膣圧迫性排尿障害は、排尿機能に著しい障害をもたらす稀な病態である。本疾患では、膀胱から尿を排出することが困難となり、膀胱内に尿が過剰に蓄積する。通常の排尿機能が失われるため、適切な介入がなければ、膀胱過伸展や感染症、腎機能障害といった二次的な合併症を引き起こす可能性がある。
特徴的な治療法として、膣壁を介して膀胱を直接圧迫することにより排尿を誘発する方法が存在する。しかし、圧迫には特定の条件が必要とされる点が本疾患の特異性を際立たせている。すなわち、膣内からの物理的圧力を生じさせるために、非バリア性の男性器を用いることが唯一の有効な手段とされている。コンドーム等のバリアを介した圧迫では効果が見られず、生殖器を直接用いた膣内圧迫が排尿機能を回復させる唯一の方法である。
「つまり話を整理すると、生で男性器を挿入しないと排尿できない病気に罹ったってことだよな。ええと、その」
「膣圧迫性排尿障害だ。そうだ、僕はその病気に罹ったんだ」
何でもないはずだった休日の昼下がり。俺は幼馴染から病気を診断されたという重い告白を受けていた。
診断を受けた病院から貰って来たというコピー用紙は鉄塊に思えるほどに重く感じる。
「でも病気だろ。案外簡単に治ったりするんだろ」
「世界的に見ても症例が少なくて、よく分からないそうだ。だから一生この病気と付き合う覚悟をしろって言われたよ」
あまりにあっけからんに言い切った。気付くと彼女を見上げていて、そこで初めて俺は絶望感から膝をついていると認識した。
「薬は? 薬はないのか?」
「あるにはある。だけど、ネットで検索しても全く出てこないほどの、研究が進んでない病気なんだ。そんな病気の薬だから値段は張って保険は降りない。そのくせ常用すると、強すぎる薬効で他の病気を併発することが常だそうだ。薬のみで対処するのは健康的にも、お財布事情的にも現実的じゃないんだ」
屈んで視線を合わせ、強い意志を持った目を俺に向ける。俺の手を神に祈るように優しく両手で包み込み、一世一代の頼みごとをしてくる。彼女がこれからする頼みを思うと神を呪いたくもなるが避けては通れないだろう。覚悟を決め、視線を合わせる。
「それで君にこの話をしたのはただ同情して欲しいからではないんだ。こんな病気になった僕の排尿を手伝ってくれないかってお願いをしに来たんだ」
ああ、なんと。乙女が罹るには絶望感のある病なのだろう。見よ、彼女の俺を心配させんとする気丈な表情を。微笑みを絶やさずにいるのに、唇をかんでいるのではないか。こんな状況になっても俺を心配させまいと気高く振舞っている。
そのくせ俺は何だ。この表情を見て咄嗟に頭に浮かんだことと言えば、ああ、授業中にエロいことが頭を支配して鼻の下を伸ばしてにやけるのを隠そうとしている表情に似ている。なんて罰当たりな事を考えてしまうとは。
内心で手酷い侮辱をしてしまったことに謝罪をする。だが今は懺悔の時間ではない。彼女の負担にならないため、少しでもこの病気に詳しくならなければ。
「他ならぬ君の頼みだ。無下にするなんてするはずないだろ」
「イッヨシャャァアアイ!」
「どうした! 病気の発作か! 俺は、俺は何をすればいい!」
「いや、気にしないでくれ」
ああ、やはりどんなに高潔に振舞おうと心は確かに傷ついているのだ。この話をぶり返したところで、精神を蝕む以上の効果ない。気にしないでくれと言ったのだから忘れてしまおう。
「それで一つ聞きたいのだが、膣からの膀胱を圧迫することが必要だって言うなら、例えばディルドなんかで代用も出来るはずだろう。最も賢い君の事だ。そんな疑問はとっくに病院の先生へ質問しているだろうけど」
「え! いや、それは! ……それは無理なんだ。そう、どうも必要なのは人の体温で温めながら、膣側から膀胱を圧迫することなんだ。だから、ディルドでは決して代用品なりえないんだよ」
「ディルドを人肌に温めればいいじゃないか。それでも、ダメなのか?」
「……ダメだ。そうすると薬と同じで他の病気も併発してしまう。兎に角、必要なのはコンドームもない、生の男性器なんだ」
幼馴染のこれからを襲う恥辱思うと涙が自然と流れてしまう。いや、当事者でもない俺が弱気になってどうする、彼女は俺より遥かに辛いのだぞ。涙を拭い、決意を固めればもう流れはしない。
涙を見せない様に努力したつもりだが見られてしまったらしい。不安そうな表情を浮かべてさせてしまった。
「僕はこんなことを頼める異性は幼馴染の君しかいないんだ。頼む、どうか引き受けてはくれないか」
「もちろん。さっき言った通り協力するよ」
病気の症状緩和手段が見つかり笑みを浮かべた。だが笑っていられる状況は変わっていないと気付いて表情を戻した。
俺も覚悟をしかと決めたが一応頭に浮かんだ疑問を解消するために質問を重ねる。
「ところで、もう考えたと思うがこの手段の為にわざわざ俺を頼ることは無かったんじゃないか。例えば君の父君でもいいんじゃないか。治療の為ならまずは家族を頼るべきだよ。それとも頼れない理由があるのか。その、勃起できないとか」
「治療のためとはいえ、実の父親の男性器を生で挿入なんてしたくないよ。それになんだい、さっきから君は僕の治療に協力すると言いながら、断る様な事ばっかリ言って! 僕と生ハメセックスなんて死んでも御免だって言いたいのかい! それで僕が治療のためと言いながら男を漁るアバズレになれと言いたいのかね!」
「そんなことはない。君とそうすることは嬉しいよ」
バカな質問を続け過ぎたのか彼女は拳を握りこんだ。俺程度が思考を巡らして出る疑問など、彼女の頭からすればたかが知れているので怒りたくもなるだろう。彼女はとっくに覚悟を決めているのだ、俺もそうすべきだ。
「最後の質問を許してくれ。経緯はどうであれ生でセックスすることになるんだろ。その、もしかしたら俺が気付いていないだけで性病とか、他の感染症に罹っているかも知れない。病院に行って何か検査をしなきゃいけないのか」
「それついては全く問題ないよ。ほら、丁度良いことに以前、性病の検査ってどんな感じか気になるって、でも一人やるのは恥ずかしいからって君と一緒にしたじゃないか。それの結果が届いてね。お互い健康体だってよ。それとも何だい、あの検査の後にそうなっても不思議じゃないことでもあったのかい」
「ない」
そういえばそんな検査をしたと今頃になって思い出した。奇妙な病気になったが、示し合わせたみたいにこうなるとは彼女も運がいい。不幸中の幸いとはまさにこのことだろう。
「それで、これこそ肝に免じて欲しいんだが、僕がこの病気に罹ってことは誰にも言わないで、僕と君だけの秘密にして欲しいんだ」
「それって俺の友人だけではなく、俺の親にも秘密ってことだね。もちろん、拷問されたって話す気はないよ」
「いや、僕の親にもだ。こんな変な病気になったんだ。一応僕の両親とも知ってはいるが、乙女が罹る病にしては恥が多い。だから両親とも普段は知らないふりをしてくれているのさ。どうか君もそうしてくれると助かる」
「分かった。君のご両親の前では全く知らないふりをするよ」
良かったとばかりに破顔した。余りに綺麗なものだから不意に目線を逸らしてしまい、あらぬところを見つめながら病気の為とはいえ彼女を抱くのだと思うと独占欲にも似た下心が心の奥底から湧いてくる。
自分の浅ましさを呪っていると、そんなことは細事だと言わんばかりに明るい声が頭上から降り注ぐ。
「では今から! 風呂場でヤろうではないか!」
「質問よろしいでしょうか」
「何故風呂場でするか疑問なんだろう! 始めてなのだからどれだけ汚していい場所は家の中で風呂ぐらいしかないからだ! 溜まった尿をベッドの上で撒き散らしたくはないし、トイレでやっても碌に便器へ入らないだろう! ならば風呂場しかあるまい!」
質問に高速で回答され、あっという間に脱衣所まで連れてこられ、躊躇う暇なく全てを脱がされた。目隠しでもしようかと提案したが、バカ言うなと一蹴され瞬時に浴室へ行かされた。出入り口を塞ぐように彼女が立っているため、仮に服を着ようとするならば退いてもらうしかない。
殆ど仁王立ちに近い体勢で俺の裸体を見つめるものだから気恥ずかしくなり体を隠すと、
「これから何度もすることになるのに、毎回そうやって君は恥ずかしがるのか。ここまで来たんだ、寧ろそのご立派様を見せびらかすなり、お漏らし確定セックスを楽しむ位の気概でいて貰わないと困るぞ」
なんて言われてしまった。言われてみるとそんなような気になってくる。病は気からとも言うのだ、それっぽく振舞えば楽しむ気も起きるものだ。そう考えて腕を組んで堂々と仁王立ちをすれば、なるほど勇気が湧いてくる。
俺の気分が変わったことが分かったのだろう、彼女は満足そうにうなずくと服を勢いよく脱ぎ去り始める。てっきり下半身側だけ、なんならパンツだけを脱ぐものと考えていた俺の思考を吹き飛ばすほど、余りに豪快な脱ぎ方だったものだから脱いでる最中に疑問を指摘することも出来ず。それが出来たのは彼女が全ての衣類を脱ぎ去った後だった。
「言ってしまえば挿入だけすればいいのだろ。君も服を全部脱がなくてもいいじゃないか」
「排尿をするには男性器で膣壁から膀胱を圧迫する必要がある。つまり勃起は協力者の最低条件だろ。だから僕は君に勃起をしてもらうため、すなわちなるべく君の劣情を煽る必要がある。最もお互い全裸で肉欲をぶつけ合うより、着衣で行う方が興奮できるなら服を着るよ。それで全裸と着衣どっちの方が興奮するんだい?」
「全裸です。そんな簡単なことを思いつかずいたなんて。俺がバカで気を悪くしたか?」
「いや、寧ろこの期に及んでもまだ僕の事を気遣ってくれて嬉しいね。それに、ほら、全裸だと、アレだ。服が汚れなくていい、服が汚れてしまっては洗濯機を回すなりなんなりしなければならないだろう。その面倒を起こさないようにしている側面もある。着衣より、全裸のメリットを理解してくれたかな」
やはり彼女は頭が回る。破綻の理論に頭をコクコクと肯いていると、ずいとこちらに体を寄せてきて脱衣所への扉を閉めた。触れてもいないのに肌が彼女の体温を感じ、締め切った空間内にお互いのまだ荒くない、かといって整ってもいない呼吸音が反響する。興奮からじんわりと汗をかいたからなのか、まだ明るい外の陽射しを受けた柔らかい光を白い肌が艷めかしく反射する。
無意識に彼女へ伸びた手を後ろで組む。この女を今すぐに俺のモノにすると支配欲が湧いてきてしまったのだ。そんな俺のちっぽけな内心を見透かしたように笑みを浮かべる。
「ひとまず、僕の体で欲情してくれたみたいで助かるよ。余り男好きする女体だとは思っていなかったから正直安心したよ」
「男好きって、いや、まあいい。兎に角俺はエッチだと思うから、俺の勃起が云々は心配しなくていいよ」
「どこがそう思うんだい?」
適当に誤魔化そうとしたが、正面から穴が開きそうなほど見つめられると降参するほか無かった。諦めて視線を合わせれば、やはり見透かしたような微笑みが待っている。
「どこに性的興奮を抱いているのかを教えて欲しいんだ」
「恥ずかしいから言いたくないと言ったら」
「ダメだ。じゃあ前戯だと思って楽しんでみてくれよ。さあ、僕の体のどこに興奮したんだい?」
「白い肌だ。太陽の光を受けて、丸みを帯びて光を反射する肌にまず興奮した」
「なるほど。手入れを欠かさずいた甲斐があったものだね」
「そんな肌を纏った四肢がスラリと伸びていることにも興奮した。その、俺と同じ人間とは思えない、芸術品みたいだって」
「そうか。でも男性は肉付きが有る方がいいって聞くよ。そんな最近の流行と比べると細すぎないかって、それで興奮しきれないんじゃないかって不安だったんだが、それについてはどうなんだい」
「あまり言いたくないけど、細くて肉もない。だから俺が全力で、いや七割程度の力でも満足に抵抗できないだろうって思った。その、そう考えると、愛おしく感じるよ。見て分かるほど弱くて興奮する」
「そうかそうか! いや、肉がつかない体質を呪った時もあったが、君の言葉でこの体質に感謝さえ湧いてくるよ。俄然他にも聞きたくなってきたよ」
「近い話題で話すと、浮いたあばら骨にも、主張の激しい鎖骨にも興奮する。でも! 肉が無いからってだけで興奮してるんじゃない。要所要所で見ればこんなに肉付きが悪いのに、それでも女性らしい丸みを帯びた体だから余計に俺の性欲を煽る」
「なるほど、僕の体のコンプレックスだったけど、それで君が興奮するなら世界で一番の体だね。ところで僕の胸はどうだい。巨乳とは口が裂けても言えない大きさだろう。これにはちっとも興奮しないかい?」
「まさか! そんなことない! 寧ろ一番興奮するよ! いや、いきなり大声を出したりしてゴメン。確かに大きくはないけど形は綺麗だ。美乳ってやつだね。それにいくら肉付き悪くても胸は少しだけだけど確かに盛り上がっていて、自分の体がメスだって強い主張していていい。こんな、こんなに全身細いのに胸を出したらメスバレバレじゃないか。こんな非力です碌に抵抗できませんと体で語ってくるくせにおっぱいを出したら女の子ですって何だよ、レイプ願望が歩いてるのかよ、クソ! まだまだあるぞ、その乳首! パフィーニップルだな。乳輪から膨れて乳首を強調するなんて触ってくれって言ってるようなもんじゃないか! おっぱいだけでこんなに男をたぶらかすなんて淫乱が過ぎる!」
「待った! まだ言いたそうだが僕の持ちそうにない。止めてくれ。うん、ありがとう。つまり僕の体は君の性癖に合致しているって認識でいいんだな」
「それもあるし、何より君の体だから興奮してるって側面も大いにある」
赤面しながら笑みを浮かべ睨むという器用な表情をしている。褒められて嬉しい気持ち、協力者が自分の体に興奮していて対処療法的にいい、それはそれとして俺が性犯罪者みたいな思考をしているからこんな特殊な表情になったのだろう。
意趣返しでもしたいのか、彼女から見た俺の体の品評を語ろうとしたが結局しなかった。恥ずかしい上に、早く先の工程へ行こうとのこと。
「では抱きしめ合おうじゃないか。さ、腕を広げてみたまえ」
言われた通りにすると、サッと懐へ入ってきて抱きしめてきた。
「ほら、君も僕の背中に腕を回して抱きしめてみたまえ。おお、やっぱり君は力が強いね。腕の力だけでも逃げられる気がしないね。いや、緩めなくていいよ。もっと君がしたい様にしてくれたまえ。異性と、いや人と全裸で抱きしめ合ったのは初めてだろう。どんな気持ちだい」
言い淀んでいると背中を抓って催促してくるのでやはり語るしかなさそうだ。
「その、女の子の匂いがして、凄く、いい」
「ふふ、さっきの語彙力はどこへ行ってしまったんだい。匂いがいいって言うなら僕の髪の毛を手に取って嗅いでみるといい」
「ああ、ありがとう。うん、いい匂いだ。実言うと普段から君の髪からいい香りがするからこうしてみたかった願望があったんだ」
「今まで自分のシャンプーは無駄にお高いと思っていたがお釣りがくるね」
「その、手に取った髪の毛と言わずに頭頂部へ鼻を当てていいかい。いや、当てるね」
流石に嫌なのか頭をズラして逃がしてきたのでつい腕で追いかけてしまった。やってしまったと思い腕を再び背中へ置いたが、その後特に頭が動かなかったので鼻を突っ込み呼吸をする。
人体からこんなにいい匂いがしていいのか、と感動して三回ほど深呼吸をしたが背中を叩かれ、
「何か言ったらどうだい」
とのことだったので、最高とだけ返す。また深呼吸をしようとしたが、他の感想を述べよとのことなのでしぶしぶ辞めた。
「裸を見た時にも、丸みを帯びて柔らかそうと言ったが、実際はもっと、凄いな。この感動をなんと表現すればいいのか。そう、細いのに、柔らかくて滑らかだ。見た目も相まって芸術品でも触っている気分になるが、君の吐息が俺の肌をくすぐる感覚、それに温かくて心臓の鼓動も感じる。生きてるって感じがあって凄い」
「……一応言っておくけど、僕だって君に対して、ガッチリしていて、体温が云々って思っているんだぜ」
「そんな存在が、さっき碌な抵抗も出来なかった存在が。今、この俺を抱きしめて、抱きしめら、しだれかかっているのがたまらないよ」
「僕がしだれかかってるのは君が逃げようとするからだろう。それを言うなら、そうさせたとでも語ればいいさ」
ところで、と言い放ち下からいたずらでもするぞと顔で語りながら、
「もっと直接な事はどうなんだい? 君の胸板に擦り付けているこの胸の感想は?」
と質問してきた。気恥ずかしくて明言を避けている俺の心の内さえ分かっているぞと言わんばかりである。正直この感動を何と伝えればいいのか見当もつかない。
内心そんなことで悩んでいるのに、それを知らずにいる彼女は俺が言い淀んでいるとでも思い、密着した体を上下に揺らして俺を煽る。
「ほらほら、この、君の胸板で、互いの汗で滑るこの美乳の感想を聞いているんだ。何か言ったらどうなんだい」
抱きしめ合った時に少し意識しただけでチンコが射精をさせろとばかりに跳ねたのに、こんなことをされるとは溜まったものではない。だと言うのにこんな疑似的なパイズリをされては選ぶ言葉も選べない。
このまま果てるのは余りに情けないが、語彙が浮かびもしない。だのに、まだ煽る言葉の動きも止まらない。悩んだ結果、尻を掴んで、グイと彼女の体を浮かせ、
「そういうお前こそ、自分の腹に当たる俺のチンコはどうなんだ。感想を述べよ」
と言い放った。反撃されるとは微塵も考えていなかったのか、しばらくキョトンとした表情をし、現状を理解度を赤面度合いで表す。すっかり耳まで茹蛸みたいな様相になったので、それ見たことかと追撃をかます。
「人に感想を言え言えと迫るくせに、いざ自分となると何も語らないじゃないか。こんな状況で必死になって説明をする俺の気持ちが分かったか。最もこんな病気になってしまったんだから君に聡明な判断をずっと求めることは無いよ。ただ一言謝ってくれさえすれば水に流すよ」
とうとう顔を逸らしてしまった。お互いの距離が近すぎて真っ赤になった耳しか見えないので表情は分からないが流石に反省をしただろう。そろそろこんな持ち上げて彼女を物扱いしている現状をどうにかしたいので謝ってくれないかと、若干現実逃避をしているとこの距離であっても蚊の鳴くような声が聞こえた。
「……その、裸を見せ合った時から、こんな大きいものが僕を貫くのかって思ってて。なのに、僕の体の感想を言って貰ったらもっと大きくなって。それなのに抱きしめ合ったら、まだまだ大きくなったように感じたから。その、僕で興奮して貰えてるって思うと、つい嬉しく」
「……」
「それにお腹に当たってるだけなのに、腹越しに子宮を犯されるって、孕ませられるって思って。だから、その、君も早くそうしたいんだろうって勝手に決めて、煽って首でも絞められながら犯してくれたら、僕の処女をこんな乱暴に奪ったって、一生いいなりにさせようと思ってました。ごめんなさい、どうか僕を嫌わないで。嫌ってもいいので今日だけはどうか僕を犯して下さい。どうか、どうかお願いします」
「……」
人類史で、過去も未来も含めこの時の俺ほど理性を働かせた人間はいないに違いない。そう確信できるほどの理性を保ちながら彼女を降ろし、股座に指を這わせれば童貞でも挿入に問題無いと分かる程度に濡れていた。
「辛抱ならん。もう今更怖気づいても絶対逃がさないぞ」
返事は無かったがキスをされ、気付いた時には俺の舌は彼女の口内に居た。目にも留まらぬ早さで舌を吸い出されただけだ。
もう理性は死んだ。処女膜を破った感触も覚えておらず。挿入したと理解したのは、二人分の口内の体積の中で処女に童貞消失、絶頂と射精の快感の咆哮が響いた後だった。
いつの間にか繋がり合ったまま座り込んでおり、息が整った時には床の冷たさは過ぎ去っていた。そこまでを認識して漸く冷静になり、中出しをした事実が今更になってのしかかってくる。
何をすればいいか分からないが兎に角動かなければと、血の気の引いた顔で焦り取り合えず抜こうと腰を引こうとしたが脚に抱かれてしまった。
「コンドームをしてたって避妊率は一〇割を下回るんだよ。君が今更不安がった問題なんて対策をしてるに決まってるじゃないか」
それより言葉を重ね、
「元々の目的を忘れてしまってはいないか。元々は僕の排尿を手伝うって話だよ。それをここで辞めてしまってはそれこそ弱みを握ってしまうよ。ほら、まだ君のチンチンは堅いままだし、興奮も去ったようだから僕が排尿するまでは我慢できるだろう」
と言った。言われてみればそんな重要な事がスッポリ頭から抜けてしまったのも不思議だが、それ相応の出来事が起こっていたのだから仕方ない。あと一発は余裕だと返しと、よかったとばかりに微笑んだ。
「それにしても参ったね。今日はじっくり時間をかけて君に前戯を教えるつもりだったが、そんな計画はパーだよ。やったことと言えば、僕の体の感想を聞いて、抱きしめ合ったくらいだ。辛うじてキスはしたけど、それ以外は全然だったね。君、おっぱいを揉むより先に中出しをしたんだぜ」
「それは、すまないと思ってはいるが半分はお前も悪い。どうせ君の事だから謝罪なんていいから行動しろと言うのだろう」
もちろんと返され、手を取られ胸の外周部とでもいえばいいのか。そこへ置かれる。
「取り合えず、僕の好きな胸の揉み方を教えようじゃないか。そうやって外側から持ち上げる様にゆっくり揉んでくれ」
おお、なんと神秘的な手触りか。餅か、二の腕か、耳たぶか。どれも適切な表現ではない。これはおっぱいの手触りなのだ。
そう感動して、もっと知りたいと指を中心へ、抱き合っている時から主張の激しい乳首を触ろうとする。だが、手の甲から指先までを合わせる様に彼女の幾分か小さい手が覆いかぶさり、ダメだと言わんばかりに外へ戻される。
「前戯の、愛撫の仕方を教えるといっただろう。強引なのは、あー、まぁ、さっきの感じからすると僕も嫌いじゃない気がするがね。でも今日は僕に従って貰うよ」
彼女の手が、俺の手を経由しておっぱいを揉み始める。そうなると表裏の両面が柔らかさに包まれる。一人では成しえない感覚に奇妙な気持ちを覚えるし、彼女も他人の手を介して自らを揉むのといつもと違うのか真剣な表情だ。
己の体で実験されていると思うと、少し面白い気分になった。そこでふと、疑問が降ってくる。
「ところで、何故俺は前戯の方法を学ぶ必要が? もちろん、嫌って訳じゃないが、刺激が必要なだけなら適当にローションで濡らせばいいのでは?」
やはり俺程度の疑問はバカな疑問らしく、まずクソデカいため息が返ってきた。
「ローションだってタダじゃない。毎回ローションを使えば幾ら安かろうと費用は嵩張る。元々薬で迷惑をかけているのに、僕が自分で興奮して愛液を出せば解決するんだからそうするさ。それに君だって、はい手伝ってと言われて直ぐに勃起できるのかい?」
「それなりに。君相手なら、自信がある」
「バカ、口説けなんて言ってないだろ、全く。初めはそうでも直にそうじゃなくなるかもだろ。でも愛撫をしていけばその気になるかもしれないだろ。だから君が愛撫を覚えれば、君も興奮出来て良し、僕も濡れて良し、財布は痛まなくて良し。この三方よしになるんだ。なにか文句はあるかい」
「ないです」
分かったら手を動かせと呆れたように言われた。もう後から疑問が湧いても三方よしと彼女が言ったのだから気にしない様にしようと心に決めて、おっぱいを揉むことに集中する。
「そう、そうやって外側から中心をゆっくり刺激するように揉むんだ。それにこうゆうのはお互いに協力するのが大切だからね。僕は下側を動かすからさ。ああ、これの意味かい? クリトリスを君の体にゆっくり擦り付けているんだよ。なんせ敏感過ぎて適当に触ると痛い位だからね。初心者の君に手を動かしながらこれも弄れなんてそんな高度な事は要求しないよ。でもいつかはこうやって君も腰の動きで弄って欲しいからね。よく覚えてくれよ」
ねっとりとした動きで繋がったままの腰を回している。じんわりと陰茎から快感が伝わってくるがさっき射精したお陰で耐えられるが、そうでなければ負けてしまいそうだ。
触覚だけでなく動かすたびに微かに、ぐちゅと精液と愛液の混合液が鳴るのも追い詰めてくる。
「ただそうだな。そろそろ僕のオナニーでも盛り上がってくる頃合いだし愛撫の仕方を変えて貰おうかな。それに君の口が暇なままだとまた変な事を聞いてきそうだし。一石二鳥ってことで乳首を舐めてくれよ」
ズイと尖がった乳首を舐めると。直ぐにでもそうしたかったが、未知の料理を食べるみたいに体が固まってしまった。舌を少し出したバカな顔でいると、後頭部を優しく撫でられ乳首が近づいてきた。近づ度に本能を刺激する甘い体臭に委ねて左乳首を口に含む。
「そうだな、僕がオナニーの時にどうやって弄っているかを教えてあげようかな。ほら君の右手を貸して、これで僕が君の指先を弄るからそれに倣って舌で弾いてくれ。
まずは乳首の外周部で円を描くんだ。一周に一〇秒くらいかけてまだまだ焦らしてくれ。そうするとほら、もっと触ってくれってもっと勃ってくるだろ。まだまだ。
そうだな、そろそろ真ん中を触ってみるか。速度は変えないで段々円周を小さくしていって。そう、そうやって。すり鉢状の穴の外を走るビー玉みたいにゆっくり。円が小さくなると乳首に触れてしまうだろ。それがいいんだ。乳頭を素知らぬ顔で虐めながら円を狭めるんだ。
ああ、もう円が無くなってしまったね。じゃあ、ゆっくり弾いてみようか。まずは乳頭の本当に先端だけをかすめる様に上下動かしてみようか。そう、その調子。こっちも段々と追い詰めていって」
言われた通りにしてると余裕がなくなり、声はより小さく、より甘く、より余裕をなくしていく。
「もう前に進めないね。じゃあ今度は鬱憤を全部晴らそうか。はやく、つよくいじって。
そう♡ そう♡ あ♡ こえでない♡ んん♡ 合図出すから本気でつぶして♡ はがたのこしてまーきんぐして♡」
合図は思いのほか分かりやすかった。彼女の四肢を全部使って抱き着いてきて背中に爪を立てられた。大分痛いので出血もしたかもしれないが、焦らされた分とその鬱憤を全て小さい乳首にぶつけてやった。
手足を一層蛇みたいに締上げ、同時に膣をキュウと締め付けてくる。そのうちふっと蝋燭が消えるみたいに力が抜ける。
「いいね。妄想していたよりよかった。今教えたみたいに、たまに裏切ったりして今後も胸を弄ってくれ。あとは僕も全く知らないけど、吸ったりとか、そうゆう口でしか出来ないことで僕を追い詰めてくれ。
ああ、歯型。全然気にしてないよ。こんなとこ君意外に見せないんだから気にしないよ。キスマークだって好きなだけ付けていいんだぜ。それとももっと見易い所、首とか腕、顔にだってして自分のモノだって主張してもいいよ」
「顔はいいよ。それは変だろ」
「へぇ、じゃあ首にはつけてくれるんだ。今つけてもいいよ。それで虫に刺されたってバレバレの言い訳して君に視線を投げてやろうか。そしたら皆、僕は君のメスになったって理解するよ」
「……それより次は」
あ、逃げたなんてニヤケ顔で言われたが努めて無視をする。本人的にもどうでもいいのか特に責めてはこなかった。
「じゃあそうだな。次は君に腰を上げて貰おうかな。ところでこのまま正常位する? それともバックでやる? 協力者の君が好きな方でいいよ」
「君が決めればいいだろ。俺の判断を仰ぐほど重要なのか」
「重要だろ。このままだと僕のおしっこを全部君へかけることになるよ。バックなら一応は、飛び散った分とかは知らないけど」
「ああ、そっか」
「おいおい、そんなに僕とただただセックスするのが良かったのかい? 別に僕はそれでもいいけど。それで? どっちにするんだい? このまま僕が君を抱きながらセックスをするか、それとも背後から僕の手を手綱みたいにしながら乱暴にヤルかい?」
「……このままで」
「お、僕的に嬉しい方だ。因みに理由を聞いても? 体位を変えるのが面倒だから? 揺れる小さい美乳を見たいから? それともそれとも」
「キスをしながらしたいからだ。さっき射精と一緒にキスをしたみたいに、又そうしたいってだけだ。俺の理由はこうだが、君的に嬉しい理由は」
「……」
「……」
「……僕だって……」
「んーよく聞こえん。蚊でも飛んだかな」
俺を睨んだ眼はいなくなって、今はトロンと溶けた目だけが視界を支配する。そのまま腰を動かすと歯が当たって口を切りそうになるが、彼女が俺の頭を抱いたおかげでその心配はなくなった。
利き手で胸の先端を弄りながら、下から突き上げて腰を振る。何か言おうとしたのか口を離そうとしたが、それより早く舌を吸い上げて頭が離れるのを阻止した。
下へ落ちる度に、上へ突き上げるので浴室中に豪快な餅つきの音が響く。接合部から空気を含んだ粘液をかき混ぜる音がする。頭の中はお互いの唾液を交換して飲み込む音がする。指先が乳首を弾く音がする。意図しない肌の擦れる音がする。
世界中の音が聞こえなくなったが、彼女との間に生まれた音だけは鮮明に。黒だか白に染まった世界で彼女の眼だけ見える。宙に浮いてるような感覚だが肌の温かさと柔らかさは分かる。
同じ溶液に溶けた砂糖にでもなったのだと確信したころにチリチリとした射精感が人の実感をくれた。奥へ出して封じ込めんと爪を立てて尻を掴んで、俺に押し付けて射精した。
それと同時に温かい液体が接合部の上から漏れてきた。ここまでやって漸く対処療法が終わったらしい。
彼女が危惧していた通りに大量のおしっこが俺を濡らす。不快感を覚えるとばかり思っていたが、それも嫌悪感をなかった。あまりに密着しているせいで彼女も被害を被っているせいか、好きな人のものだからか、そんなことを気にする余裕もないのか。どんな理由なのか分からないがこれなら気楽に続けられそうだ。
そんなことを考えている間も出し続けていて、最後はギュッと下半身に力を込めて出し切る。まだ俺は動く気力が無いが彼女は名残惜しそうに唇を離す。
「ありがとう、お陰で排尿できたよ。それでこのまま外を歩くには汗があれだもんで一緒に体を洗おうじゃないか。なに、小さいときにやったことあるだろ、今更はずかしがるもんじゃないよ」
台本を読むみたいな早さで、殆ど一息に言い切り動き始める。流石に萎えた俺のブツを抜くと予想以上の汚れ具合だ。
洗うの面倒だなーと思っていると、珍しいものでも見たと顔を近づけ、パクリと口に含んだ。
「え? なんで?」
「精液はお湯に触れると排水溝が詰まると聞く。ならこれをシャワーで洗い流すわけにはいかないだろう。だから口で汚れを取るしかないかなって」
「タオルで拭いて洗濯機で洗ったりとかは」
「人の善意を無下にしない。大人しくしてて」
「ダメ、まって、辞めて。勃起しちゃう。臨戦態勢になっちゃう」
まさにその言葉を待っていたような顔で振り向いた。
「ただねぇ、もう僕は尿を出し切ったからね。どうしてもというならもう一回やってもいいけどね、でもそれで本当にしたいタイミングで萎えたままだったら大変だろう。だから今日は辞めよう」
台本を読むみたいな早さで、殆ど一息に言い切り、続けて言葉を繋ぐ。
「そのことにも関係するんだがね、君には迷惑をかけるけどどうしても頼みたいことがあるんだ。それは僕との排尿を手伝う時以外は射精を、つまりオナニーをしない様にして欲しいんだ。もちろん、僕は君に報いるさ。例えばコスプレエッチがしたいなら衣装を用意するし、首を締めたり殴りたいなら君の興奮するように好きにしてよ。僕に付き合って貰ってるんだ、感謝こそあれどんなことをされようと不満はないよ。どうだい、受けてくれるね?」
やはり台本を読むみたいな早さで、殆ど一息に言い切ると俺の目をまっすぐに見つめる。少し違和感があったがもちろんと返すと微笑みとシャワーのお湯を返してきた。
そうして体を洗い合って部屋で休む。その間中ずっと違和感が思考を蝕んでいた。
それをどんな勘違いをしたか分からないが眠いと思ったのか、彼女は俺のベッド潜り込んで寝ようと誘った。
「普段使わない筋肉を使ったから疲れたのさ、少なくても僕はそうだ。だから少し眠って回復する。まさか君のご家族の前でそんなことするわけにはいかないだろ。だから君の部屋で、一番寝るのに適した場所で寝るのが最適ってこと。しかし家主を放っておくのは良心が痛むんで一緒に眠ろうと誘っているんじゃないか。それを断って眉間にしわを寄せて面白くない顔をするなんて何を考えているんだい。ほら今撮った写真を見たまえ、誰が見たって今すぐに寝ろと言うに違いないね」
と、こんなようなことを言い続けるものなので、思考はさっぱり解決をしてくれなかった。だが疲れているのもそうだ、俺も寝よう。いや一緒に狭いベッドで寝ること無いんじゃないかと堂々巡りをしていると直に彼女は寝てしまった。
取り合えず寝てしまった彼女のスマホを安全な場所へ置いて乱れた掛け布団を直した時、違和感の正体がハッキリと分かった。
膣圧迫性排尿障害なのに、突いているときじゃなくて、動き終わった後に排尿していなかったかと。
尿道に蓋がされてしまい、それを裏から突く度に少し穴が開く。そう認識していたが、実際には突いてる間は何もなく、終わった後にゆっくりと排尿をしていた。
この違和感を見つけてしまうと他にも色々と変な事に気付く。変なとこで言い淀んだり、逆に変な所でスラスラと言葉が出たり。そういえば最中には俺も気分が高まり気にしていなかったが、排尿ではなく俺とセックスするのが目的みたいなことを言っていなかったか。
ふと病気の説明のコピー用紙が目に入り、再び読んでみるとまた違和感を見つけてしまった。『非バリア性の男性器』とは一体どんな言い回しだ。
スマホでこの単語を簡単に調べてみると『コンドームをしていないチンコ』を表す言葉です。みたいな内容は出てきていない。
いったいこれはと思っていると使っているスマホが自分のものではなく、今し方寝た彼女から回収したものだと気付く。そうだ、事故でスマホの中身を覗いてしまったのだ。追加で他の事を調べてしまうのも不思議なことではない、と誰に言うでもなく言い訳を中身を精査する。
今開いているブラウザの履歴を巡っていくと、昨日の夜中に怪しい内容の検索履歴を見つけた。その辺をもう少し見れば対話型人工知能を何度も開いた形跡があったのでそのページを開く。
意外と簡単だったなとか思いながらどんな会話をしていたのかを読めば、最新の履歴がそのまんま膣圧迫性排尿障害というでっち上げた病の対話だった。
医学っぽい説明とかも対話型人工知能に任せた内容だ。それで変な言葉をそれっぽく使っていたんだと妙に納得した。
つまるところ彼女は俺とセックスをするために、架空の病気を作ってそれを口実として誘った。それだけのことだったんだ。
思えば彼女、普段は聡明なのに変な所でIQが下がることあったな。最近はそれが無かったが思わぬ形で表出したな。
それが俺とセックスをするためにこうなるのかと思えば寧ろ愛おしさが増す。指摘をしてもいいがそれをすると今度はどんな暴走をするか分からないし、俺が彼女とセックスをする理由もなくなってしまう。
なのでスマホから調査の履歴を消し、狭いベッドへ入って寝ることにした。