ARIA A SECRET SCHOOL DAYS 作:真夜中のミネルヴァ
第十節 ピュアラヴ その1
少年は腕の中にある豪華な重みを覗き込んだ。
何度たしかめても信じられなくなって、すぐにまた彼女の姿を確認せずにはいられなくなる。
金色のほつれ毛をていねいに整えて、胸に顔を寄せている愛くるしい横顔をおもてにする。伏し目の碧い瞳がこちらを窺うように視線を上げた。長い睫が
神秘のヴェールを剥ぎ、背中の羽をむしり取り、好気のおもむくままにどこまでも辱めた相手を、なお信じようとしている美しい瞳が少年の視線と重なると、眩しげに目を細めて顔を伏せる。
ろうたけた年上の女性であるはずが、今はクラスメートの女子に較べてもか弱く傷つきやすそうに見えるのだった。
愛くるしさに少年の心は張り裂けそうになっている。
落ち着きのある控えめな性格と清潔感、およそセックスには無縁の雰囲気がそっくりそのまま強烈な性衝動へと反転する嬉しい驚き。
分かってはいたものの実際にアリシアを抱いて、少年は自分の欲望を抑えることができずにほしいままにふるまっていた。
やさしさにつけこんで欲望にまみれた手で触れ、追いつめ、そして傷つけた。
目もくらむような歓びとそれを
中指の先で優美な起伏を描く背中をなぞると、くすぐったい、というように白い背中が身じろぎをする。柔らかな体。
みごとにメリハリのある肉体がぴったりと密着しているのが不思議でならなかった。
おなかの辺にあたるポツンとした二つの尖りの感触がまた欲望を滾らせている。
少年はどこまでも甘美な謎の塊について、まるで深淵な神秘に挑む科学者のように仔細に解き明かしていくことに歓びを感じていたのだ。
どこに触れると美しい顔にどのような驚きの表情が浮かぶか、どこをどのようにすると愛くるしい声で歓びをうったえるようになるか。
アリシアの充実した肉体をくまなく探りながら、幾度となくひそかに藁の中に精を放っていた。そうでもしなければ狂おしい探究心にいっそう苛烈に振る舞っていたにちがいなかったからだ。
「かわいい人……」
まわした腕に力をこめた。指を櫛にして長い金髪をゆっくりと
「アキトさん……」
胸の中でアリシアが何か言いたそうにして囁いた。
「なぁにアリシアさん?」
「なんでも、ありません……」
初めて出逢ったとき「アキトくん――」と、涼しげに自分を呼んだ人が今、熱っぽい声音になって女の子の顔をしている。
彼女を組み敷いたまま半身を起こした。
仰向けのアリシアは頼りなげに両腕をまわして胸を庇おうとする。辱めを受けてもなお初々しいしぐさが少年を喜ばせている。
腕に守られて柔らかそうにひしゃげて盛りあがった乳房はいっそう肉感的で、眉を翳らせ愁いを含んだ美貌とのコントラストが眩しい。
少年はアリシアの前髪をかきあげて広い額をあらわにすると、かがみ込んで秀でたおでこに賛美の口づけをする。
「……いけないこと……いっぱい知っていて……ワルい子……」
アリシアは小さく詰りながらも目尻を下げた甘い表情を向けている。
「だってボク、はじめてなんです。だからアリシアさんが手ほどきしてくれないと……」
「ずるいわ、そうやってあたしをからかって……」
「かいかぶりすぎですよ、ボクまだ十四なんですから」
「まぁ」
アリシアが目を丸くして、それから、うふふ、とたおやかに微笑んだ。つかの間“お姉さん”の顔が戻っていた。けれども、少年が男の笑顔を返すとすぐにまた真顔になって少女のようなはにかみをのぞかせる。
くるくると変わる表情がふるいつきたくなるくらい可愛いらしい。だからまたデリカシーの無い質問をして困らせたくなる。
「アリシアさんはボクとセックスしたいですか? それともオーラルセックスの方がいいですか?」
「訊かないでください……そういうことは……」
「ボクはただ……アリシアさんには今のままで居て欲しいから……」
「………」
少年は女の胸の庇手のひとつを取ると頭の上にまで導いた。意図を察したアリシアは当惑しながら、それでももう抗おうとはしなかった。ほっそりとした青白い二の腕が開かれて、あらわになった腋の下から甘酸っぱい豊潤な香りが立ちのぼる。
少年はうっとりと目を潤ませて半月型のくぼみに顔を伏せると、オンナの匂いをまた貪りはじめた。
愛する女性の健康な汗の匂いはどんな香水や芳香剤にもまさる、男を目覚めさせ奮い立たせるもの。
ほっそりと慎ましげなアリシアが裸になるとびっくりするほど官能的でグラマラスな体をしていたように、体臭もまたけして薄いたちではなかった。
その発見は少年を少しばかり驚かせたかもしれない。
清楚な美貌には石けんやシャンプーの無垢なにおいこそふさわしく、実際、アリシアのすぐ傍らに居て少年の鼻腔を初めにくすぐったのはそうした温和な体臭だったからだ。
ミドルティーンの少年が普通に好ましいと感じる異性のにおい。
けれども互いに裸になって肌を接するようになって知ったのは、美しい彼女が秘めていたもう一つの体臭、よそいきのものではないアリシア自身の本当のにおいだった。
鋭角的で刺戟のある複雑な匂い、肌と汗とが奏でる肉の香りだ。
髪の生え際や耳のまわり、腋の下や乳房、臍、さらに少年がもっとも愛した陰部のとりわけ濃厚な胸ときめくにおい。
男にとってそれらをひとつひとつつぶさに確かめていくことに優る歓びがあるだろうかと少年は思う。
ネオ・ヴェネツィアを訪れて、水路ではじめて見かけたときからずっと憧れていた人。女神のような女性のどこまでも人間くさいプライバシー。ただ間近にするだけでつきることのない欲望が
アリシアの秘密を思い描いていた少年のすぐ目の前に、怯えと覚悟のないまぜになった白い美貌があった。問いかけるようなひたむきな眼差しが自分を見つめている。
男を受け容れることを心に決めた女の顔だった。
少年は愛しい顔に思いをこめて唇を寄せた。互いの気持ちをたしかめる口づけ、男と女になる前の、大人になる前の最後のキスを。
けれどもそのつもりが、まるで蜜壷のような口腔を舐めとっているうちにまたセックスへのキスがしたくなってくるのだった。
アリシアの懐かしいにおいが恋しくてたまらなくなった。
「でも、その前にもう一度だけ……キス、したいな。アリシアさんのだいじなところに……」
自分を見上げるつぶらな眼差しが羞恥に潤み、頬に差した赤味が増していく。
それでもアリシアがもう拒まないことを少年は知っていた。
どんなに大胆なことを求めても彼女はきっと応えてくれる。それが判っているから、なるべく高難度な体位をとらせてみたくなる。
女の気持ちをためしたくなって。
少年はアリシアを置き去りにして足下に移ると、目を閉じて身を投げ出したままでいる裸身に、絵描きのたまごの遠慮のない目をはしらせていった。
画学生ということもあって裸婦は見なれていたものの、こんなにも完全な女体というものは、ぜったいにありえないと感動しながら。
まるで産まれたばかりの赤ちゃんのようにしっとりときめの細かい肌、細身の体には重々しい巨きな胸。柔らかくてそれでいて張りのある肉房はたとえ仰向けになってもだらしなく流れてしまうことなく桜色の頂を端然とのせている。
大きく開いた乳かさの真ん中に清らかさをとどめたふたつの肉芽が可愛らしかった。それが口の中で膨らみ、かたさを増していく時の満たされた気分。
憧れの女性の体を自由にできるとわかったとき、自分の中で何かがはじけるような昂揚する感覚があったのだった。
どんな冒険をしても彼女は怒ったり拒んだりしない!
だから――。
少年は両手で乳房を包んで弾むような感触を十分にたしかめてから、なめらかな肌の上を何度も往復させてすばらしい手触りを楽しんだ。
透きとおるような白い脇腹に指を食い込ませて美しい獲物の肉の柔らかさに息をのむ。
ボクの最初の女――。
そして、ただ一人の女の人……。
両の腰骨を浮きあがらせて凹んだ下腹部の優美な曲線が目に痛い。
すぐ前に、今宵自分がくりだした
少年にとって馴染みのあるヌードモデルたちは、たいていがトリミングなどで人為的に整えられて、もうしわけ程度のチリチリのヘアでクレヴァスをあらわにしていたり、反対に縮れッ毛を猛々しく鬱蒼と繁らせているなどしていて、およそ官能的とも美的とも感じられなかった。
アリシアのように慎ましく、まるでそこに小動物がうずくまっているような姿は見た目がやさしいばかりか、どんなに魅力的な秘密を隠しているのかと好気をそそり、谷間をひらきたいという情熱をかき立てずにはおかないのだ。
「脚を開いて……キミのだいじなところをボクによく見せて……」
アリシアは目を閉じたまま、葛藤をのぞかせながらおずおずと閉じあわせた膝を割る。
少年は躊躇う女に覚悟を促して内腿に手を副えて長い内股をぐいっと大きく開かせた。
柔毛が淡く繁る扇状地の下にある翳り、結んだ秘唇の合間に花びらの先が恥ずかしげに覗いていて少年の目はすぐにそこに釘付けになる。
蜜をおびた薄桜色の肉びら、ぷにぷにと柔らかそうな白いドテをまばらに飾る産毛のような恥毛の生えっぷりは素朴で、アリシアの心根のいじらしさを印象づけていた。
誰よりも美しい女性の愛おしい秘密。
しかし少年は、濃密な芳香にすぐにでも顔を埋めたいという衝動を抑えて「それではダメですよ」と、言い放った。
「両腕で膝を抱えてお尻を高く持ち上げて下さい」
恥辱の予感に怯える女の姿に胸を熱くする。
「だって、キミのステキなお臀の穴が良くみえないじゃないですか」
「……ひどい言葉、つかわないで……」
少年は唇の間から舌を長く伸ばして何をしたいかを伝え、やさしい目をしばたたかせて途惑うアリシアの表情の変わり様を堪能する。
この世界にこんなにもかわいい女の人が居るなんて!
こんなにきれいな女の人、どこにも居ないっ!
この誰よりもステキな女の人の体の隅々まで、もう、ボクは知ってる――。
甘い蜜の香りも、味わいも……。
でも――。
もっとよく知りたいと思うのだ。
きっとセックスに溺れているのはボクの方――と、少年は胸にはっきりと焦慮を覚えながら思った。
アリシアの体はどんな辱めを加えても酌み尽くせない悦楽の泉のようだった。
満たされたつもりでいてもすぐに
やさしい心と高貴い魂、非のうちどころのない充実した肉体とが溶けあった甘酸っぱい果実。たっぷりと甘露をふくんだ天上からの贈り物。
女神とのセックスに卑しい人の子が夢中になったとしても不思議ではなかった。
けれども夢のような時は瞬く間に過ぎていく。
辛いのは時間に限りがあることだった。
「さっきはアリシアさんからもとめてくれたんですよ。すごくうれしかった。キミがボクが舐めるのをイヤがってないってわかって……」
顔の上にしゃがんでもらったとき、自分からはわざと舐めないようにして会陰のあたりばかりをくすぐって焦らしていると、舌の動きに誘われてついにはアリシアの方から裏のお口を少年の舌の上にのせてきたのだった。
おそるおそる、それでも彼女がその愛撫を望んだのは間違いなかった。
それは身もふるえるすばらしい歓喜の瞬間だったかもしれない。
果肉の奥から濃密な蜜があふれてきて少年は自分の力を確信することができたのだ。
「……そんなこと……してません……」
アリシアは少女のように拗ねて唇を結ぶ。
「じゃあ、ボクからおねがいします。アリシアさんのきれいなお尻の穴が舐めたい」
「………」
「アリシアさんの凄いにおいのする女の子の蜜、またボクにいっぱいふるまってください」
包皮から頭を覗かせている桜色の肉真珠を目の前にしながら、少年はまた僅かに苦味を感じる窄まりに舌を貼りつかせるのだった。