どう終わらせるのか、彼らは何をするのか・・・
やはり桔梗ちゃんが動きます。
船上試験1回目のグループディスカッションの時間に合わせ、私はダイヤモンドグループの指定部屋に向かった。
「櫛田さん、本当に優待者はわかっているの?」
同じグループである平田が歩きながら聞いてくる。
「わかってるよ。」
「ねぇ、平田君、この試験、私に任せて欲しい。」
「はなからそのつもりだよ。困ったことがあったら相談してほしい。櫛田リーダー。」
平田からもリーダーと呼ばれ始めた。リーダーって呼ばれるの、すごくいい。
ダイヤモンドグループのメンバー全員が集まった。そうそうたる顔ぶれだ。Aクラスから葛城君、神室さんを含めた4人。Bクラスからは神崎君、一之瀬さんを含めて4人、Cクラスからは龍園君、山田君を含めた4人、そしてDクラスは平田君と私を含めた4人の計16人だ。それぞれクラスごとにかたまって席についている。
「みんな集まっているね、時間になったし、そろそろ始めようか。」
こういう場でも先に言葉を発することができるようになってきた。
「聞いていると思うけど、まずは自己紹介しようよ。」
「けっ、そんなもんしなくて、わかるだろ」
龍園君の機嫌が悪そうだ。
「でもね、説明の時、自己紹介をって言われたよね。これやらないと、ペナルティが課せられるかもしれないけど・・・どうする?」
「わかったよ」
「じゃ、私から・・Dクラスの櫛田桔梗です。よろしくお願いします。」
私から簡単な自己紹介、と言ってもクラスと氏名を言うだけの簡単なものだ。そして順番に全員が自己紹介をした。
「さて、じゃ、このディスカッションをどうやって進めるかだけど・・一之瀬さん、リードしてくれないかな。」
「みんなOKならいいよ。」
一之瀬さんがどのように場を仕切るのか、彼女のまとめあげるスキルは大したものだと感じている。事情があってリーダーからは降りたらしいが、神崎君をリーダーとして、そのサポートをしながらBクラスの要となっている。いろいろと勉強させてもらおう。
「じゃ、みんな。この試験でわからないことはないかな?」
一瞬でみんなの目を集める。
「基本は人狼ゲームみたいなもの。優待者が誰かを当てればいい。だよね?龍園君。」
「あぁ、そうだ。情報を集め、まずは1人の優待者を暴き出す。」
「それじゃ、この試験の鍵となるのは?葛城君はどうかな?」
「いろいろとあるが、最も気を付けなければならないのは裏切者、いや裏切り行為だ。」
「やっぱりそうだよね。」
うまい。この試験の肝となるところを、わかっている人に話させる。これで、ほかの人も同じ意識にしている。まずは「同じページに」というところか。
その後、結果1から4までを簡潔に説明した。そして「裏切り行為」についても皆の意識を統一するように、会話を進めながら説明した。
「で、一応、各クラスがどのような姿勢で臨むのか、もう決まっている?」
「Bクラスはどうするんだ?人のを聞くなら、まず自分から言えよ」
龍園君が早速かみついた。
「うん。いいよ。神崎君いい?」
「ああ、俺たちBクラスは、ディスカッションには参加しない。」
場が荒れそうな感じだ。
「けっ、なるほどな。常套手段だな。」
頭が追いつかないメンバーが大半だ。
「と、言うことで、Bクラスは参加せず、沈黙を貫きます。櫛田さん、ごめんね。」
と言って、唇の前で指でバツを作るという可愛い仕草で口をつぐむ。
「仕方ないか・・」
どんな戦術で来ようと問題はない。もう、既に試験は終わったも同然だ。あとはどう終わらせるかだけだ。
「神崎君、Bクラスは結果2を狙っているの?」
聞いてみるが、乗ってこない。
「優待者のみが100万ポイントを確保。クラスポイントに変化はない。さすがクラスポイントに余裕のあるBクラスだ。」
葛城君が感心したように“不参加戦術”を説明する。
「みんなごめんね。Bクラスが沈黙するってことなんで、他のクラスも話せなくなるよね。」
場は死にそうだ。ならきちんと終わらせよう。
「ここで私達の戦術を話すと、Bクラスだけが得をしているようになるから、私達、Dクラスも沈黙かな。」
平田の顔を見ると頷いたので、私も頷き返した。
その後、もんもんとした暗い雰囲気の中、1時間の最初のディスカッションタイムが終わろうとしている。頃合いを見計らって、解散となる前に私から切り出した。
「ねぇ、この試験の進め方について、各クラスの代表で話し合いたいんだけど・・どうかな?」
「この状況で何を話そうと言うんだ?」
「ああ。葛城の言う通りだ。Bクラスは沈黙する。これは動かせない。」
「そうだよね。でも、オフレコってやつよ。リーダー同士で腹を割って話せば各クラスの意思もしっかりと伝わると思うよ。ひょっとしたらWin-Winで終われる道筋もあるかもしれないじゃない?」
Aクラスの神室さんが、葛城君の小脇をつついている。
「まぁ、時間はあるから、Aクラスは付き合おう。」
「葛城がそういうなら・・一之瀬、いいな?」
「うん。神崎君の思うように進めて。私はサポートするから。」
「龍園君はどうする?3クラスが集まって何が話されるか不安じゃない?」
「けっ、お前たちが集まったところで何も変わらない。が、俺達も出てやるよ。」
「ありがと。」
笑顔で礼を言った。龍園君の顔がさらに不機嫌になるが、全クラスを集めることができた。
「じゃ、一時間後に、もう一度この部屋に来てくれるかな?各クラス2人ぐらいがいいと思う。Dクラスは私と平田君で参加するよ。」
「みんな、集まってくれてありがとう。」
私は笑顔の仮面をはりつけて、集まった生徒に声をかけた。Aクラスから葛城君、神室さん。Bクラスから神崎君、一之瀬さん。Cクラスから龍園君、金田君。そしてDクラスからは私と平田君。いまから、船上試験を終わらせる。あらかじめ電話をご主人様と繋げてある。
「みんなのことだから、自分のクラスで誰が優待者かもうわかっているよね。」
顔を見渡すと、全クラス、確認済みのようだ。ご主人様の言っていた通りだ。私はご主人様の書いたシナリオ通りに進めればいい。
――――――――――――――――――
今朝、ご主人様に呼び出されて、そのシナリオを聞いた。そして、9月にはCクラスに上がれるだろうと。また、それを私が達成したことになると。身体が歓喜に震えた。
今日、これからの動きを徹底するため、お昼前にクラス全員を集めた。
「今日、一回目のグループディスカッションの後、各クラスリーダーと話し合いを持ちます。その話し合いの途中、私からメールを受け取った人は、その内容を確認し、学校に連絡してほしい。」
何を言っているのかわからないといった感じで皆がざわついた。そしてこれからが一番大事。
「実はBクラスがメインとなってDクラスもそれに協力して、すべてのグループの優待者をあぶり出したの。」
皆が驚く。当然だ、私もご主人様から聞いて驚いた。
「この試験を結果1で終わらせて、大量のプライベートポイントを稼ぎたい。で、今回入るプライバートポイントの多くをクラス預金に回したいと思う。」
皆がざわつく。
「クラスポイントが動かないんじゃ。」
「Cクラスを追撃できるチャンスを棒に振るのか?」
やはり思った通りだ。頭のいい生徒から当然の様に反対が出る。
私は落ち着いて現状を解説し、これほど多くのプライベートポイントが稼げる機会はないかもしれないこと、プライベートポイントがいかに大切なのかを説明した。
「優待者はどうするんだ?うまくすれば、個人として、かなりのプライベートポイントがもらえるはずだ。」
これも当然の質問。
「有栖、どうしたい?」
私が有栖に問いかけると皆がざわつく。
「みんな、これは秘密よ。絶対に他クラスに知られちゃダメ。有栖は優待者なの。」
「桔梗、私が得たプライベートポイントはすべて供出します。この作戦があって初めていただけるものでしょう。私の成果ではなく、皆の成果です。」
有栖も打ち合わせ通りに皆の説得方向に動いてくれる。
「もう一人いるけど、すでに了承してもらっている。みんな。いいかな?」
「桔梗が言うなら・・」「でも、1人50万でしょ・・」「本当にできるのか」
やはり疑心暗鬼になってしまう。何かそれを突破する糸口を探すが、悠長に考えている時間もない。焦りが頭を支配していく。
「おれは櫛田の戦法に賛成する。協力する。」
須藤が立ち上がり大きな声で宣言した。皆が須藤を見つめる。
「この作戦があってもらえるものだ。よく聞くと、ほかの結果になるとプライベートポイントは入ってこない。せいぜいクラスポイントの分だけだろ。クラス預金のこともあるが、多少は俺達にも分け前が回ってくる。だろ。」
「須藤君・・」
こんなに頼りになるんだ。無人島試験でもずっと私のそばにいてくれた、気を使ってくれた、辛いときは励ましてくれた。それにクラス預金の流れも買えたのは須藤の言葉だ。彼の言葉で皆の気持ちがまとまった。
そんな経緯で、Dクラスを一枚岩にしてきた。
ご主人様達のシナリオを確認しよう。
聞かされていないけど優待者はわかったらしい。
結果1で終わらせるよう、提案する。
提案に乗らない場合、そのクラスの優待者のいるグループを結果3で終わらせる。
脅しながら、結果1で終わらせるコンセンサスをとる。
契約書でA、B、Cからプライベートポイントを私に譲渡させる。
契約書でDからはBへ譲渡する。Dクラスの理解を得ること。
私に集まったプライベートポイントは9月2日にご主人様に渡す。
――――――――――――――――
「これは、Dクラスからの提案なんだけど・・・この試験、みんなで結果1を目指さない?」
「けっ。何の話かと思えば、そんな夢物語かよ。ばからしい。」
龍園君は相変わらずチンピラの様な言動をとる。
「その意図はなんだ?もともとBクラスは結果2狙いだが?」
神崎君はいつも思慮深い。しっかりと意図を理解しようしている。それに、神崎クラスはクラスポイントに余裕がある。リスクを冒して結果3の様にクラスポイントを増やす策を選ぶ必要がない。
「結果1だと、クラスポイントが一切動かない。それを捨てろと?」
葛城君は、現状をしっかりと把握している。今現在、クラスポイントをもっとも多く持っているのは神崎クラスだ。葛城君としては、8月中にこれを逆転しないと、立つ瀬が無くなる。
「うん。一番難しい結果だし、クラスポイントは動かない・・・でもね、大量のプライベートポイントが手に入るの。」
「そんなことはわかっている。ただ、Cクラスは賛同できねぇ。俺たちは優待者を見つけて結果3を目指している。」
龍園クラスはじり貧だ。なんとかクラスポイントとプライベートポイントを確保したいんだろう。
「ねぇ、龍園君。今、優待者を見つけてって言った?」
首をかしげながら、可愛い笑顔で龍園に問いかける。
「あぁ、きっと優待者には法則がある。それをこの期間中に見つける。」
「ぷっ・・・は、は、はぁあ」
「何がおかしい。」
「あぁ、ごめん。おかしくて・・法則って・・・ねぇ、龍園君、今頃何を言っているの?」
「私はもうこの試験の根幹にたどり着いたよ。」
この言葉に参加者に動揺が広がる。
「そのうえで、みんなに提案してるんだ。クラスポイントを諦めて、プライベートポイントを稼ぎませんか?と」
「そんな手に引っかかるか。まだ初日。一回目の討議が終わったばかりだ。」
「まぁ、いいわ。」
「みんな、聞いた通り、優待者は見つけた。あとは貴方達、クラスリーダーの判断に任せるよ。私はDクラスの生徒が優待者じゃないグループを結果3で終わらせることができる。私のクラスが大きくクラスポイントを稼ぐことができる。そのうえで、この提案をしてる。」
「じゃ、まずはCクラスから。龍園君、私達と一緒に結果1を目指しませんか?」
「あほらしい。そんな提案、のれるわけないだろ。」
吐き捨てるように答えた。同時に私の端末にご主人様からメールが届く。それを確認し、メールを打つ。
「じゃ、仕方ないね。」
『ダイヤモンドグループの試験は終了しました。』
大きな放送がかかった。龍園の目がカッと見開き、私をにらみつけている。(あぁ、この視線もいいかも)。
「あ~ぁ。私達のダイヤモンドグループ。終了しちゃったね。優待者は誰だったんだろうね?」
意味ありげに龍園君の顔を覗き込むと、目をそらされてしまった。
「つぎ、神崎君、私達と一緒に結果1を目指しませんか?」
一之瀬さんが何か言いたそうであるが、じっと神崎君を見つめるだけで言葉を発しない。もうリーダーではない。しっかりと神崎君のサポートに回っている。神崎君が一之瀬さんの目を見て頷いた。
「あぁ。俺たちBクラスも結果1を目指す。」
「ありがとう。」
「最後、葛城君、私達と一緒に結果1を目指しませんか?」
「いいや。俺たちもCクラスと同じだ。結果1では満足できない。」
葛城がそう答えると、隣の神室が狼狽える。
「葛城君、ほんとにいいの?な、なんかこれ、まずい気がする。」
Cクラスの時と同じ様に端末にメールが届く。それを確認し、メールを打つ。
「じゃ、仕方ないね。」
『エメラルドグループの試験は終了しました。』
大きな放送がかかった。
「う、うそだろ。」
葛城の口から小さな声が洩れた。エメラルドグループにはAクラスの優待者がいる。
「先に言った通り、私はすべての優待者を知っている。Dクラスで独占もできる。ただ、大量のプライベートポイントを稼ぐ機会はそうそうない。」
「もう一度、聞きます。龍園君、私達と一緒に結果1を目指しますか?」
「そんな罠にひっかかるか、きっと裏がある。」
履き捨てるように答えた。端末にメールが届く。それを確認し、メールを打つ。
「じゃ、仕方ないね。」
『ルビーグループの試験は終了しました。』
大きな放送がかかった。
「くっ・・ま、まじか。」
愕然とし、震えながら龍園君がつぶやいた。
「嘘なんてつかないよ。ひょっとして、Cクラスの優待者のグループ、二つとも終了しちゃった?私の提案に乗らないと、Dクラスの一人勝ちになるわよ。」
「わ、わかった。結果1で終わらせよう。」
龍園は力なく答えた。
「葛城君、もう一度聞きます。私達と一緒に結果1を目指しませんか?」
「ああん、もう。わかった。Aクラスも結果1だ。」
返答しない葛城君にかわり、神室さんが答えた。
私は、有栖に渡された契約書をそこに居る皆に見せた。
1,優待者の情報は試験終了30分前に連絡し、各グループに配属された生徒は、その優待者の名前を学校に連絡し、結果1で終了させるものとする。
その際、結果1以外で終了させた場合、その生徒の所属するクラスは他の3クラスに500万ポイントを譲渡する。
2.本試験で獲得したプライベートポイントの7割を現Dクラスの櫛田桔梗に譲渡する。
3.契約締結以降、Dクラスの生徒が、残グループの試験を結果3で終了させた場合、Dクラスは該当クラスに対して1000万ポイントを譲渡する。
4.契約締結以降、Dクラス以外の生徒が、残グループの試験を終了させた場合、該当クラスは他の3クラスに500万ポイントを譲渡する。
5.ポイントの譲渡は、学校からの振り込みのあった日から3日以内に一括で支払うものとする。
6.クラスの生徒全員の持つプライベートポイントを合わせても、支払いに達しない場合、個人の持つプライベートポイント全額を譲渡するとともに、毎月一人当たり3万ポイントを卒業まで払い続けるものとする。
7.これら契約の内容は、他クラスへ口外しないこととする。漏らしたことが発覚した場合、クラスリーダーは櫛田桔梗に1500万ポイントを譲渡することとする。
「なるほど、これなら、うかつな動きをすると、大きなペナルティが跳ね返ってくる」
「そうですね。クラス全員に徹底して、くれぐれも裏切りが出ないよう、口外しないようにくぎを刺さないと。」
それを見たクラスリーダーたちは口々に言った。
「あ、Bクラスは最初から賛同してくれたから、ここの7割は5割に変えます。おそらく500万ポイントくらいは残ると思います。」
「あぁ、十分だ。」
神崎が言うと、一之瀬も頷いた。
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神室Side
なんだか、櫛田さんが自発的に動いているようには感じない。言葉の端々に不安が見え隠れしている。確かにプライベートポイントは大量に稼げる。葛城君の勘の悪さからすでに50ポイントを取られた。やはりこれは提案に乗っておくべきところだ。
全クラスの同意が取れた後。櫛田さんから契約書が提示された。
「こ、これって」
間違いない。有栖さんが作った契約書だ。ペナルティを途方もないレベルにあげ、ぬけのないように練り込まれている。
そうか、わが支配人はこの試験の根幹にたどり着き、櫛田を使ってプライベートポイントをかっぱぐつもりなんだ。
「すごい、すごすぎるでしょ。」
つまり私はAクラスから誰一人として裏切ることのないように言いくるめてまとめあげればいい。
身体が震える。有栖さん・・すごい・・もっと知りたい、もっと教えて欲しい。
――――――――――――――――――
この契約でもって、残っている5グループは結果1を目指さざるを得なくなる。すでに3グループ分は結果3で終わらせた。150クラスポイントの増加だ。あとはDクラスを全員集めて、Bクラスへの譲渡も含めて署名をもらおう。
いい感じで進められている。他のクラスが私にプライベートポイントを譲渡する契約は平田君以外は知らない。あとで適当に言いくるめておこう。
それにしてもご主人様達ってすごい。ある程度のクラスポイントをDクラスが稼ぎ、大量のプライベートポイントを学校に吐き出させた。
9月から私達はCクラスになる。
あ~ぁ。試験終わっちゃいましたね。
龍園君。さんざんです。今作での龍園らしく、少し抜けています。
桔梗は大量のプライベートポイントを稼ぎますが、すべて上納予定です。
由佳もDクラスから譲渡されていますね。
ひとまず、船上試験は終わりますが、まだあのイベントが書かれていません。
お楽しみに