ARIA A SECRET SCHOOL DAYS 作:真夜中のミネルヴァ
歓喜の後の逸楽に、ぐったりとたゆたっていたアリシアが気がついた時、彼女は恋人の胸の中に居た。
やさしい眼差しが注がれていることに少しはにかみながら
「大好きよ……」
背中に腕を回してしっかりしがみつく。
乱れた吐息を整えながら、体からゆっくりと熱が引いていく、その心地よい気怠さにしばし時を忘れる。
アブラゼミとミンミンゼミが、勢力を競うように合唱を繰り広げていた。
暑い夏の、暑い昼まだき――。
ただ、お尻のあたりが湿っているのを感じるとびっくりして、身を起こして確かめずにはいられなかったのだ。
見ると真っ白なシーツに染みが広がっていてギョッとする。
まるで子供がお漏らしをしてしまった後のような……。
「まさか、これ、あたしが……?」
恐る恐る尋ねた。
「ごめんなさい、先生、いつもよりも一段と量が多くて、ボク、受け止めきれずに漏らしちゃって……飲みきれなかったから……とてももったいないことをしてしまいました」
「そんな……」
粗相をしていたことがわかって、整った顔に羞恥と当惑の色がのって、さらに愛らしさを増している。
広い額、くっきりとした二重瞼のつぶらな瞳に、三日月の眉がたとえようもなくやさしい。
細面の端整な顔立ちがやや寂しげな翳りを宿すとき、アリシアは最も美しく、悩める女神そのものになる。
そんな女神の恥じらう姿は、男の目にはこの上なく強烈なセックスアピールとなって、牡の征服欲を掻き立てずにはおかないものなのだった。
「大丈夫ですよ、濡れたのはちょっとだけですから、後でお布団を干せばすぐに乾くから問題ありません」
「………」
「でもボク、嬉しかったな……先生のカラダが、この世でいちばん美味しいジュースディスペンサーだったんだもん」
「そういう言い方、しないでください……」
恥ずかし紛れにむくれて見せるが、少年がそれを本当に喜んでいる事が窺えると、いっそう理不尽な気持ちになってしまうのだった。
「だって、みんなアキトさんがいけないのよっ……あたし……」
粗相は粗相でも子供のそれと、大人の女が歓びの最中に漏らすものとは、たとえ似たようなものであっても意味はまるで違う。
ましてアリシアのような女性の場合は値打ちにも雲泥の差があった。
ただ、そのような場面に立ち会ったのは初めてだったので、少年も咄嗟に反応しきれずにシーツに溢れさせてしまったのだ。
楚々としたおとなしそうな顔をしていたが、アリシアのカラダの備えは男からすると実に魅力的で、女性特有の器官は愛液の量もたっぷりだった。
その上、俗にいうところの、汐まで吹いてくれるとなると、少年はありがたくて拝みたくなるくらい嬉しくて、涙が出てきそうになる。
もちろん誰にも言えないし、本人にもその事実を伝えるのはまだ早かった。
自分の身体が、そんなふうに性的にしどけないことを知ったら、それはそれでアリシアを困惑させることになるだろう。
「キミはどんどん可愛くなるね……」
賞賛と感謝の言葉が自然に紡がれている。
「とっても嬉しいよ……」
「ずるいな、そう言ってすぐにはぐらかすんだもん……」
いつの間にかアキトはタメ語になっていて、そのぶんアリシアは甘えやすくなって、駄々もこねやすくなる。
「アキトさんがそうしたんでしょ……あたしにそうしたんだから……」
自分に言い聞かせるように繰り返していた。
「そうやって拗ねた顔もかわいいな……普段のキミしか知らないみんなは、あの白き妖精のアリシアさんが拗ねたりなんかするとは、きっと誰も思わないだろうから……みんなが知らないキミのいろんな表情をボクだけが目にすることができるなんて……とっても幸せ……ますます可愛がりたくなる……」
少年は目尻を下げて微笑むと幸せそうに言った。
「もう……そんなこと言って……あっ……!」
彼の手が背中を撫でながら滑り降りていくと、お尻の谷間を易々と犯して指先が、また肛に添えられている。
「やだっ、アキトさんっ――」
たまらず、また男の体にしがみつく。
「イヤですか? でも、裸でいる時の女の子のカラダは無防備だから」
「ああ、アキトさん……そこ……そこは……」
「ええ、先生のお尻の穴ですよ」
「うん……でもっ……おねがいっ……」
指先が中を冒そうと窺っていて、アリシアは身を固くする。
皺を伸ばすようにじっくり円を描いていた指が、真ん中にくると指を立てて力を添えようとしていた。
ほんの少しでも気を抜いたら途端に侵入をゆるしてしまいそう。
彼はそれを待っているのか、長く止まって持久戦に持ち込もうとしている。
やさしくて、無慈悲で、愛情深いのに、情け容赦もない、いつも矛盾する動きを見せて女を悩ませる男の指。
せつなくて、くやしくて、でも苛まれることをどこかで望んでいる、マゾイスティックな自分が身構えているのも感じているのだった。
「ああ……アキトさん……堪忍……」
「そんなにイヤですか?」
「うん、イヤ……それはイヤなの……」
肛を侵されることへの抵抗感は今も大きかった。
「ソレ? それってなにが?」
「だから……」
「言ってくれなくちゃわからないですよ――」
「そんな……」
少年が自分に淫らなことを言わせようとしているのが判って唇をかむ。
いたいけで頑なな美少女の顔になって。
でも、こうした場合、いつでも女は圧倒的に不利なのだ。
脆さを抱えた女体は、攻められるばかりで抗う術を持たないからだった。
結局、アリシアはアキトの言葉を復唱する形で、ついにはそれを口にさせられていた。
「ひどいわ、こんなことを女に言わせるなんて……」
「そうかな? でもカラダの方はそうは言っていないみたいでしたよ……だってヌルヌルしてたから」
「………」
ただ、要求に従うことで一旦はもうダメだわ、と諦めかけていたものが、彼の手は約束通りに背中へと戻っていって、陰部でのかりそめの安らぎを取り戻すことを得ていた。
それが執拗なアキトにしてはあまりにもあっけなく、まるで別の興味を見つけた子供が、それまで手にしていたおもちゃを放り出すように頓着がなかったことに少し拍子抜けしたような気持ちにもなっていて、彼女はそんな自分を怪しんでもいる。
あたし……本当に変わったわ……。
セックスが女を変えて、セックスが女を作る――。
何も知らなかった少女の頃とは違って、恋が肉欲と表裏のものであることをわきまえていた。
彼の手によって、自分でも知らなかった身体のなりたちを教えられている。
そっとしておいてもらえれば気がつかずにいたこと……。
知らなければこんな風に心を乱すことなく、きっと今も穏やかに過ごすことができたのに違いない。
静かで、そしてどこか退屈な毎日が続いていたのだろうと思う。
一方で、少年といとなむ恋愛模様はいつも、まるでジェットコースターに乗るような不安とスリル、ショックの連続になっていた。
アキトは、ことセックスという面においてはとても狡知に長けて積極的で、彼女にさまざまな提案という形の要求をして、譲歩と服従を求めていた。
そして一つハードルを乗り越えると、またさらなる要求を突きつけて、アリシアは渋々、承認、受容する。
それの繰り返し。
その度に彼女のプライバシーが削られて、逢うたびに彼のものにされていくこと、彼の色に染められていた。
感情表現が控えめだったおとなしいアリシアが、年甲斐もなく悲鳴を上げて、大胆に体で気持ちをうったえるように変貌している。
「嬉しいな……すごく嬉しい……キミの恥ずかしい姿を間近にできるのって」
「いやぁ……そういうのって……」
「ボク、先生のカラダの秘密、いっぱい教えてもらったから」
「エッチ……」
こんな言葉も以前ならばけして口にしなかっただろう。
それが碌に差し障りを覚えることなく普通に飛び出してくる。
「先生、そのエッチ、っていう意味、判ってるのかな?」
「え――?」
言われてみると、意味もよくわからずに使っていた。
「それって、ヘンタイっていう言葉の頭文字なんですよ」
「そうだったの? じゃあ、アキトさんはヘンタイさんなのね?」
「ええ、そうです……思いっきりヘンタイをやらせてもらうつもりでいますから」
「まぁ、こわい……うふふっ」
「ボク、先生にだけは、誰よりもヘンタイになる自信があるから。だから先生は……きっと晃先生よりも、アテナ先生よりもオーラルセックスの経験値が高いと思うな……」
少年はからかうように、舌を伸ばしてみせるのだ。
間近にしたアリシアはドキッとして、たちまち胸がもやもやしてくる。
このお口と舌が――と、つい思ってしまって……。
自身の体の秘密を自分以上に知っている人がいること――。
また、股間がじんわり熱を帯びて潤んで感じにもなってくる。
「……もう、すぐにおかしなことを言うんだから……」
「だってボクはヘンタイで、先生のセックスのにおいが大好きだから」
「バカ……」
「信じてくれないんですね」
分かっているから、だから求められれば体を開くこともできるようになっていた。
でも、そんなことを女の口から伝えることなどできるはずもなかった。
「じゃあ、証拠を見せてあげますね」
「証拠……?」
「ええ、証拠です――」
「………」
「先生は、男が人を好きになる時の“好き”には二種類、あることをご存知ですか?」
アリシアは首を横に振る。
「簡単に言うと、オ◯ンチンが固く勃起する、好きと、そうじゃない好きの二種類です……。後者は家族や友人へ向ける好きで、とても大切な感情だけど穏やかで温かいもの。愛情、友愛、親愛といった気持ち。でも前者は、それとは違って恋人に向けるもので、性的な意味を持つとても情熱的で激しいものです。相手の全てを自分のものにして、食べてしまいたいとさえ思うくらいの強い感情……セックスをしたい、その人のカラダの隅々まで知り尽くしたいと希う欲望……」
アキトの手に導かれて、彼の股間のものをにぎらされる。
アリシアは目を懸命に瞠いて、「いいんですか……?」と言うように少年の顔を見つめる。
彼はいつもはアリシアがペニスに触れることを望まないのだった。
「いまだけ特別ですよ――」
少年は微笑んだ。
手の中にあるそれは、びっくりするくらい固くて熱く、そして片手どころか両手にもあまるほどもあって、これほど長いものを自分の体の中にすっかり収められるのが不思議になってくるくらい。
「これが……アキトさんの身体……」
もしかすると、最初に目にした時よりも大きくなっているのかしら、とも思う。
思春期真っ只中、成長期にあるアキトは、こちらの方も成長途上にあるのかもしれなかった。
「熱いわ……男の子の身体って、こんなに固いものだったんですね……」
「どこまでももっちりふわふわで柔らかい女の子の体とは違うでしょ?」
「……うん……」
「ボクが先生に抱いている“好き”は、当然、こんなふうにオ◯ンチンが固くなる好きです」
「………」
「いつかお互いに年をとって、オ◯ンチンが固くならない“好き”になる時があるかもしれないけれど……でも今は、この先も当分の間は……ボクが感じている先生への好きは、こういう形の好き――なんです。セックスがしたくて、先生のいろんなにおいが恋しい好き……」
「これが……証拠……」
男の本音が男性器に現れてしまうというのは、なんとなくわかるような気がする。
性――というものが、人の行動に深く影響を与えるものであることをアリシアも自身の経験として覚えがあった。
「いいえ、まだです」
「……!?……」
「これからが本当の証拠ですから――」
「まだ、何かあるの?」
「それを今、お見せしますね」
背中に回していた片手をアリシアに示した。
証拠、というものが彼の手の中にあって、白いものが握られているのがわかる。
一瞬、何かしら? と思ったアリシアだったが、それが自分がさっきまで身につけていた肌着だとわかった途端に
「イヤだぁっ!」
と、思わず悲鳴をあげていた。
取り返そうとして手を伸ばすと、
「にぎっていないと、もう触らせてあげませんよ」
少年は宣告する。
「ずるいっ、そんなのずるいわっ」
「ええ、わかってます――」
せっかく触れることが許された彼の男性器、憧れていた恋人の秘密。
それと、守り抜きたい自分自身の秘密とがトレードオフになっていた。
「やめて……変なことしないで……」
クンニリングスをされるのは良くて、肌着をあらためられるのに抵抗があるというのは、自分でもどうしてなのかよく分からずにいる。
でも、ダメなものはダメなのだ。
どうしたらこの急場を逃れられるものかと必死に思い巡らせる。
けれども閨での彼女の気持ちは、こうした場合、いつもけして届かない。
少年は目の前で肌着を裏返してみせ、白いコットンの肌着の股ぐりの部分を表にしていた。
オリモノと尿と皮脂腺からの分泌物を吸って、女陰の谷間の形をくっきり写し取ったように菱形に黄ばんだ染みが描かれているのが目に入ってくるといたたまれなくなる。
本人にしてみると、昨夜、入浴を済ませて替えて以降、今までずっと秘所と接していた肌着は、自身の恥ずかしい臭いを吸いつづけた厭わしい汚れ物なのだ。
「イヤっ、イヤよっアキトさん、へんなことっしないでっ」
でも、彼はお構いなくというように、そこに顔を寄せてくる。
「ああ、やだっ――!」
もうダメだわ――と、観念したアリシアはたまらず目を伏せた。
長いまつ毛が哀しげに影を落としている。
と、手の中にあったものがビクリっとなって、さらに固さを増したのだ。
視線を上げた彼女の目に映ったのは、肌着に鼻先を寄せてうっとりしている少年の顔だった。
嗅ぎとるたびに、手の中でいきりたつ男の器官。
「わかったでしょ? ボクがどんなにキミのにおいが好きか、大好きかってことが。いつだってすぐにカッチカチになっちゃうんだから」
「………」
「こんなに可愛い人の顔を見ながら、こんなに可愛い人のパンツに染みついたにおいを嗅げるなんて、それがどんなに嬉しくて幸せなことか……」
「……そんなこと……」
アリシアは激しく赤面して恥辱に堪える。
一方、少年はおかまいなくといった様子で肌着のあちこちのにおいをシクシク嗅ぎまわっていて、
「このあたりが、お尻の穴と接していたところかな……」
肌着の表側から指を添えてそのあたりを際立たせると、固唾を呑んで見守る彼女の前で鼻面をあてると、しっかり嗅ぎとっていた。
「濃厚な、すっごくいいにおいがします……とても先生らしいにおいが……」
さらに言葉で辱めてくるのだ。
そればかりか
「キミも嗅いでごらんよ、ボクの大好きなにおいを教えてあげる」
汚れた肌着をアリシアの顔前へと押し付けようとさえする。
嫌悪にすぐに顔を背けたが、他ならぬ自分自身が作った臭いが香ってアリシアは眉を顰めてかたく目を閉じるのだった。
すごくイヤらしい饐えた生ぐさいニオイ――。
自覚しているつもりだったが、やっぱり堪え難い。
自分の体がこんなにも醜い臭いをさせていること、それを彼が知り尽くしていること。
泣きたくなるくらい羞しかった。
でも――。
「ヘンタイ……変態よ……女のそんな臭いが好きだなんて……」
「女じゃない、アリシアさんのだからだよ……キミは特別だから……」
「………」
「ボクはキミのセックスやお尻の穴のにおいが好きなの、大好きなの……」
懸命な顔で言われると、女心が悲鳴をあげている。
「ボクにとってはこの上もなくいいにおいだから」
言葉に偽りがないことは、手の中にものが一段と固さを増していることから窺えるのだ。
「この世でいちばん美しい女の人の作る、いちばん尊いにおいだから。こんなに可愛らしい綺麗な顔をした女神さまが、人間らしいにおいがするのって、すっごくステキなことなんですよ」
「……ひどい……」
「ひどいですか……?」
「……残酷よ……女に……恥をかかせるなんて……」
「ボクはただ、キミにボクの本当の気持ちを知って欲しかっただけなんだけどな……」
「………」
誇りを傷つけられても、それでも彼の気持ちは嫌というほど良く判ったのも事実だった。
辱めを受けた悔しさと、彼の本心を確かめられたことの満たされた気持ちと、相反する感動にもみくちゃにされた彼女の心は、逃げ場を失って涙となって溢れ出た。
「バカ……アキトさんのバカ……」
「先生……」
「……きらい……だいっきらいよ……いつも意地悪ばっかりするんだもん……」
部屋は明るいが、恋人を見つめるアリシアの瞳孔は大きく開いていた。
「そうですね……ひどいですよね……ボク……先生を泣かせてばっかりだから」
ぎゅっと抱きすくめられて、アリシアも回していた腕に力を込めた。
「ダイジなダイジなボクの女神さま……心のやさしいお姉さん……だから許してください……ボクはキミを傷つけたかったわけじゃないんだから……」
散々いじめてから、よくもそんな都合のいいことが言えるものね、と思うが、抱き合って接した肌はとっくに許していて、アリシアはお尻にある見えない尻尾をパタパタとうち振って応えていた。
身体が受け容れてしまうと、心はもうそれに従うほかなかったのだった。
なかなかまとまらないです