※この作品はR-18です。

ARIA A SECRET SCHOOL DAYS   作:真夜中のミネルヴァ

107 / 163
その 午后の海岸で…その12

 

 

 こうして何か思いめぐらせて、ニンマリした顔つきのアキトはたいてい悪巧みをしている時のもの。

「なにを、考えてるんですか?」

「とってもイケナイことです――」

 案の定な反応が返ってくる。

「でも安心してください、“今日は”しませんから」

「………」

 今日は――、というからには、いつかは、という意味が当然含まれている。

 彼がいうところの、とってもイケナイこと――は、女の身にしてみれば、いつでもとても不都合で不吉であることに間違いなかった。

 だからアリシアも「イヤ――」と、さらに態度を頑なにしている。

「子供みたいな駄々をこねないでくださいね」

「まぁ――」

 ワケ知りに寛いだ様子の少年からは、教師に対する生徒の謙(へりくだ)った態度などはどこにもなくて、むしろどことなく上から目線で窘(たしな)めるようでもあり、彼女の反応を楽しんでいるのが窺えるのだ。

「あたしの方がずっとお姉さんなんだから、あなたが聞きわけよくしないといけないハズでしょ?」

「そうですね……でも、たとえ年上だとしても、女の子は女の子、男からすると愛でたくなる可愛い生き物であることには変わりません。だって、ついさっきまでニャンニャン鳴いていたのは誰でしたっけ?」

 痛いところを突かれて

「言ったわねぇ、それなら、あたしも容赦しないわっ」

「え、容赦してくれないんですか? それは楽しみだ」

「もうっ――」

 それからしばし、抱く、抱かれるの主導権をめぐって二人してビーチハウスの座敷の床の上を転げ回った。

 時に「キャッ」、という悲鳴が上がり、軽やかな笑い声が交錯する、セックスの幕間で演じられる仲睦まじい男女ならではのふざけっこ。

 ほんの少し天秤の竿が傾けば、また濃厚な性戯の開始となるところ、それをギリギリのところで踏みとどまって、二人は全裸のまま身を長らえて、はしゃいで乱した息を整えながらビーチハウスの天井を見上げていた。

 指と指とを絡ませてしっかり手を繋いでいる。

 

 

「ねぇ先生、熱冷ましにこれから少し海で泳ぎませんか?」

「それはいいけど……」

「太陽も稜線の向こうに隠れて入江は陰っているし、日没まではまだしばらく時間がありそうですから」

「今、何時?」

「えーと……じき五時半になるところかな……」

 携帯の画面をチェックして言う。

「夕ご飯、アキトさんは何が食べたい? お昼はおそうめんだけだったから、夜は少しボリュームのあるものがいいわよね」

「ボリュームのあるものですか……ボリュームのあるものって言ったら、やっぱり先生のカラダかな? ボク、夜も先生を食べたいな」

「それはダメっ、だってあたしも食べられるものじゃないと」

 アリシアはキッとなって言下に斥(しりぞ)けた。

「じゃあ、昨夜のバーベキューの残りの食材を使って……二人でバーベキューってなると準備が面倒だから、キッチンで簡単に済ませて、食後はボリュームのあるデザートにするっていうのはどうですか?」

 少年の方も、あくまで“ボリュームのある食材”への拘りを捨てるつもりはないらしい。

「ねぇアキトさん、セックスはだいじなことだけど、体を使うばかりではいけないでしょ? きちんと栄養も取らないと」

「ボクはたっぷり栄養、とってますけど――」

 少年は意味深な物言いをして、女のと胸をひと突きする。

 アリシアは否応もなく過去の記憶が蘇って、身が竦むほどの羞恥にたちまち真っ赤になるのだった。

「……本当に……エッチなんだから……バカ……」

「エッチなボーイフレンドはおキラいですか?」

「だいっきらい――」

 アリシアがまたイーっとやって、真珠のような歯並みを見せつけると、シックで落ち着きのある大人の女性からいきなり可憐な少女のようになっていて、少年は一本取られたという顔をして幸せそうに微笑んだ。

「だってこんなステキな機会、次にいつあるかもわからないし……今夜も思いっきりハメを外したいから、っていうかハメハメしたいから」

 股間のものをいきらせながら、ヌケヌケと言うのだ。

 これも思春期特有の多情さなのかしら? と、アリシアはそんなアキトの若さを眩しく思う。

 自分はすでにお腹いっぱい食べて満たされているのに、彼の方はまだまだ余力をたっぷり残しているようで、そう易々とは解き放ってはくれそうもないのだった。

「でも……」

「大丈夫です、まだコンドームは七つ残っているから、明日の朝まではなんとか保つと思いますよ」

 もちろんアリシアが案じていたのは避妊具の残数などではない。

 それはそうとして、あと七つもどうやって? 使い切るつもりなのっ!?

 大きく肩で息をして天井に視線を泳がせる。

「先生のカラダはボクにとってはいちばんのご馳走だから、いくら食べても食べ足りないです。でも先生ご自身のことを考えたら、ご飯もちゃんと食べないといけないですね」

 どうやら今夜もまた抱かれることを覚悟するしかなさそうなのだった。

「いまだって、我慢してるんですよ……ただキミにあんまり一度にいろいろなことを経験させちゃうのも負担がかかるかなって思って」

 セックスに関する限り、彼の引き出しはアリシアにとってさながらびっくり箱だった。

 あるいは、ひとたび中に足を踏み入れたら決して同じところには戻ってこられないお化け屋敷――。

「アキトさんって、そうやっていつもイケナイことばっかり考えているの?」

 思い詰めたような顔をして尋くアリシアの憂いのある表情は、牡の目線に立つと強く征服欲を掻き立てるセックスアピールとなるのだが、当人の自覚が薄い分、いつも不用意に魅力を振り撒いている。

 心惹かれて少年は瞳を甘くしていた。

「だって仕方ないじゃないですか、いちばん興味があることなんだから。ボク、男なんですよ。健康でセックスがしたい盛りのミドルティーン男子で、すぐ近くにはこの世でいちばんステキな女の人が居るから」

「……そうやって今度は開きなおってるし……猫かぶりしていたのね、憎らしい。ちょっと茫(ぼう)っとしてるところはあったけど、おとなしくていい子だと思っていたのに、ひどいわ、あたしのことダマして」

「別に騙してるつもりなんかなかったですけど……アリシアさんだって普段はおっとりとしたおねぇさんおねぇさんしているのに、裸になるとすっごく可愛くなっちゃうじゃないですか――」

「あたしは――」

「そういうのってオトコのオチ◯チンには猛毒なんですよっ。いっくら可愛がっても、もっともっと可愛がりたくなっちゃうから」

「あたしだって教師でいるときとプライベートでいるときは違うわっ」

「ええ、だからみんなそうなんです……ボクもそう。生徒でいる時のボクと、部屋で独りになって先生のパンツのにおいを嗅ぎながらマスターベーションをしている時のボクと、キミを抱いている時のボクはみんな違う。みんな違うから逆に面白いんじゃないですか? 普段とは全然違うキミが見られるから、セックスは余計に楽しくなる」

 さりげなくエロティックな挑発を交えていて、アリシアは口にしかけた言葉を飲み込んだ。

「キミを初めて抱いた時、嬉しかったな。もしもキミが美しいエルフのような見かけ通りに体臭まで薄かったりしたら、物足りなく感じるかもしれないって思っていたけど、しっかり存在感のあるにおいがして……」

 

 

 存在感のあるニオイですって? 

 何よそれっ!

 要するに臭かったって言いたいんでしょ、わかってるわよ、そんなことぐらい……。

 自覚しているもの……。

 

 

 アリシアは素直になれないが、アキトは

「キミのカラダのにおい、すごく好みだったから……こんなに美しくて可愛いらしい女の人が、ああ、こういうにおいがするんだ、こんなお味がするんだってわかって……幸せだった、このまま死んでもかまわないって思うくらい」

「………」

「でも、今はもっと先生のことが大好きですよ……ボクがキミのカラダのどこがどんなふうに好きなのかたっぷり教えてあげましょうか?」

「けっこうですっ――」

 揶揄(からか)われているのがわかって、ツン、とむくれてそっぽを向く横顔も端整で、まつ毛の長さが際立って一段と愛くるしくなる。

「ボクは実例をあげて懇切丁寧に説明することができますから」

「だからそういうことは言わなくてもいいのっ」

 アキトは時にわざと露骨なデリカシーのないことを口にするが、これもとっておきのピロートークになっているのだった。

 恥じらうと、少年は余計にそこにつけ込んできて、結局、彼が知り得た情報を実に仔細に語ってみせて、真っ赤になった彼女を途方に暮れさせる。

「……もう、女の子を辱めて、なにが楽しいのよ……」

 負け切った気分で恨み言が紡ぎ出されてくる。

「それがとっても楽しいんですよねぇ、恥ずかしがってる時の女の子って、いちばん可愛いと思うから」

「イヤな子ぉ……」

「でもその嫌な男にキミはいつでも身をまかせてくれる……」

「ええ……」

 否定はできなかった。

「そうよ、だって……」

 身を返して少年を見つめるアリシアの碧い瞳が決意に揺れている。

「イジワルなあなたのことを大好きになっちゃったんだから仕方ないでしょ……」

 少年はわざとらしく大きく息を吐いた。

「そうやってキミはまたボクのことを挑発するんですね。先生はお姉さんなんだけど、すごく可愛いんだから、だからそんな顔されたら、私を食べて! って誘ってるのと同じじゃないですか」

「あたし……」

「もちろんご馳走になりますよっ。夜はクリームなしでさっきの続きをしたいから。生クリームはバニラの香りがジャマで、先生の本当のにおいが隠されちゃうからちょっと残念だったし……この次は無臭のクリームが用意できるといいんだけど。味もついていないヤツを……ローションの代わりになるものなら片栗粉とかメレンゲみたいなものでもいいのかな……どっちもキッチンにありますよね?」

「知りませんっ、そんなことっ」

 

 

 さっきまでしていたようなことを、また今夜も繰り返すつもりでいることには驚くばかりなのだった。

 同時に躊躇いも覚える。

 とても濃いプレイで歓びが大きい分、それが普通になってしまうのが不安なのだ。

 今もまだ全身が熱っぽくて、彼にされたことをちょっと思い出すだけで肌がざわめき始めてしまいそう。

 二つとない素晴らしい経験であったために、そうしたことを何度もやって、果たして良いのだろうかと思わずにはいられない。

 歓喜と引き換えに、身と心を削られていくようで――。

 大好きな人とのセックスは、とても素敵なことだからこそ飽きるほど繰り返してはいけない……今はそんな気がしている。

 恋の終わりが忍び足で近づいてくるようで、それを思うと怖くなるのだった。

 

 

「……ああいういけないことの情報、いったいどこで仕入れてくるの? やっぱりネットとか? それとも誰か教えてくれる人でもいるの?」

 さすがに他にそんな相手が居るとまでは思っていなかったが、怯む心を奮い立たせて尋ねてみることにした。

 幸い、少年はそのいずれも否定する。

「先生を気持ち良くさせてあげたいな、幸せにしたいなって思えば誰でも普通にたどりつくと思いますけど」

「……???……」

「だって、マッサージをするときにオイルを使うのは普通のことだし、セックスでローションを使うのもそれほど特別なことじゃないから……ただボクはお口を使いたいから食べられるものがいいかなって思うと自然に生クリームになっちゃっただけで……昨日、フリーザーにあるのを見つけた時から、これはいいかもって」

 屈託のない笑顔を向けている。

 だがアリシアには、あれが誰でもする普通のことであるとはとても思えない。

 生クリームプレイだなんて、そもそも食べ物をおいたにするのは不道徳であることこの上なかった。

 

 

「イヤじゃなければ、これからもしたいと思うんですが……もしかして先生はイヤだったんですか?」

 さんざん弄ばれた後で好悪をまっすぐ訊かれて、どうしてごまかすことなど出来よう。

「……イヤっていうのじゃないけど……でも、ちょっと怖い……かな……」

 つい本音を漏らしてしまった。

 自分が羽目を外してしまうのも怖かったし、そんな姿を彼に冷静に見届けられるのも怖かった。

 けれども、なにより怖かったのは……。

「怖い? どうしてですか?」

「あなたのことを好きになって、もっと好きになってしまいそうで……」

 口にした本人ですら要領を得ない言葉で濁したが、利発な少年は明らかに何かを感じ取っている様子でいる。

「キミがどうしてもイヤだっていうことを、ボクはけっしてしませんから」

「うん……」

 

 

 心と身体とが一つに溶け合って、やっぱり女はか弱い性なのだと思う。

 男とは違う――。

 立っている場所も、背負っているものも……。

 それだけでなくアキトと褥を共にするようになって、彼女の意図に反して彼の成長を速めてしまっているように感じる時があるのだった。

 ただでさえ短い思春期を駆け抜けた先に一体、何が待っているのか?

 そして彼が夢から醒めた時、そこには果たして自分の居場所があるのかどうか……。

 年上の女の性ともいえる屈折だった。

 

 

「先生――」

「なぁに?」

「ボク、先に行って海の様子を見てきますね」

 少年は股間のものをそそり立たせたまま、むっくり起き上がり、アリシアもまだ愛撫の余韻を残して熱(ほて)ったままの半身を起こした。

 そうすると、豊かな胸の果実が重々しく、たゆん、となってたちまち少年の目を奪うのだった。

 大きめの乳輪がとても官能的で、白い肌の真ん中でひときわ目を惹く。

 相反して桜色の小さな尖りは健気で愛らしい。

「そうだ、ボク、先生用の水着を持ってきてあったんだっ」

 何かに気づいた様子でそそくさと立ち上がると、部屋の隅に置いてあったビニール袋の中から白いものを取って戻ってきて、それをアリシアに手渡した。

「先生にはこれを……着てほしくて用意しておいたんです……すっかり忘れてたけど……」

 広げると、それはセパレーツの水着なのだった。

 布面積の少なさがやや気にはなるが、白ビキニの水着、という意味では装飾のないシンプルなデザインの、よく見かける類のもの。

「これ、あたしに?」

「うん」

「ありがとう……」

「おっきなオッパイを見て、いま思い出しました。きっと似合うと思うな……先生はすごくグラマーでスタイルが抜群にいいから」

「………」

 

 

「まだ七月だし、こんな入江の奥までクラゲが入ってきているとは思わないけど、万が一ってこともあるし……先生が本当にくらげに刺されでもしたら大変でしょ」

 最前、アキトが子供にした言い訳が蘇る。

「アキトさんも気をつけてくださいね」

「うん、先生も水着になったらすぐに来てね」

「ええ、わかったわ」

「ボクは……」

 少年は裸の剥き出しのままの股間に目をやると、

「水着なんかなくったっていいや――」

 言い残すと雑に腰にタオルを巻きつけて、頓着をみせずについっとビーチハウスの外へと出ていってしまう。

 そんなフットワークの良さ、身軽さも、まだ子供の気配を残しているようで自分との違いを意識させられてしまうのだった。

 常に彼女の先回りをして庇護者であろうとする彼と、閨での情熱的な恋人として奔放に振る舞う時の彼、そして今この瞬間は年相応の男の子として無防備なところを見せていた。

 一人で何役も矛盾なく演じて彼女を幻惑して魅了する。

 子供だと思って油断をしていると、いつの間にかとんでもない姿にされていて泣かされたり、手ほどきをする心づもりでいたのに、逆に手取り足取りされていたのは自分だったりして……。

 真剣に交際をするようになってじきに一年になろうとしていた。

 二人して手を携えて、ずいぶん遠くにまで来てしまったように思う。 

 しかし、アキトの本質はやはり十四歳、あと二週間ほどで十五歳になる男の子、なのだ。

 オーラルセックスが大好きで、彼女を愛することに強い拘りを持った男の子――。

 取り残されたアリシアは、不意にひとりぼっちであることに気が付いたように、無理にでも笑顔を作ろうとしていた。

 そうすると、メランコリックな眼差しと、少し上げた口角とが絶妙なバランスを作っていた。

 寝乱れたままのほつれた前髪が顔の上に影を落としている。

 手にした水着にしげしげと目をやりながら

「あの子、こんな水着、どうやって手に入れるのかしら? あの年頃の男の子が女ものの水着売り場に出入りしているなんて……ほんとにおマセなイケナイ子なんだから……」

 独言りながらブラカップの中に乳房を納めていく。

 胸のサイズを教えたことはなかったハズなのにサイズがぴったりで、ちょうどいい具合に包まれていることに目を丸くした。

「あなたはこういうことにも隙がないのね……」

 ため息まじりにつぶやいたアリシアは、少し翳りのある大人の女の顔に戻っているのだった。

 

 

 





昨日、上げるつもりだったのですが、土壇場で修正が間に合わず、今夜に持ち越してしまいました
もうあと1回、波打ち際でのシーンを書き加えて
今節を終えたいと思います

気がつくと100話超えてUAも1万越えをしていました!
どこぞの巨大投稿サイトのトップランカーのアクセス数とは比較にもなりませんが
かれこれ二十年も前のネタで、しかも一般には不人気と言われるテーマでありながら
結構な数の継読されている方がおられることに驚いています
(まだ鮮度のあった十数年前、他で初上梓した頃でも多分、この何分の一程度の反応だったと思うので)
フォローしていただいてる皆様には感謝いたします
おかげで、ああ、こういうお話になるのか、と自分でも辿るのを楽しんでいます



すはらかなや様
過分な評価をいただき感謝いたします!
    9!
何かの間違いではないといいのですが・・・
御礼は、物語を綴ることでしかできませんが、どうぞよろしくお願いいたします




  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。