ARIA A SECRET SCHOOL DAYS 作:真夜中のミネルヴァ
いつでも仲直りの後は互いをさらに近づけている。
慰められる最中にアキトから
アリシア――。
と、呼び捨てにされたのも今日が初めてだった。
それがどれほど嬉しかったか。
非公式とはいえ晃とアテナの前で婚約の契りを交わし、さらに対等の存在として認め合えたようで彼女の中にあったわだかまりがまた一つ解消されている。
いっぱいおしゃべりをして、体にもいっぱいおしゃべりをさせて……。
今は身を寄せ合って海を眺めていた。
現実的な二人の将来についての話の他に、アリシアが垣間見た夢の内容に合わせて、アキトがしてくれた途方もなく遠大な夢物語。
それは昨晩、晃やアテナとしていたソウルメイトの話題にも繋がって、説明はできなくてもアリシアを深いところで納得させていた。
やっぱり今とは別の場所で、アキトとは巡り合っている――。
昨年の京都での出来事、彼と一線を越えてしまった時のこと――。
生徒の前で素肌を晒して、それがあのようなことに陥らないとどうして思えたのだろう?
いま振り返ると、引っ込み思案で臆病な自分が不思議なくらい後先のことを考えずに大胆に行動していた。
あの時は教育的配慮!? などと自分に言い訳していたが、本当に信じていたのかも疑わしい。
それに拒むことはできたのに、その機会は何度もあったはずなのに、結局最後まで拒まなかったのは何故?
彼からの辱めを受けて、涙したのは本当にただ悔しくて哀しかっただけだったの?
それならどうして、その後もアキトとのデートを重ねるようになったのかしら?
彼と逢うのを心待ちにするようになったのは、どんな心の働きから?
それ以前に、灯里の友人、ボーイフレンドということだけで、たとえ戯れであったとしても教師が生徒と口づけをするなど、普通ならありえない、あってはいけないことのはずなのに、それをしてしまったのはどうして?
今はその全てに答えがあったように感じている。
彼の姿を初めて見た時から、アリシアは気になって仕方がなかったのだ。
子供相手に何故そんな気持ちになるのかさっぱりわからなかったが、もしも彼との
彼とは初めて、でも初めてではない――。
海との記憶のように……。
「……先生は信じられますか? 今この瞬間にも広大無辺の世界には無数のボクがいて、無数のキミが居て……ボクはキミと巡り会うことに備えて、より良い自分と出会うために、より良い自分になろうとしてもがいているってことを……キミという光の女神さまを求めて無限に永遠に成長をしていく物語を紡ぎながら……」
「……?……」
「やっぱり、支離滅裂でなに云ってるかわからないですよね……ボクも信じているわけじゃないですけど、でも、どこかでそれを期待している自分がいたりして……」
「………」
「ただ、先生が言われた経験してもいないのに経験しているように感じる記憶って……やっぱりホントに経験していることなんじゃないのかなって思うんです、別の自分が経験していた記憶なのかもしれないって……ボクもそう思う時があるから……」
「別の、自分……?」
「ええ、たくさん居るボクの中の一人が経験した記憶です……全てのボクは、いつでもキミの姿を追い求めていて……って言っても、ワケがわかりませんよね……」
アリシアは首を横にふった。
「ですよね、言ってるボクもよくわかっていませんから――」
少年は自信なげな顔をしていた。
「過去の人生での記憶ってこと……?」
「そうかもしれませんし、それとはちょっと違うのかもしれません……」
「いいわ、続けてくれますか……」
「ただの妄想、子供の戯言だと思って聞き流してくださいね」
「もうあなたのことを子供だなんて思ってはいないわ……明日のダンナさまになる殿方だから」
「ボクもキミのことを……あ、先生をキミ呼ばわりするなんて礼を失してましたね……」
「いまさらなぁに、うふふ」
「それでね、別の世界のボクは、この名前じゃなかったり、この姿ではなかったりするのかもしれません、また立場だって全然違っていたりするのかも……でもボクはキミに会えば必ず気がつくんです。ああこの人だ、この女の人なんだって……中にはすれ違って巡り逢えなかった世界もあったりするのかもしれませんけど……でも会えば必ず判る、それがいつでもキミなんだって、ボクは信じたいんです……だからどの世界にいてもキミと一緒にいることがいちばん幸せで、自然な出来事になるんじゃないのかなって……」
「それって、ソウルメイトのこと、かしら?」
「ソウルメイト? 先生がそんなことを口にするなんて意外ですね」
「昨日、晃ちゃんたちとそんな話題になったことがあったから……」
「スピリチュアルってなんだかキワモノっぽくなるので、敢えてそれとは違うって否定しますけど……でも結局は同じことなのかな……それも含めているってことで……」
アキトが口にしたことの全てが納得できたわけではなかったけれど、彼が自分にとって特別な存在、巡り合うべき人だったというのは受け容れられる。
そうだと信じたかった。
きっと気づきとは覚醒であり、アキトは何かに気がついている――。
それが彼がどこか大人びていることの理由でもあるのかもしれない、そんなふうにも思えてくるのだった。
何より、いつでも二人で一つの物語を紡いでいる、というのはステキな夢なのだ。
たとえ妄想だったとしても――。
そうだといいなと心から思うのだった。
「ねぇ、アキトさんはヴェネツィアに行ったことある?」
「ベネチア? イタリアの水の都のベネチアですか? ないですよ。一介の貧乏中学生にあるわけないじゃないですかっ。ベネチアどころか、まだこの国の外に出たことすら一度もありませんから」
「あたしも行ったことはないんだけど……」
「それがどうかされたんですか?」
「わからないけど……何故だかとても大切な場所だったような気がして……あなたと過ごしたこともあるような……」
「それも経験していない記憶、ですか? だとすると、もしかしてさっき先生が見た海の夢って、そのことに関係するのかもしれませんね。ベネチアはアドリア海に面した海上都市だから」
「うん、そうなのかも……」
アリシアの胸の中で曖昧だったものが、一つ繋がって形になったような気持ちになっていた。
「いつか、二人で確かめに行ってみましょうか? もしもボクたちの別の世界での記憶だとするなら、ボクも何か思い出せるかもしれないし」
「そうね、それはいいかもしれないわね」
「新婚旅行先に――」
新婚旅行、などといきなり実感のともなうものいいをされると、夢から現実へと一気に連れ戻されたようで、刹那、言葉を呑み込んでしまったが、すぐにアリシアは「うんっ」と、大きく頷くのだった。
いつしかとっぷり日が暮れて、入江には闇が迫ってきていた。
砂浜も昼間の半分ぐらいになって、波打ち際はビーチハウスからほんの二十メートルほどの所までになっている。
「そろそろ、戻りましょうか?」
「そうね……」
「虫除けを炊かないと痒い虫も出てくる頃だし……」
「ご飯の用意もしないといけないわね」
「お風呂が先ですよ」
「じゃあアキトさん、お先にどうぞ」
「なに云ってるんですか、お風呂は一緒に入るに定まってるじゃないですか」
一緒にお風呂に入って仲良く背中を洗いあい――アリシアの方は背中だけでは勘弁してもらえなかったが――夜は一緒にキッチンに立って食事を用意していた。
そして――。
その夜、二人は畳の上に一組だけ延べたお布団の上で愛し合っていた。
まるで初夜のように、真摯にひたむきに、巡り合いを歓びにかえて。
結ばれては休み、目が覚めてはまたむつみ合う。
時にアキトが持ってきたデジタルカメラのフラッシュが瞬いたりして――。
早朝、部屋が明るくなってきた時、アリシアはアキトに入れ子のようにして、大切に抱かれたままで目覚めたのだった。
彼女の内腿を枕にして安らかに眠っている少年の寝顔を見て表情を和ませた。
眠りながらも女のひき締まった腰のくびれにしっかりと腕を回して、けして逃すまいとしている彼の思いの強さに胸打たれながら。
そればかりか無意識の内にも顔を寄せて口づけすらして、アリシアの体に感動を与えようとしている。
そんな彼の仕草のすべてに、自分への愛着の深さを疑いようもなく感じてしまうのだった。
「あたしだって、アキトさんの匂い、大好きなんだから……」
ザーメンの特有の香りと、自身の淫臭とが混じり合った、男と女のニオイを纏った器官が肩越しに見えていた。今は項垂れているが、晃とアテナが去ってからのほぼ丸一日、アリシアを悩ませ続けた男の子のシンボルだった。
腰を激しく打ちつけられるようなことにはならなくても、代わりに様々な体位で
身を返して、それを口に含もうと思ったが、そうするとアキトを起こしてしまいそうだったので思いとどまることにした。
目を閉じて、情熱の一夜をひとり振り返る。
布団ということでクリームこそ使われなかったが、その分、彼はより慎重になって、時間を惜しまずに愛そうとしてくれたのを感じていた。
こんなに幸せで、満たされていいのかしら?
そう思うほど、一心に愛情を注いでくれた彼……。
「ありがとう……アキトさん……大切にしてくれて……ちゃんとあたしのところに来てくれて……」
小さな声で感謝の言葉を、今も眠ったままの股間の彼に送る。
「あたし、思い出したの……いろんなことを……」
愛された最中、歓喜に舞い上がりながら、どこまでも続く広大な空間に散りばめられた様々な記憶、そのいくつかに触れたような気がしていた。
ある夏の午后――。
古い廃墟のような場所にあった診察室で、彼が組み立てたという凄く恥ずかしい椅子に座らされた時のことを。
婦人科にあるような内診台の上で、全裸に剥かれて脚を開かされて……。
とても長い時間……永遠に続くかと思われた長い間、彼のお口の中で何度も果てていた。
窓の外からは潮の香りに乗って、ゴンドラの練習をする新人の女の子たちの声が届いていて……。
ゴンドラの練習――?
ゴンドラってなに……!?
冬のある日――。
海に面した露天の温泉で、生クリームを使って愛された時のことも……。
あの時は、ひどいこと、いっぱいされちゃったのよね……うふふっ……。
ここではないどこかで愛し合った日々の懐かしい記憶。
どれもみな、甘くせつない恋の思い出だった。
タブーと思われていた愛撫が二人にとってとても大切ないとなみであることもはっきりと蘇ってくる。
どんな時でも、彼がいつも一途に思いを寄せてくれていたことも……。
「もう迷ったりなんかしないわ……あなたを愛することを……」
独言る。
「本当ですか――?」
下腹部の方から、それに応える声がして、
「あら、起こしてしまったの? ごめんなさい」
「おはようございます、先生」
いきなりおめざのキスをされて、そのあまりにも甘美な感覚にアリシアはたちまち瞳を潤ませた。
たちまち本気モードのクンニになっている。
「ずるいわっ、アキトさんばっかり……あたしだって同じことをしたいのにっ……ああ、やだっ……またっ……いっちゃうっ……」
そうして気をやりかけると、不意に少年は愛撫を中断して、体を返してアリシアを上にする。
「じゃあおいで、アリシア」
呼び捨てにされてドキッとさせられる。
「ボクの胸の上に座って、脚を開いて――」
命じられたのはどこか風雅な呼び名がつけれている、ある大胆な体位。
たとえもう未経験というのではなくても、やっぱり躊躇いを感じるもの。
でも、もう心は決まって覚悟はできていた。
「いいわ……」
彼の顔の前で脚を大きく開いて股間をさらけ出した。
「凄くキレイだよ……明るくなってきたからキミのカラダがよく見える……さあ自分でひろげるようにしてごらん」
「……?……」
「ワレメを指でパックリとひらいて、内側のピンク色をしたステキな粘膜が奥の方まですっかり見えるようにするんです」
「………」
彼が本気だと分かって、こわごわだったが指を使って左右に粘膜を拡げて内側に咲いていた花襞をくつろげた。
そこは既にたっぷり蜜をまとってキラキラとさせている。
「恥ずかしい……」
「こんなに綺麗で可愛らしいのに?」
「………」
「じゃあ、次は恥ずかしいところのにおいを嗅いでって言って、そして舐めてくださいって」
「アキトさん……」
救いを求めるように相手の顔を見やる。
「だってさっき、もう迷わないって言ってくれたでしょ? あれは建前だったの?」
詰め寄られて渋々頷くと、目を閉じて
「あたしの恥ずかしいところの臭いを嗅いで下さい……舐めて、ください……可愛がって……」
訴えた。
アリシアは初めて自分からクンニをして欲しいと告げたのだった。
リクエスト通りにアキトはそこに顔を埋めると、あちこちシクシクとにおいを嗅いでいて、それから舌を使ってやさしく舐りはじめる。
甘い刺戟に敏感な体はすぐに反応して、その時に備えて身構えてしまっていた。
彼女の小さめなクリトリスは、今はフードをすっかり払いのけて可憐な素顔を晒している。
「じゃあ、最後です、ボクに訊いてください」
「……尋くって……なにをです……?」
「きまってるでしょ? ボクがキミのダイジなところにおいをどう感じているか、キミの女の子の蜜の味をどう思っているかについてに――」
「………」
「さあ、訊いて……ボクのホントの気持ちを……」
彼の真剣な眼差しに本気が窺えた。
もうここまで来てしまっては、アリシアには引き下がることなど出来はしないのだった。
萎えかける心を励まして尋ねる。
「……あたしの臭い、いかがですか……あたしの味は……」
「キミのは美味しいよ、それにとってもいいにおいがする、大好きです」
たとえその言葉に誇張があったのだとしても、いまのアリシアにとっては何よりも嬉しい慰めとなる言葉に感じられるのだった。
「アキトさん……」
「愛してる……アリシア……」
少年は思いを舌の動きに乗せてきて、女の体が官能の旋律を奏で始める。
アリシアは夢の中で懐かしいオールを手に取ると、また温かくも甘美な記憶の海の中に舟出していくのだった。
学園に戻ってからのエピソードを一つ書き加えたいので
本線に戻るのはその次になります
それと今更ですが、お気に入りに加えていただいている方々に
御礼申し上げます