近くのコンビニに行くと、雑誌コーナーにものすごい美少女がいた。
アイドル顔負けの美貌をたたえた夕月が、男向けのファッション誌を無表情で――いや真剣な表情で読み込んでいる。
彼女はいつもの部屋着とは違い、白いTシャツにライトグリーンの裾の長いシャツを羽織り、下はデニムという外行きの格好をしている。いずれも量販店で購入したシンプルな装いだが、夕月が着るとハイブランドに見えてくるから不思議だ。
妹の制服と部屋着以外の格好を見るのが久しぶりだったから、一瞬、本当に妹だと気づけなかった。
髪も後ろで結んでいるが、いつもよりちょっとだけおしゃれな結び方だ。可愛いと綺麗が掛け算されたような横顔にしばし見惚れる。
カウンターにいる、昨日は気だるそうに嵐山~と挨拶していた店員のお兄さんも、今はじいっと雑誌コーナーの美少女を見つめていた。気持ちは分かるが不愉快だ。
俺は雑誌コーナーに向かうと、彼の視線から妹を隠すようにして隣に並ぶ。夕月の普段着姿をしばらく眺めようかと思ったのだが、彼女は雑誌から視線を外すことなく口を開いた。
「あぁ、お兄ちゃん」
妹はエスパーか何かだろうか。
「何か買いに来たのか?」
「あーうん、アイス。お兄ちゃんこそどうしたの」
「そろそろ夕月がこのへん着くころかなと思ってな。迎えにきた」
「うそ、お菓子買いにきたんでしょ」
夕月が雑誌を閉じて俺のほうを向く。あっけなく嘘を見破られたが、彼女はどことなく嬉しそうだった。妹は昔から、迎えに行くといつもこんな顔をする。
「てか、今日どこ行ってたんだ?」
「ん? クリニック」
クリニックというのはお医者さん的なところだろうか。年頃の女の子はいろいろあるのだろうし、下手に話を広げないほうがいい気がする。妹を持つ兄としての兄仕草だ。
俺は彼女が熱心に読み込んでいる雑誌について話題を振った。
「夕月、男のファッションなんかに興味あるんだな」
「ううん特には。ただお兄ちゃんに似合うかなーと思って」
「いや……似合わんだろ」
雑誌の表紙に「ちょいワル」とか書いてあるし。モデルさんが着ている服もフォーマルでダンディなものだらけだ。冴えない大学生の俺にはミスマッチすぎる。
「だよね、全然似合わなそうだなって思って見てた」
「趣味の悪い立ち読みだな。道草くってないで帰るぞ」
「うん、お兄ちゃんも来たことだし」
「はい?」
「道草くってたら、心配したお兄ちゃんが迎えにくるかなと思って、待ってた」
「はぁ? もうガキじゃないんだし、そんなんでいちいち心配しないだろ」
「じょーだんじょーだん」
夕月の両手に押されてアイスコーナーに向かう。二つ目の嘘も見破られたのかと思ってちょっと焦った。スーパーに寄ったにしては遅いと思っていたのだ。
兄として過保護かもしれないが、なんせこの妹は兄を狂わせるほどに魅力と色香の集合体である。心配するなというほうが無理な話だ。
「ん、お会計してくるね」
「お、夕月のおごりか」
「お兄ちゃんのお金じゃん」
基本的に夕月は父親から振り込まれるお金に手を付けようとしない。だから妹には毎月、俺がバイトで稼いだ金から決まった額のお小遣いを渡している。彼女としてはそれを俺への借金と認識しているようだが。
夕月が会計を済ませたのでコンビニを出ると、バイトの店員が「ありがとうございました~!」と活舌よく挨拶を浴びせてきた。昨日、俺に対する反応とは全然違う。気持ちは分かるがゲンキンなお兄さんだ。
昨日と同じように並んで帰り道を歩いていると、デジャブ感がすごい。だけど胸の鼓動は昨日よりも早い気がする。普段着の夕月は兄の心臓に悪い。
「あ、そういえばさっき、街でスカウトされちゃった」
「AVのか?」
「変態兄……ちがうよ、モデル事務所だって」
「そのスカウトマンって男?」
「……ううん女の人。すっごい綺麗な人で、モデルさんみたいだった」
「へー」
夕月が急に上機嫌だ。スカウトなんてしょっちゅだろうに、ずいぶんいい話だったのだろうか。
「お兄ちゃんとも話したいって言ってたよ、その人。胸も私より大きかった」
「へー」
「あれ、興味ない?」
「むしろなんで俺がスカウトマンに興味あると思うんだよ。というかお前モデルになるのか?」
夕月は高身長というわけではないが、スタイルはめちゃめちゃいい。腰の高さなんてけっこう身長差のある俺と同じくらいだし、服の上からでも魅惑的な体つきなのが一目瞭然だが、脱ぐともっとヤバいのだ。肌は驚くほど綺麗だし、肩とか二の腕とか鎖骨とか太ももとかもいちいちエロいし、Dカップだというおっぱいは直に見ると見事な美乳で、さわったらすごく柔らかくて――。
いかん、外で妹の普段着の下の裸を想像するとか本当に変態兄だわ。
「別に、ならないよ。モデルとか興味ないし、それに仕事始めちゃったら家事できなくなるし」
「お前なら売れっ子になれそうだけどな」
「そんな甘い世界じゃないでしょ。それに大勢の人に見られたりするの恥ずかしいし」
ふむ。やはり夕月の自己評価は謎だ。確かに芸能界はルックスがいいだけでは売れないのだろうが、彼女の場合は俺の妹とは思えないくらい中身も魅力的だ。一見クールで近寄りがたいのに話してみると人懐っこいとこがあって、でもいざ近づこうとするとさっと離れる猫みたいな性格……とはジョーの談だが、それはすごく人を引きつけるのではないだろうか。
いや、だいぶ兄の贔屓目が入ってるかもしれない。
ただ夕月はそれでも自分の見てくれの破壊力をちゃんと認識できていない気はする。卑下するほど客観視ができていないわけではなさそうだが。
というより、そもそも妹は自分のルックスにあまり興味がないのだ。
「お兄ちゃん急に黙ってどうしたの?」
「いや、夕月って毎日鏡見てんのかなと思って」
「見てるけど」
「けっこう美人顔だよな」
「まぁ、そこはお母さんに似たのかも」
おっと。去って行った家族の話をすると夕月はひっつき虫になってしまう。話題を変えよう。
「今日の夕飯どうすっかなー。何たべたい?」
「んー、じゃあカレー」
「カレーか」
「材料なら冷蔵庫にそろってるし」
「オッケー。ならカレーにするか久々に」
「辛めでいいからね。お兄ちゃんのカレーいっつも甘い」
「ああ、そうだっけ」
家でカレーを作ると、ついクセで甘めのを作ってしまう。妹は幼いころは甘口しか食べられなかったから。
マンションに着くと、今日の夕月はエレベーターを開けて待っていてくれた。
「家着いたらソッコーで洗濯しないとなー。もう夕方になっちまうし」
「一応、部屋干し用の洗剤買ってきたけど」
「いや外でも乾くだろ」
「はぁ……湿気とかさ、夜は冷えたりする日もあるから乾きにくいの。何度も言ってるじゃん」
「ああすまん、そうだよな」
「お兄ちゃん大ざっぱなとこなかなか直らないよね」
「夕月が細かすぎるのでは?」
「お兄ちゃんがこうだから私が細かくなったんでしょ」
憎まれ口を叩き合いながらエレベーターを降り、外廊下を歩いて家の鍵を開ける。先に中へ入ると、ドアの前で硬直している妹に声を掛けた。
「夕月、おかえり」
「……お兄ちゃん、これって」
彼女の見つめる先。玄関に水色のキャリーバッグが置いてあった。
「ああ、さっき届いた。明日から修学旅行だけど荷造りまだだろ?」
妹の手を引っ張って家の中に入れる。それでも彼女は固まったままだった。
「これ、お兄ちゃんが買ってくれたの?」
「試合頑張ったで賞な」
「誰のお金で?」
「もちろん俺のバイト代」
「……黒じゃないんだ」
「やっぱ夕月には水色が似合うと思ってな。女子の趣味とか分からんからすっげー悩んだわ」
「悩んだんだ」
夕月がキャリーバッグに近寄り、持ち手を引っ張って軽く持ち上げた。
「ありがと……」
「なんて?」
やっと妹から感謝の言葉が聞けたが、もっと言ってほしいので聞き返す。
「すごくうれしい。お兄ちゃん、ありがと」
「うむ」
振り向いた夕月の目は潤んでいた。確かに耳を真っ赤にして嬉しそうだが、なぜだか悔しそうに俺を睨みつけてくる。昔はもっと喜びを全身で表現していたのだが、ずいぶん恥ずかしがり屋さんになったものだ。
なんて思っていると、彼女が泣きそうな顔で微笑んだ。
「大事に使うね」
「当たり前だろ」
そう余裕ぶって返すが、俺は夕月の泣き顔に見惚れてしまっていた。妹は、いつからこんな表情をするようになったのだろう。
「……さーて、洗濯しないとな。お前も荷造りあんだろ?」
「うん、その前に私お風呂入るね。今日ちょっと走ったから汗かいちゃって」
「そうか」
「お兄ちゃんも一緒に入るでしょ?」
「あー……じゃあ洗濯済んだらな」
「お風呂の後でもいいんじゃない? 部屋干し用の買ってきたし」
「まあ、じゃあ入るか」
「ゴム取ってくるね」
当たり前のように俺の部屋へ入っていく妹の後ろ姿を見つめながら、はぁとため息をつく。
(昨日の今日だし、あんまがっつかないほうがいいよな。今朝もしたし)
そのときも寝起きのテンションのせいというか、危うく生で挿入しそうになってしまった。昨日から夕月への発情具合がひどい。
正直、コンビニで普段着姿の夕月を見つけてからずっとズボンの中で勃起しっぱなしだ。気を抜いたら絶対暴走してしまう。
「お待たせ」
「あ、今着てる服も洗濯するか?」
「うん、汗かいたし」
「じゃあそれも洗濯機つっこんどいて」
「ん」
責任ある兄として、今日は控えめにいこう。普通に風呂に入って和やかに談笑して一回エッチして出る。
今日は自制の日だ。
そう思っていたのだが。
「あぁッ、あんっ、お兄ちゃん、気持ちいいっ……あっ、あっあっあっあッ――」
浴槽の中で、俺は対面座位の格好で夕月を突き上げていた。
どうせエッチするのだからとお互い軽くシャワーで洗い流し、湯舟に浸かってゲームの話なんかで盛り上がったところまではよかった。
ゴムを付けるといわれて立ち上がったら夕月がペロリと亀頭の裏側を舐めてきて、その刺激があまりに気持ちよすぎてブルリと震えたら、妹がサディスティックな表情を見せて二、三回舌先で舐め上げてきたのだ。
「――おい、夕月お前っ……」
「あーあ、お兄ちゃんの舐めちゃった」
「いや舐めちゃったって……いいのかよ」
「だって顔の近くにあったから。あんまり味しないんだね」
なんてことを言われ、味を再確認するみたいにもう一度チロリと舐められて、そんな夕月の表情が妖艶で。
彼女の望みどおり後背位で挿入したらもう抑えがきかなくて、猿みたいに腰を振ってたら、いつもより早く射精してしまった。なのに全然勃起がおさまらず、夕月がゴムを付け替えてくれて、また舐めてくれるのではと内心期待してしまって、そうしたら夕月がそれを見透かすように――。
「ん、お兄ちゃん舐めてほしかった?」
とか聞いてくるから、対面座位で挿入した瞬間にその仕返しとばかりに激しく突き上げてしまったのだ。
「アッ、あぁんっ、ンンッ……おにいちゃっ、あッあっ、また、イっちゃうっ……」
「ピストン、ゆるめるか?」
「ううんっ、いい……もっと激しくして、いいよっ……」
茶色髪を後ろでおしゃれに結んだ外行きの妹を犯しているみたいで興奮する。その結び目がどんどんほどけていくのがめちゃめちゃエロい。
せっかく自制しようと思ったのにたやすく夕月に突破されてしまった。そんな苛立ちをぶつけるみたいに猛スピードで腰を振る。
「やばっ、また出る……ぐ、うぅっ……!」
あっという間に尻奥から精液がこみ上げてきて、俺は短時間で二度も射精してしまった。
シャワーを浴びながら、ボディーソープで体を洗っている夕月の背中を眺める。
浴槽のお湯はもう三分の一くらいしかない。あまりに激しく二人で揺れたせいでかなりあふれ出てしまった。
さすがに今日はもう自制しないと。
そう思っていると、夕月がシトラスのシャンプーを手に持って振り向いた。
「これお兄ちゃんも使ってみる?」
「女もんだろ? 俺はいいよ」
「そ? でもいつものシャンプー残り少ないよ。お兄ちゃんのぶん残ってるかな」
俺たちが前から使っていたほうのシャンプーを夕月が手に取り、逆さにして振っている。そのたびに胸元の乳房が揺れて非常に目の毒だ。
「いやいいわ。俺もマユちゃんのやつ使うよ」
「……使うの?」
「お前が言ったんだろ」
「はい、じゃー洗ったげるから頭出して」
急に不機嫌になる夕月が謎だ。言い方もすごく投げやりな感じがする。こういうとき兄は黙って言うことをきくに限る。
大人しく頭を差し出すと、シャワーのお湯が降ってきた。ごしごしと意外に乱暴な手つきで髪を洗われる。
「ではシャンプーつけていきますねー」
「お願いします」
ヘアサロンのようなやり取りが始まる。そういえば昔も、夕月はよく美容院さんごっことか言って髪を洗ってくれた。結局泡のほうに夢中になって、俺の髪を鬼にしたりアトムにしたりして満足そうに笑っていたっけ。
シャカシャカと夕月が俺の頭を揉み洗いする。さっきとは打って変わって丁寧な指使いだ。これはだいぶ……いやかなり気持ちがいい。彼女のほうも機嫌が直ったのか、ふんふんふーんと音程の外れた鼻歌を口ずさんでいる。
「お客さん、おかゆいところはないですか?」
「んー、お股」
どこかで聞いたようなお寒いギャグだ。兄が妹に言うジョークとしては最低の部類に入るだろう。
「はいはい、お股ですねー」
「うおっ」
泡のついた細い手が股間に触れた。陰毛をわしゃわしゃと泡立てて、最後にペニスをヌルヌルと握ってきた。これはマズい。妹の初手コキが気持ちよすぎて腰がビクついてしまう。
「お兄ちゃん」
「あ?」
「さっきの気持ちよかった? 舐めるやつ」
「あー、あぁ……正直な」
「そっか。じゃーまた夜してあげるね」
「マジかー」
泡まみれの手でヌチュヌチュとしごかれるうちに、またしても肉棒に血が集まってくる。
「ん、お兄ちゃんのカチコチになってきた」
「だな」
「流したら、もっかいする?」
「……そうだな」
頭を流してもらい、ついでに体も丹念に流してもらってから、これまた丁寧にゴムを付けてもらう。俺が風呂イスに座り、その上に夕月がまたがって腰を下ろす。対面座位でするのもずいぶん慣れた気がする。
「んッ、あぁんッ……うそ、お兄ちゃんの、さっきよりかたっ……」
どちらからともなく唇が交わる。舌を使って唾液を交換しているうちに、自制とかいろんなあれこれがどうでもよくなってきた。夕月とする何もかもが気持ちよすぎるせいだ。なにより今日の彼女は昨日にも増して積極的でやばい。
すっかり髪を下ろした妹を抱き締め、足腰を踏ん張りながら股間を突き上げる。
「あぁッ、ああぁぁんっ――」
浴室に夕月の艶っぽい喘ぎ声が反響する。その声が兄の劣情をかき立ててくる。
俺たちは風呂場で三度目のセックスを始めた。
出がらしのような精子を発射して、妹の体を強く抱きしめる。
「お兄ちゃん、まだシ足りなかったりする……?」
「いいや、満足感やばい……けど無限にできそう」
「私も、そんな感じ……」
「洗濯、しないと」
「私も荷造り、とか」
「カレーも作んないとな」
「私も、それ食べないと」
「中辛でいいよな」
「大辛がいい」
「後悔すんなよ」
「するかも、でも全部食べる」
「当たり前だろ」
「じゃ、エッチの続きは夜だね」
「ああ、夜な」
くっついていた体を離し、約束をするようにキスをする。
そのころにはもう、残りのゴムの数なんてすっかり頭から抜けていた。