※この作品はR-18です。

ARIA A SECRET SCHOOL DAYS   作:真夜中のミネルヴァ

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その 午后の海岸で…その10

 

「……退屈しちゃって、眠くなったらお昼寝していてもいいですよ……」

 アキトはこともなげに言うが、もちろん彼の愛撫の最中にそんなことができるはずもない。

 今もその一瞬一瞬が冒険の只中にいるような気持ちでいる。

 気を張っていないと、うっかり取り返しのつかない粗相をしてしまいそうで不安になるのだった。

 たとえどんなに情けない姿を晒しても、彼はけして自分を蔑んだり疎んだりしたりしないだろうとは思っても、やはり女の側からすれば見せられる痴態には限りがあった。

 

 

「……アキトさん……そばに来て……おねがいよ……」

 もしも休むことができるのだとしたら彼の胸の中で眠りたかった。

「ボクはもう少しこうしていたいな……キミのにおいに包まれていたいから……大好きだよ、先生……」

 熱いキスが落ちてくる。

「ひっ……ンンン……はぁっ……ダメっ……」

 

 

 今、アリシアは抱き枕ほどもある大きなエアクッションの上にお尻を載せられて、まる出しにした秘所を高々と差し出すようにして、彼の口淫に身をゆだねているのだ。

 昨夜、バーベキューパーティーを楽しんだ海岸の、ビーチハウスの中で――。

 

 

 足元には真夏の午後の強い日差しを受けて、白く輝く砂浜と、遠くどこまでも続く青々とした大海原が岬の間に覗いている。

 聞こえてくるのは、ゆったりとしたリズムで繰り返す潮騒の音、BGS(バックグラウンドサウンド)のような蝉の鳴き声……。

 アリシアも温かな官能の海でたった一人、逸楽の波のうねりの上を漂っていた。

 誰もいないプライベートビーチは、二人にとってはさながらエデンの園なのだ。

 生まれたままの姿になって、お互いを晒して愛し合うのにこれほど自由になれる場所はなかった。

 ところどころが朽ちかけてはいるものの、まだ当面の間は使えそうな座敷の上に白いビニールシートを敷いてしまえば、どんなに羽目を外しても、寝室でのように体液で布団を濡らしたりする心配もなければ汗でシーツを汚すこともない。

 

 

 だから、アリシアも拒めなかった。

 でも、いざその姿になってみると、どれほどバチ当たりなものかを思い知らされている。

 これまで大胆な体位をいくつも経験してはいたものの、このやり方は羞恥を感じることでは一、二を争うものだった。

 抱き合うのでもセックスをするのでもなくて、全裸になって陰部をお尻の方まで剥き出しにして、ひとえに彼に全てを見てもらうために、舐(ねぶ)られるためだけに台の上にあがって脚を大きく開いている。

 アキトは大喜びで股間のニオイを嗅ぎ回っては口づけをして、じっくり観察をしてはまた顔を寄せてくる。

 まるでそこに蜜壺でもあるように、飽くことなく無心に舐っているのだった。

 

 

「いいにおい……」

「………」

 

 

 アキトが本当にそう思ってくれているのは、泣きたくなるくらい嬉しくても、こうしたことが恥ずかしいことには少しも変わりがなかった。

 

 

「……幸せ……ボク、こんなに幸せであってもいいのかな……このまま死んでもいいや……」

「……そんなこと……いわないで……」

「だって……この世でいちばんの女性が……女神さまが、絶対に他の人には見せない姿になってくれているんだもん……長い脚だって、いつもは慎ましく閉じているのに、それなのに今はこんなに大きく開いて、秘密をみんな見せてくれている……美味しい蜜をふんだんに振る舞ってくれている……」

 

 

 彼女の飴色をしたヘアを指先でやさしく梳くようにして、陰部の視界を整えている彼の表情は喜びに綻んでいた。

 普段はあまりこうした顔をするところを見かけないが、彼女の秘所を見つめるときは、いつでもとても幸せそうにしてくれるのだ。

 

 

 本当に好きなんだ……あたしのこと……あたしのニオイ……。

 変な子……。

 

 

 お口を使うのが大好きな男の子……でも自分はそんな彼に夢中になっていて、この瞬間も彼の唇が落ちてくることにスリルを覚えながら期待してしまっている。

 どんなに繰り返しても、けして飽くことなんてできない、恋という果実のあまりにも甘美な味わい。

 

 

「……だって、天国にいるような素敵な一生だったって思えるから……どこにも悔いのない人生だったって……でも先生と離れることになるのが辛いから、やっぱり死にたくないですけど……」

 チュっ、と吸われてまた乱れる。

「あっ♡……アキトさんっ……」

「なぁに? なんですか……」

「ソコっ……」

「クリトリス?」

「う、うん……」

 

 

 最も敏感な肉の芽が舌の上に載せられて、だいじにあやされていて、ほんの少しの微妙な動きだけで目の中に火花が散るのだ。

「ここは女のコの急所だからね……大切に可愛がってあげないと……」

 アリシアは瞳を懸命に、せつなげに頷いた。

 また、彼の鼻の下にお髭が生えて……。

 それを唇に包まれてアリシアは目を閉じた。

 

 

 クリフェラ――。

 

 

 少年が教えてくれた愛撫の中でも、とりわけ感じる、彼女をダメにする性戯のひとつ、男性器にするフェラチオに準(なぞら)えてクリトリスを口に含むようにするやり方。

 この上なく敏感な女の花芯が、恋人の温かな粘膜に包まれて、身も心もとろけてしまいそうな歓びの中に揺蕩(たゆた)う。

 時に少しざらついた舌先でくすぐられるアクセントが加わると、彼女の方も、もうこのまま死んでしまってまかまわない、そんなふうに思えてくるのだった。

 

 

 けれども今のアリシアの身体は、こんなにもステキな愛撫が、歓びの極みにあるような口づけが、実はまだほんの入り口に過ぎないことを、この先にはさらなる歓喜が、目も眩むような感動が待ち受けていることを知っている。

 彼はそれを少しずつ小出しにして、彼女を焦らしながら最後には必ず約束の場所へと誘ってくれるのだ。

 

 

 コワいくらいのやさしさで――。

 

 

 自分をこんなにも大切にして受け容れてくれる人を、可愛がってくれる人をどうして愛さずにいられよう……。

 

 

「愛してるわ……アキトさん……大好きよ……」

「あれ、おかしいなぁ……だって、“だぁーいっきらい”っていうのが、女の子の“好き”の三段活用の最上級じゃなかったでしたか?」

「ええ、そうよ……だから……だいっきらい……うふふっ……あんっ――!」

 

 

 またそこを柔らかく啄まれて、アリシアは刺戟を堪えてはにかんだ微笑みを贈る。恋人にしか見せない、素の自分を晒した笑顔を。

 両腕を頭上に投げ出して、全てを委ね切った無防備な姿になった。

 

 

「幸せよ……アキトさん……」

「キモチいい?」

「うん……すっごくステキ……」

「よかった……」

「……アキトさんになら……恥ずかしいけど……恥ずかしくないから……本当はすっごく恥ずかしいのよ……でも……いいの……不思議ね……うふふっ」

「愛してる……先生……大好き……」

「あたしも……」

 

 

 二人が恋のプレリュードから、本気で冒険に挑もうと気持ちを一つにした時だった。

 彼がお口だけではなくて、責め手に指もまじえるようになって、アリシアの視界も頭の中もピンク一色に塗り替えられていく。

 波のうねりが次第に大きくなっていって……。

 光の頂点を目指して駆け上がっていったかと思うと、すぐに奈落の底へと真っ逆さまに堕ちていく。

 心も体も嵐の波間を漂う木の葉のように揉みくちゃになっていた。

 

 

「もう、ゆるしてっ……堪忍してっ、アキトさんっ……あたしっ……もうガマンできないっ」

 

 

 目前に迫る光の世界の眩しさに、アリシアは固く目を閉じた。

 誰よりも愛おしい顔を逃すまいとして、股間に両手を伸ばして、無意識にそこに閉じ込めようとしていた。

 お尻をふるわせて、貪欲に歓びを求めて。

 そしてついに頂に指先がかかって、あともう一息、という時に――。

 

 

「ねぇ、何してるの――?」

 

 

 足元の方から突然、誰かから声がかけられて、アリシアは今にも歓びを迎え入れようとしていた最中にいきなり冷水を浴びせかけられたようになって、「きゃぁっ」と、悲鳴をあげると半ばパニックを起こしかけながらタオルケットを掴んで身を返し、声のする方に背を向けるのだった。

 

 

「ねぇ、お兄ちゃんたち、何やってるの?」

 

 

 寝乱れた姿を他人に見られたショックと、思いが届く寸前にそれを果たせなかった恨み、そして取り残された体から虚しく体液だけが内腿の間に蜜だまりを作っているのを目にした時の悔しさとで、緊張の糸が切れたマリオネットのようになって項垂れる。

 はぁはぁと乱れた息を整えながら、こんなに酷い仕打ちをされて哀しかった。

 が――。

 声の主が、若いという以上に幼かったことに気がついて、恐る恐る顔を向ける。

 目に入ったのは、ランドセルを背負った……男の子? 女の子?……まだ性差の現れる前の子供……だったのだ。

 ただ、だいじそうに両手でサッカーボールを抱えていたことから、男の子だと見てとれる。

 アキトは既に身を起こしていて、腰にタオルを巻きつけながら立ち上がっていた。

 

 

「どうしたの僕? 道に迷っちゃったのかな?」

 まるで何事もなかったのような、普段通りの声が彼女の揺れる心を宥めてくれているようだった。

 相手に和やかな声をかけながらビーチハウスの外へ出ていく。

 不意の闖入者を、まずはアリシアから遠ざけようとしているのが窺える動きで。

 アリシアは座敷の奥の縁に腰掛けて、背中を向けたままで二人の話し声が遠ざかっていくのを耳を澄ませて聞いていた。

 

 

「ねぇ、あのお姉さん、どうしたの?」

「あ? 見てたの?」

「うん――苦しそうな声がしたから……僕……」

「ありがとう、心配してくれて……お姉ちゃんね、さっき海でクラゲに刺されちゃったんだ。それでね毒を吸い出してあげていたんだよ」

「ふーん……大丈夫?」

「多分、もう少し休むと治ると思うから」

「そう、よかったね」

「うん、ありがとう。君も海に近づいたらダメだよ。まだクラゲが居るかもしれないからね」

「わかった」

「よし、いい子だ……君は近くの子?」

「ううん、夏休みだから、おじいちゃんの家に遊びに来たの」

「ひとりで?」

「うん――」

「えらいね、ひとりで来られるなんて、もうお兄ちゃんなんだね」

「そうだよ」

「いま幾つ? 六つかな? 七つ?」

「六つ――」

「六つかぁ、じゃあぴかぴかの小学校一年生だ。名前は言える?」

「むとう、たける」

「たけるくんか……初めての夏休み、楽しいよね」

「うん、今日は、これからおじいちゃんとセミ取りするんだ」

「それはいいなぁ、こんなに鳴いてるから、きっとたくさん取れるよ。アブラゼミにミンミンゼミ、もしかしたらクマゼミも取れるかもしれない、最近は暑いから……」

「クマゼミ?」

「日本でいちばん大きなセミだよ。黒くてかっこいいんだ……高いところに居るから、長い虫取り網がないと届かないかもしれないけど……シャー、シャーって鳴いて……」

「シャー、シャーって?」

「そう――」

「僕、おじいちゃんにきいてみるっ」

「うんっ、そうするといい」

 

 

 子供との接し方もアキトはずいぶんもの慣れているようで、和やかな会話が交わされているようだった。

 やっぱり子供同士だからかしら、と、最前のショックから立ち直って、アリシアも微笑ましくなってくる。

 

 

「でも、大丈夫かな? おじいちゃんの家は近いの?」

「もうすぐそこ」

「すぐそこ!?」

「あの、うら――」

 男の子は岬の先を指差している。

「そうなんだ、でもやっぱり海岸を一人で歩くのは危ないから、うちの石段を上って、山側から降りていくようにした方がいいかな……おじいちゃんの家には上からでも降りていけるんでしょ?」

「うーん……」

「ボクが案内するからついておいでよ」

「うん……」

「ほら、波も出てきたみたいだから、海沿いを歩くのはどうかな……波にさらわれたら怖いから……」

「わかった、ありがとう、お兄ちゃん」

 

 

 アキトは男の子を奥の崖の階段へと連れていくようだった。

 ビーチハウスの脇を通る時、アキトと男の子がこちらへ顔を向けるのに気がついて、アリシアは軽く会釈を返していた。

「……すごくきれいなお姉さんだね……髪が金色……」

「そうだね……」

「はだかだったよ――」

「うん、さっきまで海で泳いでいたからね」

「人魚みたい」

「そうだね、ホンモノの人魚さんかもしれないね」

「え、そうなのっ!?」

「さあ、どうかな……あははっ、後で聞いてみようかな」

「へー……」

 二人の声が次第に遠ざかっていく。

 

 

「アキトさん、子供に変なことを教えないといいんだけど……」

 一人になって、アリシアは独言ちた。

 切なさと諦めの混じったため息を一つ。

 体がすっかり情けないことになっているのに気がついて、鬼の居ぬ間にいったんシャワーを浴びることにする。

 その前に目ざといアキトに気取られないよう、クッションやシートについた汚れもタオルで丁寧に拭っておくのだった。

 冷水を体にかけると、ぼうっとのぼせていたようだった頭がスッキリしてきて、その分、演じていた痴態を改めて意識してしまうようになった。

 恋をして、どんどん大胆になっていくのがわかる。

 昨日、尻込みしていたことも、今では普通になり、そして明日には……。

「どうなっちゃうんだろう、あたし……」

 

 

 年若い彼と、教え子と婚約を果たして――。

 

 

 自分にとって非現実的だと思われていたセックスが日常になって、彼と手を携えて向かえる未来を思い描けるようにもなっていた。

 でも、やっぱりセックスは怖いものでもあるのだ。

 醜い姿を晒して、いつまでも彼の興味を惹きつけていられるかどうかもわからない。

 もし、彼の心が離れていってしまうことがあるとしたら……。

 他の女の子を好きになったりして……。

 ふと、そんな想像をしてしまうと気持ちが乱れてしまいそうになる。

 自分と、晃やアテナの立場の違いは、アキトがまだ思春期の男の子だということ。

 彼はこれから大人になって、世界がどんどん広がっていく。

 きっと素敵な異性と様々な場面で出会うことになるのだろう。

 その一方で自分は――。

 

 

「考えても仕方のないことだけど……」

 また独言た。

 

 

「何が仕方ないんですか?」

 いつの間にいたのか、シャワーブースの衝立の陰からアキトが顔を覗かせていた。

「あら、アキトさん、戻ってきたのね」

「ごめんね、先生、キミを一人にしてしまって」

「それはかまわないけど……あの子をお家にまで連れていってあげたの?」

「ボクはそのつもりだったんだけど、あの子がここでいい、あとはもうわかるからって、そう言うから、その先の尾根で別れてきたんだ……ボクも……家までは行かない方がいいような気がして……さすがにこの格好だと言い訳も苦しいし……」

「そうね……」

 全裸に腰タオル、というのは子供の引率をするには穏やかではなかったかもしれない。

「ありがとう」

 アキトから差し出されたバスタオルを受け取る。

 肌についた水分を拭っている最中も、彼が遠慮のない視線を送りつけてくるのに気づいて

「なぁに、あんまりじろじろ見ないで……」

「シャワー、浴びちゃったんだね……残念……」

「残念って……」

「だって、キミのにおい……流しちゃうなんてもったいないじゃないですか」

「女の子はね、大好きな人には綺麗な姿を見せたいの……それが女の子のエチケット」

「キミはいつでも、どんな時でもミス・パーフェクトだと思うけどな……」

「………」

「子供は正直だから、あの子も先生のこと、すごくきれいだって言ってたよ」

 ただアキトは少し含みのあるような物言い、表情をしていて

「何かあったの――?」

 尋ねた。

「いや、別に大したことじゃないんだけど……」

 アリシアは応えずに小首を傾げて彼の言葉を待っている。

「うーん……」

「なぁに、そんな顔して、気になるわ」

「これは言うべきなのかな……」

「言うべきって……? あら、なにかあたしに関係があることなのっ?!」

「そうとばかりは言えないんだけど……」

 アキトは、どうにも態度が煮え切らない。

「ハッキリおっしゃい――」

「怒らないでね……」

「怒るって……どうしてあたしが?」

 

 

 理由を聞いたアリシアは、たちまち真っ赤になっていた。

 

 

「ひどいっ!」

「だから、ボクじゃないってばっ!」

 アリシアは拳を作るとアキトの胸を打擲しようとしている。

「あの子がそう言ってただけで……」

 アキトは別れしなに、男の子から名前の代わりに

 

 

 くさいおにいちゃん――。

 

 

 そう呼ばれた話をしたのだ。

 男の子が現れる直前まで、二人が情熱的に取り組んでいたことからみて、それが彼女の移り香であるのは明らかだった。

 

 

「だからって――」

「だから言いたくなかったんだ……ボクはそんな風に思ってなんかいないのに……」

「もう……」

 少年はアリシアを抱き寄せると、なおも身をもがかせて逃れようとしているその背中に両腕を回して力を込めた。

 抱き合っていると、いつしか互いの呼吸のリズムが重なって、それとともに一時、掻き乱された気持ちも自然に鎮まってくる。

 

 

 お座敷に戻ってからも、しばらく身を寄せ合うようにしていた。

「ごめんね……」

「……もういいわ……あたし、怒ってなんかいないから……」

「良かった――」

「………」

「でもきっと、あの男の子だって……いずれ年頃になって好きな女の子ができたら……ボクの気持ちがわかると思うな……」

「……さぁ……どうかしら……それは……」

「あれ? それって、キミみたいにいいにおいのする女の子なんて、そうそう居るもんじゃないっていう意味?」

「ちがうわっ――」

「違うんですか?」

 アリシアは目を剥いたが、ワケ知りに微笑むアキトの顔を見た途端、迂闊にもまた言葉の仕掛けに引っかかってしまったことに気がついて、疲れた諦めの顔をする。

 

 

「ボクはそう思いますけどね……先生みたいにいいにおいのする女の子は二人と居ないって」

「バカ……」

 いまアキトが纏っているニオイは、自身のものに他ならない。

 女のニオイだった。

 それなのに、そんな恥ずかしい臭いをさせている彼をたまらなく愛おしく感じてもいる。

「……本当に、エッチなんだから……アキトさんは……」

「だから続きをしませんか? さっきはジャマが入って中途半端になって可哀想なことをしてしまったから……」

「………」

「クンニしたいな――」

 クンニ、と短縮形で言われると、余計にイヤらしい語感になって胸がざわついてしまうのだ。

「イヤ、ですか……?」

「……女の子に……そういうこと、聞かないで下さい……」

 少年の愛撫に慣れてきた今も、アリシアにはまだクンニのおねだりまではできなかった。

 

 

 そんなはしたないこと――。

 

 

 けれども体は既に期待に綻び始めている。

 せっかく洗い流したはずなのに、もう肉うろの奥が、じゅんっ、と潤んだような気がして、どうしていいかわからなくなってしまうのだ。

 彼の手が乳房に伸びてきて、包まれても拒まずにされるがままになっていた。

 放っておけば、また股間を探られるとわかっている。

 そして、そのあとは……。

 長い睫毛を伏せがちに、視線を絡めて切ない思いをうったえる。

 それはたとえ言葉にはならなくても、同意の意思表示に他ならない仕草なのだった。

「また、クッションの上にお尻をのせてくれますか? あれだと姿勢が楽で、いつまでも舐めていられるから……先生のキレイなお尻の穴がヒクヒクするのもよーく見えて、すごく幸せな気持ちになれるんです」

「……バカ……エッチ……変態……」

 淫らな物言いをする彼に、精一杯の抗議を呟いた。

「わー、白き妖精のアリシア先生が、そんなイケナイ言葉を口にするんだ」

「あたしだって、言うときには言うわ……いつもニコニコしてばかりもいられないから……」

「あらあら、うふふっ――」

 自分の口真似をされて、唇をキリリとさせる。

「もう、アキトさんのイジワルっ」

「じゃあ、イジワルついでに、今からはとっておきのイジワルプレイをして、先生を虐めてあげますね」

「え――!?」

 そんな怖いことを言う少年はやさしい笑顔を向けている。

 

 

「アレも、もうそろそろ、人肌に温まってきている頃だから……」

「あれ……? あれってなんのお話ですか?」

「昨日の夜、フリーザーの中にあったのを見つけていて……」

 言いながらアキトはビーチハウスを出ていくと、すぐに三角形のホイップクリームのチューブを持って戻ってきたのだ。

 それは、スーパーなどで冷凍ケースに置かれている、よくあるケーキ用の素材の一つだった。

「それ、ケーキのデコレーション用の生クリームよね?」

「うん、ここに降りてくるときに持ってきていて、ずっと日向に出しっぱなしにしておいて溶けるのを待っていたんです」

「………」

 少年はビニールのチューブを手で揉むと、柔らかくなっているのを確かめて満足そうにしている。

「もうそんなに冷たくもないから……これなら使えそうですね」

「使うって……!?」

 何が始まるのか分からずにキョトンとした顔をしているアリシアだったが、それからほどなく、その他愛もない食材が女の肌にとってどれほど毒となるものか、女の矜持を残酷に奪っていくものであるかを、身をもって学ぶことになったのだった。

 

 




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来週は更新をお休みします
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