ARIA A SECRET SCHOOL DAYS 作:真夜中のミネルヴァ
性の世界 その3
体を知悉する恋人の的確で巧みな愛撫。
とても傷つきやすくてデリケートなところに愛情をたっぷりささやきかけてくれている。どんな言葉よりもわかりやすく女の肌にうったえかける、命と魂の契り、誓いの口づけ。
長い愛撫にもう身も心もとろけてしまいそう。いつしか罪の意識も薄れて自然に腰を浮かせると愛してほしいところをねだっていた。
舌がそこを捉えると、形よく膨らんだお尻が、きゅんっ、とちぢみあがる。
ああ……。
こんなことまで……してる……。
あたし……。
優雅に微笑んだ女は両手を伸ばして股間に顔を寄せている髪をなでた。
内腿に触れる頬の感触。
大人の男とは違うすべすべの肌と、少年らしい柔らかい髪質が愛しさをかきたてる。
好きよ……大好き……。
大きな羽毛枕に深く頭を預けた。女の歓びに白い喉もとがいっそう艶を増してわなないている。
甘美な刺激にうっとりと薄く開いた目に見なれない天井が映った。
ぶら下がったペンダント式のサークル灯に目が止まる。
ここは、どこ……?
不思議そうに小首を傾げて二本灯式の蛍光灯をぼんやり見ていた。カーテン越しに外の光が部屋を薄明るく照らしている。
そうだった……今日は土曜日の午后だったわね……灯里ちゃんは藍華ちゃんのお家にお泊まりだったから……。
午后……!?
あら、たしか儀式は深夜に行われていたはずなのに……。
おかしいわね……うふふ……。
彼の舌がまた中を窺っていて、アリシアは自ら片膝に手をかけると体を大きく開いて受容れるのだった。
初めての時、あんなにショックだったその愛撫も、デートのたびに求められて回を重ねるうちに今ではおきまりのものになっていた。
恥ずかしくないわけではないけれど、自分でも驚くほど抵抗感は薄らいでいる。代わりに愛する人から秘めた匂いを好まれるのを素直に嬉しいと思えるようになっていた。
隙を見せるとすぐにスカートの中に潜りこもうとするんだから……。
学校にいる時でも、ひと気のない準備室や更衣室などで求められて、仕方なく応じてしまったことが何度かあったのだ。
うかつにもその一部始終を灯里に見られていたこともあったりした。
……あの時は……すごく羞ずかしかった……あら……学校で授業?……あたし授業なんてしたかしら……。
訝しげに記憶をたどると、そのとき突然ドアチャイムが鳴って、愉悦にまどろんでいたアリシアは跳ね起きた。
淫行のさなかを襲われて恐慌に胸が早鐘をうっている。
呆とした頭で脱ぎ捨てたものを求めてあたりを見回した。
視線の定まらない目に蝋燭の炎の並んだ壁が見えて、ようやく自分が地下の祠に居ることを思い出して、大きく安堵のため息をつくのだった。
夢――?!
ドキドキとまだ胸が脈拍っている。
どうやらいつの間にか眠りこけていたらしい。
アキトの姿を求めたが、用足しにでも出ているのか傍らにはない。
ずいぶん生々しい夢だったわ……。
まだ感覚が体にはっきり残っている。
見ると股間の飾り毛が湿りけを含んでツノをつくっていた。普段は隠されている愛くるしい秘唇が淫靡な戯れを物語って、哀れに荒れはてたブロンドのくさむらの中にほの白くくっきりのぞいている。
アリシアは寝くずれた自分の姿を目の当たりにして、あながち夢とばかりは言えないわね、と半ば自嘲気味に思うのだった。
毛羽立ったヘアを整えようと軽くそこに触れ、ぴりッと甘やかな電気が奔るとびっくりして手をひっこめる。
やさしげな三日月の眉を寄せて泣き顔になっていた。
体のあちこちに愛撫の余韻が熾のようになって残っていて、僅かな刺激にも目ざとく反応しようと息をひそめて待ち構えている、そんな危うさを感じてしまうのだ。
汗と涙と唾液、それに体液とで肌がベタついている。
宣告どおりに少年は彼女の体を貪っていった……。
アリシアにしてみればまるで全身が官能の嵐に見舞われたような鮮烈な体験の連続だったのだ。
少年はけっして手をゆるめることなく、アリシアの充実した肉に征服者の証として男の烙印を刻みつけていった。
どんなに啼いても、どんなに許しを願ってもけして容赦はしてくれずに……。
が、乱暴にされたのでも苦痛を与えられたのでも、ましてや傷つけられたのでもない。
牡として目覚めた少年は心やさしい仕置人になって、女の肉のはたらきを、性の機能を丹念に、それはそれはつぶさに確かめて彼女を追いつめていったのだ。
最後にはアリシアが自ら体をひらいて、すすんで秘密を分かち合うようになるまで、大切に、慈しむようにして。
自分ですら知らなかった官能の仕組み。
どこをどうされるとどうなってしまうのか、どのようにされると体が泣き崩れてしまうのか……。
女のさだめというものを肌と肉とにしっかりと教え込まれて、彼女は抗うのを諦めるしかなかったのだった。
「……アキトさんに……わたし、もうイヤって言えないのね……」
自分の体がアキトの色に染められていき、アキトのものにされていくのを半ば傍観者の気持ちになって受け容れていた。
濃厚な愛撫に、ときに控えめな愛くるしい声で慈悲をうったえて啼きながら。
「……あんなにひどいことして……」
床敷の上に膝を崩して横座りになったアリシアは頬を染めてひとりごちた。
自分が演じた行為を思い出すと身悶えしそうなほどの恥ずかしさに襲われてしまう。
びっくりだったのは、接吻というものがもっている可能性について。
あの子……ほんとうに……はじめてだったのかしら……?
たとえ性の知識が豊富とは言えなくても、アキトの振る舞いがおよそ未経験者のものではないことはアリシアにも感じられる。
よどみもためらいもなく年上の自分をリードしていた。
さらにどれほど大胆な行為が可能なのか、男と女はどこまで許しあえるものなのかを手ほどきして。
あんなふうにされたら……女の子は……きっと……。
胸にかすかなと痛みのさざ波がたって、アリシアは焦点を結びかけた頭をふりはらった。
マンホームの男の子ってやっぱりおマセさんなのかしらね……。
じわっと潤んだまなざしになって祠の出口の方を見やる。
そこに少年が戻ってくる気配はなかった。
どこへいったの……アキトさん……?
もしかすると置いてけぼりにされたのかしら? と、だんだん心細くなってる。
と――、
「アリシアさん」
背後で声がした。
「アキトさん?」
振り返るがアキトの姿はない。
「ここですよ」
「……?……」
祠の奥の壁面に目を凝らした。石積みの壁を。声はその奥から聞こえているらしい。
「こっちです」
壁の一部が開いて、その隙間からアキトが笑顔を覗かせた。
「凄いものがありますよ」
少年が招いていた。
「すごいもの?」
アリシアは身を覆うものを探したが手の届くところにはなくて、仕方なく全裸のままで立ち上がるのだった。