ARIA A SECRET SCHOOL DAYS 作:真夜中のミネルヴァ
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中年の女性司書と交代した少年は、教室に戻る前に約束どおり図書室内を一通り見てまわった。
閲覧テーブル、個人用デスク、AVブース、そして開架書庫……。
結局、誰も見あたらず、本棚の影でいそいそとスマホを取りだした。さっそく転送されたファイルをタップする。
お目当ては、お礼だと言って愛澤が送ってくれたマル秘画像データ。
「ずいぶん重いな……」
プログレスバーが左から右へゆっくり移動していくのをじりじりしながら、期待はいやが上にも高まってくる。
開くのに時間がかかるというのは、それだけ高精細の画像ということ。PCで見たかったけれど、それは家に帰ってからのお楽しみ。今は携帯の液晶画面でガマンガマン。自分に言い聞かせる。
愛澤からは誰にも見せないように、固く言い含められていたのだ。
画像表示!
少年は思わず息をのんだ。
誰も居ないと思っても、キョロリと油断なく顔をめぐらせずには居られなかった。
現れたのは、水着姿の若い女性の画像。
それだけなら、どこにでもあるちょっとエッチなグラビアにすぎない。
でも、ネオ・ヴェネ学園きっての才媛のものとなると俄然意味が違ってくる。
「スっ、スゴイっ! これってホントに、副会長っ!?」
端整な顔立ちであることはわかっても、小さな画像では細かい造作までは窺えなかった。だからといって拡大するとまた描写に時間がかかる。
まずは全身をじっくりとチェックしてから……。
少年は小さな画像を食い入るように凝視した。
色白の体は生つばゴックンもののグラマラス。豊かなブラウンの髪をポニーテールにして、眼鏡の中のちょっとはにかんだ感じの伏し目がいい表情だった。
やっぱり間違いない、あの人だ――。
去年、夏合宿でスク水姿を盗撮されただけで大事件扱いになった、高等部の女神。
学内男子の人気では常にトップクラス。“ランキング”では三大妖精の一角を食うこともあるくらいのステキな美人。
生徒会の役員会に代理で出席した際に何度かお目通りしたことがあったけれど、性格も見かけ通りのつつましくて優しいお姉さんだった。
中学二年の男子からすると神秘的なくらい臈長けた、憧れの先輩。
ちょっと翳りのあるところもまたたまらない。
それがいま小さな画面の中で、申しわけ程度の大胆水着姿になって、両ワキをさらす悩殺ポーズをしている。本当にショックだった。
「おとなしそうな人だったのに……」
たちまち股間が滾ってくる。
「これ、何って言うんだっけ……ビキニじゃなくて……」
とくにスゴかったのは、トップがストラップのないタイプのものだったこと。バストトップに貼り付けただけで、解き放たれた豊かな乳房が自然な形をさらしていた。
ゆっさりとした垂れ具合からはゆうにEカップ以上の巨乳なのが見てとれる。それなのに腰まわりはキュッと締まっていてカッコいい。
「やっぱり日本人の女の子とは違うんだョなぁ……」
少年はため息まじりに、率直な感想を口にした。
服を着ているときには細身に見えても裸になると骨格はしっかりしていた。
とりわけ上半身の発育の良さは成人女性でも日本人にはめったに見られないタイプ。
広めの肩はばに立体感のある胸まわり、ブラジャーの縛めを解かれても、なお深々としている胸の谷間。
拡大すれば乳首の形だってわかるかも――。
大きめの乳輪のようなピンク色のニプレスの上に、ポチっとできた可愛らしい影が興味をひいてならなかった。
誘惑に負けて画像拡大をクリックしてしまう。少しぐらい授業に遅れたってかまわない、もうそんな気分で。
はやく……。
急く気持ちを焦らすように、バーの伸びは亀の歩みどころか、まるでカタツムリ。
あともう少し――が、待ちくたびれるくらい長くて、じれかけたその時だった。
誰も居ないとばかり思っていた室内に、意表を突く跫音がたったのは。
あっ、と思ったときにはそいつはもう足を速めていて、少年があわてて書庫の奥から閲覧ホールに飛び出したときには、その見知らぬ誰かは既に脱出した後だった。自動ドアがプスッといって閉まる。
すぐに後を追ってはみたものの、そもそも撒くつもりでいた相手が見つかるはずもなく、授業の始まった廊下にはもう人の気配はどこにもなかった。
舌打ちしながら、きっと向こうはこちらの動きを窺っていて機会を待っていたのだと、してやられたことを認める。
ウカツだった――。
もっとしっかり見まわるか、カウンターで見張っていれば逃すことはなかったのに。
悔やんだが後の祭り。
でも、誰だったんだろう?
それに、どうして姿を隠す必要がある?
少年は怪訝そうに考えをめぐらせたが、さっぱり見当もつかなかった。
そもそも、愛澤の依頼自体が妙なものだったのだ。
まるで、誰かが潜んでいるのを知っていたような口ぶり。
怪しみながらカウンターに戻った少年は、一応、司書の女性教諭にも確認を取ってみた。
「さぁ、たぶん男の子だったと思うけど顔までは見てないわね」
予想通りの答えに少年は心中、失望のため息をつく。
なぜちゃんと見ていてくれなかったのかと罵りたい気分で。
が、もともとあまり目が良くない上に利用者の顔などろくに確かめることもない相手には、期待するだけムダというものだった。
ちぇっ――。
がっかりしたのには理由があった。
愛澤からは、もしフロアー内に人が居て、それが誰かわかれば成功報酬として“もっと凄い画像”のプレゼントをするとも約束されていた。
もっと凄い――となれば、それはもうヌードしか思いつかない。
それとも、それよりもっと凄かったりしてっ!?
あらためて逃した魚の大きさを想って、くやしくなる。
そんな欲求不満な気分を抱いたまま教室に向かっていた少年は、思い出して携帯の画面をチェック、思わず頬を弛めるのだった。
「スゴい……」
表示されていたのは、処理途中だった女性のバストの拡大像。
豊かな量感の曲線、肌理の整った白い肌に、ピンと尖った乳首が眩しい。
(……これが、アトラ先輩の、おっぱい……)
薄い生地を通して、小指の先ほどの可愛い姿がくっきり。口に含ませるための器官のやさしい姿を浮きあがらせている。
当分、夜の“おかず”に不自由することはなさそうな、ハイクオリティグラビア。
少年は、直接は見ることのできない女の肌のなりたちを、舐めるように検分した。
左のワキ乳にポツンと見つかったホクロも、なんともいえずエロチックだった。
むだ毛の手入れも完璧で、腋の下につくられた繊細なしわのひとつひとつに、抜きんでた美女ならではの甘美なドラマを感じる。
凄すぎっ!
でも……。
昂奮の第一波をやりすごした少年の顔はふたたび不思議そうになった。
「あいつ、どうしてこんなの持ってるんだ?」
本来なら真っ先に疑うべきことを、今さらながらにひとりごちた。
一介の中二男子が、男なら誰もが欲しがるであろう学園の花、副会長アトラ・モンテヴェルディのセミヌード画像など、一体どうやって手に入れたというのか?
それに、この写真……撮ったヤツって一体っ?!
女の子同士でふざけて撮りっこした一枚、そう思いたくても、完成度がそれをゆるさなかった。
大胆なポーズだけでなく、構図もアングルも、女体の魅力がひき出されるように計算されている印象。写真に詳しくはなくても、見なれた雑誌のグラビアと比較して遜色がなかった。モデルの良さだけを言えば、はるかに上。
少なくともそれなりに知識のあるものの手並みなのだ。
男――。
アトラ先輩って、やっぱりもう、誰かつきあってる人、居るのかな?
にわかに疑念が頭をもたげてくる。
写真部の人だったりとか――?
短絡した。
だったら、くやしいな……先輩がこんな写真を撮らせるってことは、きっと恋人ってことだから……。
垣間見た制服の下の豊満な乳房を、ほしいままにできる男の存在を想って少年はちょっと屈折した顔つきになる。が、すぐに機嫌を取りもどした。
三大妖精も灯里先輩も副会長も“おかずランキング”の常連トップランカーたちは、たまたま同じ学園内に生息しているというだけで、アイドルと同じ。
もとより自分などには手の届かない高嶺の花――と、そんな割り切りが既にできているのだった。
そうでもしないと普通の生徒は学園生活が保たないのだ。
周りにいる他の男子たちのように、美女たちの一挙一動に悶々とする毎日では、さすがに疲れてしまう。
さっき灯里先輩や、アリシア先生が現れた時みたいに。
それよりも――。
廊下の先に教員らしい人影が現れて、少年は携帯を閉じると大事そうにポケットに収めた。バックアップするまでは慎重に扱わなければ、と。
次に愛澤に会ったら画像の入手先を教えてもらおうと決心する。
もし、アトラ先輩のヌードを持っているのなら、拝み倒してでも見せてもらなければ……。
それから、当然コピーも。
ゲットできるなら、少しぐらい愛澤のパシリになったっていい――。
あれやこれやと妄想を膨らませているうちに、少年はなんだかまた楽しくなってくる。痛いほど膨らんだ前を気にするぎこちない歩き方で、遅くなった教室へと急いだ。