ARIA A SECRET SCHOOL DAYS 作:真夜中のミネルヴァ
第七節 性の世界 その1
隔絶された地の底のどこまでも静かな祠に、ときおり息継ぎをするアキトの吐息が熱っぽく耳に届いた。
干し
彼女にはいま自分の身におきていることが信じられなかった。
こんなことをアキトから、十四歳の男の子から求められるなんて……。
まるで夢の中のできごとのような非現実感のなかで肉体の感覚だけが生々しく迫っている。ときに鮮やかに全身をしびれさせ、ときに体の深奥にまで届く重々しい振動となって、けなげな心と充実した肉体を責めさいなんでいる。
あっ、と呻いて乱れ、はしたない声だけはあげまいとして指を咬んだ。
眉間に悩める縦じわが浮く。せつなそうに薄く開かれた瞼、潤んだ碧い瞳には官能の翳りと諦めの色が濃く滲む。
それはあまりにも唐突に彼女の不意を突くかたちで始まったのだった。
是非もなく心の準備もないままに。
アキトがその行為に及んだとき、結ばれるとばかり思っていたアリシアには、はじめ自分の体に何がおきたのかわからなかった。
デリケートな場所に奇妙なくすぐったさを感じても、やがて襲いくる痛みに備えてじっとされるがままになっていた。
かたく目を閉じて。
だから、そこ――に、顔を寄せられている判ったときには卒倒しそうなほど驚いたのだ。次いで津波のように押し寄せる烈しい羞恥にパニックをおこしそうになっていた。
「ダメぇっ――!」
その異様な体位から腰をひいて逃れようとする。
けれどもひとたび開かれてしまった扉は少年の体が突っ支いとなって閉じられない。身を返して逃れようとしてもアキトの腕は両脚をしっかりと抱えるように巻きついていてそれを許さなかった。
「イヤよ、アキトくんっ! しないで、そんなことっ!」
自分でも初めて耳にするような、すっかり余裕を失った黄色い声で少年をなじる。
きっと何かのまちがい、すなおでおとなしいアキトがそんな不自然なことをするはずがない、だからきちんと諭せばわかってもらえる、アリシアはそう思っていた。
少年のたくらみにも、男というものが本能的に宿している女の肉体への強い渇望にも気づかずに。
彼女にとってそうした行為はどこまでも他人事、自分の身に起きるとは思えない異常なことなのだ。普通の女性であればとても応じられない、応じられるはずもないこと、と。
自分が触れることさえためらうデリケートな場所を、女にとってとりわけ密やかな羞恥と懊悩の極みともいえるプライベートを、たとえどんなに深い絆で結ばれた恋人同士であろうと相手の顔前にさらけだすというのは、やはり常軌を逸していると思う。
否、愛すればこそ恋人には自分の醜い姿を知られたくはなかった。
それなのに少年はアリシアの片脚を肩に担ぐようにしてさらに大胆な体位を強いてくる。ぐいっと体重をのせられてしどけない角度にまで脚を大きく開かされ、無防備な姿にされてアリシアは呻いた。
「いやぁっ、アキトくんっ……」
「アリシアさん、大好きっ」
下腹部にかかる熱い吐息に少年の興奮がつたわってくる。
「あっ……」
唇が落ちてきて、ねっとり湿った感触の柔らかいものに探りをいれられてアリシアは焦った。
「だっ、だめっ、いけないっ……ああ、おねがいよっ、ききわけてっ……」
自分の体と、そして少年とのあいだに何か良からぬことが起きる前に逃れなければ、と必死に身をもがかせる。
だがもがけばもがくほどふんわりした藁の上で、逆に体はずるずると沈んでいってしまう。逆に下腹部ばかりを差し出すかたちになって、かえって少年の行為を
ああっ――。
絶望の悲鳴があがる。
白い肉体が鞭打たれたように、ぴんっ、とはね、背中が優雅なアーチを描いてつっぱった。ぴくぴくとけいれんする豊麗な腰のライン。
少年の唇に女のもっともかよわい部分、とりわけ敏感なところを捉えられてしまったのだ。
「いやぁ……アキトくぅん……どうして……」
はぁはぁ、と、せつなく息をみだして少年に哀願した。
もう白き妖精のときのたおやかな微笑みはどこにもなく、罠にかかり追いつめられた獣の哀しい瞳で慈悲を請うばかりにされている。
藁のベッドにひろがるストレートブロンドの乱れ髪は、そのまま今のアリシアの胸の内を映しているようだった。
たよりなげな女の容子に自信を得たのか、少年には迷いもためらいもなかった。丁寧に、そして丹念に禁断の愛撫に熱中しはじめる。が、丁寧であることはアリシアにとって無慈悲であることと同じなのだ。
ひそやかな肉を大胆に切り分け、くまなくなぞり、ひとつひとつをじっくりと含んで女の密やかな姿形を確かめる口づけ、性器接吻。
それは女体に潜む秘密をどこまでもつまびらかにしようとする執拗で残酷な粘膜の検分に他ならない。
アリシアはその淫らな探索を受けながら、自分がもう少年に対してはどのような隠しごとも許されないことを、悔いに翳る心と相反する甘美な肉体の感覚とのはざまで覚悟していくのだった。