ARIA A SECRET SCHOOL DAYS 作:真夜中のミネルヴァ
第八節 水の惑星の秘密 その2
ゆっくり念をふくめるように指の腹でなでつけはじめる。
逃れたくても逃れられない女の泣き所を押えられて、アリシアはたちまち追いつめられていった。
「あ、そこっ、アキトさんっ……そこ、そこはイヤなのっ……ねぇ……ああ……」
「ひらいて……アリシアさん……」
少年の両手が力をいれて拒むアリシアのお尻をぐいっと鷲づかみして揉みほぐしている。指の腹にとらえられたままの、その危うく淫らな緊張感の中で。
「ああ、イヤよ……おねがいっ……」
「大丈夫です……」
張り切った白い肉がみごとに爆ぜて潤んだ肉合が剥きひらかれた。
アリシアの肛門とその周りは白い肌よりも僅かにくすんだ色あいで、ここへ来るまでは人の目にも外気にも晒されたことのない神秘そのものだった。
匂い立つようにしっとりとしていて、男の目を惹き付けずにはおかない魅力に溢れている。なにより健気に
粘膜の周りに黄金色の産毛がまばらに生えていて、そのなかに毛足の長いもの――少年はとりわけ目立った六本を数えて、目ばかりでなく心を楽しませていた――が混じっているのがさらに新鮮な魅力を放っている。
表の性器を、深い谷間に目も綾な花弁をつけた絢爛たる薔薇になぞらえれば、裏の肛はひっそりと隠れて愛らしい白い花をつける可憐なヒナ菊のようで、こちらにも愛情を注がずにはいられないものなのだった。
憧れの女体を知悉する機会を得て、少年は天にも昇るような心地で愛撫に勤しんでいるのだが、しかしその狂おしいほどの男の情熱、執着をアリシア自身にはわかるはずもなく、自分の肉体に邪な興味と関心を寄せる少年を畏れ、また危ぶんでもいる。
女にとってなによりも恥ずかしい、ある意味で性器よりも触れられたくない秘密、懊悩の極みともいうべき一点、そんな穢れた場所が男性の興味を惹くことなど、この館に連れてこられるまでは想像もしていなかった彼女にしてみると、それは恐ろしく変質的な行為であり摂理に背いた逸脱なのだ。
にもかかわらずアキトはやすやすとタブーを乗り越えてくる。
今も指は羞恥のくぼみの真ん中で悩ませつづけていて、淡く翳る繊細な粘膜をじっくりと探るようにして、彼の指先が小さな円を描いている。
ぴとぴとといやらしくべたつく感触がなさけなかった。
だから泣き出したいのを我慢して窄まりをしっかりと結んで頑にするのだった。
それがはかない抵抗であると知りながら。
背後からしっかりと腰抱きにされたアリシアには、本気になった男の愛撫からのがれるすべなどある筈がなかった。
もとより女の臀部の守りは手薄。どんなに抗おうと身をかたくしても、内腿を攻め上ってくる手指にはやすやすと奥の院にまで侵入を許してしまう。
我慢比べになって音をあげるのはいつでも女の方なのだ。
肌を重ねて思い知らされたのはアキトの愛撫からは逃れられないこと。
ひとたび求められたらたとえどんなに拒んでも、最後にはアキトの思い通りの姿にされてしまう。
たとえ避けられたと思ってもそれは一時の安寧にすぎず、彼は先回りしていて彼女に許されたたった一つの逃げ道のむこうで待ち伏せしていた。
結局は少年の胸に自らとびこんでいくしかないのだった。
啼きながら、許しを乞いながら、体を開いて受け容れる。
恥ずかしいことを――。
くやしい……。
触れるだけで女の心を削り、抵抗感をなし崩しにしていく憎らしい指。
背中を軽く推されて、何を求められているか察したアリシアは重力石の神像が置かれた台座の端に両手をついた。
身を屈めてお尻だけを突き出すかたちの屈従の姿になっている。
ソドムの奴隷市で品定めをされる奴隷女のように。
脚を開かされ、すかさずアキトが背後でうずくまるのが気配でわかった。
尻の谷間に両手がかかり、ぐっと分厚い臀部の肉が分けられる。ねちゃつく肉間が奥まで外気にさらされるしどけない感覚に、清楚な美貌が愁いの翳を深めていった。
吐息がかかり、
あぁ――。
舌がそこに貼りついて、目を閉じる。
いつもやさしげな黄金の三日月眉が寄せられて、広い額の眉間に嫌悪の縦じわが浮いている。
彼女を震えあがらせ、どこまでも後悔させたあの淫靡な性技がまたはじまった。
あたりを味わうように動く熱くざらつく舌。あいせつな真ん中を中心に両側の白くくすんだ谷壁を懇ろになぞり、愛らしい尾骨の突起の形を確かめると、またそこに戻ってくる、キス。
チロチロ、ペロペロ、ちゅくっ――。
くすぐったさと、はずかしさ、哀しさ、いろんな感覚に心と体がかきみだされて、アリシアはぴんと伸ばした両腕の間に頭を垂れてじっと堪えた。
プロポーションの美しい長い腕の間にゆっさりと豊満に垂れた肉房の先は色づきを増して、桜色の花弁に精いっぱい膨らんだ尖りがむりやり剥かれた蕾のような哀感をたたえている。
浅黒い手が白い肌を這い、両手で乳房を掴んだ。まるで目の前にある神像のように少年の顔が股間に密着する。
どうしてこんなこと、するの……?
いけないことなのに……。
初めてのセックス、男の子との性愛、それはアリシアが思い描いていたものとは違って交わりを伴わない、ただひたすら女の体を検分されることだった。
手と指と、そして口唇によって。
「嘘つき……猫、かぶりしてたのね……」
震える声でなじった。欲深な舌の動きを気にしながら、官能の翳りに上気した顔で。
「……ああ……イヤよっ……」
指で広げられ、わずかに
くっきりとした鎖骨の線と、白いのど元に長く浮いた筋がアリシアのせつない心根をつたえている。地に堕ちて、翼をもがれた天使の哀しみ。
舌先は更にそこを侵そうという意志をにじませている。
おとなしそうなふりをして、なんにも知らない顔をして、平気でひどいことをする、男の子――。
悪い子よ、この子……。
「ああ……それだけは……おねがいよ……しないで……とてもいけないこと……」
「ボク、嘘なんてついてません」
お尻の間で声がした。
「みんなアリシアさんが教えてくれたことだから」
アキトは意外なものいいをする。が、淫らな接吻に気もそぞろなアリシアには、少年の言葉の真意をたどる余裕さえも与えられてはいなかった。
「わたし、なにも……イヤって言っても、アキトさんが聞き分けてくれないからっ……ああ、そんなっ……イヤぁっ……」
焦る間もなく、舌の代わりに今度は指が、ぐりっと、くぐってきたのだ。
「ああ、それっ、それはイヤなのぉ……おねがいっ……ああっ……」
指に深々と侵されて、体で少年の指をにぎりしめ、体の内側で指の形を感じてアリシアは絶望に呻いた。
「かわいい人……ボク、アリシアさんのここも大好き……あったかいなぁ、ぎゅうっとしてくれて、すごくかわいい……」
「だめぇっ……」
わずか半間足らずのあいだを隔てて、歓喜と悲哀とが鬩ぎあっていた。白い体と褐色の体、男と女、光と闇とが織りなす情熱のアラベスク。
「泣いてもいいですよ。ボクはアリシアさんのこと泣かせるつもりでここに居るんですから。声をあげたっていいです。誰にもきこえません」
「アキトさん……ひどいわ……ひどい、ひどすぎるっ……」
「だって、アリシアさん、ボクをけしかけるから……美しい女の人に可愛い顔でイヤって言われたら男なら誰だって気になります。それがアリシアさんならもう気持ちにブレーキなんてかけられなくなる……」
指がゆっくりと引き出されて、アリシアは唇をかみしめた。が、それで終わりではないのだった。また指が窄まりをくぐって更に深くもぐりこんでくる。
「これはボクの中指です、いちばん長い指……わかりますか?」
「………」
アキトの行為も言葉遣いもまた一段とハードルがあがって、いまや幼い陵辱者へと豹変している。
「セックスする前にヴァージンの時のアリシアさんのお尻の感覚を先に知っておきたかったから……キミがどんな顔をするか見てみたかったから……」
たった一本の指と結ばれてアリシアは負けきった気分になっていた。
自分の意志ではけして逃れられない指、男の指。
痛みを感じているわけでも、また苦しいわけでもなかった。が、それは誰が主人であるかを教える運命の仕置きなのだ。
アリシアは獣のような浅ましい姿でただ犯されている。
少年が満足して自分を解き放つまで。
もうだめだわ……。
心の
うつむいた長い金髪のヴェールの中で独りせつない頬笑みをうかべた。
体はいまも異物を追い出そうとして抗議の悲鳴を発しつづけている。長く伸ばした指にきつく結びついてその存在を、非道をアリシア本人に教えつづけている。
けれども体を弄ばれる恥辱と哀しみはいつしか諦観と受容へと変わっていったのだ。
その夜、彼女が経験し乗り越えてきたいくつもの試練のように。
アキトが教えてくれたこと。
それは……。
女として生きること――。
ほんの一刻あまりの間に学んだことは、それまでの人生で学んだこと全てにも優る濃密でかけがえのない経験だった。
心をひとつにして、体をゆだねて、命を燃やして愛されることで人を愛する。
それが女。
女というもののさだめなのだと肌身をとおして知ったのだった。
ただ、目覚めの速さがいまだ少女の心を残しているアリシアを当惑させている。
こんなにも長く、瞬く間に過ぎ去っていく二人の時間に。
すぐ目の前に性の歓びにのめり込む若い男女の神像があった。
神々ですら我を忘れて奔放に振る舞う恋の魅力。
石像が、なぜ交わりの場面を切り取ったものにならなかったのか、アリシアにもわかるような気がしていた。
きっと創造主はセックスといういとなみが、生殖のためだけのものではないことを伝えたかったからなのだろうと。
愛し合う男と女がどこまで許し合えるものかを、互いの肉体を使って確かめ合うこと、それがセックスのもついちばん大切な意味なのだとしたら……。
奪われた――そう感じていたことが、狭量な自分の心に現れにも思えるのだ。
求められて、与えるものがあったことを素直に喜ぶことが女の愛のかたちなのかもしれないと。
少年がアリシアの髪を指でかき分けると、肩から背中に流して隠れていた顔を覗き込んでいた。
片方の手の指は女の肛を冒したままで。
アリシアは伏せていた顔を少しだけ上げて少年の様子をうかがった。幸せそうな笑顔を見て潤んだ瞳のはにかんだ微笑を返した。
「本当にきれいです、アリシアさんは……こんなに美しい女の人、どこにもいないから……」
少年はかがみこむと、こめかみのあたりにキスをおとしてくる。
「大好き……アリシアさん……」
やっと指のいましめを解かれてアリシアは長くためていた息を吐いた。が、何か良からぬこと企む顔のアキトに気づくと、またびくっとする。
「嗅いでみますか? ボクが大好きなにおいを」
「……?……」
「アリシアさんのにおい……」
少年は顔前にアリシア自身の穢れで濡れてテラつく指をかざすとワケ知りに笑む。
そのよこしまな意味がわかって、アリシアは哀しみ色の濃い碧い瞳を驚きに瞠ると、傷ついた顔をうつむけた。
アキトの歪んだ嗜好を堪え難いものに感じて。
「こんなことをするボクのこと、アリシアさんはきっと変だと思っているんですよね?」
「………」
「でも、もし今のボクが感じている歓びのほんの少しでも分けてあげられたら、気持ちは変わるとおもうのに……」
少年にとってアリシアが分泌する体液はその全てが馥郁たる香りを放つ甘露であり、彼女にしかつくりえない愛の蜜だった。
アキトはまだ未完成の小ぶりな鼻先を寄せると、指の匂いを嗅いで彼女をいたたまれなくさせる。チョコレート色の頬が染まり、うっとり恍惚とした顔をするのを見てアリシアは顔を背けた。
閉じた瞼に長い濡れ睫が濃い。ロングストレートのブロンドが白い肩口からはらりと流れて朱に染まった横顔に昏い影を落としている。
すぐ傍らでアキトが自身のニオイにまみれた指を丁寧に舐めしゃぶっているのが気配でわかるのだった。理由を言葉にできなくても、それがじかに口づけされるよりもいっそう背徳的な行為であるように感じてしまう。
普通の十四歳の男の子なら想いもしないであろうこと、と。
「ボク、アリシアさんのにおい、大好き……アリシアさんの、お肉のお味も……」
少年からすると、清らかな姿をした女神が驚くほど官能的な肉体を備えていたことが嬉しくて、好ましい彼女のにおいに包まれたいと思うのはごく自然ななりゆきなのだったが、アリシアにはあけすけなもの言いは胸に刺さるものとなる。
「こんなに綺麗な女の人のいちばん秘密の、においと味……アリシアさんですら知らない体の秘密……それをボクは知ってる……」
「………」
少年の手が伸びてアリシアの背けていた顔をひきもどした。
「ボクを見て、アリシアさん……」
やりきれない思いを抱えながらおそるおそる目を開くと、視界の隅に少年のこわばりが映るのだった。初めて間近にする男の子の体。
体を重ねたときに、下腹部にまるで骨のように硬く熱い感触のあったあの不思議な器官。
淡いヘアの子供らしさを残したスマートな体つきに比べると、堂々たる存在感を示して先太りのものが天を睨んでいる。
アキトは指についた残り香を嗅ぎながら、肉棒をビクっと身じろぎさせてアリシアを驚かせるのだった。
「コレ、アリシアさんのにおいが大好きって言ってるんですよ」
「心のやさしい、ステキなお姉さんのにおい……お尻の穴だって、キミのは特別だから……」
アリシアが見ている前でまた指のにおいを嗅いで瞳を潤ませる。握る片手をしごいて包皮をたぐり頭部を露出させて、当惑するアリシアの目を奪うのだった。
ひと皮めくると一段と猛々しく、まるで怒ってでもいるようにぷくっと膨れてエラをたてて威嚇している。
ピンと張って光沢を放つ先端は潤んでいて、馴染みのない濃厚な匂いが香ってアリシアはドギマギした。
すごい――。
これが男の子の……?!
「アリシアさんの体にもコレの小さいのがありましたよ。ピンク色の真珠みたいな可愛いらしいのが。ボクなんかのとは比べものにならないくらいきれいで清潔なものでしたけど」
やがてこのようなものが自分の体の中に入ってくると想うと、アリシアは少し怖くなる。その一方で強く心惹かれてもいるのだった。
もっとよく見てみたいと思った。が、アキトはすぐにまた皮の中に隠してしまう。
「これでおあいこです。お互いのものを見せ合いっこしたわけですから」
アキトが生真面目に宣言して、アリシアは思わず吹き出しそうになってしまった。
人はあまりにも大きな認識ギャップを感じると脳が処理しきれずに笑いの衝動となる。
「やっと笑ってくれましたね」
アキトもニッコリした。
出逢った時の躊躇いがちな微笑みとは別の包み込むようなやさしい笑顔で。
アリシアのまた胸がトキン、と疼く。
「愁い顔のアリシアさんもステキだけど、やっぱり笑顔のアリシアさんは可愛いな」
少年の手が髪を撫で背中をなぞり腕をからめて身を寄せてくる。
体に触れられるのはイヤではなかった。むしろ身がまえて肌が粟立つ感覚は心地の良いスリルがあって好ましいほど。
キスが胸に落ちてくる。
乳先をやさしく含まれるのもアリシアは気に入っていた。
大事そうにひと舐りされると、母性の本能が刺激されるのか少年への愛しさがかき立てられるのだ。
頭の後ろにピンク色の靄がかかったようになって、胸が甘い陶酔感でいっぱいに満たされる。
「おマセさん……いけないこといっぱい知っていて……」
「それはセックスの手ほどきをしてくれる先生がステキだったからです」
アリシアをドキッとさせる告白。
大人の女に慣れてるとしたら、年不相応なほど女の体の扱いが巧みなのも納得がいく。
「そう……先生と……」
生徒が教師を好きになるのはとくに珍しいことではないと知っていた。
教師というのは、もっとも身近にいる
胸にうまれたかすかな痛みが、嫉妬、と呼ばれるマイナスの感情であるのをアリシアは認めた。これまで抱いたことがなかったのは、単に人を好きになった経験がなかったからに過ぎないことも。
「あの、おかしな誤解をしないでください」
「誤解……?」
アキトはなぜかちょっと慌てた様子になっている。
「アリシアさんのことですよ、ボクのセックスの先生というのは」
「――?!」
「女の人のことを教えてくれたのはアリシアさんだから……」
少年はまたアリシアの乳房の先の尖りを口に含み、舌の上でやさしく転がしながら言う。
「乳首がお口の中で大きくなってかたさを増していくことや、いちばん知りたかったからだの秘密のことをみんな教えてくれた……やさしい先生です……」
胸元でアキトが自分を見上げていた。
「きっとアリシアさんは覚えてはいないですよね、初めて会った時のことを」
アキトはまたしてもアリシアのと胸を突くようなことを言う。
「……?……」
「やっぱり覚えてないんだ……」
「前にアキトさんと……逢っていた……あたしが……?」
けんめいに記憶を辿ってはみたものの、どうしても思い出せずにアキトの顔色をうかがってしまう。
「まだボクがAQUAに着いたばかりのことだから、もうかれこれ半年近くも前、AQUAは初秋を迎えた頃でした……日が暮れて街で迷子になりかけたボクを駅のそばまでゴンドラに乗せてくれたんです……舟謳まで謳ってくれて……」
「……?……」
迷子の……男の子……?
迷子の、迷子の……男の子……迷子のっ……。
「あのときの坊やっ――!?」
少年はニッコリ白い歯を見せて笑んだ。
「そんな、だってあの子って、まだほんとに小さな男の子だったわ……」
プライマリースクールのせいぜい三年生ぐらいかなって感じていたことを思い出す。
小さな子が宵闇の迫る人通りの絶えた薄暗い裏通り、古い娼館のあったあたりをひとりで居るのが心配になって、それで声をかけたのだった。
「テッテ橋の近くに居た……?」
おそるおそる確かめる。
「そうです、まだ来たばかりの頃で、カペザロの帰りに駅まで近道するつもりで早速、道に迷っちゃって。ネオ・ヴェネツィアは街全体が迷路みたいだから」
「そう……あの時の……」
動揺はそんな幼い男の子と深い関係を結んでいたことへの驚き、そして演じたいとなみの濃さとのギャップに対して。
「ボク、本当にびっくりして、だっていきなり目の前に女神さまがあらわれたから。不思議の国に迷いこんでしまったのかと思って……だからゴンドラにお乗りなさいって言われた時にはどっかに連れて行かれてしまうのかな、それならそれでもいいやって、そんな気分で乗せてもらったんです。まだウンディーネさんたちのこともアリシアさんのことも知らなくて……」
「………」
「せっかくお話してくれた街の物語もアリシアさんの謳も夢うつつで、この世にこんなにきれいな女の人がいるのが信じられなくて……」
少年はアリシアの深い胸の谷間に顔を寄せる。
「……渡る夜風にのってアリシアさんのほんのり甘いにおいが香って……いいにおい……アリシアさんのからだのにおい……」
アリシアの胸に浮いた汗のしずくを丹念にキスで拭い始めた。
「不思議だったのよ、地元の子には見えなかったから……ちゃんとご両親のもとまで送り届けたほうがよかったかしらって……」
「ボクもふわふわしてたから生返事をしていただけだったかもしれません……すごく嬉しくて幸せな気分で、どうやってドミトリーに帰ったのかも覚えてなくて……無断で夕食を欠席したあげく門限も破ってたから、あとで寮長先生に叱られて、編入早々に外出禁止三日間のペナルティまでもらっちゃった」
「あら……」
「でも女神さまが実在するってわかった時はうれしかった……あの夜のことが夢じゃなかったんだってわかって……」
「……女神だなんて、そんな……街の人たちからは水の妖精って呼ばれても、みんな素顔は普通の女の子たちよ……」
「そうかもしれません……アリシアさん以外は……」
「わたしは……」
見上げるようなアキトのまなざしが痛かった。
この子はもう何もかも知っていてそんなことをいうのかしら――と。
「ネオ・ヴェネツィアに来る機会があれば、どこかでまた会えたらいいな、あの時のお礼が言えたらいいなと思っていたんですけど、いざとなるとやっぱり怖くてARIAカンパニーにはとても近づけませんでした……結局いつもスケッチを数点描いて、すごすごとドミトリーに退散……」
「怖い? どうして……?」
「トラゲットとちがってゴンドラは奨学生には敷居が高いんです……それにもしもアリシアさんの印象があの夜と変わってしまったらと思うと……」
芸術家のたまごらしい感受性の強さを窺わせる。
「街でスケッチしていて、たまにアリシアさんの姿を見かけることがあったら、その時は幸せいっぱい。白いゴンドラに真っ白なアリシアさんの姿はやっぱり女神さまなんだなぁって……」
アキトはまたアリシアの白い肌にボディキスをはじめる。
豊かな胸のふもとからすっきりと引き締まった脇腹、柔らかな肉に包まれたお腹……。
唇のとりしきる範囲がゆっくり下方へと降りていく。
少年が何をするつもりか分っていてもアリシアにはもう拒めなかった。
「それで思ったんです。こんなにきれいな女の人のにおい……だいじなところってどんなにおいがするんだろうって。だって初めて会ったときのアリシアさん、すごくいいにおいがしたから。だからいちばんいいにおいのするところにキスができたらどんなにステキだろうなって……」
少年は舌先で軽くおへその中をくすぐると、アリシアの逸楽のデルタへ向けて一気に舐め下る。白い下腹部の柔肌にナメクジの這ったあとのような濡れた線が浮き、そのまま黄金色のくさむらへと分け入った。
かき乱されたヘアの中に面相筆で描かれたような優しいスリットが白くつつましく覗いている。
「はあっ……」
アキトの舌はためらいもなくそこをノックし、こじ開けて、アリシアのなによりか弱いところを舌べらで探りはじめた。
「でも、もしアリシアさんに恋人がいて、もうこんなことされてたら、そんなふうに考えてると夜も眠れなくなって……だってアリシアさんの体のことをアリシアさん以上に知っている男がいるなんて、とても堪えられないから……だからあのアンケートを見たときはすごくうれしかった……クンニリングスの項目で、されたことはないの方にチェックがしてあったから……求められたら拒む、にチェックしてあったのもアリシアさんらしくていいなぁって……そして凄く怖かった……だって……」
「あ……アキトさん……それっ……」
ぴくっと反応して、内気な女の子のように幼気に腰を引く。
敏感な蕾を舌になぞられるとビリビリッと全身に電気がかけぬけるのだ。
けれども口づけからは逃れようにも逃れられない。
そこを長く捉えられてアリシアはのど元を反らして天を仰いだ。目を閉じて。長い睫がハミングバードのように細かくふるえている。
アリシアの股間がまた豊潤な蜜の音を奏ではじめた。
「ああ……」
甘美な、それはそれは甘美な愛情深い口づけの味。女の心と体の抵抗感をなし崩しにしてしまう禁断の性技。
下腹部の肉の中、くっと浮き上がる腰骨に追いつめられていく女体のか弱さが匂う。
「アリシアさん……クンニリングスは嫌いですか? ボクがこうするのはイヤですか?」
次第に乱れていくアリシアを股間で怜悧に見上げながらアキトは残酷に訊いた。
応えに躊躇うと、ブロンドの巣のなかの秘密の唇の間に舌を深く差し入れてアリシアの気を散らせる。
「あぁ……ん……うふぅっ……」
アリシアは整った鼻梁の愛くるしい小鼻をひくつかせて、追いつめられた虚ろなまなざしで自身の秘所に顔を寄せて得意げな少年の顔を見やった。
それはアリシアにとってできれば避けたいことには違いなかった。
幼い男の子に秘所を貪らせる、二重の意味で禁忌を犯しているという罪の意識は拭い難いもの。
けれども体は既に意思を裏切ってすぐに少年の愛撫になびいてしまうのだ。
少年はもうすっかり緩んで開きやすくなったアリシアの股間をやすやすとくぐると、ディープキスになってたがいの粘膜に思いをとげさせようとしていた。
「……あぁっ……あ……あ……」
背後からも指で追い立てられて、逃げ場を奪われたアリシアは立ったままで逸楽の階段をかけ上るしかなくなるのだった。
もう何度目になるのかわからなかった。
少年の口のなかで歓びを迎え入れるのは。
が、なぜか少年はアリシアを頂まで追いやろうとはしなかった。途中まで押しやるとアリシアひとりを踊り場に取り残して背を向けてしまう。
「きっとアリシアさんはオーラルセックスをイケナイことだと思っているんですよね? 排泄器官に近い場所を口に含むなんてとんでもないことだって」
充血してぼってりとした感じになった粘膜を左右にひらいて中を覗き込みながら、
せわしないアリシアに暢気な問いをかけてくる。
そうよ……でも……いまは……おねがいっ……。
体に火をつけられて言葉にならない思いを瞳にのせて、アリシアは股間をもじもじと蠢かせた。
陰裂から空しくあふれる密やかな体液を、少年が舌を伸ばして舐めとるのをやりきれない思いでみまもりながら。
惨いはずかしめ――。
けれどもアリシアはこの年若い陵辱者をもとめている。走り出した体を心が追いかけていた。
「ボクもそう思ってました。臭くて汚いところをどうして舐めたりなんかできるんだろうって。でもアリシアさんが教えてくれたんです。クンニリングスやアニリングス、アニリングスっていうのはお尻の穴を舐めることですよ。そういうのってステキな女の人にはしたくなるものなんだって、大好きな女の人にはしてもいいんだって……だってボク、アリシアさんにしかそういうこと、したいと思ったことないから……」
「……アキト、さん……」
「それに神さまたちだって夢中になってやってることがイケナイことのハズがないじゃないですか」
アリシアの前には互いの性器を貪り合う美しい神々のカップルの裸像があった。
「オーラルセックスが普通のセックスよりもステキだと思うのは、生殖とは無関係の純粋に愛情にもとづく行為だから。相手が愛しくて、食べちゃいたいくらい可愛くてすべてを受け容れたい、自分の中にとりこみたい、そう思うからしたくなることだから……」
像を見てアリシアが感じたことを、少年は口にする。
「ボク、アリシアさんのセックスのにおいが好き、大好き……アリシアさんのからだのにおいはみんな大好きだけど、でもアリシアさんの大事なところほどステキなにおいをボクは知らない……」
憑かれたように瞳を妖しく光らせて、アキトの接吻に熱がこめられる。アリシアの顔が目尻を下げて泣き出しそうになったまま、口を半ばひらいてせつない息を吐いた。
「ふるえてる……アリシアさんの体が、熱い……」
下腹部に頬ずりをして女体の変化をうかがいながら、少年はアリシアの肉を残酷にまたじっくりと味わいはじめた。
背後から迫る指に肛をやさしく虐められながらの、二点同時愛撫。
「はぁっ!……だ、だめっ……いっ……あ、あたしっ……おかしく……なるっ……!」
「スゴイっ……どんどんあふれてくる……アリシアさんの女のコの蜜が……」
「ああ……いやぁっ……アキトさんっ……アキトさんっ……おねがいよっ、たすけてっ……ああっ!」
堪えきれないように頭をうちふっていたアリシアの腰が、とつぜんぶるんっ、となって、全身をぴんとこわばらせた。
「あ……あ……アキトさんっ……!」
また体から熱いものが溢れていく感覚がして、アリシアらしいつつましさで長く熱い息を吐くのだった。
くずおれそうになる体をくびれに副えられた少年の手に支えられ、体の中を吹き抜けていった情熱の余韻にそのまましばらく身をまかせて。
うわごとのように、愛してるわ、と何度も繰り返してうったえながら。
少年を愛しているかどうかなど、本当のところ今のアリシアにはまだわからなかった。これが恋と呼べるものなのかどうかさえも。
ただ、深く愛しあっていなければできないことをしている――。
そう信じて、アリシアは目の前の