ARIA A SECRET SCHOOL DAYS 作:真夜中のミネルヴァ
第十一節 朝、夜の儀の終わり その2
一人になったアリシアは、自分も服を身につけようと祠の隅に置いてあった着衣を手に取った。が、そこに儀式の前にきちんとたたんでおいたはずの肌着が上下ともになくなっていたのだ。しばしキョトンと怪訝そうな顔をしていたが、アキトが持っていってしまったのだと分かるとまた体を熱っぽくさせる。
「アリシアさんが身につけていた肌着をボクに下さい――」
恥ずかしい愛撫の最中に求められて、是非もなく応じていたのを思い出したのだ。
両膝を抱えるようにして大きく開いた脚の間で鼻下に飴色のお髭をたくわえた彼の顔があって、自分が今どのようなことをされているのかを目の前で見せつけられていた時のこと。
一途に、思い詰めたような優しい眼差しで切々と愛情をうったえかけられて、アリシアは彼の舌と唇の動きひとつひとつの、そのあまりにも甘美な刺戟に我を失いそうになりながら刻一刻、心と体の
そんな身も心もせわしなくなっている時に持ちかけられて、いったいどうしてイヤだなんて言い続けることができるだろう……?
拒むと焦らされて、すぐ目の前に欲しくてたまらない果実を見せびらかされているのに、手を伸ばそうとすると遠ざけられてしまうのだ。
そうしたことを何度か繰り返されて、結局、アリシアは「止めないで!」と懇願するしかなくなっていた。
どんなことでも言うことを聞くから、と。
あげく、口にするのも憚られる、女の体の穢れを奪われることにも応じさせられてしまっている。
どうして、あんなものが欲しいの? と恨めしく思う。
ただ汚いだけなのに……。
「アリシアさんのカラダにキタナイところなんて、どこにもありませんよ――」
アキトからそう言われて説き伏せられてしまったが、今になってそれを強く後悔していた。
「……ひどいわね……アキトさんは……」
頬を朱に染めてひとりごちた。
汚れた肌着をじっくり検分されるかと思うと、顔から火が出るほど恥ずかしかった。
実際の愛撫よりも肌着を
でも、ひとたび脱いだ肌着はどこまでも疎ましい汚れものなのだった。密やかな肌と長く接していた、そんな穢らわしいものを彼に見られてしまうのは、やはり女にとっては受け入れ難い哀しいこと。
そればかりか、もっと酷いものまで彼には拭い取られてしまっている……。
肩を大きく上下させて、切ないため息をひとつ。
だけど――。
優しくされて愛情を注がれた、という感覚は肌と体とでしっかり覚えているのだ。
男の子があんな風に振る舞うのはとても意外で、想像もしていなかったけれど……。
伏目がちの長いまつ毛に翳が濃い。愁いに沈む表情には、明朗な笑顔でいる時とは別の魅力が解き放たれているようなのだった。
愛されることで愛を知り、全身に恋の歓びを纏った女の輝き。
「……セックスしちゃったのよ……あたし、うふふっ……」
口もとに悪戯な笑みを作りながら、心もとなげに指を咥える、涙を滲ませて煌めく瞳。
嬉しさと哀しさと悔しさと、そして恥じらいと希望とが綯交ぜになった表情。
「……みんな……ああいうことをしてるのかしら……あんないけないことを……」
アキトとのセックスは、彼女が事前に想像していたこととは全然ちがっていたのだった。
ずっと羞しくて、ずっとステキなことだった。
そしてただひとつはっきりと判ったのは、大好きな男の人とセックスをするのはとても自然なことだということ。
だって好きっていう気持ちを伝えるには言葉だけではとても物足りないから。
だから体を使って全身で思いのたけをうったえる。
やさしい気持ちですなおになって相手のことを誰よりも大切に思うから、身も心も深く寄り添いたいと願うのだった。
「でも……彼はまだ十四歳の男の子なのよ……どうしましょう……困ったわ……」
AQUAでは未成年同士はもとより、成人と未成年者との間でも愛情と信頼が通い合っているのであれば性交渉を禁じられているわけではなかった。
しかし社会通念上はけして歓迎されているわけではないのだ。
体が未完成であるばかりでなく心も未熟な上に、性の知識も不十分な相手を大人が対等なパートナーとして扱うことにはやはり懸念があるのだった。
褥では力関係がより顕著に反映されてしまうからだ。
たとえアリシアたちの場合には、それが殆ど真逆であったとしても世間はそうは受け取らない。
そんなことがもしもグランマのお耳にまで届いたらどう思われてしまうか……。
「あたし、どうしたら……」
かつてはアンナの件もあった。
これ以上、グランマに迷惑をかけるわけにはいかなかった。
そもそも、夜の儀の掟からもアキトと逢うわけにはいかない。
それなのに逢えないとなると余計に逢いたくなってしまう。
たとえ禁を破っても、タブーを犯しても、胸の中でひとたび燃え上がった恋の炎は容易なことでは鎮まらない。きっかけがあればたちまち燃え広がって手がつけられないことになる。
セックスには無縁だと思っていた自分が、気がついたら未成年の男の子に夢中になっていたなんて……。
「しっかりしなくちゃ――」
気を引き締めるつもりで、頬を両手で軽くパンパンと叩く。
それでも――。
彼から誘われたら、きっと自分には拒めないと思うのだ。
「……お話しするだけなら……お手紙をくれるって言ってたし……」
逢うための言い訳を探して知恵を巡らせている。
恋をすると女は容易に他人に嘘をつくようになり、自分を偽るようになるもの。
こと愛する男を求める点において、アリシアもまた一人の女なのだった。
セックスが女を変え、セックスが女を作るというのは一面では恋の真実であり、無垢な女の白い肌は男の色に染められて描かれることを待っているカンバスだ。
そこにどんな絵が描かれるかは相手次第。
アリシアの美しいからだにも、目には見えなくても――実際にはもう、はっきりと見える形にもされているのだったが――アキトの思いがしっかりと塗りつけられている。
女体には、どんなに思慮深く気貴い女性であっても愛を感じるための秘密のボタンが全身に散りばめられていて、ひとたびそのスイッチが押されると心までもが後戻りのできないものになってしまうのだった。
Bパートが間に合わず
とりあえずAパートだけを・・・