※この作品はR-18です。

チビで爆乳なTSっ娘が、冒険者たちの共用オナホになる話   作:悪友

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初めての冒険

 

 

 血斧団に加入してから3日目の朝。

 僕は2号さんの呼び声で目を覚ました。

 

「──起きなさい。いつまで寝てるつもり?」

 

 冷たい声と共に、布団が剝ぎ取られる。

 僕は目を擦りながら、のそのそと起き上がった。

 窓を見ると、まだ外は薄暗かった。

 

「んぅ……なんですか、こんな早い時間に……」

 

「べつに早くないでしょ。もう夜明けだし」

 

 いや……夜明けの時間って、かなり早くないか?

 この世界の人達は随分と早起きなんだな。

 

 2号さんを見ると、すでに寝ぐせ一つない。

 身支度も終わっているみたいで、早朝だというのに完璧な美少女オーラを放っている。

 それに比べて、僕は全身ボロボロだった。

 

「うっ……なんか、体を動かすと痛いです……」

 

「筋肉痛かもね。昨日かなり激しくヤられてたし」

 

 2号さんの言葉で、僕は昨晩のことを思い出す。

 大浴場で団長に散々イカされ、潮を吹かされて。

 食堂でも膝の上で弄ばれて、みんなに嘲笑しながらオモチャにされてしまった……。

 

 恥ずかしすぎる記憶が蘇ってきた。

 僕は耳まで真っ赤にしながら、枕に顔を埋める。

 穴があったら入りたい。

 すると、2号さんが僕の耳をギュッと摘まむ。

 

「痛ッ……! み、耳を引っ張らないで……!」

 

「さっさとベッドから出て。仕事に遅れる」

 

「し、仕事って……?」

 

「昨日、団長に言われてたでしょ。忘れたの?」

 

 2号さんは呆れたようにため息をつく。

 僕は昨晩の記憶を辿った。

 

 ──そういえば。

 夕食の後、団長が何か言ってたな。

 絶頂しすぎて頭がバカになってたから、うろ覚えだけど。

 

「……えっと、今日はゴブリン退治に行くんでしたっけ」

 

 僕は団長の言葉を思い出しながら答えた。

 たしか東の森でゴブリンが大量発生したらしい。

 近隣の村でも、すでに被害が出ているそうだ。

 事態を重く見た冒険者ギルドは、血斧団に依頼を出してきた。

 

 そして今回は、僕たち慰安係も戦力として参加することになっている。

 あまりにゴブリンの数が多いため、少しでも人数が欲しいのだとか。

 血斧団のメンバー総出で狩りを行うらしい。

 

「そう。だから早く準備しないと」

 

 そう言って、2号さんは僕に何かを投げてくる。

 ずっしりと重たい、光沢のある布切れだ。

 なんだこれ。僕はおそるおそる、それを拾った。

 

「これは……?」

 

「あなたの装備。わたしのお下がりだから、ちょっとサイズは合わないかもだけど」

 

 布を広げてみると、それは革製の胸当てだった。

 胸部をしっかりとガードできる、軽装の防具。

 しかも、かなり軽い。

 

「え……これ、もらっていいんですか?」

 

「どうせ今は使ってないし。その代わり、わたしの足を引っ張らないでね」

 

「あ、ありがとうございます! 頑張ります」

 

 僕はお礼を言って、さっそく装備を着てみた。

 ……うん、なかなかいい感じだ。

 少しキツいけど、意外と動きやすい。

 

「武器はこれを使って。ゴブリンくらいなら十分通用すると思う」

 

 そう言って2号さんは棚から武器を取り出した。

 刃渡り40cmほどのショートソードだ。

 柄には薄紫色の装飾が施されており、2号さんが鞘から引き抜くと、剣先が美しく輝いた。

 

 ……その鋭い輝きを見て、背筋がゾッとした。

 生命を絶つための、研ぎ澄まされた形状。

 あれを使って魔物を殺さなければいけないのか。

 なんだか怖くなってきた。

 

 僕はモンスターと戦ったことがない。

 それどころか武器を握った経験すら皆無だ。

 はたして、実践で活躍できるのだろうか。

 

 不安を覚えながら、僕は武器を受け取った。

 

 

***

 

 

 それから数時間後。

 

 深い森の中を、血斧団の一行は進んでいた。

 先頭では団長が、背中の巨大な両手斧を揺らしながら歩いている。

 その後方を、三十人ほどの屈強な団員たちが追従していく。

 

 僕は集団の後方にいた。

 周囲を警戒してキョロキョロしながら歩く。

 2号さんから貰った防具は頼もしいけど、それでも不安は消えない。

 腰に下げたショートソードが、やけに重たく感じられた。

 

「大丈夫かい? すごく緊張してるみたいだけど」

 

 アーウィンが僕に声をかけてきた。

 治療担当である彼も、集団の後方を歩いていた。

 

 アーウィンは回復魔法を使える貴重な存在で、血斧団の中でも特別な立場にいる。

 前線で戦うことは少なく、主に負傷者の応急処置を担当しているらしい。

 

「すみません……魔物と戦ったことがないので、ちょっと怖くて……」

 

「あはは、大丈夫だよ。ゴブリンは本来、新米冒険者でも倒せる魔物だから。今回は数が多いみたいだけど、みんなで戦えば楽勝さ」

 

 アーウィンの口調は、最初に会ったときよりも随分と柔らかくなっていた。

 慰安係という身分になって以来、彼は僕に敬語を使わなくなったのだ。

 

 その変化に少し寂しさを感じつつも、僕は周囲を警戒し続けた。

 森の中は思いのほか暗く、木々の影から何が飛び出してくるかわからない。

 そんなとき、前方から大きな声が聞こえた。

 

「団長! この先でゴブリンの痕跡を発見しました!」

 

 斥候として先行していた団員だ。

 どうやらゴブリンの手がかりを見つけたらしい。

 報告を受けて、団長が立ち止まる。

 

「何か分かったことはあるか?」

 

「足跡や糞の新しさから察するに、かなり近くにいると思われます。おそらく30匹ほどの小規模な集団です」

 

 斥候の報告を聞いて、団長は口元を歪めた。

 その表情は、獲物を見つけた狩人そのものだ。

 

「へっ、30匹か。ウォーミングアップにもならねぇな」

 

 その言葉と共に、巨大な両手斧を背中から外す。

 刃渡り1メートルを超える禍々しい武器だ。

 それを軽々と片手で支えて、団長は前方を指差した。

 

「行くぞ! 斥候の後に続け!」

 

 団員たちは一斉に動き出す。

 僕も慌てて付いていった。

 やがて風に乗って、獣じみた咆哮が聞こえ始める。

 

 それは間違いなくゴブリンの声だった。

 茂みの向こうに、緑色の小さな人影が見える。

 想像以上に醜い外見に、思わず息を飲む。

 

 身長は1メートルほど。

 筋肉質な体つきで、手には粗末な斧や棍棒を持っている。

 赤く光る目には残虐性が宿り、黄ばんだ牙をむき出しにして唸っていた。

 

「クソッタレどもが。片っ端から潰してやる」

 

 団長の声が響く。

 その瞬間、血斧団のメンバーが一斉に襲いかかった。

 

「グギャァァァッ!」

 

 最初のゴブリンが、団長の斧で真っ二つになる。

 血しぶきが飛び散り、内臓が地面に零れ落ちた。

 その光景に僕は思わず目を背けてしまう。

 

 しかし顔を向けた先では2号さんが戦っていた。

 二振りの短刀を両手に持ち、猫のように素早く動いている。

 そしてゴブリンの背後に回り込むと、死角から首筋を狙い、確実に致命傷を与えていく。

 

 その姿はまるで暗殺者だ。

 2号さんって、あんなに強かったのか。

 

「グオォォォッ!」

「ギィィィッ!」

 

 断末魔の悲鳴が次々と上がる。

 他の団員たちも、それぞれの武器でゴブリンを葬っていく。

 剣で、槍で、斧で、様々な武器がゴブリンの体を切り裂いていった。

 

 僕は呆然と、戦いを眺めることしかできない。

 戦闘経験のない僕では、この争いに加わることなど到底無理だった。

 あまりにも凄惨な光景に、足が竦んでしまう。

 

 戦いは一瞬で終わった。

 もちろん血斧団の圧倒的な勝利だ。

 

「おい3号! こっちに来い!」

 

 団長の声で僕は我に返った。

 周囲には30匹のゴブリンの死骸が散乱している。

 生き残ったゴブリンは一匹だけ。

 それもロープでグルグル巻きにされていた。

 

「は、はい……いま行きます」

 

 僕は震える足で歩き出す。

 赤く染まった地面は足元がトロトロしていて、歩きにくかった。

 緊張のせいか、手足の感覚がマヒしている。

 

「心眼を使ってコイツの思考を読み取れ。なにか有益な情報が得られるかもしれん」

 

 団長は返り血を拭いながら言った。

 そっか。ゴブリンは知性の高い生物だ。

 つまり心眼の対象になりうる。

 一匹だけ生け捕りにしたのは、僕に情報を読み取らせるためだったんだ。

 

「えっと……頑張ってみます」

 

 気を取り直して、僕はゴブリンに近寄った。

 その瞬間、ゴブリンの心の声が伝わってくる。

 

《ニンゲン共メ……。コンナヤツラ、王ガイレバ、アッサリト……!》

 

 不気味な思念が、脳内に直接響いてきた。

 人間の思考とは違う、獣じみた感情の塊。

 憎悪と恐怖が混ざり合った、混沌とした思考だ。

 

《北ノ谷マデ逃ゲレバ……! 谷マデ戻レバ、王ガ倒シテクレルノニ……!》

 

 北の谷──そこにゴブリンの巣があるのか。

 それと『王』と呼ばれる存在がいるらしい。

 おそらく群れのリーダーだろう。

 

 僕は読み取った情報を団長に伝えた。

 すると、彼は嬉しそうな笑みを浮かべる。 

 

「王ってのはゴブリンの上位種だろうな。こりゃあ久しぶりに骨のある相手と戦えそうだぜ」

 

 団長は生き生きとした表情を浮かべた。

 血に飢えた肉食獣を思わせる、危険な笑みだ。

 戦闘狂とは、まさに彼のための言葉だろう。

 

「全員、北へ向かうぞ!」

 

 団長の号令と共に、一行は移動を再開した。

 僕は不安を覚えながら団長の背中を追いかける。

 血斧団としての初陣は、まだ始まったばかりだ。

 

 

***

 

 

 谷への道中、何度もゴブリンの群れと遭遇した。

 しかし、血斧団の敵ではない。

 圧倒的な戦力差で、次々と蹴散らされていく。

 

 僕は後方で、アーウィンと共に戦場を見ていた。

 血飛沫と断末魔の悲鳴。

 内臓が飛び散り、肉塊が地面を彩る。

 まさに地獄絵図と言っても過言ではない。

 

「ギィィャァァァ!」

 

 また一匹、団長の斧で真っ二つにされた。

 頭部から股間まで、まるで豆腐を切るように真っ直ぐに切断される。

 僕は思わず目をギュっと閉じた。

 

「ちょっと、ボサっとしないで」

 

 近くにいた2号さんが、叱責を飛ばしてきた。

 彼女は表情一つ変えず、淡々とゴブリンを殺している。

 猫のように素早く動き、敵の死角を突いては、背後から一撃だ。

 その洗練された動きは、美しくも恐ろしかった。

 

「ご、ごめんなさい……」

 

「戦えないなら、どっかに隠れてて。いくらゴブリンだからって、油断してると死ぬよ?」

 

 至極真っ当な忠告だった。

 僕は身を縮めて、なるべく戦いから距離を取る。

 

 ──しばらくして。

 僕たちは、谷の入り口に辿り着いた。

 

 灰色の断崖が、両側から聳え立っている。

 その狭間には巨大な洞窟の入り口があり、松明のようなものが設置されていた。

 

「あれがゴブリンの巣窟か。見張りもいるな」

 

 団員の誰かが呟いた。

 洞窟の近くには、数匹のゴブリンが立っている。

 彼らはこっちを見て、表情を一変させる。

 

「グギギッ!」

 

 ゴブリンたちは甲高い声で洞窟内に呼びかける。

 しばらくして、洞窟の奥から地響きのような音が響いてきた。

 

 ──ゴゴゴゴゴォ……。

 まるで大地が震動するかのような、重い足音。

 洞窟からワラワラとゴブリンの集団が出てくる。

 

「なに、あの数……」

 

 僕は思わず呟いた。

 たった一つの洞窟から、信じられない数のゴブリンが這い出てきた。

 緑色の肌を持つ小人が、谷底を埋め尽くす。

 

「こりゃ、100匹じゃきかねぇな。下手したら500はいるかもしれねぇ」

 

 団長が楽しそうに言った。

 斧を構えながら、獣じみた笑みを浮かべている。

 しかし僕は、恐怖で体が震えていた。

 次々と湧き出してくるゴブリンの大群は、まるで雪崩のようだ。

 

 圧倒的な数。

 戦力差は10倍以上だろう。

 今すぐにでも逃げ出したい気分だ。

 しかし、団長は──。

 

「全員、突撃だ! 一匹残らず潰してやれ!」

 

 巨大な両手斧を掲げて、団長が叫ぶ。

 その猛々しい号令に呼応して、男達は一斉に突っ込んでいく。

 まるで戦争映画のような光景だ。

 

 団長の強さは圧倒的だった。

 両手斧を振り回し、一撃で何匹ものゴブリンを吹き飛ばしていく。

 

 他の団員たちは、少し苦戦していた。

 いくらベテラン冒険者と言えども、四方八方から襲われたら流石に対処しきれないらしい。

 しかし大きなケガを負う者はおらず、みんなゴブリンを確実に仕留めていた。

 

 これなら、なんとか乗り切れそうだ。

 僕は草むらに隠れながら、ホッと息をつく。

 

 だが──次の瞬間。

 すぐ後ろから強烈な殺意が伝わってきた。

 

 なにかヤバい予感がする……!

 反射的に、僕は横に向かって飛んだ。

 

「グギャァアアッ!」

 

 ゴブリンの唸り声が響く。

 振り返ると、さっきまで僕の首があった場所に、鋭い刃が振り下ろされた。

 

 僕は不意打ちを喰らう寸前だったのだ。

 心眼のおかげで、それにギリギリ気が付くことができた。

 

「あ、危なかった……!」

 

 下手したら死んでいた。

 ゾッとしながら、僕は周囲を見回した。

 

 近くに助けてくれそうな団員はいない。

 みんな自分の戦いで精いっぱいだ。

 つまり僕は、このゴブリンを一人で倒さなければいけない。

 

「くっ……」

 

 震える手で、ショートソードを握りしめた。

 眼前のゴブリンは、すごく凶悪な形相をしている。

 他の個体より一回り大きく、全身に傷跡が刻まれている。

 

 おそらく歴戦の猛者なのだろう。

 さっきの奇襲も、どこか狡猾さを感じた。

 手にした鉈は血痕が付着しており、多くの動物を狩ってきたことが伺える。

 

《コノ雌、俺ヲ怖ガッテイル! キット弱イゾ! 簡単ニ殺セル!》

 

 ゴブリンの心の声が脳内に響いた。

 まずい。僕が弱いことを見抜かれている。

 

「ギィィッ!」

 

 ゴブリンの鉈が、上段から振り下ろされる。

 僕は咄嗟にショートソードを構えた。

 

 ガキン!

 鈍い音と共に、衝撃が腕を貫いた。

 思ったより重たい攻撃だ。

 

 ゴブリンの腕力は、見た目以上に凄まじい。

 もしくは、僕は貧弱すぎるのか。

 

《イイゾ! 震エテイル! 震エテイル! 怖ガッテイル雌ハ、カンタンニ殺セル!》

 

 ゴブリンの思考が伝わってきた。

 確かに、僕は怯えている。

 足が震えて、剣を持つ手も力が入らない。

 

 でも不思議なことに、頭の中は冷静だった。

 相手の思考が読めているせいだろうか。

 怖いのは確かだけど、自分が有利だという感覚もあった。

 

「はぁっ!」

 

 僕は小さな掛け声を上げて、剣を横に払う。

 ゴブリンは軽々と後方に跳んで、攻撃を避けた。

 よし、読み通りの動きだ。

 

《バカナ雌メ。コンナ大振リ、当タラナイゾ──》

 

 ゴブリンがカウンターの体勢に入る。

 だが、それはフェイントだ。

 心眼のおかげで、ゴブリンの狙いが手に取るように分かる。

 

 ──今だ!

 

 前に跳び、ゴブリンの懐に潜り込む。

 そして力任せにショートソードを突き出した。

 ズブッ、と刃が肉を裂く感触。

 緑色の脇腹に、深々と剣が刺さる。

 

「ギャアアアッ!」

 

 断末魔の悲鳴を上げ、ゴブリンが倒れ込む。

 致命傷だったらしい。

 ゴブリンは目を見開いて、ビクリと痙攣する。

 

 ──勝った。

 初めての戦闘、初めての殺生。

 なんだか変な気分だった。

 

「はぁ……はぁ……やっ、た……」

 

 達成感と、後悔と、気持ち悪さと……。

 胸の中がモヤモヤする。

 生き物を殺すのって、こんな気分なのか。

 僕は震える手で剣を引き抜いた。

 

 その瞬間、右肩にズキズキと痛みが走る。

 

「……えっ?」

 

 胸当てが血に濡れていた。

 返り血ではない。僕自身の血だ。

 

 知らないうちに、ゴブリンの攻撃が命中していたらしい。

 戦闘中はアドレナリンが出てたから気づかなかった。

 

「いッ……痛たぁ……ッ!」

 

 僕は思わず右肩を抑えた。

 ポタポタと血が滴り落ちる。

 

 目の前が、くらくらしてきた。

 膝から力が抜けそうになる。

 僕はなんとか踏みとどまって、周囲を見回した。

 

 谷底では、激しい戦闘が続いていた。

 男たちの雄叫びと、ゴブリンの断末魔。

 戦場を支配するのは、血のにおいと砂埃。

 

 団長は先頭を駆け回っている。

 巨大な斧を振るって、次々とゴブリンを薙ぎ倒していく。

 その後ろからは、凄まじい数のゴブリンが流れ込んでくる。

 まるで洞窟から湧き出してくるかのように、増え続けるゴブリンの大群。

 

 ──さらに。

 洞窟の奥から、新たな足音が響いてきた。

 

 ドスン、ドスン、ドスン……。

 地響きのような振動と共に、巨大な影が現れる。

 3メートルを超える巨体に、筋骨隆々の肉体。

 その手には、巨大な鉄槌が握られていた。

 

「あ、あれが……ゴブリンの王……?」

 

 呟きながら、僕は膝を震わせる。

 暴力性を人の形にしたような存在だ。

 普通のゴブリンとは、まったくの別物だと分かる。

 

 これは勝てない。絶対に勝てない。

 本能が警告を鳴らしていた。

 

「うぅ……肩が、痛い……」

 

 傷口から、まだ血が流れている。

 体がみるみる重くなっていく。

 このままじゃ危ない。

 助けを呼ばなきゃ……。

 

「アー、ウィン……さん……!」

 

 僕は弱々しく叫んだ。

 でも、声が届かない。

 戦場の喧噪にかき消されて、誰の耳にも届かなかった。

 

「うう……っ」

 

 目の前がチカチカする。

 血を流しすぎたせいか、意識が朦朧としてくる。

 このままだと、気を失いそうだった。

 

「おい! 3号が血を流してる!」

 

 誰かが叫ぶ声が聞こえた。

 視界が霞んでいて、誰の声なのかわからない。

 ただ、その声に反応して、誰かが駆け寄ってくる足音が聞こえた。

 

「くそっ、傷が深いな。しかも毒が入ってる!」

 

 アーウィンの声だった。

 彼は慌てた様子で僕の肩を確認する。

 温かい手のひらが傷口に触れ、柔らかな光が灯る。

 

「初めて見る種類の毒だ。回復魔法だけじゃ治せないぞ。早くアジトに戻らないと」

 

 アーウィンは懸命に治療魔法を唱える。

 傷口からジワジワと染み出る血は止まったものの、肩の熱は収まらない。

 むしろ、熱がどんどん全身に広がっていく。

 

「ぐッ……うぅ……」

 

 意識が遠のいていく。

 体中が熱くて堪らない。呼吸が苦しい。

 毒が全身に回っているのを感じた。

 

「このままじゃマズい。団長! 3号の容態が深刻です!」

 

 アーウィンが叫ぶ。

 その声が遠くなっていく。

 意識が闇の中に沈んでいく。

 

 最後に見た光景は、巨大な影が団長に突進する姿。

 

 ゴブリンの王と、血斧団の団長。

 二つの巨体がぶつかり合った瞬間。

 

 僕の意識は、完全に途切れた。

 

 

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