【推し】のアラサー 作:MEM推し
「やあ。アクアお兄ちゃん」
「僕はお前の兄になった覚えはない。名前も知らない妹がいてたまるか」
「わたしの名前が知りたいの?お兄ちゃんのえっち」
「……」
「ああ、無視しないで。
「一応、僕の前世を知ってるみたいだからその神の遣いみたいな妄言は信じるけど。その名前を軽々しく外で使うな」
「大丈夫大丈夫。今のわたしたちの声は周りに聞こえていないから。実際にほら、周りには人がいないだろう?」
烏のような少女が、全身を真っ黒に染め上げた人間とは思えない美貌を兼ね備えた小さき悪魔が、お供の烏を連れてアクアに近付く。
確かにこの公園は、誰からも、世界からも隔絶されたかのように静謐だった。
「それでは神より言葉を。『汝、
「……ん?」
「『あなたの狙う人物は一つの成果に満足したようです。彼女を超える才能に出会わなければ殺意を持つことはなくなるでしょう。もしアイを超える才能の持ち主に出会ったとしても、その頃には科学技術が発達して犯罪を犯す前に捕まるでしょう。ですから、あなたはやりたいことをして、素敵な愛を育みなさい』。以上」
「それは、アイを超える人物は現れないということか?それにその神の言葉とやらはどこまで信じられる?」
「もう復讐なんて考えてないんでしょ?あのDVDを見た君ならわかるはずだ。恋も知らなかった、芸能界という
アクアの結論としては、若い男女が愛着障害を持っていて似たような異性に愛を求めたが、子供ができたことでご破算。相手には他にも隠し子がいることもあってまだ10代の子供ではどうしようもなかった。芸能界にいるとはいえ、その時の二人は物凄く売れている訳でもなかった。
たとえ同棲や結婚をしてもどこかで破綻していただろう。
「まあ、神の言葉が信じられないのもわかる。八百万の神がいるとはいえ、神は人前に姿を見せなくなった。最近は天界から見守るばかり。そんな時に君たち双子を見付けたんだよ。
「案外まともか?他の神々」
「まとももまとも。その上私の神様は君たちに健康な体を与えるという加護まで与えちゃってねえ。そのせいで今の天界では空前絶後の加護ブーム。気に入った人間に一人だけ加護を与えるようになってね。今ナントカ40いくつってアイドルグループがたくさんできているだろう?あれも神々の加護の一環。自分の【推しの子】を輝かせようとする
少女はペチペチとあまり音の鳴らない拍手をする。
だいぶオカルトな、だが今の芸能界とアクア周りの状況を考えると納得のいく話ではあった。
芸能界で有名になれば犯人はアイの時のように誰かを嗾けてくるかと思ったが、子役でトップと言っていいほど売れている今のアクアに何かをしようとしてくる気配はない。そして超大人数のアイドルグループがいくつも結成されてどれも売れているという事実からもルビーがアイドルになってもアイほどの人気は得られないだろうとアクアも考えていた。
超大手芸能事務所がその資金力とプロデュース力を活かして徹底的に売り込んでいるのだ。アイドル部門から撤退している苺プロからアイドルを出しても、ルビーの美貌と才能があってもそこまで伸びないだろうと推測していた。
ルビーの歌は改善されたとはいえ、めちゃくちゃ上手いというわけでもないのだから。
「その話だと、アイは加護とやらを受けられなかったのか?」
「んー、相殺ってところかな。母親に捨てられてから生きられる才能として加護は与えられた。斎藤壱護に拾われたのも幸運ではあったんだよ?人格はもちろん、プロデュース力もまともだったからね。まあ、彼もアイに脳を焼かれすぎてアイを失った後も、当時も他のメンバーのことで杜撰なことをしていたけど。まあ要するに、彼女はもう加護を授けられていたんだよ。それに十五の少女が双子を帝王切開でもなく死産でもなく産まれている時点で加護は機能していたさ。で、その後に加護ブームが流行ったけど、一人の人間に一回だけの加護は自重ラインとして神々が定めた。もう加護を貰っていたアイはブームの適用外。望まれた加護もストーカー被害からはどうにもできないさ。それも自分の蒔いた種ではね。あの結末は彼女が導いてしまっただけ。それに、過去には戻れないよ?」
転生はあっても逆行などはないと少女は告げる。
そして神々がいるために、あの事件で起こった不思議な現象も片付けられると言うのだ。
だが、アクアは少女の言葉に引っかかりを覚える。
「相殺という言葉を使ったな?それに八百万の神がいるんだ。善神だけではなく悪神もいるんだろう。あのストーカーか、裏にいる人物がいるかわからないが、彼らにも神の加護があったんじゃないか?それほどあの事件はストーカーと黒幕にとって都合が良すぎる」
「さっすが!私のヒントを見逃さなかったね。黒幕も可哀想な子でねぇ。詳細は省くが、彼も愛着障害を抱えて、愛を教えられた最初の女は彼との子を産みながら別の男と結婚して、子供の秘密がバレて夫妻は無理心中。次の相手はアイで、そのアイにも裏切られた。それを不憫に思った神が加護を与えたようだね。サスペンスになり得ない超常の力による結末に、ガッカリしたかい?」
「僕もルビーも、ミヤコさんも、他の周りの人たちも無事ならそれでいい。それに超常の力には対策がなさそうだから金と物理的に守りを固めるしかなさそうだ」
「そうそう。普段から気を付けるしかないんだよ。君たちが死んだりしたら神様も悲しむからね。これからの人生も健やかに気を引き締めて生きること。あとこれ、プレゼント」
少女が近付いてきて背中に背負っていたピンク色のリュックサックからビニール袋を出す。プレゼントと言う割に普通のコンビニの袋が出てきたので肩透かしを食う。
神からなのか、目の前の少女からのプレゼントなのかわからないが、もっと一目でそれとわかる物が欲しかった。
中身を確認すると袋ポテチにペットボトルのコーヒー。それにチョコレートとガムといったコンビニで買える飲食物だった。神様の贈り物にしてはショボくないか?と思ったアクアはその真ん中辺りにある、ビニール袋の外側からの透かしでも見えないように隠された赤い箱を見付けた。しかも三箱。
それはデカデカと0.1mmとか書いてある、コンビニや薬局で売っている衛生用品。
有り体に言えば、コンドームだった。
「幼女の見た目でなんてものを渡しやがる⁉︎」
「いやあ、それがないと困ると思ったらしくてね。神様からのプレゼント。本当だったらそういうものを着けていても一定確率で妊娠してしまうけど、それは安心安全の神様仕様の特別製!絶対に妊娠しないんだって。あと六年くらいは子供は我慢した方がいいよ」
「僕にプライバシーはないのか……」
「神に人間のプライバシーなんて通用すると思ってるの?一応中学生がコンビニで買ってきてもおかしくないものにしたんだから。大阪に来てくれたのはちょうど良かったよ。東京で渡したら妹ちゃんにバレるだろうからね。それならホテルに戻ってもお菓子を買いに行ったんだなって思われるだけだから」
「神様の考えることはわからないな……」
「君に幸せになってほしいだけさ。なくなったら今度は部屋に放り込んであげるよ」
「最初から僕の部屋に置いておけば良かったんじゃないか?」
「説明もなしにそんなことをしても君はそんな怪しい物を捨てるだろう?こうして直接説明をすれば今後は対応しやすいし。今回のドラマってどんなのだっけ?大阪で撮影する必要があったのかい?」
「高校野球モノだな。僕はチームの中でも身長が低い役。部活終わりの帰り道とか、日常シーンが必要らしい。練習シーンとかは関東で撮る」
「そうなんだ。今回のも楽しみにしてるよ」
「……天界ってテレビとかネットドラマも見えるのか?」
「それはもちろん。自堕落な神もいっぱいいるよ」
アクアは少女と別れてホテルに戻り、貰った袋の中身は厳重にキャリーケースの中に隠した。そして夕方からの撮影に臨んで、問題もなく各シーンを撮っていく。いわゆる日常シーンを話数を飛ばしながらまとめ撮りしたために試合に挑む前とか挑んだ後のシーンも演じなければならなかったが、アクアは長年の経験で問題なく演じる。
こんなことはしょっちゅうだ。
撮影が終わった後の夜。ご飯も食べた後一人部屋でMEMのライブ配信を視聴していた。今日の配信は島を開拓するゲームのようでMEM自体の画面に映っている姿は小さかった。ゲーム画面がデカデカと画面を占拠していて、MEM自身の姿は画面の四分の一もない。
それでもゲームの内容よりもMEMを目が追ってしまう。家族もいない本当の意味で一人というのは随分久しぶりだ。ロケ地が遠ければ泊まることはあっても、マネージャーと一緒の部屋だったり、子役で纏まった部屋を確保されたこともあった。そこは作品の予算次第だ。
今回のものは原作がかなりヒットしたドラマだったために予算は潤沢なのか役者には一人一部屋与えられた。共演者が遊びに来ることもなく、一人の時間を満喫していた。
MEMが笑い声を上げながら開く口から目が離せない。
先日あの口に何度も自身の逸物を咥えられていた。その感触を、熱を忘れられずにアクアは下半身を露出させてティッシュを用意していた。
今は見切れている服の下を全て見ている。それどころか様々な奉仕を受けてその肢体を白濁液で汚した。肢体だけではなく彼女の顔にも何度も発射した。
本番は一切していないのに、お互い何度果てたことか。
配信に乗せている声よりも何トーンも高い声で鳴かせたか。その時の潤んだ表情を、声を、体の震えを、熱を。
アクアは鮮明に思い出しながら完全に勃った愚息を必死に擦る。
若い体は性欲も当然のように年齢相応になっていたために、アクアの先端から先走り汁が留まることなく噴き続ける。その快楽を止めるどころかもっと求めるように右手の動きは早くなっていった。
また彼女を穢したい。清楚キャラで売っている訳ではないが確実に男のいなさそうな純朴で元気っ娘と、永遠に続く肉欲に溺れたい。
そんな、今配信を見ているリスナーが絶対に手を出せない聖域を侵したという背徳感と優越感で脳が麻痺をしているようだった。
配信のゲーム画面なんて全く見えていなかった。本当に小さい姿のMEMだけを見て、あの夜を思い出しながらMEMの声を聞いているだけだった。
ベッドの上でスマホにイヤホンを挿して、耳を刺激しながら右手を動かすだけの存在に成り果てていた。
そして。
「ああ〜〜!」
「〜〜〜〜〜〜あっ……!」
MEMが挙げた甲高い悲鳴がトドメとなってアクアは溜まっていた精液をティッシュへぶちまけた。液体が流れる音が響くほどの量が出て、ティッシュから溢れそうになったので追加で何枚か出してベッドに溢れないようにしっかりと処理をした。
今日寝るベッドが自分の精液のせいで濡れていて臭いというのは避けたかった。綺麗にしながらMEMが悲鳴を挙げた理由を聞いていたらどうやら大きなミスをして大金になるアイテムをロストしたらしい。
しっかりとヌいて綺麗にしたはずなのに、MEMのことを見て声を聞いただけで先程の自慰行為中と変わらない硬さと大きさを取り戻していた。
それを見てアクアは大きく息を吐く。
「ここまで節操なかったか……?前の時ってどうだったっけ?相当重症かもな……」
そんなことを言いつつ、配信を見続けていたらもう一発抜いてしまった。思春期のガキかよと思いつつもその日はゆっくりと寝られた。
次の日の演技は監督やスタッフ、共演者からも大好評だった。主役ではなくあくまでチームメイトだから主役を食うわけにもいかずにキャラだけ守って大人しくしているつもりだったのだが、チビで生意気な部分がよく演じられていたと褒められた。
アクアは完全に身長で選ばれたキャストだ。アクアと同い年は一人もおらず、全員歳上。そこに混じっても同年代にしか見えない演技は作品の空気感を守りたかった人たちからすればかなりありがたかったらしい。
「昨日よりも良かったですか?」
「ああ。我の強い負けん気ばかりの歳上なんて演じたことなかっただろうけど、かなり画が引き締まった。脇を固める役者が上手いと撮る側としても楽だよ」
そんな好評で大阪の撮影は終わり、東京に戻ってきたもののよくよく考えたら芽衣に会う口実がないことに気付いた。
事務所で撮影でもなければ配信者の彼女はあまり事務所に顔を出さず、事務所に来たからと二人で出掛ける用事もない。五反田の家に行くことを口実には使いたくないことと、純粋に五反田の元で映像系の勉強もしたかった。
平日は暇なら学校に行けと言われるだろう。ただでさえ行っていないのにサボりまで加わったら人として終わっているような気がした。アクアも芽衣も仕事で忙しく、休みの日が合うこともまず珍しい。
同じ事務所というだけで、案外接点が少ないんじゃないかと焦り始めた。
「頭が硬いねえ。ま、それが君の良いところでもあるんだけど」
「お前、どこからでも出てくるな。新幹線を使ってるわけでもないのにどうしてこうも会うんだ?」
「それはもちろん!君が私の推しだからさ!」
「ストーカーじゃね?」
「大枠ではそうかもね。本人公認のストーカーなんだから良いじゃないか」
「僕は認めてないぞ」
烏を従えた幼女と、東京でも会った。もう数年ほど同じ姿で会っているので今更驚きもしないが、行く先々で会うのは神云々を抜きにしたら割とホラーだ。ただの人間だった時が怖いのでアクアは彼女の言う神の遣いという話を精神衛生上信じることにしている。
「別に女の子に会いに行くなんて言わなければ良いんだよ。芸能界の友達と遊びに行くとか言っちゃえば良いのさ。そんな言い訳で遊んでる芸能人なんて腐るほどいるんだから」
「──お前、天才か」
「ふふ、君に褒められるならどんな事柄でも嬉しいね。休みはどうにかして合わせなよ。逆にスケジュールは合わせやすいだろう?同じ事務所だし、連絡先もわかってるんだから」
「確かに。助かった」
「うんうん。じゃあお礼ってことで今度から私のことはツクヨミって呼ぶように」
にこやかな笑顔でそう言う幼女。今まで名前を教えてこなかったのにどういう風の吹き回しだと首を傾げる。
それと名乗られた名前に覚えがありすぎたので問い質す。
「思いっきり有名な神の名前が出てきたんだが、本人に怒られないか?」
「大丈夫、許可は貰ってるよ。どうだい?思い切ってツーちゃんとでも呼んでくれるかい?」
「またな、ツクヨミ。ストーカーもほどほどにしとけよ」
「ほどほどね。りょーかい」
「……多分尺度が違うんだろうな」
アクアは人口の多いはずの東京で大通りなのに不自然に人がいなかった場所から立ち去る。変な空間から抜けた後にはそれが普通であったかのように人混みも車通りも見慣れた景色へと戻っていった。
アクアとしては神に気に入られる理由がわからなかった。二度目の人生ということは、神か何か知らないが何かしらの力が働いたということになる。
自分を客観視しているからこそ、ルビーの前世が気になった。何故彼女は選ばれたのか。幼くなくなったアイのファンの女の子。それに合致する少女を、雨宮吾郎は一人だけ知っていた。
「僕にそんな奇跡を与えるなら、神様もさりなちゃんにその機会を与えればいいのに。やっぱり尺度が違うんだろうな……」
そんなことを呟くアクアに、その発言を聞いていたツクヨミはアクアにバレないように空の上でクスクスと笑う。
どうしてあの双子はそこまで鈍感なのだろうかと。雨宮吾郎は前からそういう傾向があったが、ルビーは、天童寺さりなはむしろ年齢の割に聡い子だったのに。
「ルビーはあの頃の面影がないというか、吾郎くんに対しても結構外面を使っていたから本当の愛に飢えた少女である素に気付けなくても仕方がない。彼女だって今も吾郎くんが生きているって信じてるから兄が本人なんて考えに至らないのか。君が好きになった人は患者の出産に顔を出さず、その患者でファンだったアイが亡くなって顔を出さないような無責任な男なのかい?アクアなんてもうほとんど吾郎くんじゃないか。バイアスって怖いねえ。君にこんなに親身になれるのは雨宮吾郎しかいないんだよ。それがどんな状況だったとしてもね。……双子にしたのは悪かったって思ってるみたいだけど、これだって神様的にはずっと居られるようにっていう善意だったようだよ?その結果愛しのセンセが他の女の子と懇ろになるのは……なんというか、御愁傷様というか」
神様としては吾郎とさりなに同じ時間を過ごさせようという本当にただの善意だった。それと彼らの倫理観からすれば近親婚なんて別段珍しいものではない。母親であり妻、みたいな関係も多いのだ。現代の法的に問題だと知ったのは二人を転生させた後で、何で今の人間はそんなことになってるんだと嘆いていたほど。
ツクヨミとしてはどっちでも良い。神はルビー推しで、ツクヨミはアクア推し。二人の関係性も良いものだが、強制するようなものでもない。同担拒否の部分もあり、だからこそ上司と部下として問題なくやれている部分がある。
もっとルビーを映せとか、理不尽なことも言われるがそんなものは眷属の烏にやらせている。まだアイドルとして活動しているわけでもないのだから日常ばかりでも飽きてしまうだろう。だからツクヨミはツクヨミで好きにさせてもらっていた。
アクアは家に帰って、キャリーケースの中身をどうにかした後にミヤコに帰ってきた報告をする。学校ももう終わる時間だったのでアクアは私服のままルビーを迎えに行った。今では防犯のために中学生でもスマホの所持を許可されていたのでルビーに校門で待っているように伝える。
ルビーは女子友達と一緒に校門で待っていた。その女子友達はアクアの姿を見てわーきゃー言っていたが特に気にせず、ついでに校門で下校の監督をしていた学校の先生に忙しいのはわかるがもうちょっとだけ学校に来られないかとお小言を言われたが、そこはルビーがフォローする。
「でも先生、お兄ちゃんの成績は知ってるでしょ?テストであれだけ点数良かったら授業を聞かなくても大丈夫だって!」
「主要五教科ならそれでも良いんだがな。体育とか技術の先生が今のままだと成績を付けられないって。あと妹のルビーには兄を見習ってもう少し成績が良いと俺としても助かるんだがなあ」
「そ、それは言わないで〜!わたしだってお兄ちゃんに勉強を教わって復習してるもん!」
「ええ……?授業聞いてないアクアが教えてるのか?そこは役割が逆だと思うんだが……」
「授業に出てない分、ルビーに教えようと思って勉強をしてるので。撮影の合間とか暇だと教科書を見ていますし」
「なるほどなあ。アクアはこのまま俳優として生きていくのかもしれないが、それだけ成績が良いなら他の選択肢のことも考えておいても良いかなと思ったが、余計なお世話だったか。一応言っておくけど、このペースで学校に来られなかったらテストでいくら良い点を取っても都立高校には内申点の問題で行けないからな。そこだけ留意してくれ」
「わざわざありがとうございます」
ちゃんと大人をしてくれている先生のアドバイスをありがたく受け取り、二人は帰路に着く。ルビーから学校の様子を聞き、アクアもドラマのネタバレや守秘義務違反にならない程度に現場の様子を話す。
アクアが役者としての仕事が忙しいながらも家事や勉強をしているのを知っている。だから家を空けがちで接する時間は家族ながら少ないものの、信頼できる大人の男性としてルビーは懐いていた。
「お兄ちゃん、今回のお土産は?」
「556の豚まん。それと先輩にオススメされた紅茶クッキー」
「556の豚まん⁉︎テレビでめちゃくちゃ並ぶってやつじゃん!よく買えたね」
「冷凍の方は大阪駅で大々的に売ってるんだよ。どっちも新幹線に乗るついでで買ってきて悪かったな」
「ないよりはある方が良いんだから!豚まん楽しみ〜」
「事務所の冷凍庫の方は食うなよ。アレはスタッフとか帰ってきたライバー向けのものなんだから」
「そこまで欲張りじゃないよ!それはどっちかって言うとミヤコさんの方じゃない⁉︎」
「ミヤコさんならそれこそ心配要らないだろ。食い意地より健康用品の方が好きなんだから」
「あー、ね。昔言ってた若くてイケメンとの再婚諦めてないから、かなり容姿を気にしてるよね」
「アイツが消えてもうすぐ十年になるからな。恨みが溜まりすぎてキャリーオーバーしてるんじゃないか?」
二人のなんてことのない会話。
それを眺めていた烏の瞳の奥ではとある存在が終始笑顔を崩さなかった。