ARIA A SECRET SCHOOL DAYS 作:真夜中のミネルヴァ
回想を交えて場面が前後するので、読みにくいとは思うのですが、どうかご容赦を
「アリシア、まだかかりそう?」
石段の上、居間の縁側に現れた秋乃から声をかけられたアリシアは、
「ただいまっ、これを剥いたら戻りますっ……」
捥いだばかりのトウモロコシを手に微笑んで応えた。
しかし、実際は甘い悲鳴を発して地団駄を踏みそうになるのを強い意志で抑えつけてそうしているのだった。
彼女自身もアキトから“剥かれて”いた真っ最中だったからだ。白いスカートの中では、また二人だけの情熱のドラマが演じられている。
彼がもっとも好み、そしてアリシアはなるべくなら避けたいと思いながらも、いまでは密やかな願いともなっているその愛撫を許して。
円らな瞳を懸命にして物憂い動作で捥いだばかりのトウモロコシの皮剥きをしている間、アキトには彼女にしか作れない蜜を振る舞っている。
“……アキトさん……ダメぇっ……”
指を使われそうになって、股間に向けて甘い声になって囁いた。
白いスカートの前が膨らんでいて、アリシアは後ろから潜り込んできた少年の顔を跨ぐようにしているのだった。
長い脚の間に彼の頬を挟みつけて、それ以上の狼藉を許さないようにしながら、舌を使われると腰を浮かせて彼が思いを遂げやすいように迎え入れてしまっている。
デリケートな粘膜の谷間を優しい動きで前後する舌が、女の急所を捉えると丸く円を描くようにして周りをなぞっていた。
そのあまりにも甘美な刺戟は、ほんのわずかでも気を緩めればたちまち官能の波に呑み込まれてしまうところ。
もう彼女の敏感な肉の芽はフードを払いのけて大好きな舌の上にすすんで身を投げ出してしまっている。
本当は、もっともっと可愛がって欲しくて――。
彼のお口に身を任せることになるのは、今朝、久しぶりとなる再会をよろこんでから既にこれで二度目。
二人してトウモロコシ畑に降りて、おやつ用のものを二、三みつくろって捥いで戻るだけのはずだったのが、母屋から離れたとたん、それまでアキトの手が触れるのは肩や背中にとどまっていたのに、それが腰のくびれのあたりから体の前へと伸びてきたのだ。
そうした変化は彼から体を求められている時のサインに他ならないもの。
さりげなくではあってもバストトップを軽く指の腹が掠めていく。
一瞬、感じる甘やかな刺戟、くすぐったさが官能へと変わる寸前、ギリギリのラインなのだった。
そして――。
「さっきの続き、しませんか……?」
おずおずともちかけられる。
初めは軽い冗談だとばかり思っていたのに……。
たとえ茎が高く伸びたトウモロコシ畑の中に身を隠しているとはいえ、まだ陽の高い青天井の下、屋外で情を通じるなどという破廉恥な行為に及ぼうなどとは全くの予想外で期待などしていなかった。
ただ、ここできちんと拒めば彼は欲望の矛を収めてくれるのだろう。アキトはけして無理強いはしないから。それがポリシーでもあるらしい。
けれど、そこが実に彼らしくて憎らしいのだった。
巧妙なのは、こうした駆け引きが緻密で驚くほど計算高いこと、そのうえ的確であること。
自分だけは罪のない顔をして愛撫ともいたわりとも、どちらとも取れる安全で平和な分水嶺に居て、女の心根の変化に耳を澄ませて目を凝らしている。
可愛い顔をした優しい男の子が、愛情深くも無慈悲な男になって彼女の肉体の上に君臨する支配者になるべく機会を見計らい、一見、女の側に選択が許されているように演出するのだった。
でもその実態は、彼女にノーとは言えないような状況を作るための罠、仕掛けに他ならない。
常に易から難へと徐々に徐々にハードルを上げてきて、気がついた時には退路がすっかり塞がれて、その時にはもう逃れられなくなってしまっている。
そして彼女の屈服によって幕を閉じるのだった。
彼は望んだものを得て、自分はなにもかもを取り上げられて……。
プライバシーも女の誇りも、全て――。
どんなに大胆な体位も、どんなに淫らな行為も、アリシアには拒むことができないのだった。
それは去年の夜の儀で初めてアキトと肉体関係を結んだ時からずっと、彼との閨では変わらぬ立ち位置であり定まりごとでもあった。
セックスをめぐっての駆け引きが始まるとアリシアは我を通すことができずにいる。
とても悔しいけれど、でもそれが目眩く歓びへと繋がっているのもまた事実。
そして今はまた、そうなるか否かの運命の分かれ道に来ていた。
もちろん、応じられない、拒むべきだというのは判っていた。
ほんの十数メートルほど離れた母屋には母親たちが居るのだ。
が――。
その時、一迅の風の悪戯、被っていた麦わら帽子を吹き飛ばされそうになって、慌てて頭を押さえたアリシアを、少年はびっくりした顔を眩しそうにして見上げている。
雄の目を惹きつけてやまないのは、もちろんあらわになった腋の下、青白く翳るきわどい女の肌に対して。白くて長い優雅なラインを描く二の腕が、突然、官能美の極みとなるドラマチックな変化に目と心を奪われていた。
午後の日差しをうけてうっすら汗をかいているのか、そこが少し湿った感じになっているのも、たまらなく好奇を刺激するのだった。
アリシアさんの腋の下は、いまどんなにいいにおいがするんだろう?
あのキラキラと輝くワキ汗は、いったいどんなお味がするのかな?
知りたい――!
強烈な衝動に襲われている。
こんなショックは、アリシアならではのものなのだった。
いつもはセックスとは無縁にも見える清潔感のある慎ましい美貌が、知的な大人の女性でありながらもどこか儚げで少女のような愛らしさが、不意に覗かせる思いがけない悩ましい姿には意外さもあって、この上なく質の高いセックスアピールを振り撒くことになるのだ。
恋を知らないウブな男の子たちでさえ、一瞬で魅了してたちまち恋の虜にしてしまう、女神の罪つくりなしぐさ。
そして、その完璧とも思える充実した女体が放つのは、インファントな名残をとどめた甘やかな、そして男の征服欲をかきたてずにはおかない、とても複雑な悩ましいにおい。
その神秘の帳が再び閉ざされる前に、少年は本能の赴くままに顔を寄せていた。
アリシアには拒む隙を与えずに――。
甘酸っぱい汗の香りと、さらに芳醇な女の肌のにおいに恍惚となりながら舌をあてて、少し塩味のする蜜を舐りはじめる。
「……ダメよ……アキトさん……」
拒んだが、それはもう言葉の上だけで、アリシアも強く逃れようとはしていないのだった。むろん彼女も腋の下へのこのような愛撫は未経験ではなかった。それがより大胆な愛撫への入り口でもあることを知っている。
彼と褥を共にするということは、全身を舐りとられることでもあったからだ。
女体の形と働きとををくまなく知り尽くそうとして、男の情熱と思いの全てを傾けて挑まれる――。
そんな濃厚なセックスをアキトとはずっと演じ続けている。
交わりを目的としない遥かに淫らで恥ずかしいセックスを。
クンニリングス、アナルラッピング、二穴同時愛撫……。
経験した体位のバリエーションは、内診台のような大型の什器を取り入れることも含めて、微妙な違いまで数えればもう数十にもなるだろうか。
とても二十歳と十五歳のカップルとは思えないほど、実態は成熟した男女間でもたじろぐようなことをしているのだった。
普段の大人しげな雰囲気とは裏腹に、二人だけになるととても情熱的で探究心に溢れた素顔を見せるアキトは、一切のタブーを顧みることなく易々と乗り越えて、彼女がそれはさすがに、それだけは堪忍、そう思っていたことでさえ今では当然のように閨では繰り返されている。
「……あたし、もう白き妖精なんかじゃないわ……この体はイケナイこと、いっぱい知ってしまったから……」
「ボクがどんなにひどいことをしても、キミは少しも変わわったりなんかしませんよ……今も初めて見た時のままの憧れの人ですから……」
「…………」
「やさしい人……心のやさしいステキな女の人……誰よりも美しい、ボクの、ボクだけの女神さま……」
「ずるいな、アキトさんは……ひどいな、アキトさんは……」
「そんなにワルい子ですか? ボク」
「ええ……だって、そんなこと言われたらもう……あたし……」
アキトの腕が負けきったアリシアの脚にかかって、褥で女が取りうる最もはしたない姿になって愛撫に身をまかせることになっていた。
残酷なまでに明るい照明の下、くまなく秘所を、隠し通しておきたかった秘密の粘膜、淫らな肉穴の全てを晒して――。
裸のアリシアは、汚れを知らないプリマ・ウンディーネの白き妖精ではなく、好奇心いっぱいの人の子に身をまかせて慰みものとなる運命を受け容れた、悩める女神なのだった。
「キミの可愛い顔を見ていたら、もうボク、我慢できない……」
アキトが囁きかけてくる。彼の吐息にも熱がこもっているのを感じる。
ノースリーブのサマーニットをスカートから手繰られて、中にまで手を忍ばせてくる。白い柔肌が剥き出しにされて肌着の上からではあったが乳房を優しく包まれている。
強く揉んだり掴まれたりすることのない、とても繊細で柔らかなやり方。
男の欲望のままに触れられるのとは違う、父親が幼い愛娘を抱くときにも似た愛されていることを意識させられるもの。
にも関わらず濃厚な性を感じる。
腹部へのボディタッチは産毛を逆立てるようにして撫でられているのだった。
より刺戟を感じやすいように。
こうした微妙な愛撫にアリシアの体は反応しやすいように染められている。
少年の手がスカートの中にまで忍びこんできて、内腿の間からさらに奥を窺おうとしていた。
アキトの愛撫は、もはや二人だけの濃密な時間へのプレリュードとなるものになっている。
「……キミのダイジなところのにおいが恋しくて……さっきもすっごくいいにおいがしたから……ダメですか?」
再び持ちかけられた時、彼女には選択肢はもう残されてはいないのだった。
「いま、ここで……?」
確かめるが、それは既に同意とみなされるもの。
「うん……ちょっとだけご褒美が、欲しいな……」
「………」
少年はあたりをぐるりと見回してから、
「この辺りは浮島から死角になるし、キミは麦わら帽子を被っているから遠目には誰ともわからないから――」
「………」
そして、とどめの一言。
「今度はちゃんと、連れて行ってあげますから――」
お昼前、母親を迎えるまでの間に二人きりになった時は、彼の口づけは明らかに歓びへと誘うものではなかったからだ。
クリトリスへの刺戟はそこそこに、彼の舌は専ら密やかな襞と襞の合間を丹念に行き来して、時に膣の中にまで探りを入れようとして粘膜の成り立ちをしっかりしゃぶらりとられていた。
ただそれは、なまじ気をやることができない分、彼のたくらみがわかってよっぽど恥ずかしいのだ。
生理前、自分でもニオイが強くなっているのを感じていただけに、余計に羞恥心と負い目を意識させられていた。
それなのに彼はなんの躊躇いも覗かせずに、嬉々として顔を寄せてくる。
それをどうして拒めようか?
おまけに、例によってお尻の方にまで舌を伸ばしてきて……。
結局、彼が満足するまで舐られているしかなかったのだった。挙句、「時間だから」と、さっさと切り上げられてしまった。
そんなの投げ出されたアリシアにしてみればたまらない。
嬲るにいいだけ嬲って、焚き付けられるだけ焚き付けておいて、いざこちらが気持ちを向けようとするとおあずけにされてしまうのだから。
放り出された形の彼女にしてみれば、なんてひどい! と思うが、母たちが戻ってくるのであれば仕方がなかった。
洗面所で彼が顔を洗っている間、アリシアもトイレで念入りに冷たい水をかけて粘膜の熱りを冷ますしかなかったのだが、でも、ひとたび女に特有の器官、組織に集まってきた淫らな体液は、刺戟が終わったからといってそう簡単に散り散りになることなく、今も機会を求めて待ち構えているようなのだ。
そこへ、もちかけられた――。
甘美な誘いを……。
「……うん……いいわ……」
アリシアは自分の心に素直になって背徳の尾根を越える道を選んでいたのである。
「遅いわね、あの子たち……」
縁側の外、母屋のある石段の向こう側、少し段差のある傾斜地に広がるトウモロコシ畑に視線を送ってアナスタシアが呟いた。
薄茶色の穂先の海の合間を動く麦わら帽子が見え隠れしていたのだが、それが少し前からあまり動かなくなっている。
「きっと、若い旦那さんと二人で話したいことでもあるんでしょう」
「話したいこと、ですか……まぁ、そういうことにしておきましょうか――」
結局、とうもろこしを胸に抱えてアリシアが一人で戻ってきたのは、二人が庭に降りてから小半刻近くも経ってからのことだった。
娘の白い面差しが朱に染まっていたのは、ただ午後の日差しの所為ばかりではないことを親たちはすぐに察したが、気づかぬふりをしてやり過ごしていた。
たとえ禁じられた遊びに興じていたとしても、責めたり、糾したりするつもりはもとよりなかったのだった。
そして裏の手水場で手と顔をしっかり洗ったアキトが戻ったのは、アリシアが戻った時から数えてさらに三十分も後になっていたのだが、しかしそれでも女のにおいを纏った少年が姑たちの目を欺くことはとうてい叶わずに、逆に若い二人の仲の良さを印象づけることになっていたようである。
そもそも経験豊かな大人の女たちを前にして誤魔化すのは、さしものアキトにもそもそも無理な相談なのかもしれなかった。
まるでオイタが見つかった時の子供のように、アリシアとアキトの二人は顔を真っ赤にして小さくなって身を寄せ合うばかり。
外ではヒグラシのもの哀しい鳴き声に混じって、秋の虫たちも囀り始めていた。