※この作品はR-18です。

ARIA A SECRET SCHOOL DAYS   作:真夜中のミネルヴァ

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AQUAのいちばん長い日 その16

 

 主に地球圏のメディアが興味本位に報じたアリシア・フローレンスのセックスライフについての内容は、彼女が今も未通であるという点を除けばほぼ正確であったのかも知れない。彼女はおそらく同年代の少女、若い女性たちが経験するよりも遥かに濃厚で多彩な性を経験していたからだ。

 それは、なべて各メディアの目を惹きつけたようにアリシアが性的な面でもとても魅力に溢れていたことと、彼女のパートナーが好奇心旺盛で冒険心に溢れた思春期まっただ中にいる少年で、彼女の肉体の探究に積極的であったからに違いない。

 見るものの目を奪うどこまでも端整な顔だちは犯し難い静謐さを湛えている一方で、ノーメイクの清潔感のある素朴さとがあいまって愛くるしさを際立たせていた。

 それはアリシア自身が意識したものではなかったにせよ、間近に接した者はその多くが、彼女から仄かに香る幼さを残した甘やかな体臭と共に強く魅了されて、雄の征服欲を猛烈に刺激されていたのだった。

 彼女にもしも罪つくりな部分があるとしたら、自らの魅力にほとんど無自覚であったことなのかも知れない。

 誰に対しても向けられていた温和で無垢な笑顔は、恋情を抱かせるにあまりあるセックスアピールとなっていたからだった。

 

 

 

 十四日、午後十一時、メストレ、ヴィラ・ネオ・ヴェネチア――。

 ネオ・ヴェネチアに隣接する大陸側、メストレの外れにある別荘風の宿泊施設の一室。

 アリシアはふかふかの大きな枕に半ば顔を埋めて、その淫らな愛撫に堪えていた。

 半ば開かれた瞳は長い睫毛を滲む涙で濡らしていて、辱められた女の恨みに翳った眼差しを枕元に落としている。

 両脇に投げ出された長い腕は、背後から左右の手首をしっかり掴まれていて身動きを封じられていた。膝を胸に寄せてお尻だけを高々と差し出す形になって、あられもなくあらわにされた秘所に少年が顔を寄せることを許している。

 うつ伏せになって大きくひしゃげた乳房は、乱れた息づかいに合わせて真っ白なシーツよりも白く輝いて、肉の柔らかさと豊かさと、そして女の哀しみとをうったえているようなのだった。

 その容子は、二人の肌の色の違いや体格差もあって、あたかもインキュバスに美しいからだを与える仕置きとなった、悲運の女神の姿にも見えるのかもしれない。

「……いいにおい……とってもいいにおい……アリシアさんのお尻の穴……」

「………」

「おいしくて、お口が……溶けちゃいそう……」

「………」

「キミのはおいしいよ……においもとってもすばらしい……」

「……アキトさん……もう……許して……」

「もう少しだけ……おねがい、アリシアさん……」

「………」

 アキトに肛を舐られるのは初めてではなかったけれど、彼がどうしてこんなことをしたがるのか今も彼女にはよくわからないのだ。

 とてもいけないことなのにデートの際には求められて、仕方なく応じてはいるもののできれば避けたいことなのだった。

 それなのに今夜はいきなりそれを求められている。

 シャワーを浴びるつもりで服を脱いだ彼女は、裸になった途端に寝室に連れ戻されて、いささか邪険にベッドにうつ伏せにされるや、すぐにアキトは尻の肉を分けて顔を寄せてきたのだ。

 身を守る全てを失った裸の女の抗いは、男の側からすると豪華な料理の前に供される前菜のようなもの。たちまちアリシアは女の運命(さだ)めを思い知らされることになっていた。

 汚れたままの陰部をねぶりとられて女の誇りを奪われる哀しみと、こんなにもひどいことをする相手への気遣い、摂理に背を向けることへの不安と罪への恐れ、やがて訪れる歓びへの期待とがないまぜとなって、強い羞恥のために美貌を薔薇色に染めた愁いに沈んだ表情で、男の繰り出す惨い仕打ちに堪えている。

 それでも指を使われると、やはり身が竦むのだ。

「いやっ……いやですっ、やめてっ……」

 眩いばかりに白く肉の張った尻の谷間の底に、花冠をわずかに翳を宿らせて咲く純潔の証のようなアリシアの肛は、粘膜と肌との境い目が曖昧で、およそ排泄器官らしからぬ清楚さが一輪の可憐な白菊のようなのだった。

 花弁の一つ一つを確かめずにはいられない魅力に溢れている。

「……いやよっ、アキトさんっ……それっ、それはイヤなのっ……あンっ……」

 舌に代わって指に場所を譲り、繊細な皺を伸ばすようにして撫でていたその指先が、中心の管状花に当たる窪んだ部分を捉えて、ぷすりっと、真ん中を潜ったかと思うと、ゆっくりと中を侵してきたのだった。

「ひどいっ……イヤって、云ってるのにっ……」

「でも、痛くないでしょう?」

 指をゆっくり抜き挿しされて、それがすぐに中指だとわかるのは奥の方まで探られることと、一部に固いものに擦られる感触があるからだった。

 絵描きの玉子の中指には既に立派なペンだこがあることを彼女は知っていたが、体にもそれを教え込まれている。

 そして、誰が自分の主なのか、ということも。

 肛を犯されていると心が挫けてしまって、抗う意思も刻々、削ぎ取られていくのだった。

「……ほら……こうすると……」

 会陰を裏と表の両方から摘(つま)むようにして揉みほぐされると、もう身体がどうにかなってしまいそう。

「ああっ――」

 たちまちのうちに腰に力が入らなくなってきて……。

「……ああっ……だめっ……あたしっ……あたし、だめになるっ……やだっ、アキトさんっ……もう堪忍っ」

「蜜が出てきたね」

 いよいよ心張りが利かなくなって忙しなくなっていくアリシアに対して、少年は呑気な感想を漏らしている。

 慎ましく閉じた女の白い唇の合間に、少し白いものの混じった透明な蜜だまりが泛かんでいた。

 それまで熱を蓄えながらも必死に堪えていた女の密やかな器官が、少年の愛撫によって隠されていた秘密の鍵の一つ一つが解き開かれていき、アリシアのからだは歓びを求めて逸楽の坂道をゆっくりと、しかし確実に転落し始めている。

「キミは蜜の量もたっぷりだから……キミのからだが作ってくれた貴重な香油をシーツに吸わせてしまったらもったいない……だから今度はキミが上になって――」

 少年はその場に仰向けになると、アリシアのお尻を自身の胸の上へと導くのだった。

 相手の面前に大きく脚を開いて股間を晒した姿で愛しい恋人と視線を絡める。

「きれいだな……こんなにも美しい女の人が……美しいところをみんな見せてくれているなんて……」

「………」

 羞恥を堪えて必死な表情でいる愛くるしい顔、ミルクのように白い肌のほっそりとした体は、鎖骨のラインがか細くて乱暴にしたら壊れてしまいそうな華奢な印象を与えている。それでいながら両の乳房は形よく見事に膨らんで、大きめの官能的な姿をしている乳暈(かさ)の真ん中に、小さな尖りを固く懸命にしているのだった。

 ウエストのくびれはすんなり引き締まっているのに、触れると指が埋まりそうなくらいしっとりとした肉の柔らかさを伝えている。張りきった臀部の広がり、長い手足のプロポーションの美しさはそれだけで絵になるくらいだった。

 さらにお臍から下腹部へと続く曲面の優しい姿は息をのむほど美しい。大きく羽を広げた蝶のような形の腸骨の端を浮かせて、女体のか弱さと優雅さとを目もあやに伝えている。

 そして、それに続く股間を飾る亜麻色の柔毛(にこげ)の無垢な魅力――。

 彼女の性格をそのままに写して、素直なままにふんわりと繁らせていた。立位でいる時には大切なところを守っているが、今はその役を果たせずに、縦に走る長い割れ目が遮るものなくくっきり見えていた。その秘密の部分はあまりにもキュートで、愛の化身そのものの姿をしているのだ。

 ふっくらとした白い唇は、今はまだ閉じ合わされていて可憐な一条の筋を描いている。その愛らしい縦筋の上に滲み出た女の蜜が涙の形を作って流れ落ちかけていて、少年はすかさず舌を伸ばすと会陰のあたりからやさしく舐め上げるようにした。

 なんと刺激的な甘美な味わいだろうと胸を躍らせながら。

 アリシアにしか作れない味と香り。

 舌は初めは軽くなぞらせるだけだったが、次はしっかり唇の中に舌先を差し入れて、その新鮮な粘膜の味わいに歓喜しながら、じっくりとその柔らかくひるがえる感触を確かめるようにして舌を動かしていく。そうすると隠れていた襞が纏っていた潤いがたちまちのうちにうっすら白濁した粘液となって舌の上に集められるのだった。

 もとより彼女は蜜の量が多いたちで、それは清楚な顔立ちに不釣り合いなようでいて、とてもアリシアらしくて少年を喜ばせている。

「ああ……アキトさんっ……」

「おいしいよ……ちょっと酸っぱくて、ちょっとしょっぱいけど……どんな蜜よりも甘くておいしい……」

「いわないでっ……」

「それに……なんていいにおいがするんだろうね……大好きです、アリシアさん」

「………」

「ねぇ……ひろげて中を見せてくれませんか?」

 とろみのある体液はまだ奥からどんどんわき出してくるようだったが、少年はとても楽しい舌での探索をいったん休むと、薄く口を開きかけている谷間を覗き込むようにして言った。

「キミのいちばんキレイなところを……見せて……フローレンスっていうキミの名前通りに、可愛らしい花の精を……」

 躊躇っていると、脇腹をくすぐられて、きゃっ、と声を上げさせられる。

「ねっ――」

 アキトはイタズラっぽい目で笑いかけてくる。アリシアも仕方なく困り笑顔で応えた。

「……うん……いいわ……」

 覚悟をきめると左右の柔肉を指先でたくって、内側に咲いていた肉の襞をくつろげる。

 充血して赤みも増していた粘膜は、端をくるんとカールさせた花びらの合間に、既に糸を引くほどしとどに花蜜を纏っていたが、匂い立つように深く豊かな谷間に比べるとクリトリスは小さめで、まだフードを目深に恥ずかしげに俯いているのだった。

 それはこの世で最も尊い肉の真珠だった。どんな宝石もこの繊細な美しさの足元にも及ばない、愛おしい輝きを放つ神秘の結晶。

 その少し下、多肉植物のような肉襞の合わせ目のさらに下方に見えるちっちゃな穴は、おしっこ――というもう一つの甘い果汁の出てくるところだった。

 以前にも何度か喉が渇いた時におねだりしてふるまってもらったことのある、それはそれはステキな器官で、初めての時には彼女はとても嫌がったけれど、ついには受け入れさせた少年にとっては決して忘れられない勝利の記憶となっているものだった。

 さらにその下に膣口があって、そこは薄い襞のような粘膜に覆われていて、まだ傷つくことを知らない処女膜が白濁した蜜を纏っている。指を挿れて膜を広げようとしない限り奥は覗けないのだが、指で探りを入れると筋肉的な感触に触れて、そこをしっとりと覆うとても貴重な恥垢を掻き取ることができるのだった。

 それは少年にとっての何よりのご馳走で、別れ際に無理を言って分けてもらえると、意気揚々となるいつでも最高のご褒美なのだ。

 アリシアの女陰は男にとってこの上なく尊くて、どこまでも甘美な神秘、謎の塊なのだった。

 すばらしいのは間近にするたびに別の姿を見せてくれること――。

 香りも味わいも、口に含んだ時の感触さえ瞬間、瞬間に変化があって、少年の好奇を惹きつけてやまない。

 そんなパラダイスを目の前に、天上の花の豊潤な香りに我を失いそうになるほどの歓びの極みにいる少年と、男の面前に自ら秘所をつまびらかにして懸命な表情でいる女の視線が交わり、互いの想いが重なり合った。

「……恥ずかしい……」

「うん……そうですよね……やっぱり恥ずかしいですよね……かわいそうに……でもボクはとっても幸せです……こんなに美しいものを見せてもらえて」

「………」

 目の前で股間に鼻先を寄せられ臭いを嗅がれるのを、身をかたくして固唾を飲んで見守る。

「……本当になんていいにおいがするんだろうな……」

「……アキト、さん……」

 愛する男からセックスの匂いを好まれることが、女にとってとても嬉しいことであるのをアリシアはアキトから教えられていた。

 どうして――?!

 と、いつも訝しく思いながらも、愛されると心に決めた時には、彼からその言葉を聞きたいと思っている自分がいるのを意識している。 

「普段のアリシアさんの石鹸とシャンプーの清潔な香りと、ちょっとインファントなほんのり甘いにおいのする体臭も大好きだけど……でも、やっぱりボクはキミのだいじなところのにおいがいちばん好き……ボク、このにおいにずっと包まれていたいな……」

「………」

「イヤ――?」

 問われてアリシアは細かく首を横に振る。

 目頭が熱くなってくるのは恥ずかしくて哀しいばかりではなかった。

「この体位のことをね、ボクの故郷の地域では、岩清水、って言うんですよ」

「……?……」

「山の中で歩き疲れた旅人が、岩間から溢れる清らかな水を飲んで喉の渇きを癒やしたのになぞらえて、恋の森に迷った男が、えもいわれぬ香りに誘われて、ついにたどり着いた神秘の谷間に尊い泉を見つけると、口に含んで心の渇きを癒すんです、今のボクみたいに……」

 少年は舌を長く伸ばすと、フードを被った妖精の顎(おとがい)の下にそっとあてがうようにする。瞬間、アリシアの体はキュンと腰を引いて刺戟から逃れようとするのだった。

 酷いことをされるはずはないと判っていても、強いショックを恐れて、ピクッとなる反射が怯える小動物のようにいとけなく、可愛らしくて男の胸を熱くする。

 少年はけっしてひどいことなんてしないよ、ということをわからせるために腰をしっかり抱いて逃れられなくしてから、おもむろに口づけるのだった。粘膜の谷間に顔を埋めるようにしてクリトリスを舐め上げると、唇に包んで口の中へと誘い込むようにする。

「ひっ――!」

 身動きが出来なくなってからそれをされると、余計に虐げられた気分になって、少しマゾヒズムの性向のあるアリシアはますます追い詰められた気持ちにさせていく。

 元々、繊細で感じやすい体であったところへ、愛撫を重ねることによってさらに感度に磨きがかかった彼女の性器は、馴染んだ男の愛撫にたちまち心が萎えてしまうのだ。

「ああっ……アキトさんっ……そこっ……そこ、ダメっ……あたし、ダメになるっ……」

 支える両手にアリシアの腰が震えているのが伝わってくると、楽しいおしゃぶりに熱を入れていた少年は、彼女のことがいっそう愛おしくてならなくなるのだった。こんなにも愛らしい生き物が腕の中にいることの歓びを噛みしめていた。

「キミは本当になんて美しい人なんだろう……」

「……アキトさん……」

「愛してる……」

 少年は舌と唇の動きにさらに心をこめるのだった。

「ああっ……愛してるわっ……」

 アリシアは両手を伸ばすと、恋人の頭を抱き寄せてそこに閉じ込め、白い喉をさらして歓びの尾根を目指して駆け上がっていくのだった。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 その後、本気になった少年は、アリシアに様々な体位で愛し合うことを求めてきたのだ。

 やさしいが、容赦のない愛撫。

 彼女の性器、陰部へのアプローチが可能なさまざまな体位が試みられて、そして実行に移された。

 こんなにも多彩な姿になりうることにアリシアは目を瞠るほど驚かされていた。

 ある時は座ったままのアキトの顔を跨ぐようにして愛されたり、四つん這いになった背中に跨られて、身をかがめたアキトが背後から肛を舐ろうとしたり。

 アキトの膝の上で逆さまになって抱かれて愛された時には、こんな形になって男と女が抱き合うことがあるのだろうかと心を騒がせながら脚を開いた。

 たっぷりと愛されて歓びを迎え入れて、また愛されて……。

 疲れて眠りに落ちて、目が覚めるとまた愛し合う。

 丹念なボディキスからオーラルセックスに移る場合と、いきなり性器に顔を寄せられる場合と色々だったが、一晩のうちに何度もそうしたことがあって、その都度、アリシアは股間を彼に差し出していた。

 女の秘密をどこまでもさらけて、自分の匂いをこんなにも愛してくれることが嬉しくて。

 抱かれてやさしい言葉をかけられると、胸が喜びにふるえるのだ。

 時が経つのがあまりにも早くて、朝を迎えるのが恨めしくなるくらい、深く睦み合って互いの思いを切々とうったえあったのだった。

 そうしていると、何も恐れることはないと思えるようになる。

 朝になって、アキトの胸の上で目覚めたアリシアは、とても奔放な夜を過ごしたとは思えないほど澄んだ眼差しなって恋人と見つめ合っていた。

 長いアイコンタクト――。

 それは二人の性のいとなみが、けして俗に堕ちることなく、淫行の果ての奈落を目の前にしながらも呑まれることのなかった証でもあるようなのだった。

 結ばれた手はさらに絆を深めて、互いにかけがえのない存在であることを確かめている。

 アリシアは、一つだけ疑問に感じていることを尋ねてみた。

「アキトさんは、それでいいんですか――?」

「どうして?」

「だって……」

 彼女の腹部には少年の強張りがはっきりと感じられるのだ。

 自分だけが何度も歓びに誘われて、身も心も蕩けてしまいそうなほど幸せになれたのに、彼は自制しつづけて今も愛し合う前のようなのだった。

 問われた少年は指の甲を使って、まるで「コイツめっ」とでもいうように、幾分、邪険にアリシアの顎を下からこづくようにする。

 もちろん痛くもないし、辛くもないこと。

 親密な男女の間で通じるボディランゲージ、雄が自分の雌を自分のものだと示すための、示威行為。

 アリシアはちょっとびっくりしながら、ニッコリとする。

「ボクはキミのにおいのするものがあれば、いくらでもマスターベーションができるから、それこそ一晩中、何度だってザーメンを出せるから……でもキミと居る時は、一緒に居る時にしかできないことをしたいな……キミを可愛がりたい……」

 それなら交わりを求められてもいいのに、と思う。

「男性が女性にするオーラルセックスは、性交するよりも純粋だからかな……」

「……?……」

「人間だけなんだよ、オーラルセックスをするのは……確かに動物も雄が交尾の前に雌を興奮させるために性器を舐めることはあるけど、でもあくまでも交尾することが目的……他に性器を使ってコミュニケーションを行う霊長類は居るけど……でも愛し合うためにするのは人間だけなんだ……」

 また博識ぶりを垣間見せられる。

「特に男性が女性にする場合は、本当に特別な意味を持つんですよ……だってボクはああいうこと、キミにしかしたいと思わないから……でも、キミにだけはしたいと思うから……」

「……それは……あたしだって……」

 女である自分だってそうだとアリシアは思う。アキト以外の男性に同じことをされるのは想うだけでも恐ろしかった。

「みんなキミが教えてくれたんですよ……キミに会うまではボクはクンニリングスもアニリングスも自分がするなんて思ったこともなかったから……」

「………」

「でもAQUAに来て、始めてキミを見た時、本当に女神さまだって思ったから……だから、こんなに綺麗な女の人のダイジなところ、どんなにおいがするんだろうって……」

 初めて出会った時のこと、まだその時は十三歳の男の子だったアキトが、自分にそんな思いを抱いていたと知らされたのは夜の儀でのことだった。

「だから嬉しかったな……その夢が叶ったときは……天にも上るくらい幸せだった。キミのにおいは想像していたよりもずっと素敵で、すぐに虜になってしまって……それからはもうずっと、キミのことしか考えられなくなって……男にとって、誰よりも愛して、尊敬する女性の性器を間近にできることにまさる歓びは無いんですよ……ボクのキスでキミが感じている歓びよりも、ボクは遥かに深い歓びを感じて満たされているんです……キミのやさしいにおいに包まれている時の幸せは、なにものにも代え難い大切で、貴重なこと……」

「そんなこと言って……」

 はっきり口に出されると、恥ずかしくて顔から火が出そうだった。

「今もキミはボクの女神さまだから……こうしている今も、キミはボクの手の届かないくらい遠くに居るから……だから少しでもボクのそばに引き寄せようとして、ああいうことをしているのかもしれませんね……」

 また憧れに見上げるような眼差しを向けられる。

「そんな目で、あたしを見ないで……あんな恥ずかしい姿をいっぱい見られてるのに……」

「でもそうなんですよ……キミがボクのそばに居てくれるだけで、ボクはキミのそばにいられるわけじゃないから……キミから拒まれたら、ボクはどうしようもなくなる……」

「あたしがアキトさんを拒む? そんなこと、一度でもしたことがあったかしら……?」

 どんなに拒んでも、最後には我を通すのはいつでもアキトの方だと思うのだった。

「いくら抱いても、酷いことをしてキミを泣かせても、キミとボクとでは立っている世界が違うような気がして……」

 そういう少年は少し寂しげにも見えて、アリシアの心にさざなみを作っていた。

「じゃあ、もっとしっかり抱いてください……あたしを……あたしをひとりぼっちにしないでください……」

 アリシアはアキトの首に回した腕に力を込めた。

 アキトの腕も背中に回されて、強く抱きしめられる。

「これがあたしよ、あたしの体……わかるでしょう? あなたを愛して、大好きで大好きでたまらない、あたしの体……」

 肌と肌とを接して温もりを伝え合う。互いの肌の匂いを強く意識しながら。

「体だけじゃないわ……愛してるの、あなたのことを……あなたのためなら、あたし、どんなことでもできるわ……この命だって……」

 アリシアは眼差しを強くして少年の瞳を見つめる。

「アリシアさん……ボクのセリフ、取らないで……ボクが死ぬ理由は、たった一つ、キミのためだと思える時なんですから……」

「イヤっ……イヤよ……その時はあたしもっ……ちゃんと連れて行ってくださいね……」

「バカなこと言っちゃダメだ……」

 アキトの手が頭を撫でていた。まるでお父さんみたいなやさしい手の動きで――。

 アリシアはまた子供の頃を思い出していた。

 父を喪った時のことが蘇ると目頭が熱くなってきて鼻をシクシクさせる。

「泣いてるの?」

「ううん、なんでもないわ……」

「またボクの所為?」

「ええ、そうよ……アキトさんが意地悪ばっかりするから……だから、きらい……だいっきらいよ……」

 思いっきり甘えて駄々をこねる。

 幼女に返ったように、幼女の時に出来なかったことを今になってしていた。

「困ったなぁ……それじゃあ、また続き、しましょうか?」

「続き――?」

「だって、そんなに可愛い顔をしてけしかけられたら、またキミを可愛がりたくなって……」

 少年に抱かれたまま体位を入れ替えられてアキトが上になった。アキトは乳房の先や汗ばんだ腋の下を情熱的な口づけで覆いながら、最後に唇を重ねると、すぐに舌と舌を絡めてディープキスになる。

 見つめ合うとアキトが自分をどうしたいのかすぐに判った。 

「下のお口にもキスをしてあげないと不公平になりますよね」

「いいわ……」

 少年が体位をずらしていくと、アリシアは自ら脚を大きく開いて、また二人だけの愛の物語を紡ぎ始めるのだった。

 

 

 

「準備はいい?」

「ええ――」

 チェックアウトまであまり時間がないなかで、急いで身繕いをする。

「大丈夫だから」

「わかってるわ……信じてるから……」

 仲睦まじい恋人同士の親密さで、互いの背中に腕を回して身を寄せ合ったままで部屋を出ることにする。

 最後にいま一度、後ろを振り返って部屋には乱れがないことを確かめた。ベッドにはホテル備え付けのシーツをかけなおして、綺麗にベッドメークしてあった。

 持参していたシーツは自分でも情けなくなるくらい汚していて、アキトの言うことを聞いて自宅からシーツを持ち込んでいて本当に良かったと思うのだった。

 最後に唇を重ねて、しっかりと抱き合って互いの温もり確かめる。

 アキトはいつもなら別れる前には必ず、惜別のクンニリングスをしてくれるのだが、さすがに今日はそれができずに代わりに長いディープキスで思いを伝え合った。

 そうしていると不安な思いが払われて、勇気が湧いてくるようなのだった。

「じゃあ、行くよ……」

「うん……」

 アキトが鍵を開けると、二人は並んで建物の外へと踏み出すのだった。

 

 

 

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