ARIA A SECRET SCHOOL DAYS 作:真夜中のミネルヴァ
あまり必要とも思えない部分だったのですが、書いておきたかったので
「おう、ジャマしちまったな――」
「アリシアちゃん、あたしたち急に乗り込んできたりしてごめんなさい」
「そんなことないわ、ありがとう、二人が来てくれてとってもたのしかった」
帰り支度を始めながら、三人の美人教師たちは互いを労っている。
アリシアの言葉にも社交辞令的なものは一切感じられない。
布団を畳んだり、使った部屋の清掃などの後片付けを終えた四人は、人道橋が冠水していない干潮の間の午前中、早いうちに島を抜けて帰途につくことにしていたのだ。
アキトも、既にすっかり身支度を済ませていて、三人よりも先に出かけようとショルダーバッグを肩に別れの挨拶をした。
「じゃあ先生方、ボクはこれで、お先に失礼させていただきます――」
一介の男子中学生が、遠くからでもひと目につく美女三人と行動を共にすることなど、もちろんできる筈もなく、途中、網代に寄って友人たちへの土産を買うなどのアリバイづくりをしながら独り帰るつもりでいたのだ。
が――。
「待て――」
晃に呼び止められる。
「はい、あのなんでしょうか?」
「おまえは残れ――」
「は?!」
「おまえは残ってアリシアの面倒を見てやるんだ」
言って晃はウインクをする。
「アリシア、おまえもここで、もう一晩、ゆっくりしていけよ、せっかくの夏休みなんだからな」
「ちょっと待って、晃ちゃん、勝手なことを言わないで」
「いいから――」
「そうだよアリシアちゃん、そうした方がいいよ、そうしなよ」
抗弁しようとするアリシアを制してアテナが笑顔で宥めている。
二人は初めからアリシアを残していくつもりでいたようである。
「今のあなたたちが他人目を気にしないでデートできる機会って、そうそうあることじゃないから」
「………」
「グランマには俺たちからちゃんと伝えておく、おまえの相手の男は問題のないヤツだって」
「晃ちゃん……」
「痩せ我慢することなんてない。言ったろ、俺たちは家族だって。おまえたちの恋路の邪魔をするつもりなんて元からないんだ」
「あたしにだってわかるから……アリシアちゃんの気持ち……
「晃ちゃん……アテナちゃん……」
「それとアキト、おまえにはいずれグランマからの呼び出しがかかるかもしれないから気持ちの準備を整えておくんだな。アリシアと詰めておくことがあるなら今のうちにしっかり話し合っておけよ。結婚の意思とか時期についてもな」
結婚――。
と、聞いて色を失ったのはアリシアだった。
アキトからまだ正式にプロポーズをされていたわけではなかったからだ。
「アキトさんに無茶なことを言わないで……」
「無茶なものか、コイツはとっくにそのつもりで居るぞ。ただ自分に自信がなくてなかなか切り出せずにいただけで」
晃に念押しをされた少年は、アリシアの顔を見て容子を確かめてからそして大きく頷いた。
アリシアは長いまつ毛を瞬かせて、頬を染める。
それは拒絶の反応には見えなかった。
「よし――」
ふたりの反応を見届けた晃は
「ちょっと無理矢理だったかもしれないが、俺とアテナがおまえらの婚約の証人だ。あとは二人で今後のことをゆっくり相談するんだな」
それぞれの理由から、愛し合いながらも足踏みをしていたアリシアとアキトの二人だったが、晃から背中を押される形で一歩前へと踏み出していた。
晃はリュックを肩にかけるとアキトの耳もとで
「アリシアのこと、頼むな……アイツは自分の気持ちにすなおになれない時があるから……おまえがちゃんとリードしてやるんだゾ……もうわかってるとは思うが、念のためな……」
「晃先生……」
一見、男性的でガサツなようでいて、晃は実際はとても繊細で気遣いのできる女性なのだった。
またアテナも、ただ
見るべきものを見、読み取るべきところをきちんと読み取る能力は、三人の中でいちばん優れているのかもしれない。
当然だった――。
三人が個性の違いはあっても、ともに甲乙がつけられないほどに、とても傑出した女性たちなのだ。
判っているつもりだったが、一夕を同宿して距離を縮めたことで、いっそう深くそれが胸に刻まれている。
互いを思いやる美しい教師、仲の良い三人の姉――。
そんな彼女たちも、プライベートでは子供時代の関係が蘇るのか、お茶目な面を垣間見せてくれたのも、心が和む良い見ものになっていた。
「見送りはいい、あとはまっすぐ帰るだけだから。アテナ、タクシーを呼ぶか?」
「今からだと、ちょうどバスが来るから、そっちの方が節約になるかも」
「そっか――」
「ちょっと速足になれば十分、間に合うし」
パッドの画面を操作しながらアテナが応じている。
結局、アリシアとアキトは、教師二人を従業員用の宿舎と望翠楼とをつなぐ渡り廊下まで送ることにする。
「じゃあね、アリシアちゃん、アキトくん」
「じゃあな――」
「ありがとう、晃ちゃん、アテナちゃん……」
「いろいろありがとうございます――」
アキトも腰を折ると深く頭を下げるのだった。
長い脚で大股に去っていく二人の後ろ姿が見えなくなるまで、アリシアとアキトの二人はそこに留まっていた。
いつしか二人は手を繋いでいる。
次に顔を合わせた時には、アキトは生徒から男の顔になっていて、アリシアもまた教師から恋する女の顔になっていた。
抱き合って、そして唇を重ねる。
久しぶりのキス。
いつ以来だろう、と思いながらの。
少年はちょっと舌を伸ばして相手の口の中に探りを入れて、怯えるように身を強張らせている女の舌の下側に潜り込ませて唇の間に捉えると、今度は愛しい彼女の舌を吸い出す要領で甘い唾液を貪るようにする。
軽いキスだけにするつもりが、セックスを前提にしたディープキスになっていた。
彼のペニスはブリーフの中でパンパンに膨らんで、今にもはじけてしまいそうなほどだったのだ。
ほんのりと甘く香る体臭と、清潔感のある声音、そして愛くるしい姿は男の征服欲を掻き立てずにはいられない。
彼女の身体の成り立ちを知悉する今は、それが隅々までどんなに好ましいものであるかを肌身を通して学んでいた。
女の肉のうっとりするほどの柔らかさと肌のなめらかさ、芳しいにおいと味……。
男の五感を慰めずにはおかない、美しい女体のすべて。
少年はアリシアの背中に腕を回して抱き寄せると、空いている方の手はサマーセーターの裾をスカートの中からたくって、しっとりと柔らかな肌に直に触れ、そのやさしい手触りを楽しみながらたわわに実った片方の乳房にたどり着いた。
が、男の手が肌着の上から包もうか、指で肌着の中を探ろうかと迷う一瞬の隙に、アリシアは「ここでは……だめ……」と、愛撫の誘惑を躱してしまう。
ようやくアキトの唇から逃れたアリシアは、乱れた息遣いにサマーセーターの胸もとを豊かに起伏させながら、瞳を懸命にして
「本当にあたしでいいの?」
と、訊いた。
意味は明らかだった。
こんなにも美しく賢明な女性が、こんなにも愚かなことを問うのは、自己認識の不確かさによるものに違いない。
ただそれも彼女の魅力をひき立てることはあっても、けして損なうようなことにはならなかった。
「先生、それはボクのいうべきことです……こんなボクでいいんですか?」
「ずるいわ、質問を質問で返すなんて、マナー違反よ。うふふっ」
アキトの言葉から同意のニュアンスを汲み取って、アリシアが微笑む。
今、この瞬間の相手の姿を目に焼き付けようとして見つめ合った。
「愛してるわ……」
「ボクも……」
今度の口づけは、最前のものに比べて少しマイルド。けれどもセックスを先送りにすることで、むしろ真摯な思いがのせられている。
教師と生徒という禁断の関係が、たとえ許されざるものであったとしても、将来を約束した男と女として互いを意識していた。
その歓びと安堵。
「お部屋に戻りましょう……」
「そうですね……」
部屋に戻ったらどうするか、どうなるのか、触れ合う指が気持ちを探りあうように絡まり、やがて指と指を交互に重ねてしっかりと握り合うのだった。
心が心が繋がりあえば、体もまた結ばれることを望んでいる。
まだ午前中、十時を少し回ったばかりではあったが、二人の願いはすでに正午を告げる時計の針のように、ぴったりと重なって一つになっているのだった。
ちょっと短めに
今夜中にできれば睦み合いの場面を描きたいのですが……
盆休み、宝の山を見つけてすっかり夢中になってしまって
アニメで絶賛放映中の原作が、某投稿サイトのランキング上位にずらっと並んでいることに
今更ながらに気がついてしまいました!
すっごく面白くて、半日で一気に千ページも読み進める躍動感のある語り口
短い文と、パラグラフごとに改行する文体って
スマホの小さな画面で読みやすくするためかな、って思ったのですが
どうもリズムや仕掛けがよくわからなくて――
しばらくして、これはマンガそのものだってことに気がついて納得
セリフと改行は吹き出しとコマの関係、地の文は絵に相当すると
なるほど、軽快に読めるわけです
ってことで、見よう見まねで本節からトライしてみようと思うのですが
難しいです