メンバーの選考、その全体練習。
原作では桔梗ちゃんが裏切者として暗躍しますね。
今作においては、誰がその役割を担うのか・・・
93. 体育祭の準備
出走メンバーの決め方に一悶着あったが、須藤の提案通り、体育祭の準備として体力測定が行われた。持久力、反射神経、瞬発力なんかを見るため、反復横跳び等、みんながすぐにできること、一度はやったことのあることを全員で行った。
清隆は“平均よりちょっと上”あたりを狙っているようだが、その平均を聞いているのが須藤では相手が悪い。握力では65㎏とクラスで3番目の数字だ。平均を“60㎏ちょい“と聞いたらしい。私の方は、上から5番手以内を狙いながら慎重に進めた。
由佳は一生懸命にやって予想通りの平均より少し下。愛里も同じようなところにいる。愛里と由佳の身長差は10センチ以上あることを考えると、由佳は頑張っていることがわかる。女子の方は小野寺と堀北がいつもトップになっている。たまに松下がそこに食い込むことがあるが、そもそも実力を隠しきれていない。
すべてのデータを池の作ったプログラムを用いて、平田が解析したが、平田の解析能力の高さと池のプログラミングスキルには驚かされた。
授業の時間割もこの時期だけは変更されており、自由に使える時間、と言ってもすべてのクラスがその時間を体育祭の練習に割いているが、毎日1時間は確保されている。私達Cクラスも例にもれず、毎日各競技の練習に追われた。
男子は清隆が、女子は小野寺が徒競走の指導をしている。スタートのタイミングから、スタート直後の姿勢。スピードが乗った後の姿勢について、わかりやすい解説と見本を見せて個人指導を行っている。多分、スパイクを履いて本気に100mを走れば、清隆は9秒台。私は10秒台で、日本記録はもとより、オリンピックでも活躍できるだけの資質は持っている。男子で言えばおそらく高円寺もそのくらいの走力を持っているはずだ。
私は二人三脚の指導員を任されている。これも全員参加が必須であり、私は推薦競技である男女二人三脚にも清隆と出ることになっている。この競技、どれだけ頑張っても、脚の遅い方に引っ張られる。脚の遅い人は、脚を速く回転させることができない。速く走れる人にはなぜもっと足を回転させられないのかわからないものだ。徒競走の練習でその回転に慣れることで、底上げは可能だろう。組み合わせは、走力が拮抗している者同志を組むのが鉄則だ。そうすれば速い者の組は勝つことができる。
ふと見ると、堀北と長谷部が二人三脚の練習に入るようだ。片足をたすきで結んでトラックに立った。
「行くわよ。」
「結んである方からね。」
「そうよ。」
「せーの」
と最初の2,3歩は揃った。でもその後が続かない。足がもつれて転倒してしまう。
「どうして合わせられないの!」
堀北が罵声を浴びせる。
「足の速い方にあわせられるわけないでしょ。」
負けじと長谷部も声を上げる。
「合わせるだけでしょ。速い方のリズムに合わせるのは当たり前でしょう。走力なんて関係ない。そんなこともできないの!」
堀北はできない者の立場になって考えられない。出来ないということがわからないのだ。
「そんなことって・・・」
長谷部も顔を赤くして感情的になっている。一度、堀北ときちんと話してみるか。
「ね、堀北さん。私と一度組んでみませんか?これでも指導員を任されています。」
「いいわ。」
「じゃ、よろしくね。」
しゃがんで、たすきで足を結んだ。
「このくらいの強さでいい?」
脚を少し動かして、結び具合を確認すると、堀北頷いた。
「じゃ、やろうか。長谷部さん、合図よろしくね。」
お互いに肩を組んで、合図を待つ。
「よーい、どん」
結んだ脚から一歩目を出す。まずは堀北のペースに私が合わせる。なるほどいい感じで速い。周りからも「はやっ」という声が聞こえる。
途中から、私のペースに切り替えていく
「ちょっと」
「まだ上げますよ」
「うぅっ、ちょっと。」
「合わせるのは難しくないんでしょ。そんなこともできないの?走力なんて関係ないんでしょ。」
意趣返しとばかりに、先ほど長谷部に浴びせた言葉を使う。結局、最後は堀北が足をもつれさせた。
「堀北さん。わかった?これがあなたのしたこと。もっと譲歩することを覚えた方がいい。」
「くっ」
堀北は悔しいのか顔を背けた。
「少しは変わるかと思って見ていたけど、あなたは4月から何も変わっていない。」
「大切なのは相手を見ること、理解することでしょ。」
最初は清隆も期待した。でも、その期待に応えてもらえなかった。そのため、一切の接触を絶ったという経緯がある。
「孤独なままでは誰もついてこないわよ。」
私も吐き捨てるようにいって、その場を後にした。
そのあと、堀北は長谷部に謝罪し、もう一度練習することになった。長谷場の走力に完全に合わせることにより、十分な速さとなった。
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堀北Side
今日、二人三脚の練習で、綾瀬さんに叱られた。
「周りに譲歩することを覚えろ。」
「他人をよく見て、理解しろ。」
いう通りだ。一番きつかったのが
「何も変わっていない。」
と言われたことだ。自分では変えようと努力し、少しは変わったと思っていた。でも、綾瀬さんには全く見てもらえていなかった。
「変わってないか・・・」
独り言ちて、周りを思い返してみた。
須藤君・・最初はクラス全員から白い目で見られるほどの嫌われ者。でも、櫛田さんに個人授業をお願いしてから、日を追うごとに変わっていった。無人島試験のあとは皆から好かれるような信頼できる生徒になっている。
池君・・こちらも劣らず嫌われ者だった。中間テストで私が教師役だったのに、ろくに勉強もせず赤点を取って、櫛田さんに助けてもらった。無人島試験ではアウトドア生活のスキル、今回の体育祭ではプログラミングのスキルを発揮した。今や彼を出来損ないと呼ぶ生徒はいない。
佐倉さん・・いつもおどおどしていて目立たない女子だった。でも6月の中頃から眼鏡をはずし、姿勢を正すようになった。まさか現役のグラドルだったとは・・皆が驚いた。みんながちやほやしたが、すぐに収まり、グラドルであることを意識しなくなった。いつも自然体で、どんなことでも頑張っている姿を男女ともに認めるようになった。最近では男子とも仲良く話すようになっている。
綾小路君・・全く影の薄い生徒だった。でもかなりの切れ者で、兄も認めていた。本当は一緒に学校生活を楽しみたかった。でも、私のプライドが歩み寄りを蹴散らした。決して前に出ようとしない。いつも櫛田さんや綾瀬さんの後ろに控えている。無人島試験では私たちのクラスを勝たせた立役者だ。どういうわけか、男子からも女子からも話しかけられ、無表情であるが、思慮ある返答をしているらしい。今更力になってとはいえない。
軽井沢さん・・明るい生徒。いつも周りに人がいてにぎやかだ。体育祭のメンバーについて櫛田さんの言葉に反対するとは思ってもいなかった。これまでの“適当にやり過ごす女”だったら、あの行動にはでない。あの時私も嫌悪感は持ったが、どうでもいいと思っていた。私こそ“適当にやり過ごす女“だ。このクラスで櫛田さんに反対できる生徒は彼女だけ。その意見をもとに、修正してくるはず。そしてクラスがまた強くなる。
みんな変わったんだ。
私はクラスに対してどう貢献した?
私は自分をどう変えようと努力した?
櫛田を引きずりおろして、リーダーとなったとき。誰か私を助けてくれるだろうか、サポートしてくる人はいるだろうか。一人でできることではない。誰か仲間を見つけて・・・櫛田が落ちれば、あとは瓦解する。その時に声をかければ何とかなるはず。平田君と軽井沢さん。この二人さえ引き込めれば何とかなる。
まずは、この体育祭。多分自分たちのクラスが学年1位を取れると思っている。ここで躓かせようか。そのためにも彼に声をかけてみようか。うまくいかなかったけど宝石試験でも相談したし。
もうすぐ、体育祭の出走順が決まる。なんとかそのメンバーリスト作成に絡んでおきたい。
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有栖Side
体育祭まで残り一週間となった。ホームルームで櫛田が教壇に立ち、大きく深呼吸をして話し始めた。
「みんなちょっと聞いてくれるかな。」
「体育祭の出場メンバーのことだけど、やっぱり実力重視でいきたいと思う。」
「軽井沢さんの意見を軽く見ているということでないの、ただずっと練習してきたからわかると思うの、自分が勝てそうなのかどうなのか。」
「でもダメだったとしても一生懸命練習した。そのみんなの頑張りにこたえたい。」
「負けて負わされるペナルティ。勝って得られるプライベートポイント。勝てるかも思うとどうしても惜しくなるよね。」
「だから、負けてもプライベートポイントは減らない。勝った人から回してもらう。得られたプライベートポイントの4割をクラスに供出してもらう。そのプールとクラス預金から負けた人のプライベートポイントを補填することししました。」
クラスメートの一人がつぶやく。
「いや、プライベートポイントだけがペナルティじゃなく、テストでマイナス10点が大きすぎるよ。」
「そうね、そこは死ぬ気で頑張ろう。みんながサポートする。絶対に赤点なんて取らせない。」
「プライベートポイントは減らないからと言って手を抜かないで欲しい。プライベートポイントを獲得した人からペナルティを払ってもいいと思ってもらえるよう、懸命にやってほしい。」
櫛田が軽井沢に視線を移す。
「桔梗、ありがとう。納得した。みんな一生懸命に練習した。私も頑張るから、みんな・・頑張ろうよ」
軽井沢が立って、みんなに声をかけた。もう櫛田の出した方針に反対する者いない。
あの時の軽井沢の言葉に櫛田も納得したんだろう。そして考え抜いて答えを出した。清隆の考えている通りに櫛田が成長している。
「これからメンバーリストを見せます。平田君、池君と堀北さん、そして私がみんなの実力から作り上げたの。大事な情報なので、自分の出走順を覚えて頂戴。撮影は禁止よ。あと私語も控えてくれると助かる。」
「このあと、このリストを先生に提出します。私達もメモを取っていないので自己責任で覚えて頂戴。」
櫛田が競技とメンバー表を出すと、ひそひそと声がきこえる。確かによくできている。私は脳裏にそのリストを焼き付けた。一通り皆が確認したところで、櫛田がそのリストを封筒に入れ、職員室に向かった。
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龍園Side
「またせたな」
「いいえ、ほぼ時間通りよ。」
「世間話はいい。話はなんだ。」
「これ、私達の出走リストよ。」
「ははん。宝石試験の時といい、今回といい。おまえ、何を考えているんだ?」
「今はあいつをリーダーから引きずり下ろしたいだけ。」
「で、クラスを裏切って情報を流してまで、辛酸を舐めさせたいと。」
「ええ、その通りよ。それで、勝算は。」
「残念ながら、今回は運動能力が最後にものをいうイベントだ。リストがあったところで確度は高くない。特に運動バカの揃ったお前のクラスだと小細工は通用しねぇ」
「そ、そうよね。」
「でも、ま、何とか善処してやるよ。」
「あ、ありがとう。」
「ところで、てめぇのクラスの黒幕は誰なんだ。リーダーの裏に指示している奴がいるだろう。」
「黒幕?一体何のこと?誰かが裏で仕切っているというの?」
「はぁ?あの今のリーダー一人がやっていると思っているのか?」
「ち、違うの?黒幕だなんて・・・」
「ち、孤立しているお前に聞いたオレがバカだったようだな。もういい。帰るぞ。」
堀北か。もっと自分を持っている奴だと思っていたが、大した器じゃないな。周りが見えていない。あまりに櫛田に気を取られすぎで、あいつが本当にクラスの方向性を決めていると思っていやがる。
自分がリーダーになる?笑わせるな。カリスマ性もなく、仲間もいないあいつにリーダーが務まるわけがない。それにすら気が付かないほど焦っているのか?それとも櫛田との間に何か確執があるのか?
それにしても櫛田かぁ、面倒な相手だ。
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「り、龍園君。ちょっと話があるんだけど。」
「はぁ?あ、お前はAクラスの白波だな。」
「え、どうして私の名前を?」
「忘れもしねぇ。無人島試験でひっかけられたからな。」
「ひょっとしてリーダー当てのこと。」
「それ以外にお前の名前を記憶に刻む必要なんてねぇよ。」
「そ、そうだよね。」
「で、何の用だ。」
「あ、こ、これ、うちのクラスの出走リストなんだけど。」
「まったく、どいつもこいつも・・」
「え、何か言った?」
「なんでもねぇ。で、何がしたいんだ?」
「神崎君を引きずり下ろしたい。リーダーには向かないって思わせたい。」
「はぁ~ぁ?で、対価は?」
「え、対価?」
「ものを頼むんなら、当然その対価は発生する。俺がお前に協力したら、お前は俺に何をくれるかってことだ。」
「そ、そうだよね。」
「で、お前は俺に何をくれる。」
「わ、わ、私の身体を好きにしていい。」
「はぁ?はっはっ」
「笑わないでよ。」
「お前のその貧弱な身体をってか。笑わせる。」
「だ、だって私何もお返しできない。」
「はぁぁ。ま、本気だってことはわかった。ふぅぅ。そうだ、無人島試験のことを教えろ。リーダーは誰だったんだ?」
「あの時ね。私達のリーダーは立川だったよ。」
「呼び捨てか、まぁいい。立川か・・でいつからお前が演技するようになった?」
「金田君が合流した後すぐに、神崎君に呼ばれて。」
「それで?」
「立川にふりをしてくれって。時間になったら占有機のところに行けって。」
「お前たちのクラスで、立川の役割は?」
「ち、どいつもこいつも立川、立川って。」
「何ブツブツ言ってるんだ?立川の役割は?」
「よくは知らない。でも神崎君も帆波ちゃんもいつもあいつに相談してた。」
「何か指示を出していたか?」
「ううん。あくまで神崎が決めてたよ。あいつはいつも陰でこそこそしてた感じ。」
「陰でこそこそか」
「無人島試験の時も、夜にこそっと出かけてた。」
「誰にあったのか知っているか?」
「多分綾瀬さんじゃないかな。クラスも移動したし。成績はいいだろうけど、バカだよね。」
「綾瀬か」
「そうよ、あいつは綾瀬さんしか見ていない。帆波ちゃんもあいつなんてほっとけばいいのに。」
あぁこいつもだめだ。一之瀬のことで頭がいっぱいだ。
とにかく、2クラスの出走リストが手に入った。これをもって、神室と調整し、俺のクラスと神室のクラスの出走リストを作ろう。神室クラスのサポートにはなるだろう。
あらあら、闇に堕ちていきますね。
救いの手は差し伸べられるのか、それとも・・・
更新を一週、忘れてしまいました。