ARIA A SECRET SCHOOL DAYS 作:真夜中のミネルヴァ
先週、更新できず、本日より新節のスタートになります
久しぶりにショタおねの正規ルートに戻ります
ただ、次回更新がいつになるかはっきり申し上げられなくて
なかなか描く時間が取れずに不定期な更新となります
なんとか時間を作りたいと思うのですが、
逐次、後書きに予定をお知らせしようと思いますので
よろしければご確認ください
無事だったと判ってはいてもアリシアが高層ビルの屋上から転落する映像を目にした時、アキトは背筋が凍りつき脂汗が滲むほどのショックと恐怖を覚えていた。
いったい、どうしてこんなことになっていたのか――?
事件については発覚当初から伏せられていたこともあって、一時的にではあったにせよアリシアが誘拐されていたのを知ったのも後になってからなのだった。
たとえ恋人でもミッドスクールに通う一介の画学生にとっては、既に歴とした大人でキャリアもあり、さらにはゴンドラ協会の理事として、またAQUAのアイコンとしてこのところいよいよ社会的影響力を増しているアリシアの活動の全てを把握するにはいきおい限りがあるのだ。
当日は国際会議での講演がある――とまでは知らされてはいても、むろん少年には会議に参加する資格も意思もなかった。
うら若き女性をいきなり大きな会議の中心に据えるなど、少し行きすぎてはいないかとも案じていたが、
それが、まさかこんなことになっていたなんて――!
聞き及ぶところ、会場から何者かの車で連れ去られて件のホテルに拉致されていたとのこと。
日頃から「一人で知らない人の車に乗ったりしちゃダメだよ――」と、アリシアには逢うたびにいつも言い含めているのだが、彼女は
「あらあら、あたしを子供あつかいしないで、これでもアキトさんより五つも年上のお姉さんなのよ、そんなに心配しなくても大丈夫よ、うふふっ」
と、軽く流されてしまうばかりで、どこまで身に染みて判ってもらえているのかいまひとつ自信が持てずにいたのだ。
地球に比べるとAQUAの、そしてネオ・ヴェネチアの拍子抜けするような平和で安全な社会環境は、そこに生きる人々の高い民度に支えられている。一方で、こうした穏やかな暮らしぶりは危険を察知する嗅覚を鈍らせてしまっているのではと案じていて、アリシアについてもそれが常に気がかりなのだった。
そのあげくの今回の事件である。
だからあれほど言ったのに――。
あんなに怖い思いをして……可哀想に……。
自分自身の価値をいちばん知らずに無頓着でいるのが、他ならぬ彼女自身であること、それをもっと自覚して行動に際しても緊張感をもって欲しいと思うのだった。
ただ、あれやこれやと考えてから、少年は最後にため息をひとつ。
そんなの……アリシアさんらしくない――。
八面玲瓏な魅力は外見ばかりではなくて内面から放たれる心根の美しさにも依る。
ただそこに居るだけで周りを幸せにする、やさしい女神の微笑みも。
周囲を警戒して不審なものを逃すまいと油断なく視線を投げかける彼女の姿など想像もつかないのだ。
やっぱり無理かもしれないんだよなぁ……。
でも、これからどうしたらいいんだろう……。
街を越え、AQUAを越えて、人類圏全体の知るところとなった彼女に対して今後もいろいろな方面から接近を図ろうとするものが現れるのは容易に想像ができるのだった。
その中には悖戻な意図を秘めている輩もあるだろう、これまでのような生活が続けられるものだろうか?
索漠として少年は手にした紙コップのコーヒーを一口啜り、整った幼な顔を少し顰めた。すると少し大人びた顔つきになる。オリーブ色の肌、黒い瞳が人を惹きつけるような神秘的な輝きを放っている。
「学校のコーヒーよりもひどいな……」
車内は、まるで貸切列車のように少年一人しか乗客はなく、がらんとしていたので自然に不平を口にしていた。
コーヒーは駅の売店で買ったもので苦いばかりで酸味も強く、好みの風味からは遠かったが気つけにはなりそうだった。
車窓外に目を転じる。
空に浮かぶ白いもくもくとした巨大な積雲の連なりは夏の名残を留めていて、まだ秋空などには場を譲るまいと踏ん張っているようにも見える、十七月末のネオ・ヴェネチア近郊――。
灯里からの連絡で、心身ともに傷ついたアリシアが今はグランマ秋乃の元に身を寄せていることを知り、少年は意を決して天地秋乃宅を訪うことにして城ヶ崎村行きの列車に乗ったのだった。
寮監の
市街地から農耕地の広がる郊外の丘陵地への一時間あまりの小旅行、普段なら心が踊るところだが今は二重の意味で落ち着かない。
ひとつは言うまでもなくアリシアの身を案じて。
そして今一つは、事件のためにグランマ、天地秋乃との面会が避けられなくなったこと――。
グランマへの挨拶は、せめてミッドスクールを卒業してハイスクールに入学をしてからと考えて、もう少し先にするつもりでいたのだが、アリシアの一大事とあっては先延ばしにもできなかったのだ。
偉大なプリマ・ウンディーネ、グランマ、天地秋乃との対面――。
自分のような若輩が、掌中の玉の愛弟子を寝取ったと知って果たして許してもらえるだろうかとの懸念が胸に燻っている。
相手はアリシアの師匠になり、ネオ・ヴェネチア市政にも、さらには中央にも影響力が及ぶという、それはそれは凄く偉い人なのだ。
一方、こちらは財力なく、地位なく、学歴なく、家柄なく、その上、上背もない――。
そんな無い無い尽くしのどこの馬の骨ともわからぬ小僧が地球からふらりとやってきて、大切な可愛い教え子の気だての良さ、世間知らずにつけこんで誑かしていった――。
きっとグランマの目にはそんなふうに映るに違いなかった。
事実それらが全てもっともである一方、対してこちらは抗弁できる材料をまるで持ち合わせてはいないのだ。
改めて思う。
さて、自分がアピールできるポイントって何だろう?――と。
…………
…………
…………
…………
…………
なんにも思いつかないことに唖然とするのだった。
顔も容姿も頭の出来もせいぜい人並み、身体能力もしごく平凡――。
どこにも目立った要素がなく、前に居た鬼越東中ではクラス担任から最後までちゃんと名前を覚えてはもらえなかったほどだ。
件の男性教師はどういうわけかアキトを“白石”と呼び続けていて、それはついに改められることは無かったのだった。
「要するにボクには何も見どころがないってことだよなぁ……まぁそうなんだけどねぇ……」
呑気に少し長めになった癖毛の頭をかく。
強いていえば、エッジのないどこまでも平々凡々であること、そういうのが集団ではいちばん数が多いから、それこそがヒトという生物種としての最適解、適応力の優秀さを示しているってことにならないかなぁ――。
ホラ、売れ筋ってヤツで、ドミナントっていう、ハンバーガーだって自動車だって、一番、市場を支配しているのはそういうのじゃないですか、何にも入ってないノーマルバーガーや装備を最小限にして価格を抑えた大衆車……ボクはソレなんです、きっと――。
言い訳を考えながらため息、もしも実際にこんな軽はずみなことを口にしたらグランマからは絶対に睨まれると思う。
方やアリシアはネオ・ヴェネチアの宝どころか人類の至宝ともいわれる美女、本当に女神さまのような女性なのに、その相手がこれではあまりにも天秤のバランスが悪くて、それこそ水の大妖精がお怒りのあまり裁きの妖精に姿を変えて、自害しろ――と服従の呪いをかけられてしまいかねない。
そもそもアリシアと関係を結んだのは単なる偶然、あの“夜の儀”で偶々運よく、それも並外れた幸運――そんなありきたりな言葉なんかじゃとても形容し得ない、とんでもない奇蹟だった!――が舞い込んできた結果に過ぎず、普通の恋人たちのような始まり方をしたわけではないのだ。
何かとアンバランスなおかしな部分があるとしても、儀式そのものが極めつきのものであるのだから仕方がなかったともいえる。
だからと云って“夜の儀”のことは口にできないし――。
あれこれ思いをめぐらした挙句、結局、こちらもあまり考えてもどうにもならないので、出たとこ勝負と肚をくくって素の自分を晒すしかない、少年はそう言い聞かせて緊張に高鳴る胸を抑えた。
不意に耳にしていたイヤホンから聞き覚えのあるメロディーとフレーズが聞こえてきて、
「……E、F、G、H、Iガッダガーイン……」
景気づけに思わず口ずさむ。
ネオ・ヴェネチア――と、続けそうになって、アリシアをガールと呼ぶのはそぐわない気がしてそのまま流した。
土曜の朝のローカル第二FMは故郷のクラシックミュージックを特集をしているようで、今の気分からするとテックス・ベネキーよりもコンドリーザ・オコンネルのソロか今西礼央奈あたりを聴きたいところだったが、ジュークボックスに課金する余裕などあるはずがないので我慢してしばし付き合うことにする。
市街地を抜けると視界は一気に展けて、海抜も上がってネオアドリア海の水平線がくっきりと見えるようになって目を奪われるのだった。晴れ渡った紺碧の空は日が上るとともに気温もまたぐんぐん上がっているようである。
「この分だと、今日も暑くなりそうだなぁ……」
独言る。
白い雲と青空と海は、そのままARIAカンパニーの制服を想わせるもので、ブルーストライプの入った純白のコスチュームはアリシアにいちばん良く似合っていると思うのだった。
むろん彼女の場合は何を着ても無類に美しく、可憐に、愛らしくなるに違いなかった。
真夏の白いワンピースやブラウスのような薄着になる時には、肌着のラインがうっすらと透けて清潔感いっぱいの爽やかなお色気に溢れているし、冬の黒いコート姿もシックで実に格好が良くて上品な大人の女性の魅力を放っていた。
特に脱がせる時などには白い肌とのコントラストも鮮やかに、一段と目と心を楽しませてくれるのだった。
ただそれでも、きっと初めて出逢った時の印象があまりにも鮮烈だった所為もあるのだろう、その補正も働いているのか、たったひとつの例外である全裸である時を除けば、制服姿の時のアリシアは彼女をいちばん美しく特別に見せていると思うのだ。
まるでAQUAの申し子であるように。
だから、神様も彼女を特別扱いしてるのかな――?
ふとそんな気がして、AQUAの神秘についての思考を巡らせる。
神々の御業――?!
それはいくらなんでも、まさか……。
でも――。
アキトは地球で生まれ育ったものの常として、安易に神秘主義に傾くのを潔しとしなかったものの、一方“夜の儀”で、地下の大神殿の中に、いつの時代からのものかもわからない遥かな太古より存在していたと思われる神々の裸身像を目にしていたことから、これまで定説とされてきた人類史観を無批判に受容することができなくなってもいるのだった。
自分たち人類そっくりの姿をした男と女――はたしてあれが神なのか?――が、とても人間臭い姿で愛し合っていた。
そのようにしか思えないエロティックな造形物――? だったのだ。
そしてまるで今も愛を紡いでいるかのように人肌の温もりを湛えていて……。
一体誰が、何時、あの像を造ったのか?
何億年も前、まだ地球では遺伝子のシャッフリングをしきりに行って可能性を試行錯誤していた時代、すでに火星には人類そっくりの存在が居て豊かな文明を築き上げていたというのだろうか?
そう解釈する他ないような事実を突き付けられている。
そしてあまりにも生々しい愛の行為に耽る神々の裸身像――。
創世をめぐる神話については、アキトも歴史の授業で軽く触れられたことがあって、ぼんやりとではあるが記憶していた。
男の神と女の神が愛し合うことでこの世界が生まれた、という聖婚神話は地球の至る所にあって荒唐無稽な物語だと見做していたが、あの像を目にした時、それが強ち根も歯もない戯言、御伽話とも思えなくなってくる。
もしも火星に高度に進化した知的生命体が居て――それを仮にAQUAの人々が好むように“神”と呼ぶとして――彼らが遥かな太古に地球を訪れて、自分たちの姿に似せた生き物が現れるように生命の進化に立ち入っていたのだとしたら?
その人類が今、自分たちを創造した神々の地へと舞い戻り、その後継者として文明を引き継いでいるのだとしたら?
なにもかも想像の域を出るものではないが、この地で普通に営まれている多くの不思議――水無灯里さんの言葉を借りるなら摩訶不思議な出来事――の全てが、今もって捉えどころのない重力石の神秘と共に古の文明のよすがを伝えるものなのかもしれないとも思えてくるのだった。
この視点に立つと、夜の儀、とはまさに
神々に倣って神々の前で男女が交わりを持つという崇高ないとなみ。
「もう、あれから一年半にもなるんだ……」
少年はあの夜のことを今でも仔細にわたりはっきり頭の中に蘇らせることができるのだった。
そうしているうちに次第に呼気に熱がこもってくるのは、もちろん気温の所為ばかりではなかった。
喉の渇きを意識して紙コップのコーヒーの残りを煽ろうとしたが、既にすっかり空になっていて、ゴクリ、と喉を鳴らして渇いた唾液を飲み込む。
口の中がいつしかカラカラになってしまっている。
「アリシアさん……」
誰よりも愛おしい人の名前を掠れ声でそっと呟いた。
夜の儀――で、憧れていたアリシアと睦むという男にとってこれ以上ない歓喜の経験をした夜のことを少年は何一つ忘れてなんかいなかったのだった。
初めて知った女の肌のなめらかさ、肉の柔らかさ、におい、そしてそれが他ならぬアリシアであったこと――。
触れれば触れるほどもっともっと知りたくなり、知れば知るほど更にいっそう好ましく愛おしく感じるようになる。
あの夜すでに彼は、自分がその時まで心からやりたいと痛切に願っていたことの全てを貪欲に彼女に対して求めて、そして全てを自分のものにすることができたのだ。
そればかりか、もう二度と得られることのない素晴らしい記念の証――日々のマスターベーション用に一部だけを残して、残りは劣化しないようにエージレスパックにしまって机の一番奥に大切に秘蔵してあった――までも勝ち得て。
自分にこんな面があったのかと自身でも驚くほどの淫らで変質的な振る舞いをしたと思う。が、アリシアに対しては何の躊躇いも感じずに嬉々として挑み、そして天にも昇るような歓喜に包まれていて、それは今も変わらずに続いているのだった。
彼女とは地上に戻ってからも儀式の則を破って密かにデートを重ねていて、二人の心と魂を一つに縫い上げるためのいとなみ――を口実に、とても淫らで変態的な要求をして、彼女にはそれを一つ残らず受け容れてもらっている――を幾夜も過ごしてきたのだ。
あのミス・パーフェクト、AQUAの白き女神さまが、素っ裸になって内診台の上に身を横たえて、全てをさらけ出して身を任せているなんて誰も信じないだろう。
男の顔の上にしゃがんで聖水まで振る舞っているだなんて――!
ことオーラルセックスに関して、クンニリングスは、きっとアリシアさんが街で一番、いろんなバリエーションの体位を経験しているのだろうと思う。
だってボクがいちばん好きなことだから――。
「好きです……大好き……」
何よりも恋しいにおいをくっきり思い出して少年は祈りの言葉を紡いでいた。
この後、彼女を味わう機会があるだろうかと考えてから、きっとそれはできないだろうなと思う。
グランマ秋乃の家を訪問して、そんな羽目を外すような事ができるはずもない。
でもあの美しくも愛くるしい顔を間近にしたら、我慢できるだろうか、とも思うのだ。たとえ短い時間であったとしても彼女にわがままを聞いてもらおうとするかもしれない、と。
そう想うだけで陶然となって唇を舌でペロリと舐める。
「今日のアリシアさん、どんなにおいがするのかな……いちばん食べごろの美味しい時期だと思うんだけどなぁ、だいたい来週あたりが生理の始まる頃だと思うから……ペロペロしたいなぁ、お尻の穴も……」
周りに誰もいないのをいいことに、大胆なことを声に出していた。
甘美な想像に少年のペニスはカチカチになって、ズボンの中ではち切れそうになっているのだった。
今節より 後書きは お知らせ欄としても使うつもりですので
よろしくお願いいたします。