※この作品はR-18です。

二人暮らしなら妹とするのも当たり前だよね。   作:月見ハク

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第20話 初めての温泉宿

 

 エンジンを付けて車を発進させる。

 

 カーナビに表示される時刻はもう夜10時を超えていた。夕月がホテルから出てきたのが夜の8時くらいだったので、俺たちは2時間もカーセックスに興じていたことになる。

 

 時間の経過が恐ろしすぎる。

 

 夕月とセックスを始めると時間を忘れて没頭してしまう。エッチのあとウェットティッシュでお互いの体を拭き合うのですら、気持ちよくてつい夢中になってしまった。

 

 これはいつか取り返しのつかないことになりそうだ。

 

 夕月にハマり過ぎて何もかもを投げ出してしまいそうな……いや、それは今に始まったことじゃないか。

 

 俺はずっと昔から、妹のためなら何を犠牲にしてもいいと思えてしまう狂った兄だった。

 

 小さくため息をついて助手席をチラ見すると、夕月が上機嫌そうに鼻歌を口ずさんでいた。シートベルトがおっぱいの谷間に挟まり、二つの乳毬が強調されている。まさに童貞を殺すシートベルトだ。

 

 なんて当たり前のように妹をエロい目で見ている俺は、やっぱり狂っているのだろう。

 

 思わず凝視してしまいそうになり、慌てて前方へ視線を戻す。さすがに妹に見惚れて事故りましたなんてのはシャレにならない。

 

 すっかり闇に染まった木々やら道路を照らす街灯が、前から後ろへ通り過ぎていく。

 

 静かな車内を、心地のいい無言が満たす。きっと妹は疲れただろうからこのまま寝かせてやろう。

 

 なんて思うと決まって夕月は話しかけてくる。

 

「お兄ちゃん、泊まるとこって近いの?」

「いや、結局車で三十分くらい行ったとこの旅館しか空いてなかったわ」

「そっか。じゃーそれまでゲームする?」

「どんなゲーム?」

「カタカナ禁止ゲーム。擬音は使ってもいいよ。質問には絶対答える。どう?」

「ああいいよ、眠気覚ましになりそう」

 

 俺たち兄妹の中ではやったことのない遊びだ。きっと修学旅行の移動中かホテルで、夕月はこのゲームに触れたのだろう。

 

「じゃあスタート。お兄ちゃん、好きな食べ物なに?」

「あー、夕月の作ったオム……卵焼きご飯に乗っけて赤い汁かけたやつ。夕月は?」

「同じ」

「それズルいだろ」

「でもほんとだし」

「はあ、まーいいや……あ、夕月」

「ん?」

「宿に着いたら何する?」

「……エロ兄」

「いやお前弱すぎだろ」

「エロってカタカナ?」

「カタカナ……だよな?」

 

 そう言われると自信がなくなってきた。

 

「じゃ、私の負けね」

「2分も持たなかったな」

「あ、罰ゲーム設定しなきゃ」

「まだやるのか」

「……負けたほうがエッチのときに上になるのは、ど?」

「それって罰なのか?」

「んー、多分。上になるとすぐイっちゃうし」

 

 それは夕月の場合だけではとツッコミたくなるが、俺としても上から攻めようが下から突き上げようがすぐイってしまうので、よしとする。

 

「じゃあ二回戦、スタートな」

「お兄ちゃん、好きなスポーツは?」

「お前なぁ……」

 

 初手で自爆した夕月が、ふふと楽しげに笑う。

 

 どうもさっきから妹の様子がおかしい。頭があまり働いてないようだし、妙に下ネタも多い気がする。

 

 これはあれだ。眠気がマックスのときの夕月だ。相当に眠いのだろう。

 

 まあ当たり前か。今日は朝早起きして家でセックスして、慣れない旅で疲れて、嫌な思いもして、おまけにさっきの激しいカーセックスだ。

 

 午前中に二度寝している俺と違って、その疲労度はかなりのものだろう。

 

「三回戦いくね。お兄ちゃん、好きなテレ……放送番組は?」

「あー、ビジネ……経営系の番組」

「あぁ、お兄ちゃん最近マーケティングとか好きだもんね」

「勝つ気あんのか?」

「あるよ」

 

 まるでなさそうだが、夕月が楽しそうなのでよしとする。

 

 その後も妹は果敢にカタカナ禁止ゲームを挑んできたが、だいたい二手目か三手目で敗北した。

 

 

 

 

「夕月、着いたぞ」

「ん……あ、もう?」

「起こして悪いな」

「大丈夫、熟睡はしてないし」

 

 すやすやと気持ちよさそうな寝息を立てていたことは黙っておく。

 

 俺たちは車を降りると、どこか覚束ない足取りで入口へと向かった。

 

 木々に囲まれた、ちょっとお高い和風旅館だ。中に入ると、意外にも洋風のエントランスでフロントにはスーツを着た男の人が立っていた。

 

「すみません、さっき予約した浅川です」

「お待ちしておりました浅川様、こちらにご記入をお願いできますか?」

 

 住所やら電話番号やらを書き込んでいると、夕月がぼんやりした表情で覗いてきた。

 

「お兄ちゃん、朝ごはんってなに?」

「ビュッフェ」

「ビュッフェ……」

 

 初めて聞く単語かのようにオウム返しをする夕月に、フロントマンがくすっと口角を上げる。

 

 眠気のせいでどこか色っぽいというか、無防備なエロスが表に出てきてしまっているこの美少女を前に、微笑ましいものを見るような眼差しにとどめていられるなんて、この人は相当に修行を積んだフロントマンなのだろう。

 

 ……やばい。俺も眠気のせいで思考がアホになっている気がする。

 

「ご記入ありがとうございます。お部屋には専用の露天風呂も付いておりまして、二十四時間入ることが可能です。大浴場のほうは——」

 

 フロントマンの丁寧な説明を右から左に聞き流し、『(あずさ)の間』の鍵を受け取る。なんとなく聞き取ったところでは二階のつきあたりにあるらしい。

 

 

 階段をゆっくり上っていると、夕月が不意につぶやいた。

 

「さっきの受付の人、私たちのことカップルに見えたかな」

「いや、お前普通にお兄ちゃんって言ってただろ」

「言った?」

「言ったな」

「そっか」

 

 つまらなそうにつぶやく夕月だったが、部屋に入ると一気にテンションが持ち直した。

 

「なんか広い」

 

 十畳くらいはある和室だった。障子で閉じられた窓の向こうから、ちろちろとお湯の流れ落ちる音が聞こえる。窓横にある勝手口から外の露天風呂に出られるらしい。

 

「てか、布団敷いてあるの地味に助かるな」

「そだね。さっそく寝る?」

 

 その言い方だとすごく性の匂いがする。

 

 いや、夕月はさっき続きはホテルでしようと言ってたから、妹的にはこれからセックスをするつもりなのかもしれない。

 

 だけど、多分今夜はする前に寝落ちしてしまうだろう。

 

「お兄ちゃん、浴衣あった」

 

 夕月が棚を開け、白地に柄のついた浴衣を取り出す。

 

「そりゃあるだろ。旅館なんだし」

「だね。着ようかな」

「ああ、夕月なら似合いそうだな」

 

 そういえば妹の浴衣姿を見るのは初めてだ。これはかなり興奮する。

 

 とか思っていたら夕月がいきなりシャツをまくり上げ、服を脱ぎだした。

 

「おい、いきなり脱ぐなよ」

 

 咄嗟に反対側を向く。

 

「恥ずかしいことある? 兄妹なのに」

 

 いや、仲のいい兄妹でも互いの生着替えを見せ合うことなんてないだろう。確かに俺たちは全裸を晒し合うどころか中出しまで果たしてしまっているが、だからといって最低限の恥じらいは大事な気がする。

 

 というか、夕月はもう寝惚けているのだろう。いくらなんでも大胆すぎる。

 

 背後でしていた衣擦れの音が、やがて止まった。

 

「お兄ちゃん」

「ん?」

「浴衣着せてー」

「おまっ……」

 

 振り向くと、そこには全裸で立つ美少女がいた。パンツまでも脱ぎ捨て、生まれたままの姿で両手に持った浴衣をこちらに差し出している。

 

 セックスを誘っているというより、純粋に着せてほしがっている感じだ。

 

 俺は今日何度目かになる大きなため息をついてから浴衣を受け取った。彼女の正面に立ち、浴衣を左右に広げる。

 

「着せるから、(そで)は自分で通せよ」

「うん」

 

 心底嬉しそうな顔しやがって。こっちは夕月の素っ裸に勃起がおさまらないっていうのに。

 

 魅惑的な凹凸(おうとつ)を凝視しないようにしながら、妹に浴衣を羽織らせる。

 

 全裸に浴衣を羽織っただけの夕月が予想以上にエロい。前は全部開いているのでおっぱいはほとんど露出しているし、なにより綺麗な下腹部が丸見えだ。なんならすっぽんぽんよりもエロい気がする。

 

 おまけに浴衣を着せただけなのに、そのとき生じたそよ風が夕月の甘い香りを運んでくるものだから、たまったものではない。どうしてうちの妹はこんなにいい匂いを体から放っているのだろうか。

 

「お兄ちゃん、袖通った」

「よし」

 

 これでやっと前を閉じられる。まずは浴衣の内側の紐を締める。お腹のあたりできゅっと結ぶと、なぜか夕月の口から「んっ」と悩ましげな声が漏れた。

 

 これはやばい。本人にそのつもりがないだけに、自然と漏れてしまったという感じのエロ声がやばい。その破壊力に兄としての理性が打ち砕かれそうだ。

 

 多分、今ここで押し倒しても妹はセックスを受け入れるだろう。だけど一人の兄として、今夜はもう疲れ切った妹を寝かせてあげたい。

 

 外側を帯びで締め、ようやく夕月の体を浴衣が隠した。

 

「お兄ちゃんも、浴衣着たら?」

「そうだな」

「ん……じゃあ先に寝てるね」

「ああ、おやすみ」

 

 俺もいそいそと浴衣に着替え、部屋の電気を消す。

 

 夕月はもう布団の中で気持ちよさそうに丸まっていた。妹の穏やかな寝顔というのは、どうしてこんなにも兄の心を温かくさせるのだろう。

 

 彼女の寝顔を眺めながら、俺も隣の布団に入る。

 

 すると夕月がもぞもぞと動き、こちらの布団に潜りこんできた。一気に布団の中の温度が上がり、俺の体が柔らかい感触と花みたいな香りに包まれる。

 

 慣れない旅先だが、こうして夕月と体をくっつけ合うだけで落ち着いてしまう。嗅いだことのないシーツの匂いと、馴染みのある香りが混ざり合って不思議な感じだ。

 

「……おにいちゃん」

 

 ポツリと、俺の鼻先で妹がつぶやいた。

 

「どうした?」

「ゆづも見る」

 

 その懐かしい呼び方に愛おしさがこみ上げてくる。夕月がまだ小学生のころ、たまに自分のことをゆづと呼んでいた。

 

 ゆづも見る……何を見たがっているのだろう。きっと明日の夕月に聞いても覚えていない。今のこの子は、幼い頃の妹なんだ。

 

「おやすみ、ゆづ」

 

 昔していたみたいにおでこへキスをすると、夕月は安心したように微笑んで寝息を立て始めた。こんなに可愛い妹がいるなんて俺は前世でいったいどんな徳を積んだのだろうか。

 

 ぼけぼけした脳みそで輪廻転生に感謝しつつ、俺もまぶたを閉じた。

 

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