ARIA A SECRET SCHOOL DAYS 作:真夜中のミネルヴァ
その10は今週のものになります
今週はお風呂回、になるのでしょうか……
先週に引き続き、18禁にします
「それじゃあ、どうぞごゆっくり。でもあんまり長湯をしてはダメよ、うふふ」
きまり悪げに頬を染めるアリシアとアキトの二人には、ワケ知りにも受け取れる微笑みを残して秋乃は引き戸を閉めた。
脱衣所で二人は互いに当惑の視線を絡めながら、
「ごめんなさい、アリシアさん……」
「……あたしこそ……」
申し訳なさそうにしている。
外で十分に顔を洗ってから戻ってきたつもりのアキトではあったが、察しのいい姑さんたちにはすぐに気づかれてしまったのだ。
女の匂いは水洗いぐらいでは十分に落としきれず、愛しい恋人の体臭に馴染んだアキトは気がつかなくても年増の美女たちにはそれと判るほど特有の残り香を放っていて、畑で二人が何をしていたのかすっかりバレてしまっていた。
「あなたたちの仲がいいのはよくわかったわ――」
「ホントに仲良しさんなのね、うふふっ」
図星をさされた二人は二の句が継げないままに唇を結んでいる。
さらに秋乃から入浴を勧められてアキトが躊躇うと
「だってそのままじゃアリシアが可哀想でしょ――」
と、詰め寄られて応じずにはいられなかったのだった。
何を云われているか判る二人には、すっかり身の置き所もない具合で、
「あなたもどうかしら? だいじな旦那さまの髪を洗っておあげなさい」
アリシアも入浴を勧められて、結局、夕食前に二人一緒にお湯を貰うことになったのである。
「……グランマのお家ではお風呂は地下水を汲みあげて、そのまま掛け流しにしているのよ」
身につけているものを脱ぎながらアリシアは言った。
「温泉っていうことですか?」
「そうね……でもそのままだとちょっと冷たいので冬場は温めているけれど……なぁにアキトさん、あんまり見ないで……」
胸を庇いながら窘める。
「見ないでって、そんなの無理ですよ、こんなに美しいものを間近にしてるんですから……」
少年の審美眼をもってしても欠点なんてどこにもないような完璧な美、女体美の極み。
抜けるように白い肌に伸びやかな四肢、ほっそりとしていながらも豊満な胸、張りのある尻の膨らみ。
引き締まった腰回りとのコントラストも見事に、この上なく優雅な曲線を描いている。
股間を彩る恥毛の煌めきは、その奥にどこまでも尊いものを潜めている証のようなのだった。
「もっとよく見せて……アリシアさん……」
少年は屈むとアリシアの庇い手を脇へ寄せ、ふんわりとした柔毛を左右に分けて白い秘唇がくっきり見えるようにする。
男がこの世でもっとも心惹かれるもの、神秘と憧れの割れ目の、その姿の健気さ、愛おしさに少年の胸が高鳴った。
「すっごく可愛い……こんなに可愛らしい縦スジ、ぜったい他にはないから……」
「エッチ……」
「そうですよ、でも別に不思議ではないですよね? だって……」
顔を寄せてにおいを嗅ぎ、素晴らしく豊潤な肉香をまた鼻腔に楽しませるのだった。
つい今し方までそのニオイに包まれていた筈なのに、もう飢えを感じるほど少年は恋人のにおいに恋焦がれていた。
「いいにおい……」
「……言わないで……」
頬を染めて訴える。
アキトが纏っていたニオイは、それを作った本人からすると疎ましいばかりで、自分がいちばんよく心得ていた。
まして生理前である。
「ボク、あの時、もしかしたらアリシアさんには性器は無いかもしれないって、本当に心配していたんですよ……」
「あの時――?」
「夜の儀で、最初の夜を迎えた時です……だって女神さまの体が人間と違っていても仕方ないし……だから初めて目にすることができた時は嬉しかったな……ああ、アリシアさんも女の人だったんだってようやく確認できて……ちゃんと人間らしいにおいもしていて……」
指摘されたアリシアにすると、人間らしいニオイってなにっ? って質したいところだったが、そんなこと今や言わずもがなだった。
それなのに、アキトはそれを好いてくれて、いつでも大好きだと言ってくれるのだ。
そんなのずるい、と思う。
そんなことを言われてしまったら、もうどんなことを求められてもイヤとは言えなくなってしまうのだ。
恋人からセックスのニオイが好き、と言われるのがどんなにありがたく感じられるか、女にとってこれ以上ない愛の言葉だった。
だから求められれば、たとえどんなに恥ずかしくても脚を開くのは、彼を信じられるからに違いない。
「大好きです……」
少年はちょっと息苦しげになって言うと目の前でしゃがみ、当然のように口を寄せられて唇を重ねてくる。それは軽くソフトな賛美と称賛のキスだった。
だがクンニリングスのようなディープキスにはならなくても、クリトリスのすぐそばに落ちてきた口づけはやはり女の体にはすぐに影響を及ぼしてしまうもの。
たちまちアリシアの体の深奥で、また淫らなものが目覚めようとしていた。
誰よりも愛する男が自分の前に傅いて、匂いに恍惚としている姿には女の自尊心をくすぐられて倒錯的な感動があるのだった。
脚を開けば、きっと彼からまた愛されることになる。あのめくるめく陶酔に、この上なく甘い快感に身も心もとろけてしまうのだろうと判っていた。
思えば、生まれて初めて男の口の中で果てた時からずっと、彼女はその愛撫に憑かれてしまっていたようである。
愛情深く優しく、どこまでも深いロイヤリティを隠さない彼の振る舞いに。
クンニリングス、オーラルセックスは禁断の愛撫、いちばんいけないことだった筈なのに振り返るとこの一年半、アキトと過ごした日々は、それを、それだけを目的としたものだったと言えなくもなかったのだ。
恋をする以前には想像すらできなかった自分の変わりよう。
男の面前に秘所をさらけてしまうなんて!
水着になるなど他人前で肌を晒すことにすら抵抗があったのが、今では殿方と一緒にお風呂に入ることすら、こうして普通にできるようになっていた。
あたしたち、ずいぶん遠くへ来てしまったものね……うふふっ……。
考えるとなんだか妙味も覚えて冷静になる。
「ダメよ、アキトさん……もういけません……」
アリシアは長姉の声になって股間でうずくまる少年に命じた。
「うん……そうですね……」
見上げる少年と視線を合わせた。
立ち上がると少年は自身の聳り立つものを隠さずにいて、アリシアもそこに視線が吸い寄せられてしまう。
自分へ寄せる愛情、昂ぶりを体でもはっきりと示していて、女の心に喜びと感謝がこみ上げてくる。
さらに少年は自らそれを握ると頭を露出させてアリシアは目を瞠った。滑らかに光沢を放ってデリケートな、自身が備えたクリトリスに似た、けれどもそれとは比べものにならないくらいの大きさへの驚き。
これが……男の子のからだ……!?
いまだにしっかりと迎え入れたことのない、そしていつかはそうなりたいと願う、最愛の人の愛しい器官だった。
「アキトさん……」
「キミのにおいを嗅ぐとボクはどうしようもなくなっちゃうんだ……きれいな女の人を、女神さまを愛でたいと思うだけではガマンができなくて……欲しくて欲しくてたまらなくなっちゃうから……」
亀頭の先端に作られた蜜だまりを指で掬って口にする。
アリシアも口中に溢れた唾液を、ごくり、とのみこんだ。アキトが股間に顔を寄せたがる理由が、自分にもはっきりとわかったように思うのだった。
男と女が互いの体のつくりの違いに興味とそして憧れを抱くのは当然のことなのだと、命のたくらみの不思議さに思いを馳せながら。
「まだダメですよ――」
少年はそんなアリシアの心の裡を見透かしたように告げるのだった。
「え――!?」
「だって約束した筈ですよ。これが最初にキミの中に入るのは、キミのセックス、膣の中だからって……」
「……うん……」
アリシアは幼気な少女がするように、こっくり頷く。
結婚するまでセックスはしない、というのがアキトと決めたことなのだった。故に夜の儀でさえ交わりを持たなかった。
儀式での決まりを破ってまでそれを受け容れたのはアリシアにも理由があって、地上に戻ってからもアキトとの関係を重ねたいという強い願いがあったからでもあった。
もしも可能であるのなら、この出逢いを、儀式の場という非常時での約束を、現実に結婚――を前提にした交際にまで発展させたいという女の事情が。
アキトには自身の最初の男として、ちゃんと責任をとってもらいたかったのだ。
そして、その希望は叶えられて、本来なら事後一年間は接触を避けるように言われていたものが、儀式を終えてからほどなく、二人は取り決めを破って逢瀬を重ねて今日に至っている。
ただそれはそれとして頷けるとしながらもアリシアはちょっと不満げな顔になって言った。
「でも、アキトさんはずるいな……ずるいです……自分ばっかりで……」
セックスより先にオーラルプレイもしないというのが少年の固い決意でもあったのだ。
どうしてそんなに頑ななのかしら? と訝しむが、彼が望むことなので不承不承ではあっても従っている。
しかし自分はあの非道くいかがわしい内診台に乗せられたり、穴の空いた奇怪な椅子に座らされたりするなどして、いつも散々――? な目に遭わされているのに、アキトはひとり涼しい顔をしていて、それはさすがに不公平であるとも思うのだ。
こぼすと、
「でも、それは仕方がないですよね、だってボクの方がずっと先だったんだから――」
「――先――!?」
「ええ、真っ先に思ったことだから……」
「…………」
「前にも言った筈ですよ、キミと初めて逢った時、間近にした時……その時からずっとだから……ボクはキミの大事なところにキスができたら、その時はもう死んでもいいやって思ってたってこと……」
宵闇迫る水路で拾った迷子の男の子、その時は名前すら知らずに別れたのだった。
ましてや目の前の可愛い顔をした男の子がよもやそのような卑猥な妄想を抱いているなどとは想いもしなかった。
「バカ……」
「あの時アリシアさんはそんなこと、ボクには思わなかったでしょ?」
「ええ――」
会ったばかりの男の子、子供にそんな感情を抱くなどあるはずがない。
「だからです――」
「だからってなに――?」
「先行権――」
「そんなの理由にっ――」
「なりますよ、だってボクの方がずっと先に気がついていたんですから――」
言うなり少年はかがみ込むと、今度はいきなりのディープキスになってアリシアに甘い悲鳴を上げさせていた。
「アキトさんっ、ダメっ……あ……」
「お風呂に入る前の、キミのにおいに包まれたい……大好きだから……キミのにおいが……いいにおい……ああ、なんていいにおいがするんだろう……」
「やだっ……ああッ……」
本気の愛撫が始まってアリシアは、また立ったまま脚を開いていた。
脱衣籠の置かれた棚に両手をついて、少し前屈みになって体を支え、アキトの顔に跨る形で愛撫に堪える姿勢になる。
腋の下を開いて、ゆっさりと重々しく垂れた両の乳房の先を尖らせて。
脱衣所の引き戸に鍵は無く、親たちにこんな姿を見せられないと思いながらもアリシアは肉の欲望を満たす方を選んでしまっている。
方や自由を得た少年は、今度こそクリトリスから肛門にいたるデリケートゾーンを丹念に舐りはじめて、粘りを増して濃く香る蜜を、アリシアにしかつくれない酸っぱ塩っぱい味わいを存分に楽しむのだった。
時にアリシアの顔を見上げて、むごい愛撫に長いまつ毛を哀しげにふるわせる姿に感動していた。
美貌は清らで、同時に艶いたにおいのする生身の女体を備えて好奇と興味を惹き続ける、どこまでも愛おしい憧れの女性。
芸術を志す人間が一生の間にただの一度きりでもいいから巡り逢いたいと切望するミューズ、美の女神が自分にだけ見せてくれる本当の美しさ。この奇跡のような時がすぐ傍らに、手の届くところにあることが今も信じられずにいる。
「キミはボクのもの……みんな、ボクのもの……誰にも渡さない……」
クリトリスの裏側を舐め転がされると、もうすぐに敏感な体はダメになってしまう。
たちまち上り詰めたアリシアは、刹那、腰をぶるっとさせてから、小刻みにお尻を震わせていた。
その女の子らしい愛くるしい反応に少年の心はやさしい気持ちで満たされている。溢れた蜜の一滴も漏らさぬように丹念に舐りとり、舌でかき乱した粘膜の裏地にねぎらいを与えようとする。
まだ余韻を残して戦慄く女体を這い上がると、愛情を込めて腰に腕を回して抱きすくめた。白い肌の吸いつくような滑らかさ、柔らかさにときめきを覚えながら。
「愛してます……アリシアさん……」
「うん……」
見つめ合い、そして唇を重ねる。舌を絡めて。
アリシアも他ならぬ自分自身のニオイを纏った少年が愛おしくてならなかった。
「いけない子……」
吐息が熱を含んでいる。
「イケナイ子はお嫌いですか?」
アリシアは首を横に振る。それなのに、
「だいっきらいよ……うふふっ」
と、全否定した。
「それは困ったな……」
少年も幸せな微笑みを返している。
「ボクはキミとはずっと、ずっと一緒に居たいから……」
アリシアもこっくりしてから
「あたしも……」
再び唇を重ねる。ディープキスにはならなかったが、互いの思いが行き交う恋人たちの口づけだった。
見つめ合う眼差しが揺れる。
アリシアの瞳もアキトのものに劣らないくらい、濃い色になっていた。
「お風呂、入らないと……」
「ええ……」
「一緒に入るのはいつ以来かな……?」
すぐに思い出されたのは、メストレのヴィラで過ごした夜のことだった。
「カラダ、洗ってあげますね」
「いいです、自分でできますから」
「そんなこと言わないで、一緒に幸せになりましょうよ」
「もう、アキトさん、エッチなんだから、うふふっ」
「そうですね――」
「あんまり遅くなっては、グランマにもご迷惑がかかるから……」
脱衣所でのひととき、一服の恋のアラベスクを織り上げた二人は、ようやく浴室の引き戸を開けて洗い場へと入っていくのだった。
脱衣所の外の廊下、引き戸の前では湯上がり用のタオルを抱えた秋乃と、なかなか戻ってこない秋乃の様子を窺いにやってきたアナスタシアが息を潜めて立ち尽くしていたが、中でようやく二人が浴室内へと入ったのがわかると互いに顔を見合わせて、大きくため息を吐いていた。
「あの子たちは……ちょっと目を離すとこれなんだから……」
アナスタシアは苦い顔をして言った。
「まったく、仲が良すぎるのも考えものですね」
「お母さまにはそう思われるのかもしれませんが、アリシアさんが幸せで、大切にされているのなら、それはとても良いことだとおもいますよ」
「まぁ、喧嘩が始まるよりは良いということにしましょうか……それにしてもあの子が……まさかあんな大胆なことをするようになるなんて……」
「恋をすると女の子は大胆になる……アリシアさんも人の子、女の子だったってことですね、うふふ」
秋乃は脱衣所の引き戸をノックしてから、ガラガラと開け、浴室の中に居る二人に呼びかけた。
「湯上がりのタオル、置いておくわね」
これにはアリシアの「ハイ」というお行儀のいい返事がすぐに返ってくる。
が、
「あなたたち、お風呂では大概にするのよっ」
そのアナスタシアの声には、少しの間があってから浴室内からアリシアの返事があるのだった。
「お母さま、あたしたちは大丈夫ですからっ――」
その声音は、明らかに親から恋路の邪魔をされてちょっと苛立った容子を覗かせる年頃の娘のものなのだった。