※この作品はR-18です。

【推し】のアラサー   作:MEM推し

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宮崎旅行の結果

 アクアは特に気にしていなかったのだが、『ガチ恋』がバズった。鏑木の手が離れたために何も期待していなかったが、SNSで活発に流れてくればルビーとMEMが拾う。そこからバズったのだとアクアは知ったのだ。

 だが、そのバズり方は恋愛リアリティーショーとしてはどうなの?と困惑するようなものだった。

 

「私、ずっとかなちゃんのファンで!今でも子役の頃の演技も見直してて、この前の『今日あま』は抑えてるんだろうなって思ってたけどラストシーン辺りは私たちのかなちゃんが帰ってきたって感じで!やっぱりあれって演出とかの意向でわざと演技を抑えていたんでしょ⁉︎ラストシーンはとても重要な場面だから全部を納得させるような昔の『私だけ見なさい!』って感じの太陽みたいな演技を発揮して、それが役に凄い合ってて!もう、これこれって画面の前でスタンディングオーベーションしちゃったもん!あれってやっぱりあのストーカー役の人の演技が上手かったから?演劇も全員で作り上げるものだからレベル感の引き上げとかも起こるよね!それがああ繋がったのならストーカー役の人に感謝しないと!」

「別番組に言及するんじゃないわよ⁉︎いくら配信元が同じだからって言って良いことと悪いことがあるでしょうが!ストーカー役はエキストラだって言ってんでしょ!」

「このキャットファイトというか、喧嘩百合?みたいなのが新鮮でバズったんだよ……。本当に何が流行るかわからないね〜」

「恋愛番組で女の子同士の恋愛だか友情だかファンの暴走だかがメインになっちゃったんだよ。そのせいでメインの恋愛よりもこっちが話題になってるの。酷いでしょ?お兄ちゃん」

「これはほとんど真似できないだろ……。これを計算尽くでやったのなら、黒川あかねはとんだ役者だな。舞台では有名らしいし」

 

 芽衣とルビーに解説してもらったが、同じ手法は使えないとアクアはもちろん苺プロも判断した。

 同性、特に女性同士で仲のいいエピソードは積極的に出すべきだが、作り物だとすぐにファンにはバレる。あくまで自然なものでないとダメだ。

 『今ガチ』でバズったような天然物に見せるような熱量のある関係は今のメンバーにはおらず、ここで乗っかろうとしても二番煎じにしかならない。これは有馬と黒川という二人の関係性だったからこそできた劇だ。

 メイン筋の恋愛だが、有馬も黒川も男性にはあまり積極的になれず、相手からのアプローチ待ちらしい。絵になっているのは女性が三人で集まっている時か、かなあかコンビの漫才か、ゆきを巡る男性陣の攻防らしい。

 青春がメインテーマだからこれもアリと番組側が判断したのだろう。

 アクアはそれからもドラマと映画の撮影で忙しく、いつも通りに過ごしていた。ルビーも配信はしているもののメンバー集めに苦慮しているようで、最終手段のMEMに頼るかという瀬戸際まで来ていた。

 ついでとばかりにアクアへ『東京ブレイド』の舞台化における打診が来たが、稽古の日程が完全に映画撮影と被っていたので拒否。年度末にやるような舞台のオファーを夏に言われても遅すぎるのだ。アクアのスケジュールを抑えるのなら一年遅いと言わざるを得ない。

 たとえ鏑木が関わっていたとしても物理的に無理なので丁重に断った。

 人気作であるために出演すれば話題になったかもしれないが、今更アクアは知名度を求めて出演を決めたりしない。アクアは舞台は未経験なので演技の幅が広がるかもしれないと思ったものの、今回は機会が悪かったと諦める。

 季節は巡って秋に入る直前。暑さもようやく収まってきた頃、『ガチ恋』がカップル不成立で黒川が「かなちゃんと一緒の方が楽しい!」と女の友情を選んで男の子を振ったことで百合エンドと囃されるある意味伝説のシーズンになったのも束の間、アクアへミヤコが一つ提案をしてきた。

 

「旅行?」

「そ。正確にはルビーのMVとMEMの旅行記のついでだけど。あなたが良ければMEMのカメラマンついでにデートに行ってきなさい。今更学校を四日休んだってあなたの成績なら大差ないでしょ?ちょうどこの週は何もないんだし」

「……まあ、今更か。良いよ。行き先は?」

「宮崎。あっちに凄腕のクリエイターが居てね。自然をテーマにするならその人ってくらい界隈では有名なの」

「……宮崎」

 

 アクアにとって因縁深い土地だ。前世の自分が殺され、今世の自分が産まれた場所。アクアとなってから一度も赴いていない場所であり、今はどうなっているかわからない場所。

 自分の死体も残っているかどうかわからない。もし今更見付けたとしてもアイ殺しの共犯に辿り着けるか。物的証拠でもあればいいが、十六年も前の話で実行者は既に死亡済み。望み薄だろうなと考えた。

 旅行の日程を確認して、アクアたちの旅行ルートでは最終日にルビーたちと合流して神社に行くだけで、むしろルビーの方が病院に近い高千穂で撮影をするという。日程的にも探せないなと考えてアクアは雨宮吾郎の死体を探すのは諦める。

 これだけ時間が経っていたら動物とかに荒らされて痕跡も残っていないだろうと、アクアは常識で考えてただ旅行を楽しもうと思った。

 転生なんてことをしている時点で、常識を疑うべきなのに。

 旅行当日。飛行機で九州へ向かい、ルビーたちMV組とは別れることになった際にルビーが芽衣に忠告をしてきた。

 

「MEMちょ、お兄ちゃんと二人っきりなんだから気を付けてね。男は狼になっちゃうって本で読んだから!」

「だ、大丈夫だよ〜。アクアは昔から気遣いできる子だし、女の子を取っ替え引っ替えするような子じゃないから……」

「でもお兄ちゃんって今彼女いないし、MEMちょはこんなに可愛いんだよ⁉︎いつその毒牙が向くか……!」

「お前は僕を信用しなさすぎだ。変なことを考える前にMVの方に意識を集中させろ」

「行くわよ。ルビー」

「MEMちょ!本当に気を付けてね〜!」

 

 ルビーはミヤコに引きずられながら借りたワゴン車に詰め込まれる。その様子を見て芽衣は冷や汗が止まらなかった。

 

「も、もしかして気付いてる……?」

「いや、それはないな。どうせ最近の『ガチ恋』のせいでクラスで恋愛について話題が上がって、その流れで口に出しただけだろう」

「やっぱり芸能科といえどもそういう話になるんだ?」

「高校生だからな。特に有馬が同じ学校だからかなり話題にはなった」

 

 アクアと芽衣も移動して撮影許可を貰っていた空港で撮影を始める。ゆっくりと休めるラウンジでリクライニングシートや足湯があるなど、搭乗者を最大限癒すような配慮がある。プレミアムチケットが必要だが、その値段に見合うサービスがてんこ盛りだった。

 それをMEMが面白おかしく紹介していく。今日の撮影はこの空港だけだ。明日は発展している街並みを散策しつつ食べ歩き。そして街中でも景色の良い場所を紹介して最後は夕陽をバックに丘の上から街を見下ろす予定だ。

 だがそれは明日の話。空港での撮影が終わったら予約していたホテルに向かい、そのまま泊まる。

 恋人たちがホテルに泊まったら、することは一つだった。

 

「んんっ……!ルビーちゃんに、信用しろって言って、なかったっけ……?」

「信用がないって言ったけど、狼にならないとは、言ってないよ」

「ふふ、我慢させちゃった……?良いよ、久しぶりだもんね」

 

 前戯で十分準備をしてからアクアは寝バックで芽衣に挿入する。お互いの体温をしっかりと感じながらアクアが腰だけを動かしていった。バックという体勢のためにいつも以上にアクアの肉棒を深く感じてしまい、高音の艷声が響くのは早かった。

 家族旅行のていで来ているのにその家族とは別行動。そして部屋は一つしか借りておらず、宮崎に来たのも名目上は案件を貰っての宮崎のPR動画を取るため。しっかり仕事もしているのに、その夜には二人っきりの誰にも邪魔されないホテルの上階でこうして秘密の関係に耽っている。

 その背徳感が二人の熱を更に高めていた。

 

「あっ、ああ!ん、ぴっちりくっついてて、アクアの息がかかって、くすぐったいよぉ……!」

「いや、だった?」

「そんなことないよ?こんなに近いこと、あんまりないから……。それに、後ろにぴったり、アクアを感じるのって……。いつもと違う感じがして、不思議なの」

「全身で芽衣を感じられるの、ハマりそう……」

 

 アクアも必死に腰を動かし、芽衣はちょっとキツイながらも顔を後ろに向けてアクアへ舌を伸ばした。

 その求愛行動が可愛くて、アクアも舌を絡める。行為にキスも合わさって二人の口から吐息が漏れるが、それすらも愛しさを感じ、二人の唾液を交換し合った。

 

「ちゅっ、んー♡ふふ、気持ちいいけど、キスしづらいね」

「首痛めるなよ?明日も撮影があるんだから」

「首よりも腰が大丈夫かなってちょっと心配してるよ……。あんっ!いきなり反応されるとびっくりするよ〜」

「そう言われると燃えるから……。弟が二人もいるのに、男心がわからないな?」

「わからなくて良いよ〜。君のだけわかれば」

「そういう、ところだぞ!」

「ああんっ♡」

 

 結局眠るのは日付が過ぎてからのことであり、次の日の撮影に支障は出なかったが、お互いに早く次の夜が来ないかと待ち遠しくなってしまい、カメラが回っていないところであまりMEMのことを知らないおばさんに「素敵なカップルねえ」と揶揄われたことに二人して顔を赤くしてしまった。

 二日目が終わって旅館でご飯を食べてお風呂をいただこうとした時に、アクアへミヤコから電話がかかってきた。一日の業務報告だろうかと受けたが、どうやら緊急事態らしい。

 

「アクア。明日あなたたち早めに来られる?」

「チェックアウトを早めれば一本早い電車で行けるけど……。何かあった?」

「……ルビーが、撮影の休憩中に遺体を見付けてしまって。それがショックだったみたいで今塞ぎ込んでるのよ」

「遺体?……事件に巻き込まれたとかじゃなんだな?」

「それは大丈夫。本人に怪我は一つもないわ。……ただ、その。今回のご遺体があなたとルビーにも関係がある人だったのよ。その人、アイの主治医だった人なの。そんな人が白骨遺体で見付かったのは、あの時の事件を連想させちゃうでしょうし……」

 

 ミヤコの言葉でその人物が誰かわかったアクアはこの場に芽衣がいなくて良かったと感じた。

 アクアはもう、あの死を受け入れている。残念なことに死については生前から身近なものだったために、慣れてしまっている。

 だが、その死体をルビーが見付けるのは想定外だ。今回の旅行でこっそりと見付けて、匿名で警察に通報しようかと考えていたところだ。なのにルビーが見付けてしまった。

 ルビーにも前世があるとはいえ、彼女の言動からして大人ではないことは薄々感じていた。彼女は普通の高校生となんら感性は変わらない。そんなただの女子高生が白骨遺体なんていうショッキングなものを見てしまったらどうなるか。

 

「わかった。一応聞くけど、その主治医の名前って?何で今日見付けてすぐその人だってわかったんだ?」

「雨宮吾郎って人よ。白骨遺体にかかっていたネームプレートが劣化してなかったからそれで判断したの。照合もしているそうだけど」

「なるほど。ありがとう。明日は急ぐよ」

 

 電話を切って風呂に入った後芽衣にも伝えようと思ったら浴衣姿の見覚えのある幼女がいた。何で旅館にいるんだと思ったが、その答えは向こうから答えてくれた。

 

「私にとってはこっちの方が地元だからね。さてさて、大変なことになっちゃったねえ?お兄ちゃん」

「ニュースにでもなってるのか?」

「いや?まだだよ。カラスが教えてくれただけさ。彼女が見付けたのは間違いなく、雨宮吾郎の遺体だよ」

「崖から落ちて、よくネームプレートも遺体も綺麗に残ってたもんだ」

「それはもちろん。犯人たちが隠蔽したからに決まってるでしょ?すぐに見付からないように近くの祠に移動させたんだよ。だから見付けるのに時間がかかった。天涯孤独の彼が失踪したからって真剣に探す人間がどれだけいる?実際隠蔽はうまくいった。まあ、彼女が見付けたのはちょっと想定外だったかな」

「……待て。犯人たち?」

「共犯の考えはあったでしょ?もう一人現場にいた協力者がいるんだよ。あ、君が考えてる黒幕とはまた別の人間だね。……本当に酷いものだよ。芸能界の闇って言うよりは、幼さゆえの稚拙さ、だろうけどね。芸能界にも汚れた部分はたくさんあるから、そういうのに飲み込まれたとも言えるけど、本質は結局その人の本質の悪さだ。環境の悪さは理由の一部でしかない」

 

 ツクヨミの視点からの解説に、アクアは雨宮吾郎殺害事件の根は深そうだなと考えていた。犯人とされる人物は最低でも三人。その内一人が死んでいようと、関わった人間は多そうだった。

 

「あの子を慰めてあげられるのは君だけだよ。期待してるね?お兄ちゃん」

「お兄ちゃん言うな。……情報ありがとう」

「素直な子は好きだぞー」

 

 芽衣に事情を説明して、朝の早い段階で高千穂へ。ルビーたちが泊まっているホテルへ向かってミヤコに最低限の情報を貰ってルビーの部屋の鍵を受け取りノックをした後返事がなかったので中に入る。

 ルビーはベッドの上で泣き腫らしていた。その瞳は黒く澱んでいる。

 この状態のルビーを見るのは二度目だった。アイを失った時、同じように引き篭もっていた。

 だからこそ違和感がある。アイは母親だからこそ、大切な身内を失い、生前からのファンだったために泣き腫らすのはわかる。だが今回の雨宮吾郎は産まれる前に母親の主治医だっただけの人物。彼女が悲しむ理由が薄い。

 白骨化遺体はショッキングなものだろう。だが、関わってもいない人間の死にそこまで感情的になる妹だとはアクアは思えなかった。

 そこに触れるべきか否か。まずは当たり障りのない言葉で話す。

 

「ルビー。ショックで食事も通らないかもしれないが、せめて水分は摂るべきだ。何か飲みたいものはあるか?僕が買ってくる」

「……ほっといてよ。もう、アイドルも辞める。続ける意味ないじゃん。……何のために前世の記憶があるのかわかんないよ。ママも救えないで、あの人も……」

「アイの事件と地続きだろうな。どこからか妊娠がバレて、産婦人科医の彼を殺せばお産が失敗するとでも思ったんだろう。実際はもしものために予備の先生も控えてるから彼を殺したとしても不審がるだけで、実際に僕たちは産まれている」

「…………冷たいよね、アクア」

 

 ルビーから正気のない声が漏れる。相当ショックを受けているのはわかるが、それでもあれほど夢見ていたアイドルを辞めるとまで言うのはメンタルが相当削れている。

 ゆらりと、ルビーはベッドの上へ立ち上がった。涙で赤くなった目で、アクアを見下ろしながら彼女はがなる。

 

「ママが死んだ時もそう!さっさと立ち上がって、子役として頑張っちゃってさあ!元が大人の人だったのかもしれないけど、推してたママが死んでどうしてそんなすぐに立ち上がれるの⁉︎もっと悲しんでよ!もっと普通で居てよ!私とミヤコさんを気遣ったのもわかるけど、だからってずっとずっとずっと仕事が優先で、家にも全然帰ってこなくてさあ‼︎家族ってそういうのじゃないじゃん!もっと暖かくて、なんてことのないことで笑い合う存在じゃないのっ⁉︎私だって、アクアが私たちを守るためにお金を稼いでるのは知ってるけど、それだけじゃ家族じゃないんだよ‼︎言葉だけで何が伝わるの⁉︎私、こんなに長い間兄妹だったアクアがわからない……!せ(・)ん(・)せ(・)が死んでて、それで割り切れって言うアクアのこと、ちっともわかんないよっ‼︎」

 

 ルビーの慟哭に、アクアは最後のピースが埋まって演技でもなく今世で一番驚いた。

 今までも何度も既視感を覚えていた。だが、それは彼女に失礼だと、勝手に感傷に浸っている自分が彼女と同一視するのは酷い話だと正体を探ることに蓋をしてきた。

 しょうがないだろう。自分は死んですぐに転生した。だから彼女もたまたま同じ時間に死んでしまった魂だと思っていたのだ。数年越しの転生だなんて、自分という例があるからこそ考え付かなかった。

 だが、彼女が考えている通りの人間なら。

 ダンスを上手く踊れないことも。

 年齢相応の学力しかなかったことも。

 熱心なアイのファンだった理由も。

 雨宮吾郎の死を悲しんでいる理由も、全てが繋がる。

 

「……さりな、ちゃん?」

「…………え?どうして、アクアが私の前世の名前を……?」

 

 アクアは我慢できず、彼女を抱き寄せる。

 彼女が死んでから、雨宮吾郎の人生に音なんてなかった。アイを推していたのはそれが彼女の生きた証を残すことになるんじゃないかと、壊れたロボットのようにただ彼女の熱を真似しただけ。

 彼女が死んで医者を目指さないのは逃げだ。彼女が見出したB小町の行方を知らなければ、彼女のすべてが台無しになってしまう。そんな強迫観念に突き動かされて彼女の愛したものを見続けた。

 ただそれだけ。

 死んだ後、もしあの世とかで会えたのなら彼女の好きだったアイドルのことを話せなければ幻滅されてしまうなんていうスピリチュアルな理由で縋っていただけ。

 天童寺さりなの、「生まれ変わったら」と言うつぶやきを叶えてくれた奇跡を、アクアはどう言葉にしていいかわからなかった。

 

「……もしかしてだけど、せんせなの……?」

「ああ、雨宮吾郎だ……!また会えて、良かった……!さりなちゃんっ!」

「〜〜〜〜〜〜っ!あ……うわああああああ!せんせのバカ!何で死んじゃってるの⁉︎病院に電話かけたら失踪してるし、あんな姿になってるし!アイグッズ大事にしすぎだしっ‼︎アクアとは別人すぎるし、わかんないよぉ!」

「それはこっちのセリフだ……!お転婆を隠してたくせにっ」

「前言撤回する〜〜〜!アイドル続けるし!せんせぇ、大好き〜〜〜〜っ‼︎」

 

 わんわんとアクアの胸の中で泣き続けるルビー。

 それをアクアは壊れ物に触れるように、優しく抱き留めていた。

 

 

 

 

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「それで?せんせは苦しいのを助けられたMEMちょに絆されて付き合ってるんだ?」

「……そもそも今世じゃ兄妹だから付き合えないぞ」

「う〜ん。政治家になって法律変えて?」

「無理だ。僕に政治は向いていない」

 

 それからアクアとルビーは共有できることは全て話し合った。その中で芽衣との関係も洗いざらい話したところでルビーは膨れっ面をしてしまった。

 愛しの先生の遺体を見付けてショックを受けていたら双子の兄がその先生の転生体で、アップダウンが激しかったところに彼女がいるという右ストレートを受けて、しかもその人物が彼女も良い人だと認めている女性。

 気落ちしても仕方がない。

 

「……まあ、MEMちょならいっか。二人の子なら実質わたしの子だし?」

「待て待て。どうしてそんな結論になった?姪っ子でしかないぞ」

「うんうん。なんか色々と解決したら喉乾いたしお腹も空いちゃった。まだ朝ご飯って食べられるかな?」

「時間的にはまだビュッフェをやってるみたいだな。行こうか」

 

 二人は手を繋いで一階の大食堂へ行く。そこにはミヤコたち苺プロのスタッフと芽衣がいて、顔を出してくれたルビーの姿にホッとしていた。

 アクアと手を繋いでいることは気になるが、ショックなことがあった後だから仕方がないと考えてスルー。芽衣も危機感など覚えず、兄妹で仲が良いな〜くらいにしか思わなかった。

 ルビーはご飯を食べた後、昨日中断してしまった最後の撮影をこなして飛行機に間に合う時間で終わらせることができた。それどころか今日の撮影が一番良かったと絶賛されるほどで、その視線の先にアクアがいたことは無関係ではない。

 色々あった宮崎旅行だが、あとは飛行機に乗って帰るだけ。そんな時にミヤコへ一本の電話が来る。東京に残してきたスタッフからの電話だった。

 

「もしもし、どうしたの?」

「社長、ニュース見ましたか⁉︎マジやばいっす!ニノさんが誰かに殺されて、ウチの事務所への電話が鳴り止まなくて……!」

「はあ?ニノって、元B小町の?」

 

 ミヤコが周りのスタッフにニュースを確認するように伝えて調べると、トップニュースで元B小町のニノが自宅で殺されていたと記載されていた。

 部屋には物色された跡があり、強盗殺人も視野に入れて捜査がされているということ。苺プロに電話が来ているのは彼女が最後に所属していた芸能プロダクションだからだろう。

 

「引退後の進退については知らないと答えなさい。実際私たちは彼女のその後なんて何も知らないわ。私が公式発表を考えるから今はそういった問い合わせを受け付けていませんで切りなさい」

「わ、わかりました!」

 

 関わりのあった人間の白骨遺体の発見に元メンバーの殺人事件。アイ周りのことが一気に動き出した。このタイミングは偶然なのかとアクアは勘繰るが、もちろん偶然ではない。

 ツクヨミが空港の屋上で、フェンスに腰をかけながら足をプラプラとさせながら呟いた。

 

「さあ、陳腐な全ての幕引きだ。この世はなべて、因果応報。ってね」

 

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