体調不良の妹を連れて帰りたいという申し出は、担任の先生にすんなり受け入れられた。
修学旅行で生徒が体調を崩すのはよくあることらしい。むしろこうして保護者が迎えに来てくれるのは大助かりなのだとか。
「浅川、夜道の運転は気を付けるんだぞ」
「あ、はい」
ちなみに夕月の担任は俺の高二のときの担任でもある。教え子時代に似たやり取りに懐かしさを覚えつつ、ホテルの中へ戻っていく先生を見送る。
ふぅ、と謎の解放感からため息をつくと、俺はホテルの入口で話し込んでいる女子二人に目を向けた。
妹の友だち——マユちゃんが目尻を下げながら、夕月の両肩をさすっている。付き添いで来てくれたのだろう。
「ごめんね夕月、体調悪いの気づいてあげられなくて」
「私こそ、心配かけちゃってごめん。せっかくの修学旅行なのに」
「そんなん気にしなくていいんだよぉ……!」
夕月はさっきと同じ紺色シャツにシャカシャカジャージ姿のままだが、髪は後ろでシンプルに結んでいた。
一方のマユちゃんは白いルームウェアっぽい上下で、長い黒髪はそのままに前髪をヘアバンドで上げている。
対照的な二人だが、こうして仲睦まじいツーショットを見るとまるでアイドルユニットみたいだ。夕月は無自覚に色っぽい格好をしているし、この二人組は今日さぞかし男子たちの心をかき乱したことだろう。
……もっと早く迎えに来ればよかったか。
「じゃあお兄さん、夕月のことよろしくお願いします」
「え、ああ、うん」
不意にマユちゃんに話しかけられ、ついドキリとしてしまう。
妙に動揺してしまったのは前に夕月から、
——マユがね、お兄ちゃんのことカッコイイって。
なんて言われたせいだ。
「じゃあマユ、あとでメールするね」
「うん、私もメールするぅ……でも無理しないでね」
二人が手を振り合ったので、俺は夕月のキャリーバッグを引っ張って駐車場へと向かった。
背後に妹が付いてきているのを感じながら車に近寄り、リモコンでキーロックを外す。白い、何の変哲もない四人乗りのコンパクトカーだ。
後ろにキャリーバッグを入れ、助手席に夕月を座らせる。
運転席に乗り込むと妹がこちらを向いて目を見開いた。
「私、お兄ちゃんの車に乗るの初めてだ」
「免許取ってから特に乗る機会なかったもんな」
「お兄ちゃんとドライブかー」
「光栄に思えよな、お前が初めての乗客だ」
「うん、楽しみ」
「素直だな」
「そ? いつもと変わんなくない」
確かに今の夕月はいつもの夕月だ。さっきまでの、触れただけで壊れてしまいそうな妹はもういない。軽蔑される覚悟でここまで迎えに来てよかった。
心拍が、落ち着いていくのを感じる。
見知らぬ土地に来たっていうのに、夕月と他愛もない会話をしているだけで、まるで家のリビングでソファーに座っているみたいな感覚だ。
きっとこの狭い車内を、妹の甘い落ち着く匂いが満たしているせいだろう。
夕月のほうも俺と同じことを考えているのが伝わってくる。その証拠に鼻をすんすんと動かしているし、呼吸もリラックスしているのが分かる。
これはリビングというより……寝室のベッドの中にいる雰囲気に近い。つまりは俺の理性がいろいろヤバい。
「そろそろ出発するか」
「あ、もう行く?」
「忘れ物でもしたか?」
「ううん、でもお兄ちゃんとキスしたい」
「……素直だな」
「そ?」
「ていうか今ここでか? 一応ホテルの駐車場だぞ」
「お兄ちゃん気まずかったりする?」
「むしろお前は気まずくないのか」
「べつに、今は関係ないし」
「もしあの先生に見つかったらヤバいだろ」
「そうかな」
まったく妹の危機意識はどうなっているのだろうか。無自覚にこんなエロい服装してるし。
……まあこの駐車場は真っ暗だし、先生がここまで見回りにくることもあり得ない。
俺たちがどんな濃厚なキスをしようとも、誰に見つかることもないだろう。
「とりあえず一回だけな」
「ん」
暗がりの中、夕月が微笑んでいた。
甘えるようなその眼差しがドキリとするほど妖艶で、自然と吸い寄せられていく。
「んっ……ぁ、ぇぁっ……れ、ぁ……」
暗闇で互いを手繰り寄せるように、舌を絡ませる。
彼女の吐息が口元をくすぐる。数時間ぶりのディープキスなのに、まるで数年待ち望んでいたかのように胸が熱くなる。
手探りで求めるみたいに、手のひらを合わせて指を絡ませていく。そうしてやっと舌の根元まで舐め合う、頭の後ろがぼうっとするキスが始まる。
狭い密室だからか、くちゅくちゅと唾液の混じり合う音がやけに響く。車の外にまで聞こえてしまうんじゃないかと思うほどだ。でもそんなの気にする余裕もないくらい夕月の唇が柔らかくて、絡み合う舌がとろけて、んっんっという可愛い声が脳髄を痺れさせていく。
「んッ……は、ぁ……お兄ちゃん」
時間を忘れるほどのキスを終え、夕月が胸元に頭を埋めてくる。
俺はいつもそうしているように妹の髪を優しく撫でた。
「お兄ちゃん……私、ダメだね」
「今日、なんか嫌なことがあったのか?」
「ううん、ないよ……普通のこと。告白されるかもってなったり、告白されたり」
「それが普通ってお前なぁ……てか、告白してきたのって高梨くんか?」
「告白してきたのは松本くんていう人」
「誰そいつ」
「私も、あんまり知らない人」
「じゃあ告白未遂のほうが高梨くんか」
情報量の多さに頭がくらくらしてくる。この妹は、たった数時間でどんだけの色恋イベントに見舞われているのか。
「うん。あとマユも鈴木くんて人に告られたって」
「へー、そうなんだ」
「がっかりした? 結果知りたい?」
「いや別に」
「そっか。……あと高梨くんが女湯を覗こうとしたっぽい」
「ん? は……!? なんだそれ、夕月覗かれたのか!?」
「ううん、覗こうとしたって噂だけ。ほんとかどうかは分かんなけど」
「噂でもちょっと殺意が湧くな」
覗こうとしたのが事実ならさすがに看過できない。男子たちに、俺以外の誰かに夕月の裸を見られていたかもしれないと思うだけで、はらわたが煮えくり返ってくる。
「でも、こんなの修学旅行ではよくあることだよ」
「のぞき未遂はよくあることじゃないけどな」
「噂だし。それに、お家に帰るほどじゃない。みんな告白されたり、したり……そんな当たり前のことでお兄ちゃんに迎えに来てほしいなんて思うの、変だよね」
やっぱり、いつになく妹は弱気だった。クールで人間関係もそつなくこなすように見えて、実は繊細で気にしいで、気難しくて甘え下手で……それが世界で俺だけが知っている妹だ。
俺だけが、その全部を愛おしいと思える。
「まあ、みんなに比べたら変なのかもな」
「……だよね」
きっと普通の女の子にしてみたら、どれもこれも青春の一ページにカウントされるものなのだろう。
「でも、夕月は嫌だったんだろ? 帰りたいと思うくらい」
「え……うん」
「なら、俺にとってはそれがすべてだよ」
「……うん、ありがと、お兄ちゃん」
妹がおでこをこすり付けるようにぐりぐりしてくる。胸元でぐすっと鼻をすする音が聞こえた。こういうとき兄は黙って胸を貸しておくに限る。思春期の女の子はきっと、泣き顔を見られるのも嫌だろうから。
やがて落ち着いたのか、夕月はゆっくり顔を上げた。
「ねぇ、お兄ちゃん」
「ん?」
「出発する前に、ここでヌいてく?」
「は……ここで?」
「無理そ?」
「いやお前、それはさすがに」
「でもお兄ちゃんの、ずっと硬いよ」
妹が俺の股間に手を伸ばし、ズボンを押し上げている膨らみに触れてくる。
「そりゃ、お前とあんなキスすりゃ誰だってこうなるだろ」
「誰でもなの?」
「少なくとも俺は」
「だよね」
何がだよねなのかはさっぱり分からないが、俺が夕月とのキスで、なんならホテルの入口で見つけたときから欲情しっぱなしなのは事実だ。
ズボン越しに根元から先端までを撫でてくる夕月の手の感触だけで、今にも射精してしまいそうなくらいにはムラムラしている。
「はぁ……運転席でするのはさすがに狭すぎるから、後部座席いくぞ」
「ん、そだね」
俺は観念したようにドアロックを解除すると、夕月と一緒に後ろの席へ移った。
「——あッ、お兄ちゃん、んぅッ……きもちいいっ、あっあんっ……どうしよ、声っ……」
ギシ、ギシと唸り音を上げて車体が揺れる。
俺たちは後部座席に移るやいなや、互いの下半身を脱がし合い、仰向けになった夕月にのしかかり、正常位のような体勢でつながっていた。
「夕月、声もうちょっと押さえろ、さすがに外に漏れる」
「んっ、アッ……だって、我慢……むり」
かくいう俺もさっきから獣じみた声が止まらない。信じられないほど具合のいい名器がいつも以上に竿を締め付けてくる。きゅうきゅうと熱い膣内が圧迫してきて、絞り上げるように亀頭を吸ってくる。まるで夕月の気持ちと連動しているみたいだ。
本当は激しくピストンすると車体が揺れてしまうから抑えたいのに、あまりに気持ちがよすぎて、腰をめいっぱい動かしてしまう。
狭い空間にグチュグチュと出し入れする水音が鳴り響く。暗い車内でセックスをするのがこんなに気持ちいいなんて初めて知った。
それも修学旅行先のホテルの駐車場で、兄が妹を犯している——そんな状況が背徳的すぎて、ゾクゾクするような快感が立ち上ってきておさまらない。
「あっ、だめっ、その小刻みなの、だめっ……またイっちゃうっ……!」
瞳を潤ませて喘ぐ妹を見ていると、意地の悪い嗜虐心が湧いてきてしまう。
俺は彼女の紺色シャツをめくると、下に着ていた水色のタンクトップごと胸を揉んだ。
「夕月、こんなエロい格好で歩いてたのかよ、ホテルで」
「えっ……なんで、なに言ってっ……あッ、あぁんっあっあぁッ――」
下から角度をつけて出し入れし、亀頭で妹の弱いところをこする。すると夕月は可愛い喘ぎ声を上げて腰をガクガクと震わせた。どうやら盛大にイったようだ。
「ぐっ、お前締め付けきつッ……」
無意識なのか故意なのか夕月が膣内をきゅうっと締め付けてきた。妹とのセックスに慣れてきたはずのペニスが、これはさすがにと白旗を上げる。
「やばい、出る」
「うんっ、あッ……いいよ、中、出して」
その言葉にもう俺は抗うことができない。夕月がさらに膣内の収縮を強めてくる。たまらず精巣から濁流がこみ上げてきた。雄の本能が全力でこの子を孕ませろと訴えてくる。そりゃそうだ。最愛の女に中出しするのはごく当たり前のことなのだから。
「うっ、ぐううぅぅぅっ……!」
ビュルルル、ビュルルと先端から精液が解き放たれた。大量の種付け汁が夕月の膣奥に流れ込んでいく。妹の子宮を俺の濃い精子が満たしていくような実感に恍惚とする。腰から沸騰していくような快感に、全身が震え上がる。
旅先の解放感からだろうか。
それともこの週末で、覚悟と責任感がしっかり心に根付いてしまったからか。
俺はもう夕月に中出しをすることに一切のためらいがなくなっていた。
「……あッ、んぅッ……お兄、ちゃん……やばい、アッ……きもちいいの、とまんないっ……」
妹が助けを求めるような甘い声を上げる。絶頂の余韻がおさまらないようだ。
それもそのはずで、射精をしたあとも俺はつながったまま股間をぐっと押し込んだり、タンクトップをめくり上げて露出した乳房を
「夕月、お前、ブラジャーも付けてないのか」
「ちがっ……これ、ブラトップだから」
なるほどブラジャーと一体になった肌着らしい。だからといって夕月のエロさが軽減されたわけでは決してない。
後部座席でシャツと肌着をめくられ、甘ったるい喘ぎ声を漏らしている妹は、多分この世で一番のエロスを放っている。
それを味わえるのが世界でただ俺だけなのだという事実が、たまらない。
「まずい、また勃起しそうだわ」
「ん……もっかいする?」
「……いや、さすがにこれ以上したら運転する体力なくなりそう」
妹と二人、この駐車場で車中泊なんてマヌケすぎる。
「じゃあ、続きはホテルでしよっか」
そう言って微笑む夕月にいよいよ膣内で肉棒が硬くなるが、俺は断腸の思いで腰を引き抜いた。