物静かで大人しい清楚系隠れ巨乳図書委員の潮乃森さんが僕にだけパンツを見せてくれるから──毎日図書室へ行って図書委員の潮乃森さんとえっちをする話(連載版) 作:しじままどせ
歌。
ほとんど吐息と変わらないくらいの本当にかすかな声で潮乃森さんが鼻歌を歌っているのが聞こえる。どうやら上機嫌であるようだ。
「ご機嫌ですね、潮乃森さん」
「…………」
「えっと、ゆいさん」
「……ん!」
僕が話しかけると潮乃森さんはにっこりと笑って、こちらの肩にそっと身を寄せてきた。ふんわりと彼女の甘い香りがした。
あのラブホテルでセックスをした日以来、彼女は下の名前で呼ばないと拗ねるようになった。だからやむを得ず毎回下の名前で呼んでいる。潮乃森さんも僕のことを下の名前で呼んでくる。
これではまるでカップルのようだと思うけれど、まあ、実際にそうなので、否定のしようはない。僕たちは恋人同士だ。実のところ僕はどのタイミングが最終的な告白だったのか自分ではよく分かっていないのだけれど、いつの間にか『好き』を伝え合う関係になっていたのである。
で、だ。
あの水族館からラブホテルへ行ったデートの日からちょうど一週間後の今日、僕たちはまたデートをしていた。
今日は隣市にある市立図書館だ。
県内でも一番大きな、そして一番新しくて綺麗な図書館である。天井が高くて照明が明るくて換気が行き届いている。蔵書も学校とは比べものにならないくらいに多い。
そんな図書館の、日本の文学と題された背の高い本棚の列のただ中で、僕と潮乃森さんは本を物色していた。
まるで水を得た魚のように潮乃森さんは図書館に来ると元気になるのだ。とくに市立図書館では図書委員の仕事も責任もないから本当に自由であるし。
僕の方はそれほど読書に興味がある方ではないので、自由を満喫している潮乃森さんをひたすら眺めながら付いていく作業中だ。だからデートをしているというよりも、図書室で歩き回る潮乃森さんに連れ回されているという感じが近いのだけれども。
けれどもまあ、デートはデートだ。
図書館で生き生きしている潮乃森さんを見ているのはなかなかに楽しい。眼福だ、といってもいいかもしれいない。いや眼福と言っても今日の潮乃森さんがセクシーな格好をしているかというと、そういうわけでもないけれど。
今日の潮乃森さんは淡い色のセーターに、ゆったりとした広がりのあるロングスカートといった出で立ちだった。露出でいうならミニスカートだった前回に比べて見えている肌面積はずっと少ない。けれども清楚さはこちらの方がずっと上で、綺麗だった。
いかにも図書館にいそうな女子のなかでは一番小綺麗でお洒落な人、という印象である。物静かな彼女によく似合っていると思った。
どちらかというとこういう格好の方が僕も好きである。潮乃森さんの生足やら何やかやが見えていると落ち着かないし。いつスカートをたくし上げるのだろうとハラハラしないといけなくなるし。
いや、まあ、実のところ前回のデート以降、僕は一度も潮乃森さんのパンツを見ていないのだけれども。
そう、この一週間、僕は潮乃森さんのパンツを見ていない。
以前はあんなにも毎日のように彼女の下着を見ていた──というか見せつけられていたというのに、今週は一度も見せつけられていないのだ。
今週も放課後の図書室では毎日潮乃森さんに会っていた。けれども彼女は一度も自身のスカートをたくし上げようとはしなかった。彼女が見せてくれなければ僕は彼女のパンツを見ることができない。だから僕は彼女のパンツを見る機会を逸していた。
きっと僕が『誘惑するなら二人きりの、セックスができるタイミングにしてください』とお願いしたのを潮乃森さんは律儀に守っているのだ。
それが寂しいような、残念なような、不思議な感じだ。図書室でパンツを見せびらかしてくるのはどう考えても危なかったから、本当は安心するべきなのだろうけれども。
「…………?」
僕がそんなことを考えていると、潮乃森さんが不思議そうな顔で
おおっぴらに誘惑してこなくなった今も、潮乃森さんのこの癖は健在だ。なぁに、という感じの意味だろう。
「何でもないですよ。ただ、ゆいさんは美人だなって思っていたんです」
「うん」
「あれ、僕が『美人ですね』って言っても今日は照れないんですね。以前は真っ赤っかになっていたのに」
「……む」
こちらがからかうと、潮乃森さんは周囲をぐるりと見回した。
近くに人はいなかった。けれど、僕たちのいる本棚の列の端っこあたりにおじいさんがいるのと、反対側に小学生くらいの見た目の子がいるのが見えた。ここは市立図書館だから当然ながら様々な世代の人間がいるのだ。
だから遠くからは子供の騒ぐ声が聞こえてきていたし、それ以外のざわめきもたくさんあった。少なくとも学校の図書室よりはずっとにぎやかな場所である。
大声でお喋りしても大丈夫だという訳ではないけれど、潮乃森さんは安心したような顔でコホンと咳払いをした。そして言った。
「巡くんがわたしのことを美人だって思ってることはもう知っているもん」
図書室で潮乃森さんがそんなに長いセリフを述べるのは初めてだったので、僕はびっくりした。潮乃森さんが図書室で喋るなんて思ってもみなかったのだ。
それから「あ」と気が付いた。
先ほど潮乃森さんが周囲を見回したのは周りに人がいないかを確認したかったのではなく、『図書室では静かに』みたいな感じのポスターが掲示されていないかを確認したかったためではないかと気が付いたのだ。
なぜなら潮乃森さんは杓子定規に『図書室では静かに』のポスターを最重要視している節があるから。学校の図書室では潮乃森さんはいつも『図書室では静かに』のポスターをみていたから。
そして周囲にはそんなポスターは貼っていなかった。だから潮乃森さんもこの図書館では普通の人と同じように密やかにお喋りをするのだろう。
やばい、と思う。
喋らないし誘惑もしてこない潮乃森さん相手なら僕がリードできるな、と思っていたのだ。大人しくて可愛いだけの潮乃森さん相手なら僕が主導権を握れるな、と。けれど今やその前提が崩された形だ。思わず数センチメートルだけ後退ってたじろいだ。
そんな僕の態度を知ってか知らずか潮乃森さんはクスッと笑う。
「巡くんはわたしの顔も体も大好きだもんね。知ってるよ? この間もたくさん求めてきたし、今日もこのあとラブホテルに連れ込む気だったでしょう?」
「──ッ」と思わず絶句する。声が届く範囲に人がいないとはいえ、穏当ではなさすぎる会話だ。
「と、図書室では静かにした方がいいですよ、潮乃森さん」
「……
「ゆいさん、えっと『しぃー……』です」
「赤くなっちゃってる。巡くんって本当に素直で可愛いねえ」
「う…………」
潮乃森さんは下からこちらの顔を覗き上げるように見て、目を細めて笑っている。可愛い、けれども淫蕩で、小悪魔的な笑みだ。重ね重ねにはなるが潮乃森さんは美人なのだ。こういう風に迫られてたじろがない男はいないだろう。
それに、これではもう、あべこべだ。
どうして僕が潮乃森さんに『図書室では静かに』なんて言わなければならないのだ。いつもと役割がまるっきり逆ではないか。
そうしてたじろぐ僕をクスクスと笑って、潮乃森さんはさらに続ける。
「ね、今日もわたしのパンツ、見たい?」
「え……」
「巡くんになら見せてあげてもいいけど、見たい?」
そんなの見たいに決まっている。こっちは一週間もお預けされているのだ。
「み……見たい、です」
「だめ」
「え、えー……?」
「ここは図書館だから、まわりに人がたくさんいるから、見せてあげませーん。きみが周りに人がいるときはダメって言ったんだもんね? 覚えていないとは言わせないよ?」
「あう……」
困った。潮乃森さんは舌戦が強い。まさか口先で負けるだなんて思っていなかった。予想外の敗北である。
彼女が口を開いた瞬間から完全にペースを握られてしまった。物静かで大人しいだけの潮乃森さんになら勝てると思った僕が浅はかだったらしい。
そして僕が敗北感を感じている間にも潮乃森さんは距離を詰めてくる。
「図書館にいるうちは何も見せないし、肌に触れたりもしな──手を繋ぐ程度に控えるよ。はいこれ、どうぞ」
「え、これは……?」
いきなり潮乃森さんが手を握ってきた、と思ったらその手に何かを渡された。
見てみると手渡されたソレはピンク色のリモコンだった。
──リモコン? と首を傾げる。
プラスチックの安っぽいリモコンだ。ダイヤルがひとつだけついている。ダイヤルは弱中強の三段階で、今はオフになっていた。
そのリモコンを見て猛烈に嫌な予感がした。
「えへ……」と潮乃森さんは恥ずかしそうにこちらを見上げて笑っているし。
だから僕はおそるおそる、そのリモコンのダイヤルを回して『弱』で作動させてみた。
ぶぶぶ……とどこかで何かが振動する音。携帯電話のバイブのような。
「ん……っ」
とても小さな声で潮乃森さんが喘いで、やや内股になって腰を僅かに引いた。片手を握って自分の股間あたりを押さえている。
その顔は赤い。一瞬で息が上がったのが分かる。唇を噛んで、小刻みに震えている。
うわ、まさか、と思う。
思いながら僕はリモコンを『中』にしてみた。
「──んんんッ」
その瞬間バイブ音が強くなって、潮乃森さんの体がビクッビクッと震えた。前屈みになりながらふらりとよろけ、股間を押さえていない方の手を本棚について、より内股を深くしている。
明らかに潮乃森さんは感じていた。もちろん性的な意味で、だ。
スイッチを回すとバイブ音がして潮乃森さんが感じる。原因と結果があまりにも明白だ。
このリモコンは、潮乃森さんにセットされたバイブのリモコンだ、ということ。
つまり、おそらくこのデートが始まる前から潮乃森さんは自分の秘部にリモコンバイブを仕込んで来ていたということだ。そんな状態でいかにも清楚ぶって僕と会い、普通に会話をしていたのだ。こんな状態でここまでずっと清純そうな顔を保ってきていたのだ。
「な、なにやってるんですか……!」
慌てて僕はリモコンをオフにする。
すると潮乃森さんは「フーッ」と発情したようなため息を吐いて、それからゆっくりと内股から戻りながらこちらを見上げた。
「……なにが? わたし、なんのことか分かんない」
「なにがって、潮乃森さんが付けてるバイブの話ですよ。なんでそんなの付けて──」
「──付けてないよ? 確かめてみる?」
「た……!?」
「ああ、でも、ダメだっけ。ここは図書室だから、スカートをめくり上げる訳にはいかないもの」
「はあ……!?」
潮乃森さんは得意げな顔で笑っている。まるでこちらを淫蕩に煽るかのような顔で。
そこまでされてようやくハッとした。
今、僕は、誘惑されているのだ。
潮乃森さんお得意の『パンツを見せる』以外の方法で誘惑をされているのだ。肌も見せず、こちらに触れないままで、誘惑をされているのだ。
「……ったく」
思わず心の裡で悪態を吐いた。
この人は、僕のことを誘惑しなければ気が済まないのか。それもこんなに回りくどい方法で。
いや、誘惑は潮乃森さんの愛情表現だと分かっているから嬉しい気持ちもあるが、しかし、まったく、もう……ここまで誘われてしまっては、抗えないではないか。
だから僕はバイブを『強』にした。
「──っひゃんッ」
「変な声を出さないでください、ゆいさん。図書館では静かにしないといけなんですから」
「ん、ん、ん……ッ でも、きみが……」
「僕は何のリモコンか分からないリモコンのスイッチを回しただけです。何のリモコンか分からないので、今ゆいさんが感じていることとの関連性も分かりませんね」
「ひ、ひど……!」
「あなたが始めたことでしょう?」
そう言いながら僕はプルプル震える潮乃森さんに手を差し伸べた。
すると潮乃森さんはこちらの腕に縋り付いてくる。内股だ。まるで生まれたての子鹿みたいな足取りである。
そんな状態で腕に抱きついて来たわけだから彼女の胸が腕に思い切り押し当てられている。柔らかで、あたたかい。いいおっぱいだと心の底から思う。
「体調が悪そうですね、ゆいさん。もしよかったらどこか『休憩』できる場所に行きませんか?」
「い、イク……!」
「はいはい、上手にイケて偉いですね。じゃあ、行きましょう」
「んんん……ッ」
そうして僕は腕に抱きついてくる潮乃森さんをエスコートしながら図書館を出て、探してあったラブホテルへと向かったのだった。
きっとこれは潮乃森さんの計画通りだ。今、僕が主導権を握っているように見えたとしても、たぶん全部彼女の手のひらの上だ。
けれど、それでいいではないか。
誘惑こそが潮乃森さんの愛情表現で、彼女がこうして体を委ねてくれることが僕は嬉しくてたまらないのだから。
だから僕はずっと潮乃森さんの手のひらの上で踊ろうと思う。あるいは、これからも潮乃森ゆいという沼の中に沈んで生きようと思う。これからも彼女に翻弄され続けようと思う。
こんなにも可愛らしい彼女が次はどういう方法で僕のことを翻弄してくるのか本当に楽しみであるし。
「あなたのそういうところも好きですよ、ゆいさん」
図書館を出るタイミングで僕がそう言うと、彼女は存外はっきりと「わたしも」と言った。
そうして僕たちは図書室を出てラブホテルへと向かったのだった。
おしまい