※この作品はR-18です。

【推し】のアラサー   作:MEM推し

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高校入学前へ貸しを少し

 アクアがとあるドラマの撮影を終えると、この作品ではないがアクアも何度か関わったことのあるプロデューサーが挨拶に来た。何の用だろうと個室のあるご飯やで話を聞くと、なんてことのない世間話だった。

 後はその鏑木プロデューサーが近々テレビ局を辞めるという話だった。

 

「最近のウチの局は視聴率を得るためにっていう気概が薄れていてね。台本の質も悪ければ、予算の積み立ても変だ。スタッフは優秀なんだけど、上がおかしくてね。フリーになることにしたんだ」

「なるほど……。僕が今参加している作品も色々と中途半端ですからね。『今日あま』の一話も見ましたけど、あれは原作者の先生に怒られなかったんですか?」

「盛大な喧嘩別れさ……。ネットドラマでやるんじゃなく、ちゃんと連続ドラマとして十二話構成にすべきなのに予算もくれずに媒体はネット、しかも台本もめちゃくちゃで出演モデルの数を増やすために要らないオリキャラまで増やす始末。僕もプロデューサーは名前だけ貸しているだけで、原作者の先生と拗れた案件を投げ渡されただけなんだよ。辞めるって言ってるからって押し付けられただけさ」

「御愁傷様です」

 

 アクアも好きな少女漫画が原作の『今日あま』が原作レイプに遭い、酷い評価になっている。アクアも見たが、俳優と呼べるのはヒロインを演じている有馬かなだけ。それ以外はモデルで演技経験のないど素人だらけ。演技が酷すぎて、演出やカメラワークがいくら頑張っていても視聴を続けるのは無理な作品だと判を押された。

 原作ファンほど改変と演技の下手さに裏切られたと感じるだろう。

 

「その次の恋愛リアリティーショーも役者が集まらなくてね……。苺プロに若い子は……君しかいないか」

「出ませんよ?世界中でどれだけ自殺者が出てると思ってるんですか?演技で散々恋愛をやってるのに、わざとカップルを作るような番組なんて出て僕にデメリットこそあれ、メリットはありません。その拘束時間で他の番組に出た方がマシだ」

「ああいうのはまだ地上波で芽が出ていない子向けの売名行為だからね。君ほどの活躍があれば出る意味がないし、ビジネスカップルがいるとなると恋愛系の仕事が減りかねない。……君の事務所であと若いのはMEM君か。彼女も大学生になっちゃったから番組の趣旨ともズレてるから無理だね」

「……ウチのMEMにもガチ恋勢はいるんです。恋愛ドラマならまだしも、リアリティーショーはむしろファンを失うので出ませんよ」

「だよね。たった四人の恋リアとかどうすればいいんだか……」

 

 貧乏くじを引いたようで鏑木は頭を抱えていた。フリーになってもアクアのことは使いたいようで、その時になったらまた連絡させてくれと言われてご飯をご馳走になった。

 アクアは今度の四月で高校生になる。そこで芸能学校に通って高校生活もほとんど通わずに仕事を中心に過ごすつもりだ。だから仕事で融通の利く芸能学校に推薦で入る。

 

「君の妹もネットアイドルを始めたけど、アイドルだからこそ恋愛なんて無理だし。八方塞がりだな……」

「ルビーも無理ですよ。僕が許しません」

「困ったなあ。ん?電話?」

 

 鏑木に電話がかかってきたようでアクアに断ってから電話を受けるとかなり慌てた様子で一方的に電話を切られたようで、唖然としながら電話を見つめていた。

 

「……大丈夫ですか?」

「『今日あま』の最終話のストーカー役が降りた……。あの一話を見て泥舟だと思ったんだろうね。ただ契約したんだから最後まで関わる信念もなく芸能界にやってくるな……。押し付けたからこそ上も代役を見付けるのは僕任せだし……。やってられるかあ!」

「泥舟は同意しますけど、事務所側も酷いですね。終わり良ければすべて良し、でもないですけど、評価を取り戻すのはそこしかないでしょうに。……鏑木さん、貸し一でストーカー役、引き受けましょうか?鏑木さんにはアイドル部門のあった頃からウチのプロダクションはお世話になっていたと聞きますから。僕も雑誌とかの引き受けをしてくださいましたから、母を説得して出てもいいです。スケジュールを確認した上で、ですけどね」

「……いいのかい?」

「原作も好きですから。まずはこちらの条件ですけど……」

 

 アクアが提示する条件に鏑木は全部承諾してスマホで誓約書を作成してアクアに渡した。それをミヤコに転送し、ミヤコはアクアが言い出したら譲らないことを知っているので許可。

 アクアはゲストとして『今日あま』に出演することになった。

 すぐに台本を読んで、原作も読んでドラマのラストシーンにするための場面だからか大きな変更はないと知る。

 そんな準備をしているとルビーがリビングにやってきてアクアへ問い詰める。

 

「お兄ちゃん、『今日あま』のあのドラマに出るの⁉︎お兄ちゃんも酷評してたじゃん!」

「母さんの口が軽すぎる……。ああ、ノンクレジットでストーカー役だ。鏑木さんの顔を立てるためのコネ出演だ」

「お兄ちゃんだけしっかり演技したって浮いちゃうだけじゃない?あの大根の中に混ざるんでしょ?」

「ウィッグも被るし、目にもカラーコンタクトを入れて、メイクもがっつりとやって肌色まで変える。苺プロの名前も出さず、謎の人物で押し通す。お前の雑誌モデルへの口利きの代わりだ。芸能界はこういうコネだらけだぞ」

「……わたしの仕事のために?」

「仕事がないのに芸能科に進んでいいのかって悩んでただろ。ネット活動ばかりだから言いづらかったかもしれないが、表の仕事もやっておけばクラスメイトとも普通に話せるんじゃないか?それに鏑木さんは優秀だ。ここでルビーの顔を売っておけば仕事が来るさ。あの人、アイドル方面にも顔が効くからな」

 

 アクアが鏑木に貸しを与えたのはルビーのためだった。ルビーのアイドルへの想いが本物で、母親のように危ない目に遭うかもしれないと伝えたが、それでも彼女はアイドルになると決めたのでアクアもミヤコも後押しすることにした。

 アイドルグループで売ることだけがアイドルではない。個人で頑張っているアイドルもいたのでルビーは新規開拓という意味でもネットアイドルとして売り出した。アイドルの募集もしなければ、応募をしてくる猛者もいなかったのでルビーは個人でデビューさせた。

 その結果配信界隈で見てもそこそこのチャンネル登録数を保持している。彼女の美貌と、苺プロの横の繋がりによるコラボでの宣伝、それにMEMとの勉強会でおバカキャラがウケて彼女は一気に伸びた。MEMに教わりながら、成績の悪い子が真剣に勉強をする様子が良かったと好評だった。

 踊ってみたのダンスはキレキレで、歌ってみたも上手いとは言えないが歌えることが楽しいと全身で伝えるような熱唱というのが相応しい真剣さと輝きでアイドルとは何かと完全に表現できていた。これにはB小町を見ていたミヤコも血は恐ろしいものだと戦慄したほど。

 そんなルビーであってもまだ地上波や雑誌などの表で露出がないので、一般知名度はかなり低い。地下アイドルはライブをやっているのでアドリブなども上手いが、ルビーは配信以外でライブなんてやったことがない。観客が実際にいる場所でやった経験もなければ、ステージで歌う機会もコネもない。

 そのコネを補うのが鏑木との橋渡しをしたアクアだ。

 

「……お兄ちゃん、忙しくないの?低予算ドラマってことはほぼタダ働きだし、いいの?何かあのドラマに出たい理由が他にあるとか?」

「原作を知ってるから、こんな酷いもので終わらせたくないってだけ。演出畑の人間としてストーリー以外にも評価された作品へのリスペクトがなさすぎる。多分原作の吉祥寺先生は実写化なんてしなければ良かったと思ってると思う。だから最悪なままで終わらせたくないっていう僕のエゴだ。関わって少しでも良くできるなら、その機会があるならっていう、ささやかな大人への『復讐』だよ」

「うわー。お兄ちゃんって大人びてると思ってたけど、そんな子供っぽいところもあるんだ。初めて知った」

「動機としては子供っぽいが、これは所謂テレビ局への手切れ金なんだよ。そっちの負債となる作品を立て直そうと努力したのでもう呼ばないでくださいねっていう契約を結ぶ。テレビ局の不手際に巻き込まないでくださいねとこっちからアピールするんだ。酷い作品で主演をやったりするとそれが代表作扱いされたり、評判が悪かったのをどうにもできなかったと評価される。そうならないように、泥舟から去る。今僕がサブレギュラーで演じている作品も酷いからな。ドットTVから苺プロは撤退だ」

「うっひゃあ。要するに出演NGを出すために出演しないといけないんだ。メンドー」

「芸能界はそういう場所だ」

 

 ルビーへの説明をそこそこに、アクアはそこから一時間ほどルビーの受験勉強を見た。芸能科の入試でも筆記試験はある。面接もあるが筆記で本当に酷い点数を取っていたら合格できない。ルビーの学力はそこまで高くないのでアクアとMEMの勉強会が結構知識の足しになっていた。

 MEMは学生設定だからこそ勉強配信をそれなりにしていた。アクアも勉強時間が取れていないためにMEMの配信に出て勉強を教えてもらうという勉強会をしたこともある。アクア的には勉強内容的に中学生の範囲はあまり勉強をしなくてもどうとでもなるのだが、文系科目はたまに歴史的出来事の年号が変わっていたり、知らない評論や小説が教科書に載っていたりするのでその勉強はしていた。

 アクアは『今日あま』最終話の収録に来る。アクアが鏑木によってスタッフやキャストに紹介される。スタッフはストーカー役がアクアになったことを知っていたが、キャストは誰も知らなかったため目を見張る。本読みという台本での合わせも吹っ飛ばされる超突貫工事による現場なので顔合わせは現場が基本だ。

 ストーカー役が変わるとは聞いていても、それが誰かなんてキャストやキャストの各々の事務所に通達はなかった。そこら中で見るアクアが茶髪のウィッグを被って特徴的な青い瞳もカラーコンタクトを入れてメイクもして顔の形から変更していたことで本当にアクア本人かと疑う人間もいたほどだ。

 パッと見ではアクアとわからないが、主演の有馬かなはアクアと共演したこともあったので彼の顔を見てすぐにアクアだとわかった。子役の最初期は有馬の方が人気があった。だが年齢を重ねるに連れてギャラが高くなって仕事が減っていった。それに反比例するようにアクアは仕事が多くなっていき、子役の男の子として一番人気になっていった。

 有馬は今では落ちぶれた女優崩れ。アクアは誰もが知る天才役者。その比較をされることが多々あって、エゴサをした時に比較されたこともあってアクアのことは苦手意識を持っていた。

 そしてもう一人の主演である鳴嶋メルトもアクアというかなりの目の上のたんこぶが現れたことには敵愾心を抱いた。主役は自分なのにと。他にも出演すべき作品なんていくらでもあるんだからこんな場末のネットドラマくらい譲れよと心の中で憤慨していた。

 顔が良い芸能人はその肩書きが何であれ写真集を出す。メルトはモデルなためにその写真集が主な戦場だが、その写真集の売り上げでアクアに勝てたことなんて一回もない。歳下に負けてばかりで、しかもアクアはそこが主戦場ではない。だからメルトは一方的にライバル視していたらそのご本人が自分のキャリアアップの場に現れたのだ。

 良い顔をするはずがない。

 

「アクア……。久しぶりね」

「ご無沙汰してました。今日はよろしくお願いします、有馬先輩。たったワンシーンですが有馬先輩とまた共演できて嬉しいです」

「やめてよ。アンタに先輩なんて呼ばれるような実績なんてないわ。今のアンタに敵うものなんて何もないもの」

「あー、それが僕も四月から陽東高校に通うことになっていまして。学校での先輩でもあるんですよ」

「あー……。まあ、アンタの忙しさを考えたらそうなるか。じゃあ、その。よろしく、後輩」

 

 アクアは有馬と握手をする。その流れでアクアはメルトに挨拶をしてそのままリハを撮る。アクアの本当に有馬の役を殺そうとする本気の殺気にメルトは呑まれてセリフが続かず、カットが入った。

 最後のシーンだからこそ本気で行きたかった。それが原作者の吉祥寺先生への最低限の手向けになると考えているからだ。

 リハが途中で止まったことなどなかったのでメルトはやらかしたと顔を強張らせていたが、そこへアクアは容赦のない言葉を当てる。

 

「メルトさん。僕は演技の質を抑えるつもりはないですよ。このまま彼女を殺そうとする、短絡的思考に走ってしまった恐怖を抱くストーカーという役柄を変えるつもりはありません。それが僕がこの現場に関わる条件だからです。あなたはストーカーの恐怖に打ち勝ってヒロインを守るヒーローだ。あなたはそのヒーローをここまで演じてきているんです。この最後だけ逃げ出すことなんて許されない。むしろこのラストシーンに向けてこれまでのシーンがあったんですから」

「っ……!うるせえよ!お前みたいな顔も良くて演技もできる天才役者に、演技素人の俺の何がわかる⁉︎急な代打でもそうやって完璧に役を演じられる本物の役者に、モデルの俺がどうしろって言うんだ!何で今までのシーンは良くて、このシーンだけ詰められないといけないんだ⁉︎」

「ここがラストシーンだからです。そしてここは原作と全く相違がない。最後のヒロインの恋した表情へ持っていくためのこのシーンが陳腐なものだった場合、本当のラストシーンすら貶される。それにどうしろって、解決方法はいくらでもあったでしょう?演技の勉強をするとか、監督や演出のスタッフさんに聞く。それこそ十年以上演技に携わっている有馬先輩もすぐそばにいた。それで改善しようとしなかったのはあなたの怠慢だ。一度仕事として引き受けたのなら芸能人として手を抜いて良いはずがない。本当に嫌なら役者なんて断れば良かったのに、あなたはそうしなかった。たとえどんな評価であったとしてもここまで走ってきたなら、最後くらいがむしゃらにやったらどうですか?最後まで適当に仕事をこなす人と、努力はしていたけど実らなかった人。スタッフの人がどっちの人と今後仕事をしたいか、良く考えてください」

 

 アクアが正論の暴力をかざすと、メルトには思い当たることがいくつもあったのか苦悶の表情を浮かべる。そして監督やスタッフに断って頭を冷やす時間が欲しいと告げてその場を去った。

 水を口に含んでいると、その隣に有馬が来た。彼女も水分補給をしながら目尻を下げていた。

 

「耳の痛い話だったわ。私も座長としてもっとやれることがあったのかもって」

「全員演技素人だったんでしょう?限界がありますよ。今回はこのまま演技ではなく、本物のリアリティを出してメルトには素のまま演じてる様子もないまま、ただの取っ組み合いで終わらせて僕と有馬先輩のやり取りだけで終わらせる。それがベストだと思う」

「今更だけどアドリブになっちゃうわよね。でも仕方がないか。やってやるわよ、アクア」

 

 戻って来たメルトは顔付きが違った。台本を持ってきてアクアがどう動くつもりなのかも確認して、リハの前でもやらなかった確認をきちんと全部やってから本撮りに移る。

 そこではリハ以上の殺気を出したアクアにメルトはセリフが噛み噛みになるものの、それが逆に必死に頑張っている感が出て良いと監督が判断した。アクアの異質な怖さ、声まで怖気を感じるような、普段の優しいアクアのようではなくて一層正体もわからず怖い存在へと昇華されたその一連の流れに、監督やカメラマンなどは今回の仕事でようやく満足のいくシーンが撮れたと頷く。

 たったの一シーン。されど一シーン。正真正銘のラストシーンに向けてお膳立てしてくれたアクアに、たとえどんな事情があろうと有馬かなという少女は──。

 その後、関係者による打ち上げがあってアクアは一人で会場を歩いていた。スタッフに感謝されたものの、キャストには好き勝手された奴、という扱いで腫れ物扱いをされていた。アクアとしては最後に吉祥寺先生と鏑木に話をしてさっさと帰るつもりだった。

 

「星野さん。最後のワンシーンだけは、私が描いた漫画の通りでした。正直、酷いドラマ化でしたが……あそこのシーンだけは、私も見たいものが詰まっていました」

「そう言っていただければ、役者冥利に尽きます。それと不躾なのですが、僕と妹が『今日あま』のファンで。サインいただけますか?」

「私にも、星野さんのサインをいただけますか?今日会えるとは思っていなかったので小物入れくらいしかないのですが……」

 

 アクアは原作の一巻を。吉祥寺先生は化粧品を入れるような硬いケースを出してサインを贈りあった。

 その後は鏑木に挨拶をしてさっさと退散しようと思ったのだが、その鏑木が有馬に話しかけていた。なのでそれが終わるまで会場の食事に舌鼓を打った。それを食べて、有馬が鏑木に頭を下げたところで話が終わったようで、鏑木がアクアの方に来る。

 誰にも聞かれない場所で話そうということで外に出て、鏑木は少し離れてタバコを吸い始める。

 

「今回はありがとう。最終話だけの評価は良くてね。で、僕はもうこれが限界だと思って今月付で退社。色々中途半端な奴は他の人に投げて来たよ」

「そうですか……。何かあれば苺プロに。ネットに強い演者は揃っていますよ?」

「それは知ってる。苺プロとは言わないけど、誰か芽のありそうな男の高校生知らないかい?恋リアだけは最後まで人を探せって言われちゃってね。そこまで拘るつもりもないんだけど、あと一人ってなったら探さないのも不義理かなって」

「ウチからは出せませんが……。該当者もいませんし。それこそ今回のモデルたちはダメなんですか?」

「彼らもプチ炎上中だからね。『今日あま』での演技が悪かったから原作ファンからかなり敵視されている。彼らはほとぼりが冷めるまで……ああ、そうか。一人いるじゃないか。ストーカー役を降りた子が」

 

 鏑木は一人心当たりを見つけたようだ。鏑木はこのまま帰るようで、アクアも今日は帰りたかったので別々のタクシーで帰ることにした。アクアはそのまま地下駐車場があるラブホに。芽衣と待ち合わせをしていて、そのまま部屋で合流して二人はそのままその場でやることを始める。

 

「タバコの匂いするけど、喫煙所に連れ出されたの?」

「吸いながらの雑談に巻き込まれた。一本も吸ってないぞ?」

「そこは信用してるよ。今日だって変なところには寄って来なかったんでしょ?」

「そんな場所に行ったら芽衣に会う時間が減る」

 

 この三年ほど、割と多めの頻度でSEXをしてきたためにスムーズに行為に移る。その中でわかったことはアクアがかなりの絶倫ということと、芽衣は基本受け身ということ。もちろん芽衣が動くことはあるが、アクアという若者の体力には勝てず、最後はされるがままだった。

 今日も正常位で一回、対面座位で二回。後背位で一回愛し合った後に二人でお風呂に入ってゆっくりとしていた。お互いキスマークを残すわけにもいかなかったので体にはそういう痕を残さない。

 ふー、とお互いリラックスしつつお風呂で他愛ない話を始める。直近の話となるとやはり『今日あま』だ。

 

「最終回だけは評判が少し持ち直したね。酷いドラマだったって評価は覆らなかったけど」

「それはそうだろ。終わり良ければすべて良しって言葉もあるけど、あれはあくまでその前段階が平凡かそれよりちょっと下の時にしか通じない。前が酷すぎて最後だけ良くても、最後の切り抜きだけ評価されて終わりだろ」

「私の彼氏の活躍が大きかったのはみんな認めてるよ〜?クレジットでも隠してたから誰だって躍起になってるし。でも声を普段と変えてるからまだバレてないね」

「現場と事務所と芽衣だけが知ってればいいさ」

 

 『今日あま』の最終話が放送されて数日経ったが、クソドラマという評価は変えられていない。ラストシーンで主役二人とストーカーのやり取りだけは観れるものになっていたが、それ以前が酷すぎる。有馬も下手な大根役者に合わせて演技を抑えていたので知っている人間からは下手になったと思われており、やはり役者としての成長には繋がっていない。

 演出や小道具、メイクなどは評価を受けているのでキャストと台本が悪すぎたという評判に落ち着いていく。このままストーカー役はちょっと演技の良かった新人くらいで今後は話題にも上がらないだろう。アクアも公表するつもりがないのでそれでいい。

 ただ芽衣としては気になるのが一つ。

 有馬がラストシーンで見せた赤面。それがどうにも演技に見えなかったのだ。

 

(素直に受け取れば主役の子に向けた表情、なんだけどアクアから聞いた感じそんな好感を持ってるようじゃなかった。それでそんな表情を向ける相手が現場にいるとしたらアクア、なんだよねえ。いや、演技が凄いって可能性もあるけど、女の勘が違うって言ってる……)

 

「どうかしたか?芽衣」

「んー?アクアは元気だなあって。あれだけシたのに、また硬くしてるから」

「……芽衣と風呂に入ってるんだぞ。我慢なんてできるか」

「ふふ、可愛い。んっ、レロ、ん〜〜〜♡」

 

 芽衣がディープキスをしつつ、アクアのペニスを扱き始める。お湯の中だとかなり動かしづらいが、手を動かす度にアクアが両足を反応させてそれが楽しいと言わんばかりに芽衣はアクアを攻める。挿入されるとアクアにやられっぱなしだが、逆に挿入していない時は最初の処理のように芽衣が好き勝手することが多かった。

 芽衣は痕にならないように優しく触れるくらいの強さでアクアの首を吸ったり、胸板へキスを落としていく。その優しい快感がアクアも好きで、なのにアソコに感じるのは強く激しい快楽だったためにそのギャップで息が乱れる。

 アクアの声変わりをした後の喘ぎ声が、女性心を狂わせる。顔も声も良い青少年が自分の肉体に溺れているというのは得もしない優越感を満たす。

 限界を見極めた芽衣は最後はアクアの口を塞いだ。そのままアクアはお湯の中で果てて白濁液がお湯の中から浮かんでくる。絶頂を迎えたために体の底から呼吸を求め、与えられるのは芽衣の優しい吐息。それで息を整えたためにアクアの目がとろんと溶ける。

 この身を委ねてくれる瞬間が、芽衣は好きだった。

 

「アクアもとうとう高校生かあ。でも高校もあんまり出席出来ないんでしょ?」

「ドラマと映画でほとんど日程が埋まってるからな。今年は五反田監督の作品もいくつかあるし」

「アクアは監督さんの作品は最優先で出るねえ。そういう契約をしてたんだっけ?」

「ああ。僕がアイのためのバーターをやって、そのままだ。監督の作品はいつも挑戦させられるから楽しい。出ない理由がないよ。お世話にもなってる」

 

 アクアは人気俳優なので一年どころか数年先のスケジュールまで埋まっている。『今日あま』なんて本当にオフの日が重なっていただけだ。そうでもなければいきなり出演依頼をされても出られない。番宣のためのバラエティなどであれば十分出られるだろうが、今年動こうとしている近いプロジェクトには参加できないだろう。

 

「まあ、芽衣が配信に出てくれって言うならスケジュールを見直すけど」

「無理はしなくていいよぉ。そもそも動画の方はルビーちゃん優先で出るんでしょ?私の方に頻繁に出てたら勘繰られちゃう。ちゃんとこうやって時間を作って会ってくれるだけでいいんだから。……ところで、ルビーちゃんにはまだ私とのこと伝えてないの?」

「あいつは口が軽すぎる……。ポロっとSNSで呟きかねないからな。聞かれたら答えるけど、そうじゃなかったら言うつもりはないよ」

「あはは……。確かに」

 

 二人はお風呂で体をしっかりと洗った後、タクシーを呼んで帰った。

 アクアはそのままベッドで快眠。入学式はすぐそこに迫っていた。

 

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