はたして、どんな結果になるのか。。
各クラスはどのように動くのでしょうか
私は龍園を探している。今晩がラストチャンスだ。今晩中に何とか交渉しなければ。
彼は島に潜伏している。昨日までAクラスにリーダー情報を持ち込んではいない。契約にペナルティが盛り込まれているから、反故にはできないし、今晩がタイムリミットだ。
あたりが薄暗くなりかけた頃、Aクラスのベースキャンプのほど近くでやっと見つけた。
「あ、龍園、みっけ」
少しおどけた声で呼びかけた。
「ち、綾瀬か。どうせ、潜伏していることは分かっていたんだろ。めんどくせぇ」
「まぁ、もう少しでこの特別試験も終わりです。一度、お話ししませんか?」
「あぁ?おまえと話すことなんざねぇよ」
立ち去ろうとする龍園に声をかける。
「ねぇ龍園、いまからリタイヤしてくれない。」
よほど琴線に触れたのか、立ち止まって振り返ってきた。私も龍園と距離を詰めていく。
「何ふざけたことを言っている?」
「いやぁ。だからさぁ、リタイヤして欲しいんだよね。悪いようにしないからさぁ。」
「この前の暴力事件みたく、また馬鹿を見るよ。」
とひそひそと囁くように伝えた。
「お前かぁ」
いきなり龍園が私の後ろを取り、太い腕で私の首を絞めてきた。裸締め、いわゆるスリーパーホールドだ。私は龍園の腕にしがみついたり、パンパンたたいたりするが緩めてくれない。脚もばたつかせたが、緩めてもらえない。
「うぐぅっ」呻き声が出る。
そのとき、視野の片隅でフラッシュが光った。
「なに?」龍園が腕を緩めたすきに、そこから逃れる。
「なんてね。」
さっきまでとは異なり、あっけらかんと話す。
「な、なんなんだ、おまえ。苦しくなかったのか」
「その程度のしめ技・・。そんなことより、伊吹の持っていたカメラ、どこにあるか考えたことあります?」
龍園がはっとする。
「さっき、スリーパーホールドで私に暴力を働きましたね。ふふ。」
いたずらっ子の様な表情で首を少し傾げてみる。
「ち、お前を道ずれにリタイヤしてやるよ。まぁ、お前は人生からリタイヤすることになるけどなぁ」
叫んで私に襲い掛かってくる。捕まえようとしている動きだ。素早く身をかがめ、姿勢を低くし、龍園の鳩尾を狙いすまして、正拳を思いっきり叩き込む。
「くはぁっ」
一言発して龍園が崩れ去った。
「おお、有栖、仕留めたな。」
「はい、清隆と訓練してたことが役に立ちました。」
実は、暇を見つけては清隆を相手に訓練していた。顎の刈り取りは効果的であるが故に非常に危ないということだ。生徒に放ったら、再起不能になる可能性もある。実際、佐倉のストーカーは未だに意識不明ということだ。こうなると、どちらが悪いに関係なく、私がまずい立場に追いやられる。だから鳩尾を狙えと。思いっきり入れても、人は死なない。
「さてと」身に着けている腕時計端末から、救助信号を発信させ、その場を後にした。
「さて、オレたちも最後の仕上げだ。ベースキャンプに戻ろう。」
手を繋いで、急いでもどる途中で、抱きしめてキスしてくれた。
ベースキャンプに戻り櫛田に声をかける。
「ね、桔梗、大変。清隆が倒れた。」
「な、何があったの?」
驚いてテントの外に出ると、清隆が横になっている。
「すまん、櫛田。少し頑張りすぎた。熱が出ている。もう無理だ。このままリタイヤさせてくれ。」
3人とも白々しい演技だ。誰かに見られる可能性、というより誰かに見てもらわないといけない。クラスメート数人がテントから覗いているのが見えた。
その後、二人で清隆を茶柱のいるところまで運び、事情を話して、リーダー変更と清隆のリタイヤ処理を行った。
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由佳Side
6日目のお昼ごろ、私は作戦の下準備を開始した。まずは神崎君に相談の体で話しかけた。
「神崎君、また、Cクラスがよからぬことを考えているらしいです。」
「あいつらも懲りないな。で、なにを?」
「どうやらAクラスとプライベートポイントに関する契約を結んだらしいです。ただ、Aクラスの神室さんは、なんとかしたいと相談に来ました。」
「どうせ悪だくみを隠して契約したんだろう。」
「はい、そうらしいです。で、金田君を使って、痛い目に合わせます。」
布石は打った。あとは計画の実行を待つだけだ。
最終日の朝、その作戦がうごきだした。
Cクラス担任の坂上先生がBクラスのベースキャンプに来て、金田君と何かを話している。清隆君からの情報では、龍園をリタイヤさせた後、Cクラスで島に残っているのが金田君だけとなり、必然的にリーダーとなる。多分、計画通りに進んでいるんだろう。
先生と話していた金田君が戻ってきて、指定のテントに入った。
そのテントの近くで神崎君、帆波さん、私の3人で、テント内の金田君に聞き取れる程度の声で内緒話を始める。
「もうすぐ、特別試験も終わりますね。」私が口火を切る
「ああ。今日のお昼で長かった試験がやっと終わる。」
「うにゃぁ。早く快適なお船に戻りたいね。」
「それはそうと、最後のリーダー当て。どうします?」
「って他のクラスのリーダーって誰かわかっているの?」
「はい。いろんなところから情報が集まってきています。聞かれるとまずいので・・」
といいながも、それほど音量は落とさない。テント内からガサゴソと音がしている。
「まず、Aクラスは、戸塚君」
「お、葛城の側近か。」
「そうです。常に二人で動いているそうです。」
「で、Cクラスは龍園君。」
「まて、金田君以外はCはリタイヤしたんじゃ」
「彼は潜伏しているらしいですよ。」
「Dクラスは綾小路君。」
「にゃるほど、目立たない彼にまかせたんだにゃ。」
「うちの千尋ちゃん、他のクラスに見られていないかなぁ。心配です。」
「情報は確かだろう。オレたちは3クラスに対してリーダー指名するぞ。」
「わかった。じゃ、そういうことで。」
おそらく、金田君に他クラスのリーダー情報は龍園から伝えられていない。思わず転がり込んできたリーダーに知将金田も判断ミスをするだろう。
「は~い。みんなお疲れ様。試験ももうすぐ終わるよ。」
星之宮先生と坂上先生が並んでベースキャンプに入ってきた。
「じゃ最後のリーダー指名だけど、するならこの紙に書いて提出してね~。」
坂上先生は金田君のもとにいってその紙を渡した。
「じゃ、この前話した通り、書いて提出するぞ。」
少し大きめの声で神崎君が宣言する。
神崎君がAクラスの欄に「戸塚弥彦」、Cクラスの欄に「金田悟」と書いて提出した。
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金田Side
くそう。聞いてない。龍園殿がリタイヤしたなんて。試験最終日の今朝、ベースキャンプに坂上先生が来て説明された。
「龍園君がリタイヤした。島に残るのは金田君だけとなった。必然的に君がCクラスのリーダーとなった。」
試験開始からこのBクラスにスパイとして潜り込んだ。厳しい監視の目は有ったが、思ったより快適だった。どうやらリーダーは白波さんらしい。警戒しながらもスポット占有継続時間になると、占有機の方に向かっていくのを何度も目にした。ここに保護されたときに占有機を見たら、確かに占有されていた。継続的に占有し続けているんだろう。龍園殿に伝えようと、デジカメで写真まで撮ったのに、コンタクトがないから渡せないでいる。
ところが、今朝、リタイヤしたことを知らされた。そして僕がリーダーになった。
テントに戻って、頭の中を整理していると、外から話し声が聞こえてきた。声からいって、神崎君、一之瀬さん、立川さんの3人。つまりはBクラスのリーダーと参謀が話している。聞き耳を立てると、各クラスのリーダーの情報だ。それに、まだ龍園殿が島に潜伏していると思い込んでいる。いい情報が手に入った。これで龍園殿ももう少し、僕のことを見直してくれるかもしれない。
お昼前になって、リーダー指名の時間が来た。ほど近くでBクラス参謀たちが記入している。聞いていた通り、Bクラスも指名するみたいだ。僕も申告用紙をもらい、聞いていたリーダー情報を書き込んだ「戸塚弥彦」「白波千尋」「綾小路清隆」。
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神室Side
昨日の夕方、龍園がやってきた。着ている服は泥で汚れ、顔も無精ひげだらけだ。聞かされていたが本当に潜伏し、サバイバル生活をしていたことがよくわかる。
「葛城、待たせたな。」といってデジカメを見せる。
「まずはBクラスだ。白波千尋がリーダーだ」
写真にはBクラスのベースキャンプの占有機に白波が手を置いているのが見える。
「で、Dクラスは綾小路清隆だ。」
これは森の中での写真だ。同じように占有機に手をかざしている。
「わかった。これで契約は履行された。」
「忘れるなよ。プライベートポイントは9月から徴収するぞ。」
「わかった、準備しておく。」
龍園がふら付きながら立ち去った。
「葛城くん。あなたに任せるよ。」
「リーダー情報は不安だったけど、証拠もあるし、指名するよね?」
「当然だ。これで抜きんでることが出来る。」
有栖さんには、龍園の情報通りにリーダー当てを申告するように葛城を誘導しろと言われている。本当にそれだけでいいのか不安になる。このまま正解だと毎月110万という途方もないプライベートポイントをCクラスに払い続けなければならない。
でも、今は有栖さんの言葉を信じよう。そして同じ間違い二度と起こさないように、頭に刻みこもう。
「結果を発表する」
海岸にクラスごとに並んでいる生徒達から歓声が上がる。
『まずは、Aクラス。50ポイント』
神室Side
葛城が面白いほどに歪んでいる。大量得点を目論んでいた彼にとって、この50ポイントは驚くほかない結果だった。
「一体、何が」
つぶやく葛城に
「戸塚が3クラスから当てられて、-150。そして、2クラスへのリーダー指名を外して-100。で、残りが50ね。」
「そうだな。やられた。」
「やられたんじゃない。自分から飛び込んでいったの。でも安心して。」
「何を??」
「Cクラスは我々のリーダーを指名した。これで月100万。よこしたリーダー情報が間違えていた。これで月100万。もらった資材分の月60万を引いても月に140万が「わたし」に入ってくる。AクラスはCクラスに何も払わなくてもよくなった。」
試験2日目に、有栖さんに相談した。このままでは将来的に払い続けることになる。何とかならないのかと。有栖さんから「今後入ってくるポイントの7割を私に渡してもらえるなら、何とかしましょう。」と聞かされた。もともと私にそれを受け取る権利はないから、7割は破格だ。「龍園からの情報通りに指名すること。」と言われた。
結果を聞いて、寒気がした。あの悪魔さん、いったい何をしたんだ。1クラス誤認と言った時、それは妥協案。上に立つものはもっと大きく考えること。考えられないところには絶対に行きつけない。と言われた。これが大きく考えた結果か。すごすぎる。
「うう。そうだな。不履行時のペナルティに助けられた。神室のおかげだ。ありがとう。」
『次に、Bクラス。225ポイント』
由佳Side
神崎君と帆波さんがグーパンチしている。計算通りだ。Aクラスの結果からも金田君は私の思い通りの指名をしてくれた。これはお姉さまからの指示だった。「AクラスがCクラスと結んだ契約を「なかったこと」にしたいから、最終日、金田をたきつけろ。いま、リーダーは龍園だけど、終わる時には金田になっている。何か特別な動きがあったら、それが合図だ」どうやら不履行時ペナルティで相殺するらしい。
私も神崎君に事情を話し、テントの脇で芝居を打ったわけだ。
「いや、あの知将金田がこうも簡単に思いと通りになるとは・・」
神崎君が感慨深げにいう。
「頭が整理される前に叩き込んだのが功を奏したということです。」
「立川すごいな。白波の罠と言い、金田のことといい。」つぶやいていると
「そだよ。由佳はとてもすごいの。いつも助けられている。」
帆波さんが嬉しそうに私の頭を撫でた。
『次、Cクラス。0ポイント』
金田Side
う、うそだろ。ど、どうして・・リーダー情報が間違っていたのか?3クラス指名した。0ポイントということは、3クラスとも間違っていたか、2クラス分を間違えたかだ。でも、Bクラスの参謀たちの話では戸塚君、白波さん、綾小路君のはず。わからない。
でも、いいか。龍園殿はリタイヤしているし、僕に責任はないね。
『最後に、Dクラス。420ポイント』
「おおぅ」「やったぁ」Dクラスから大きな歓声が沸き起こる。
なぜここまでの高得点になっているかを知る者は船上と海岸に一人ずつしかいない。すべてこの二人とその周りの仲間が仕組んだことだ。
「綾小路が頑張ったのか?」
櫛田の近くで須藤が大きな声を発した。
「清隆君、いつも桔梗の割り切った采配がよかったって言っていました。だから、スポットの占有だけさせてくれた桔梗に報いたいと走りまわっていました・・」
彼女である私がさみし気に説明する。
「やっぱり櫛田かぁ。」
「くぅうぅ。うちのリーダーすげえ。」
「やっぱり桔梗ちゃんだ。」
口々に称賛の声を上げる。それを聞いて桔梗は満足しているが、仮面は外さない。
「で、その綾小路は?」
「昨日、体調を崩して、リタイヤしてもらった。私がリーダーを引き受けて船に戻ってもらったの。」
そう、昨日、龍園をリタイヤさせた後、清隆は「走りすぎたための疲労」が原因で櫛田にリーダーを譲ってリタイヤした。
「船に戻ったらお礼を言わないとな。走ってくれてありがとうってな。」
不思議と須藤が皆の輪に溶け込んでいる。この無人島での生活で、須藤の見せた本来の強さ、優しさ、謙虚さが皆に伝わったんだろう。
とにかく、Aクラスは変な契約から免れたし、Bクラスは予想通り、Aクラスを追い越した。Cは落ちるところまで落ちてもらった。で、Dもそこそこ上げてきた。いい感じだ。船に戻ったら、清隆と由佳とまとめよう。
結果が出ましたね。
Aクラス 50ポイント
Bクラス 225ポイント
Cクラス 0ポイント
Dクラス 420ポイント
Dクラスの大勝でした。