※この作品はR-18です。

物静かで大人しい清楚系隠れ巨乳図書委員の潮乃森さんが僕にだけパンツを見せてくれるから──毎日図書室へ行って図書委員の潮乃森さんとえっちをする話(連載版)   作:しじままどせ

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12.ここからは僕のターン

 

 茜色の夕日が差す通学路にて。道路に落ちているふたつの長い影を見下ろしながら、僕たちは家へと帰る道を歩いていた。

 

 僕たちというのはつまり僕と潮乃森さんのふたりである。

 

 もう学校の帰宅ラッシュの時間は過ぎているから周囲に生徒の姿はない。時おり傍を自動車が通り抜けていく他はまったく静かな住宅街だ。だから焦ることもないし、ゆっくりとした歩調で歩いている。

 

 そして、僕の隣にいる潮乃森さんは、僕の手をぎゅっと握っていた。

 

 彼女は僕の左手を握っていて、僕よりも若干だけ前を歩いていた。その手のひらの温度は僕のそれよりも高くて、あたたかかった。

 

 なぜ手を繋いで歩いているのだろう。その理由が分からない。分からないけれど、手を離したいとは思わなかったから図書館を出て以降ずっと手は繋がれっぱなしだった。

 

 先ほど、図書室で僕たちはセックスをした。

 

 これは初めての出来事だった。潮乃森さんからはずっと無言で誘惑を受け続けていたものの、パンチラから始まって手扱き、フェラチオ、素股……と徐々に過激化してはいたものの『本番』に至ったのは初めてだった。

 

 なぜセックスをしたのだろう、という気持ちがある。

 

 潮乃森さんは僕のことを一体何だと思っているのだろう。恋人とか、彼氏とか、そういうのだろうか。それともセックスフレンド的な何かなのだろうか。それが分からない。彼女から嫌われていない自信があるけれど、だからといって僕が彼女のにとっての『何』に分類されているのかは今ひとつ分かっていなかった。

 

 ただ僕たちは手を繋いで歩いていて、僕たちの住んでいる町へと近づきつつある。

 

 僕の家と潮乃森さんの家の距離はおおよそ一キロほどの距離で、もうじき分かれ道だ。その分かれ道に到着したらどうなるのだろう。このまま手を振って別れるのだろうか。

 

 そんな気持ちのままに僕は彼女の指を握る手に少しだけ力を込めてみる。

 

「…………?」

 

 こてん(・・・)と彼女は首をかしげ、それからこちらを振り返って見上げた。

 

 大きな丸眼鏡の向こう側の目が不思議そうにしばたたかれている。なぁに、とでも言いたげな表情だ。

 

「いえ、どうして僕たちは一緒に帰っているんだろうと思いまして」

「……んー?」

 

 潮乃森さんは左手の人さし指を顎に当てて、やはり不思議そうに首をかしげている。図書室を出てからも彼女の静かさは健在だ。二人の家の位置を確認したほかはほとんど会話もなかった。

 

 ただただ彼女は美少女だった。西日に照らされて顔が赤くなっていて、その肌に目を奪われそうになる。図書室でセックスをしていた時の蕩けた顔とはまた違った美少女顔だ。

 

 この人とセックスをしたのだ、という気持ちと、どうしてこの人はセックスをしてくれたのだろう、という気持ちで混乱してしまいそうになる。

 

 今までの疑問を尋ねるのなら今だ、と思った。ここは図書室の外だから、静かにしなければならないというルールはないから、潮乃森さんは会話に応じてくれるはず。

 

「潮乃森さん、尋ねてもいいですか?」

「……?」

「どうしていつもパンツを見せてくれるんです?」

「……んー」

 

 僕の手を握ったまま、彼女はしばらく黙った。その顔をのぞき込んで見てみると、目が合った。潮乃森さんは目をほんの少しだけ細めて、なんだかいたずらっぽい表情をしているように見える。

 

 そして彼女はふふっと笑った。

 

 まるでダンスでも踊るかのようにステップを踏んで僕の前に出て、後ろ手を組んだ状態で上目遣いにこちらを見上げる。びっくりするくらいに可愛らしいポーズだ。そして潮乃森さんは言った。

 

 

「キミのことが好きだから――」

 

 

「えっ!?」

「――とか言ってみるテスト」

「はっ!?」

 

 くすくす、くすくす、と彼女は笑っている。図書室にいるときの静かな雰囲気そのままに、こちらを見上げながら笑っている。

 

「な、なんですかそれ、潮乃森さん」

「んー?」

「わかるように言ってくださいよ、じゃないと僕、あなたのことがなんにもわからないです」

「えー?」

 

 こちらの困惑をよそに彼女はくすくすと笑みをこぼし続けている。少なくとも好意的な表情に見えた。

 

 だからこそ、僕は分からなくなる。

 

 潮乃森さんはいったい僕のことをどう思っているのか。なぜ下着を見せて僕を誘惑し、セックスをし、そして手をつないで歩くのか。どうして好意的な笑みを見せ、僕をからかうのか。彼女の言葉数は少なすぎて、わからない。どうしたって僕は翻弄されてしまう。

 

「……えへ」と、潮乃森さんは一歩こちらへ踏み出した。

 

 そして僕の右手を取って、それを自身の胸へと押し当てた。

 

「――ッ」

 

 ふんにょりとした柔らかな胸の触感がして、僕は思わず息を飲んだ。おっぱいだ。地味に大きな、潮乃森さんの胸。

 

 押し当てさせられた手のひらから彼女の胸の奥でドキドキと高鳴っている心臓の音が感じられる。

 

「わかる?」

「わ、わかりませんよ」

「そっかぁ……」

「なんなんですか、もう、なんなんですか」

 

 混乱して、動揺している。こちらから尋ねたはずなのに相手に優位を取られて、なすすべなく翻弄されている。潮乃森さんの行動に対して後手後手に回らされている。

 

 そんな僕に対して、潮乃森さんは背伸びをして僕の首に腕を回してきた。

 

 ようするに抱きつかれた。

 

 彼女の熱い体温を感じる。

 

 そして耳元で言われる。

 

「今日、うちに両親が居ないって言ったら、どうする?」

 

 ハッと思わず息を飲む。

 

 抱きつかれたまま潮乃森さんを見ると、彼女は存外に真面目な顔をしてこちらを見ている。僕の目の奥を見透かすような綺麗な瞳。思わずその瞳の中に落ちていきたいような、そんな気持ちになる。

 

 もしも両親が居ない状態の潮乃森さんの家を訪ねたら、どうなるか。

 

 それはもう、セックスをすることになるだろう。それも一回二回ではない。周囲に気取られる心配がないから、図書室でおこなったプレイよりもずっと激しいセックスになるだろう。きっと潮乃森さんも思いきり声を出して喘ぐことになるだろう。

 

 きっとものすごく濃厚な一夜になって、一生忘れられない日になるだろう。そんな予感があった。

 

「――ッ」

 

 それから直後に、もしもここで潮乃森さんについて行ったら、一生彼女に翻弄され続ける運命に陥ると気づいた。

 

 だった一事が万事、潮乃森さんはこうなのだ。図書室にいるときも、ショーツを見せつけてきたときも、セックスを始めた時でさえ僕は彼女に翻弄されていたのだ。だから、ここで彼女について行ったら今後もその運命に固定されるだろうことは明白だった。

 

 一生ずっと潮乃森さんに翻弄され続ける人生。

 

 ずっと彼女に振り回されて、でもその分だけ快楽を得られる生き方。それはきっと途方もないくらいに幸福であるはずで。

 

 そのことを思って、一瞬だけ気が遠くなる。けれども直後に彼女の体がぎゅーっと抱きついてきて、柔らかな胸だけでなく全身が僕の体に密着してきて、そして耳元で小さな声でさ尋ねられる。

 

「わたしとまたセックスしたい?」

 

 と。

 

 そうして僕に抱きつきながら甘くささやいてくる潮乃森さんに対して、僕は息を飲んだ。

 

 彼女の提案は死ぬほど魅力的だったから。

 

 

 けれども、僕は抱きついてくる潮乃森さんの体をそっと引き剥がした。

 

 

「…………え?」と潮乃森さんが目を見開いた。

 

 彼女はびっくりした顔をしている。そういう表情をすると彼女は童顔で、愛らしい少女のように見えた。

 

 だから僕は笑って、言った。

 

「僕は潮乃森さんの家へは行きません」

「なん……どうして?」

「あなたのことが好きだからです」

「す──……!?」

 

 ぱし、ぱし、ぱし、ぱし……と潮乃森さんは何度も瞬きをした。きっと予想外のことを言われたせいだろう。

 

 たぶん潮乃森さんは打たれ弱い。

 

 自分がペースを握っている時はめっぽう強いけれど、一度僕がペースを握ってしまえばあとはなすがままになってしまう傾向がある。素股をされたときも、セックスをしたときも、そうだった。僕が主体的に動き始めると彼女は後手後手になる。

 

 おそらく僕たちは似たもの同士だ。ペースを握っている側が相手を翻弄し続けることができる。

 

 だから僕はもう惑わない。

 

 潮乃森さんが僕のことを好きだと言うのなら、仮にそれが冗談めかした態度で言った『好き』だとしても僕のことを好きだと言うのなら、僕はもう惑わない。

 

 ゆえに、僕は潮乃森さんの家に行かない選択をした。

 

 今後彼女に対して僕が主導権を握るために、だ。

 

「潮乃森さんの家には行きません。けれど、そのかわりに、デートをしませんか」

「で、でーと?」

「デートです。今度の週末、どこかへ出かけましょう。どこがいいですか」

「──ッ、うあ、ええ……──」

 

 みるみるうちに彼女の顔が赤くなっていく。むろん、怒っている訳ではない。困惑をしている。

 

 だから僕は彼女に一歩近づいて、その頬にそっと手を触れた。そのままやや上を向かせると混乱でくらくら揺れる目と目が合った。その目に向かって微笑んで、そのまま彼女の唇に自分の唇を接触させた。

 

 つまりキスをした。

 

「……──ッ!?」

 

 目の前で潮乃森さんが目を見開いているのが見える。けれど、それを無視して唇を重ね続ける。五秒、十秒……そして唇を離すと、僕はもう一度笑って潮乃森さんの右手をそっと握った。

 

「こんなところで突っ立っているのも何ですし、帰りましょう」

「う、え、ああ……?」

「ほら、行きますよ」

「あ……はい……」

 

 僕が歩き始めると、潮乃森さんは俯いたままついてきた。顔が真っ赤っかになっている。恥ずかしそうだ。

 

 それでも手は繋がれたままで、振り払われたりはしなかった。照れて入るけれど拒絶はされていないらしい。

 

「と、図書館が、いいです……」

 

 消え入りそうな声で潮乃森さんが言った。僕の、どこへデートに行きたいか、という質問に対する答えだろう。

 

 思わずガッツポーズをしそうになるのを堪えながら僕は微笑んだ。

 

「わかりました。二回目(・・・)は図書館へ行きましょうね」

「え……二回目……?」

「一回目のデートは水族館に行きます。僕が行きたいので。だめですか?」

「だ、だめじゃない、けど……」

「約束です。お洒落して来てくださいね」

 

 僕がそう告げると、潮乃森さんは数秒間ためらった後にこっくりと頷いた。

 

◇◇◇

 

 そうしてその日は手を繋いだままギリギリまで一緒に歩いて、連絡先を交換してから僕たちは別れた。

 

 自分らしくないくらいに積極的に動いたので動悸がして思わず吐きそうになったけれど、どうやら僕は二回もデートの約束を取り付けることに成功したらしかった。

 

 ものすごく楽しみだと思った。

 

 

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