引くと35万の支払いでよくなる。」
多分いろいろとシミュレーションしたんだろう。それで、実現性のある1クラス誤認を落としどころと考えたんだろう。
「よく、考えていますね。でも、人を率いる者は常に大きな目標を持たないといけません。先ほどの1クラス誤認は妥協案ですね。」
「うぅ。はい。・・・でも、不可能なことを考えていても仕方ないのでは?」
「いいえ、それは違います。まず、考えないと実現できません。だから大きく考えるんです、想像するんです。」
「ま、そのうち分かるようになります・・・では、その契約から入ってくるプライベートポイントの7割を私に送ってください。」
「え、AクラスじゃなくてCクラスが払うの?」
「はい。そのように進めます。だから真澄さんは葛城をサポートする“ふり”だけを続けてください。9月になると、神室リーダーと呼ばれるかもしれませんよ。」
「わ、わかりました。7割ですね。あと、ふりですね。」
「そう、ふりです。」
最後の言葉を発した神室の目に今までとは違う光が見えた。
「ところでリーダーは誰ですか?」
「あぁ、葛城の側近の戸塚です。」
だいたい、大まかではあるが各クラスの状況は分かった。早く戻って清隆と話そう。
各クラス、思い思いの方向です。
Aクラスは秘密主義で、Bクラスは不戦協定からの共同戦線。Cクラスは自由主義。
原作を大切にしながら、改変していきます。
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