龍園Side
まさか俺が船上からその結果を聞くことになるとは思ってもみなかった。
6日目の夜、Dクラスの綾瀬と森の中で遭遇した。偶然ということでなく、もともと俺を探していたと。
結局、俺は綾瀬に乗せられてスリーパーを決めているところを撮られたらしい。そのあと、綾瀬をフルボッコにして二人ともリタイヤしようと思って、襲い掛かったところまでは覚えている。気が付いたら、船の医務室のベッドの上だった。
「俺は何をされた?綾瀬、いったい何者なんだ?」
さぁ結果発表だ。まぁ俺の予想通りになるだろう。
Aクラスは元々の300にリーダー当てに2クラス成功、占有のボーナスポイント含めて480ポイントくらいだろう。これで、毎月110万プライベートポイントが転がり込んでくる。思わず笑顔になってしまった。
『まずは、Aクラス。50ポイント』
まて、50ポイント?何でAクラスが50ポイントなんだ?
計算してみると、『3クラスから当てられ、2クラス外した』ということに行きついた。“金田の野郎が、Aクラスを指名し、俺のリーダー情報も間違っていた”ことになるとわかった。
Aクラスとの契約で、リーダー情報が間違っていた場合、1クラスにつき50万。2クラス間違っていたから100万のペナルティ。リーダーは白波と綾小路のはず。なぜ間違えた。それに、指名しあわないことに対して100万のペナルティ。合計200万ポイント。資材分の60万ポイントが差し引かれ、月140万ポイントをAクラスに渡さなくてはならない。一人当たり5万ポイント。
ま、まずい。これはまずい。
金田に戦略を話していなかったことが裏目に出た。
『次に、Bクラス。225ポイント』
これもおかしい。資材購入で残りは120ポイントくらいだった。スポット占有で20ポイント、Aクラス、Cクラスのリーダーを当てて100ポイント上乗せ。240ポイントのはずだ。不足しているし5ポイントが半端だ。そ、そうか。奴ら占有していなかったんだ。白波はおとりで、一日1回くらい、本当のリーダーが適当な時間に占有したんだ。8時間ごとの占有時間に気を取られていた。白波の行動にまんまとひっかかった。畜生。誰が仕組みやがった。必ず暴いてやる。
『次に、Cクラス。0ポイント』
これは当然の結果か。金田の野郎がAクラスを当てているが、たぶん、BとDから当てられている。一人しか残ってないから、必然的に金田がリーダーだとわかってしまう。
『最後に、Dクラス。420ポイント』
船上にいるCクラスの生徒もどよめく。
420?多すぎる。一体いくつのスポットを占有したんだ。確かに綾小路が走り回っていた。Aクラスに渡した写真もそのうちの一つだ。だからAクラスと共有した。これが間違っていた。じゃ、誰がリーダーなんだ。
ふと横の方を見ると、綾小路がいた。目を伏せてじっと放送を聞いている。そ、そうか、Dクラスは最後の最後でリーダーを変更したんだ。
残りポイントは140くらいだった。リーダー当てで100。これで差が180。高円寺と綾小路のリタイヤで-60だとすると、占有ボーナスだけで240。12か所の占有か。化け物か。
Bクラスにはおとりに踊らされ、Dクラスにはリーダー変更でやられたのか。そして、金田による自爆・・なんてこった。
俺は綾小路に話しかけようと近づく。どこかで見た顔。そうか、思い出した。中間テストの時、学食で櫛田が連れていた、影の薄いさえない男だ。
「おう、綾小路。随分な真似してくれるじゃないか。」
綾小路は無表情で俺の顔を見た。何を考えているのか全く読めない。
「おまえは・・・確か、龍園と言ったか?」
「ああ、お前たちの策略にまんまと引っかかったぜ。」
「策略?何の話をしている?」
「最終日前に、リーダーを交代する。これは策略だろう。」
「よくわからない。櫛田に聞いてくれ。オレは櫛田に言われ、走りまわっていただけだ。最後に体調が悪くなって、櫛田に勧められてリタイヤした。皆に申し訳なかった。」
何を聞いても表情が変わらない。そういえば、櫛田もそうだった。こいつら一体なんなんだ。
「そうか。なら櫛田を問い詰めるだけだ。」
「ああ、そうしてくれ。用がないなら、オレは部屋で休みたいのだが。」
「ちっ。時間取らせたな。」
綾小路は重い足取りで去っていった。やはりカギは櫛田か。
結果発表のあと、俺は状況の整理をするために情報を集めた。
「なぜAクラスのリーダーがばれたのか?」
葛城の話では、スポット占有機は洞窟内にあり、誰も他クラスの生徒は中に入れていない。特に隠す必要もないので、誰かリーダーかは、みんな知っていた。他のスポット占有についても、最低5人、いつも同じメンバーで動いたから、それを見られていたとしても確率的には20%だと。
きっとスパイがいる。
誰かがリーダー情報をBかDクラスに漏らした。
葛城を蹴落とそうと、神室が漏らしたのか?それなら、あの契約の時に、あれほど葛城をサポートしてAクラスのことを考える必要もないだろう。橋本の可能性もある。Bクラスに恩を売ったか。まぁ、そのうちあぶり出してやるが、今は静観だ。
「Bクラスのリーダーは誰だったのか?」
金田と話したが、全く分からなかった。実際、俺自身もBのベースキャンプを張り込んで、白波と判断した。やはり、金田も同じで、白波以外、スポット占有機に近づいたものはいなかったらしい。リーダーがばれないように占有の継続すらしなかったのは、結果から見てもわかる。
金田の話では、キャンプでは神崎がいろいろと采配し、一之瀬がそれをサポートしていたと。ただ常に監視の目が合って、自由にさせてもらっているようでも、かなりの圧迫感は感じたらしい。
「監視役は誰が?」
「立川さんです。」
「また、立川か。」
「彼女、すごい切れ者ですよ。神崎君も彼女の意見はないがしろにしない。というか、常に相談していました。あと、僕を監視している目。遠くにいても必ず僕を視界に入れていました。」
やはり立川もただものじゃなさそうだ。リーダーを隠蔽しながらも、常にばれていないかどうか“不安になっている雰囲気”を出し金田を欺き続けたか。
ただ・・うん・・可愛いから、立川じゃない。
「ところで、どうやって他クラスのリーダーを知ったんだ。」
「最終日、坂上先生に呼ばれた後、落ち着こうとテントに入っていたら、外で話す声が聞こえました。神崎君、一之瀬さん、立川さんがリーダー指名の内緒話をしていました。その時もBクラスのリーダーは白波さんだと」
「まて、内緒話でリーダーが白波だと言っていたのか。」
「はい。そう話していました。」
「がぁっ・・くっそ。嵌められた。」
あいつら、Cクラスで残っているのが金田一人で、リーダーが転がり込んできたことを感づいていた。それでわざと金田にがせねたを掴ませてリーダー指名をさせやがった。
神崎か・・そのうち、その代償を払ってもらうぞ。
「Dクラスを指揮したのは誰か?」
これは伊吹と話した。やはり、リーダーは綾小路だった。最終日、俺がリタイヤした後、奴もリタイヤしたんだ。
「Dクラス、誰が指揮していたんだ?」
「あぁ、櫛田だね。いろいろと気を配って大変だった。なんせDクラスだからね。」
「他に誰か・・櫛田が相談している奴はいたか」
「平田、須藤、あと綾瀬かな。でも彼女は単なる友達って感じかな。」
ち、綾瀬か。食わせ者だな。
「伊吹、リタイヤした経緯をもう一度説明してくれ。」
「ああ、4日目だっけ、その前の夜に櫛田の下着を抜いて、騒ぎを起こしてデジカメを取りに森に入る予定だったんだ。少しの計画のずれはあったけど、監視の目を盗んで、森に入った。でも、デジカメが綾瀬の手にあって・・」
「綾瀬がお前の隠したデジカメを持っていたのか?」
「あぁ、最初からスパイだってばれていたみたい。」
「それで?」
「ああ、デジカメを取り返して、少し脅せば口を封じられると思って、とびかかった。」
「で、そのあとは」
「ふっと綾瀬が消えたと思ったら、そのまま二人でもつれて、段差の下に落ちた。」
「で、脱臼してリタイヤしたのか。」
「ああ、綾瀬が躓いたのを私が助けようとして・・と言ってかばってくれたよ。」
「綾瀬が消えたと思った・・のか?」
「ああ、おかしいんだよ。確実に前にいたはずなんだけど、落ちる寸前は横にいた。」
俺の時と同じだ。綾瀬が消えたあと、とんでもない衝撃が来てそのまま気を失った。綾瀬にやられた?何をされた?全く分からない。気が付いたら船の医務室だった。でも、きっと伊吹も綾瀬にいいようにやられたんだ。
綾瀬有栖、一体何者なんだ。あいつ、暴力事件のことにも触れた。すべてを知っている口ぶりに思えた。
「櫛田と綾瀬は何か特別な感じは?」
「なにもないなぁ。さっきも言ったけど、単に仲のいい友達かな?Cのベースキャンプにも二人で行ってきたって言ってた。お肉が美味しかったと嬉しそうに話していたよ。」
確かに一緒に来ていた。櫛田が綾瀬の下には見えなかった。というか、櫛田の表情、読めないからわからない。綾瀬は特に何かを発することはなく、椎名のこと気にしていただけに見えた。綾瀬については考えすぎか。椎名と綾瀬が繋がっている?いや繋がっていたとしても、単なる友達、親友?だろう。今回の特別試験においてはどうでもいいことか。
Dクラスの結果、やはり、今回の無人島試験、櫛田の策か・・
それにしてもあの写真はどこにある。綾瀬にスリーパーを決めているところの写真だ。確実な暴力行為の証拠。あれを出されると、俺は停学、ペナルティのクラスポイントも引かれる。無人島試験の時の暴力沙汰は試験失格だけで済んでいたが、終了後に出されるとどう判断されるかわからない。一度、綾瀬に聞いてみるしかない。
俺は綾瀬を探した。
「おう、綾瀬、この前はやってくれたな。」
「あら、龍園、思ったより元気そうですね。気を失っていたようですが身体の方は大丈夫ですか?」
相変わらずのすました笑顔だ。可愛いけど・・
「無人島試験では申しわけなかった。少し気が動転していた。」
「まぁ、そういうこともありますね。仕方ありません。」
「で、伊吹のデジカメはどうした?」
「最後に拾得物として、学校に戻しましたよ。あの島に置いておくわけにもいかないでしょう。」
まずい。中の写真を何とか手に消しておかないと、何が起きるかわからない。
「そ、そうか。戻してくれたんだな。Cクラスが購入したものだから気になっていたんだ。あ、ありがとな」
「どういたしまして。」
「写真は消してあげたわ。」
すれ違う時に小さな声で言って、立ち去った。
助かった。あいつに絡むときはもっと細心の注意が必要か。
あいつが黒幕?まさか、あんなかわいいのに黒幕はないな。ただ、黒幕に繋がっている気がする。
龍園君。相変わらず、少し抜けています。
「かわいい子に悪い子はいない」
なんて言うのが深層心理に刻み込まれているように、有栖と由佳を疑いません。
可愛い奴です。
船上試験の準備をしているところです。お楽しみに