※この作品はR-18です。

二人暮らしなら妹とするのも当たり前だよね。   作:月見ハク

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第2話 初めてキスをした日

 食欲をそそる匂いで、目が覚める。

 

 カーテン越しに見える窓の外は、すっかり暗くなっていた。

 

 デジタル時計を見ると時刻は午後7時過ぎ。とするとこの美味しそうな匂いは夕月が作っている晩飯だろう。

 

「……すっかり治ったな」

 

 寝る前の倦怠感が嘘のように意識がすっきりしている。熱も寒気もない。

 

 むしろ風邪を引く前よりも思考がクリアになっている気がする。

 

「勃ってるし……」

 

 さっき夕月としたばかりなのに、もう精巣が満タンになっている。

 

 もともとはこんなに旺盛じゃなかった。二人暮らしの妹とセックスをするようになってからだ。

 

 

 

 

 四年前に母親が家を出ていき、その半年後に親父は一人海外へ赴任した。

 

 そうしてかれこれ三年以上、俺と夕月はこの広い3LDKのマンションで二人暮らしだ。

 

 もともと共働きで会話も少ない両親だったから、四人で食卓を囲んだ記憶はほとんどない。帰りも遅かったから、昔から夕月とは二人暮らしのようなものだった。

 

「お兄ちゃん、一緒に寝よー……」

「ああ、いいよ。さっきのテレビ、恐かったよな」

「うん……衝撃映像、思い出しちゃった」

 

 夕月は昔から、夜に寂しいときや恐いテレビを観たとき、いろんな理由をつけては俺の布団へ潜りこんできた。

 

 今思えば兄妹仲がよすぎるというか、はたから見たら異質に映る関係だったかもしれない。

 

 中学に入ってからはその頻度も減っていたが、母親が出て行き親父もいなくなって、俺たちはまた一緒に寝るようになった。

 

 それは彼女が高校に進学しても変わらなかった。

 

 寂しさを埋めるように体をくっつけ合う。ここ数年は、一人で寝るよりも二人で寝た回数のほうが多いだろう。

 

 

 その夜も、夕月は俺のベッドに潜り込んできた。理由は「寒いんだよね」とかだった気がする。

 

 ただこの日は、彼女の様子がいつもと少し違った。

 

「ねぇお兄ちゃん……ここ、ちょっと硬くなってない?」

「ほぁ!? おい、ちょっ……」

 

 夕月が太ももで俺の股間をこすってきたのだ。

 

「ほら、もっと硬くなった」

「……寝る前は、男はこうなるもんなんだよ」

「朝だっていつも勃ってるじゃん」

「男はそういうもんなの。生理現象な」

「うそつき。エロいこと考えてるから勃つんでしょ」

 

 マズい。

 

 そりゃ、妹とはいえ女らしくなった夕月と毎晩のように密着していたら、体が勝手に反応してしまうこともある。

 

 テレビでも見たことないような綺麗な顔立ちだし、夜、うす暗い中でも息をのむほど美しい寝顔に何度見惚れたか分からない。

 

 たまにこすりつけてくる頭もめっちゃいい匂いするし、正直、気の迷いで夕月をオカズにしてしまったこともある。

 

 だが、そんな煩悩まみれの本性を知られるのは、兄として非常にマズい。たった二人の家族として、頼れる兄としての信頼を築き上げてきたのに、下手したら軽蔑どころじゃ済まなくなる。

 

「エロ、お兄ちゃんエッロ~」

「……心外だな、そんなこと言うともう一緒に寝てやらないぞ」

「それはやだ」

 

 夕月がぎゅっと抱きついてくる。

 

「うっ」

 

 すっかり成長してきたおっぱいが当たってヤバい。シャンプーと体臭の混じった甘い匂いとか、胸元をくすぐる吐息とかでいろいろヤバい。

 

 おまけに硬くなった股間が夕月のお腹に押し当てられている。ヤバいのにめちゃめちゃ気持ちいい。

 

(くそ、鎮まれ)

 

 理性をフル稼働させるが、健康な思春期男子の体は一度火がついてしまうと中々おさまらないものだ。逆に夕月の柔らかい体を意識してしまったことで、余計に勃ってしまう。

 

 てっきりエロ兄死ねとか言われるのを覚悟したが、予想に反して夕月は俺の胸に顔を埋めたままだった。

 

「夕月……?

 

 トクトクと、彼女の心臓の音が伝わってくる。

 

「お兄ちゃん、どんどん鼓動が早くなってる」

「お前こそ」

「鼻息も荒いよ。耳に当たってくすぐったいんだけど」

「お前だって」

「うそ、私鼻息荒くないもん」

 

 再び、静寂が流れる。

 

「……お兄ちゃんも、ああいうの興味あるんだね」

「ああいうのって、なに」

 

 嫌な予感がして、背中に冷たい汗がにじむ。

 

「ほら、お兄ちゃんのパソコンにこっそり保存してあるエロ画像」

「……は?」

 

 ファイル名変えてフォルダの奥底へ隠していたはずなのにバレているとは……!

 

 もう夕月にパソコン貸すのやめよう。

 

「お兄ちゃんって、私でも、こんなふうになっちゃうもんなの?」

「知るかよ。多分生理的なアレだ」

「じゃあ、私も生理的なアレかな」

 

 妙に艶っぽい夕月の声に動揺する。

 

「どういう意味?」

「あのさ、ちょっとだけしてみる?」

 

 横目でこちらを見上げてくる眼差しに、心臓の鼓動が早くなる。

 

「するって、なにを」

「唇くっつけるやつ」

「は? それってキ……」

「ちがう、くっつけてみるだけ」

 

 いやそれキスだろ。

 いったい何を考えているんだこの妹は。

 

 そういうことに興味があるとしても、相手はもっと他に……それこそ選り取り見取りだろうに。

 

「兄妹で、することじゃないだろ」

「二人暮らしなんだから、別にいいじゃん」

 

 全然答えになっていない。二人暮らしだからなんだっていうんだ。赤の他人が一つ屋根の下で暮らしているのとはわけが違う。俺と夕月は――。

 

 夕月が顔を上げ、じっと見つめてくる。

 物欲しそうな視線が俺の心臓を射抜く。

 

「あとで文句言うなよ」

 

 瞳に吸い込まれるように、俺は気づくと唇を重ねていた。

 

 音もたてずに触れ合った唇を、ゆっくり離す。

 

 彼女はポカンと目を見開いていた。

 

「……ほんとにするとは思わなかった」

「は? お前がしようって」

 

 マズった。今度こそ終わった。妹の意地の悪い冗談だったのだ。

 

 思わず背中を向けようとすると、夕月がシャツの胸元をぎゅっとつかんできた。

 

「もっかいしてみて」

「意味がわからん」

「おねがい」

 

 心の中で舌打ちをする。

 この泣きそうな顔で頼み事をしてくる妹に、俺は弱い。夕月もそれを分かっているのだろう。

 

 こんなときにドキっとするあざとさを発揮する妹に腹が立つ。

 

「後悔すんなよ」

「しないよ」

 

 チュ、チュと今度は音を立てて口づけをする。

 

 唇を離し、様子をうかがう。

 気が済むかと思ったが、夕月の吐息はさっきよりも熱い。揺れる瞳がもっと欲しいとねだっている。

 

 彼女の視線に宿る熱に戸惑っていると、今度は夕月のほうから唇をくっつけてきた。

 

「んっ……」

 

 唇の裏が密着するような紛れもない大人のキスだ。触れ合う唇の奥にかちっとした歯の感触があった。それを舌先で軽く舐めてみると、迎え入れるように歯列が開く。

 

 初めてのキスの感覚に頭の後ろがぼうっとしてくる。本能に促されるまま、おそるおそる舌を挿し入れると夕月のぬるっとした舌先に触れた。

 

「ん、ぁ」

 

 開いた口の中で、互いの舌がおっかなびっくり触れ合う。舌先でうかがうようなものから、次第に舌腹をぴたりと当ててれろれろと舐め合うようなディープキスへ。

 

 口端から漏れる吐息が甘ったるくなっていく。夕月のかすかな鼻息がこそばゆい。きっと俺のほうはもっと鼻息を荒くしているのだろう。

 

(ああこれ、もう止められないやつだ)

 

 いろんな感情がぐちゃぐちゃにこみ上げてきて、それを処理しきれないままに夢中で舌を絡ませる。

 

 一度外れてしまったタガは、もう元には直せない。

 

 その夜、俺たちは一晩中口内をむさぼり合っていた。

 

 

 それ以来、事あるごとにキスをするようになった。一緒に寝るときだけでなく、ふとしたときに夕月のほうからせがんでくるのだ。

 

「お兄ちゃん、唇貸して」

「へいへい」

 

 ソファーでテレビドラマを観ながら唇を重ね合う。

 

「んっ……ちゅ、んッ……ぇ、ぁ」

 

 くちゅくちゅと唾液をかき混ぜる音が脳内に響き、テレビの音をかき消していく。

 

 夕月とするようになって知ったことがある。

 

(キスって、こんなに気持ちいいのかよ)

 

 柔らかい唇と触れるだけで全身が震えるほどに火照り出す。夕月のピンク色の舌を見るたび、頭がキスをすることしか考えられなくなる。

 彼女の舌先が俺の舌を舐めると、射精とはまた違うゾクゾクとした感じが背中に走る。

 

 俺はすっかり夕月との甘いキスにハマってしまった。

 

「んぅ、ふ……っ、ぁ、あっ、CM終わってた」

 

 不意に舌の拘束が解かれ、妹が再びテレビに顔を向ける。

 ドラマの殺人犯が、二人目を手に掛けているシーンだった。

 

「俺、犯人わかったかも」

「え、ほんと? あーでもまだ言わないでよ」

 

 今しがた濃厚なキスをしていたのが嘘のように、夕月は真剣な顔でテレビを凝視し始めた。

 つい、その引き結ばれた唇に目がいってしまう。

 

 さっきよりも赤く染まっている夕月の耳を見ないようにして、ドラマに集中する。

 

「お兄ちゃん、次のCM入ったら追い炊きしてきてくれない? 寝る前にお風呂入りたいんだ」

「お前なぁ、自分で入るなら自分で」

「昨日、私が追い炊きしておいてあげたの忘れた?」

「へいへい」

「あ、まだCMになってないよ」

「犯人わかったからいいよ」

「ん、ありがと」

 

 片眉を上げて微笑んでくる妹の頭に、ポンポンと手を置く。

 

 俺は、一つのルールを自分に課していた。

 

 夕月から求めてくるとき以外は、手を出さない。

 

 普通の男女同士なら臆病でずるい態度かもしれない。

 だが兄として、これは当然の線引きだった。男である前に兄としての、ギリギリ踏みとどまれるラインだ。

 

 

 なんて思っていたのに、俺たちの行為がエスカレートするのに時間は掛からなかった。

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