ARIA A SECRET SCHOOL DAYS 作:真夜中のミネルヴァ
アリシアは気怠い仕草で体に湯をかけながら、予約なんて入れなければ良かったのにと、ウンディーネにあるまじきことまで考えている自分の変わりように驚いていた。果たしてアンナさんもこんな気持ちだったのかしら、と合点がいきつつグランマのことを思うと気持ちが
「あ、アキトさんっ、自分でできますから……自分でっ……」
「そんな酷いこと言わないで、こんなに愛らしい生き物を愛でる歓びをボクから取り上げようとしないで下さい……きれいだなぁ、アリシアさんの肌……しっとりすべすべで、もっちり柔らかくて……ほっそりしてるのに、おっぱいはこんなに
「あんっ――」
彼の両手がバストトップの上をヌルんっとすべって刺戟されて、思わず甘い声が
バスルームに移っても、ここでもアキトはイニシアチブは握りたがって、彼女の体を洗うのはもっぱら彼の手に委ねることになってしまうのだった。それはもうベッドでの愛撫と同じようにやさしく、丹念に、そして執拗に肌を探られている。
ボディソープのヌルヌルする感触が、いつぞやの温泉で生クリームを使われた時の、あのとてもイケナイ感覚を呼び覚ましていた。
女の肌には毒となる甘い刺戟を――。
少年もそのことを思い出したようで、
「今度のデートには、また生クリームと、それからハチミツを使ってみるのもいいかもしれませんね……せっかくの美味しいカラダを洗剤だと舐められないからつまらないです……」
「………」
「……ただハチミツにもクリームにも味や香りがついているし、どっちもキミのカラダのにおいと味を楽しむには邪魔なんですよね……味も香りもないのにヌルヌルする食べものって何かあるといいのになぁ……心あたりはありませんか?」
「知りません、そんなこと……」
わざと露骨な物言いをしてからかわれているのは分かっていた。
「マンホームのアダルトサイトで探してみようかな……」
「あまり変なこと、しないで下さいね……」
「それは心配しないで、アリシアさんのカラダにワルいものは絶対に使いませんから」
「あたしのことじゃなくてアキトさんを心配してるんです……だって、おかしなことばっかりするから……これ以上おかしくなってしまったら……」
「ボクは大丈夫ですよ、アリシアさん以外の女の子には興味ないから……だけどキミにはいろんなことをしてみたいな……キミのカラダはけっして傷めないけど、でも舐めたり吸ったりつついたりして……ステキなアリシアさんのいろんな表情が見たいから」
ぬけぬけと淫らなことを言い放つのだ。
「エッチ……」
「またホメられちゃった……」
「だから褒めてなんかいないわっ」
体の主導権を取り返そうというささやかな抵抗と、そうはさせまいとする男の手との間での攻防となったが、すぐにじゃれあいに代わり、肌と肌とをしっかり密着させての抱擁となる。
口づけ、舌と舌を絡めてのディープキスに。
「ねぇアリシアさん、次はいつ逢っていただけますか?」
たとえ愛撫の最中であっても、アキトが敬語を使うとデートの終わりを意識させられる。恋人として愛し合うときは対等でも、普段はあくまでも目上の女性に対する節度を持った接し方をされて、もう一年以上の交際となるのに少しも変わらなかった。
セックスの時の奔放で好色な彼と、折り目を大切にする彼。
その振れ幅の大きさにはいつも途惑うが、それもアキトの魅力のひとつなのかもしれないと思う。
おとなしそうでいながらとても情熱的で、大胆さを秘めた意外性も女心をくすぐっている。
不意に腹部にあたるものが気になって、アキトが股間をそそり勃たせたままでいることに目を丸くした。それは今も自分を愛してくれているというサインでもあるのだった。
まだ一度も求められたことがなくて、アリシアにとっては興味と好奇心を掻き立てる悩ましい恋のシンボルなのだ。
でも、アキトは自身の欲求を満たすことには関心が薄く、今でも彼女が触れることさえ望まない。
「これ、気になりますか?」
「うん……だって、仕方ないでしょ……」
もの欲しげな目をしていたらしく、察した少年は
「続きはまたにしましょう――」
アリシアの体を解き放つと、くるっと背を向けてしまう。
自分だけさっさと浴室を出ると、
「タオル、お借りしてもいいですか?」と訊いて、その返事をする間もなく「あれ、もう四時半を過ぎてるみたいですよっ」と、浴室の扉を開けてアリシアに伝えるのだった。
「えっ! そんな時間っ?! 大変っ」
簡単に汗を流すつもりが、二人で過ごすと、つい時を忘れてしまうのだ。
アリシアも濡れた体のままで慌てて出てくると、
「もし、もうお客さんが来ていたら、大きな声を出すと下に聞こえちゃうから」
声を潜めて少年に耳打ちする。
アキトは首肯したが、また良からぬことを考えている顔をしていて、アリシアの胸に警戒のシグナルが瞬き始めた。
ほどなくそのワケがわかった。
服を身につけようとして脱衣籠の中に脱いだはずのショーツがなくなっていたのだ。それが既に少年の手の中にあるのがわかると奪い合いになる。
そうこうするうちに、カウンターの呼び出しのベルが鳴らされて、にわかに切羽詰まった事態になっていた。
アリシアは「返してっ」と、小声で叫んだ。
「着替えならあるでしょ、これはボクに下さい」
肌着を握った手を背中に隠してひそひそ声で応じる。
「ダメっ、すごく汚れてるから」
「それならなおさら、キミのにおいがしっかりついてる宝物じゃないですか」
再びカウンターの呼び出しのベルが鳴らされて、
「ハイ、ただいまっ!」
半ばパニックを起こしかけながら階下へ向けて応じる。
「ねぇアキトさん、後生だから返して……おねがいよ……ね……何でも言うことを聞くから……」
「本当に?」
「うん――」
「じゃあ、今日は貸しということで……でも、残念だなぁ……」
アキトは名残惜しげにしながら肌着を握る手を緩めたが、アリシアに返す前に股ぐりのにおいをしっかり嗅いで彼女を赤面させることは忘れなかった。
意味深な顔をして目を瞠っているアキトに、アリシアは羞恥と
洗い立ての制服を纏い、帽子を阿弥陀に被って、パッと見ではどこにもおかしなところのない姿になる。
アキトも大丈夫、というように満足げに頷いていて、アリシアもホッとひと息をつくのだった。
真顔に戻って見つめ合い、身を寄せ合う。互いの体温を感じながらの別れの口づけ。
「またお手紙します」
「うん……でも、ケットシーって、灯里ちゃんにはとっくにバレちゃってるみたいだから……」
「参ったなぁ、女の人の勘ってのは侮れないですね」
「そうよ、男の人が上手に隠してるつもりでも、なんでもわかっちゃうのよ」
「ボクはキミに隠してることなんて、ナーンにもありませんよ」
「どうだか……うふふっ」
浴室を出る際には自分でも鏡でチェックをして装いに乱れのないことを確かめた。
それから音を立てないようにして静かに階段を降りると、アリシアは恋に酔った女の顔からスノーホワイトなプリマウンディーネの顔にすっかり戻っているのだった。
昨日、間に合わなかったBパートを足します