懐が寒くて目が覚めた。
まぶたを開けると、部屋の外から美味しそうな匂いが漂ってくる。
やや薄味で栄養バランス満点の、妹——夕月の手作り味噌汁の香りだ。
俺が起きたのを見計らうように、廊下からトタトタと足音が近づいてくる。
半開きのドアが押され、Tシャツ姿の妹が入ってきた。
「お兄ちゃんおはよう」
正直もうちょっと寝ていたいので、起きていないふりをする。
今日は月曜だが大学は休講日。昨日の夜、そうメールがあった。ならば惰眠をむさぼりたい。昨夜も結局、眠ったのは遅い時間だったし。
「寝てる?」
夕月が静かに忍び寄ってくる。彼女の甘い匂いが近くなったのでそれが分かった。
肩のあたりでシーツが沈む。さらさらの髪がおでこをくすぐる。妹がベッドに手をつき、俺の顔を覗き込んでいるようだ。
かすかな吐息が頬をかすめる。
「ん……」
唇に、しっとりとした感触が重なった。夕月が寝込みにキスをしてきたらしい。
あむあむと味見をするように妹の唇が動く。温かい舌先が唇を舐めてきた。
それだけで俺の体の温度が上がる。相変わらず夕月の唇は柔らかくて気持ちがいい。
「……朝だよー」
ちゅ、と合図のようなキスをしてから妹の唇が離れる。どうやら起こすのを諦めてくれたらしい。
カーテンを開ける音がして、朝の澄んだ空気が吹き込んでくる。夕月が換気のために寝室の窓を開けたのだろう。
そうして初めて、室内に匂いがこもっていたのだと気づく。昨夜遅くまで
(さむっ……)
体が震え、全裸で寝ていたことを思い出す。
はぁ、と夕月の小さいため息が聞こえた気がした。
次の瞬間、心地いい重みが乗っかってくる。妹が俺の体にダイブしてきたのだ。どうやら物理攻撃に切り替えたらしい。
うつ伏せで、もぞもぞと体を動かし位置を調整している。真正面から再びキスで起こそうというのだろう。
「んっ……」
さっきよりも唇が密着する。彼女の唇で唇がめくれる。悪戯をするみたいに舌先がちろりと俺の舌先に触れる。
甘い。
起こしにくる前に味噌汁を味見でもしたのだろう。
ちゅろ、ちゅろとモーニングコールにしては過激すぎる音が鳴る。こうなってしまっては寝たふりをしていても体のほうが反応してしまう。
「お兄ちゃんの、かたくなった……起きた?」
「……起きてたよ」
観念して目を開けると、キョトンとした夕月の顔があった。
相変わらず見惚れるほど顔が整っている。兄ですら毎朝魂を抜かれそうになるくらいだから、第三者が見たら一瞬で惚れてしまう気がする。……いやそれはさすがに妹びいきが過ぎるか。
にしても寝起きで夕月の顔面アップは心臓に悪い。
きっとアイドルの兄になったらこんな感じなのだろう。……いや、妹のキスで起こされる兄なんてそうそういないか。
「もしかして寝たふりしてた?」
「ただの寝留守」
「ねるす?」
なにそれ、と呆れ顔でつぶやく夕月の、茶色がかった前髪がそよ風で揺れる。
むっと尖らせた薄い唇が、キスの名残りで艶めいている。どうしてこの妹は朝からこんなに色っぽいのだろう。
「まーいいや、お兄ちゃんおはよう」
仕切り直しとばかりに夕月が見つめてくる。
妹は挨拶に返さないと不機嫌になってしまう。さっき寝たふりで無視をしてしまったから二度目は絶対面倒なことになる。
「おはよう、夕月」
「ん、おはよ」
よしとでも言いたげに妹が微笑む。勝ち気そうな眉がやっと下がり、大きな瞳が優しげに揺らめく。
なんというか、この安心しきった顔が見たくて俺は寝たふりを決め込んだのではないかとすら思えてくる。
だとすると俺は妹を困らせて楽しむ変態兄だ。……自重しよう。
ちゅ、と夕月が改めておはようのキスをしてきた。これが俺たちの、本来のルーティンだ。
「朝ごはんできたよ」
「ああ、サンキューな」
寝ぼけついでに夕月の頭を撫でる。彼女は表情を変えずに目を細めた。
「……すぐ食べる?」
「食べない選択肢あんのか?」
「その前に、お兄ちゃんヌきたいかなと思って」
「……」
本当にこの妹は、涼しい顔でシームレスに理性をぶち抜いてくる。
うつ伏せの夕月が、腰のところをごそごそと動かした。すっかり勃起した俺の股間を確認しているのだろう。そんなことをされたら余計に硬くなる。
「これは朝勃ちだからな」
「うん、生理現象でしょ」
そう言いつつピンときていない様子だ。まあ女の子にこのメカニズムを理解するのは不可能だろう。男の俺だってよく分かっていない。
ただ、目の前の妹にすっかり欲情してしまっているのだけは間違いなかった。
さっきから胸元に押し付けられているDカップのせいもある。
色気なんて感じさせない兄妹間の雰囲気を出してるくせに、どうしてこんなにエロいのだろうか夕月は。
……なんて、最近は毎朝同じことを考えている気がする。
「どうする? ご飯のあとにしとく?」
「いや、今でいいよ」
「ん。じゃーゴムつけてあげるね」
「いいよ、自分でつける」
「お兄ちゃん寝てていいよ。眠いんでしょ」
もう下半身を中心にすっかり起きちゃってるんだけど。なんてアホみたいなツッコミを心中でしていると、夕月がベッド脇に放られていたコンドームの箱に手を伸ばした。
それから布団をめくり、目を丸くする。
「お兄ちゃんの、すごいおっきくなってる」
「お前毎回それ言うよな」
「だって面白いんだもん」
「オモチャじゃないぞ」
「知ってるし」
俺のほうに顔を向けてぶつくさ言いながら、妹は手元でゴムを被せてきた。相変わらず器用だ。最近はキスや膣の締め具合まで上手くなっているから困る。
被せ終えると、夕月はショートパンツらしきものを脱ぎ、Tシャツ一枚で俺の腰にまたがってきた。
彼女の体温で下半身が温まる。そのせいか上半身がブルリと寒くなった。
「さむ……」
急に布団を剥がされ、窓も開いている。暖かくなってきたとはいえ6月の朝だ。全裸になるにはちょっと寒い。
「あ、ごめん。これで平気?」
夕月は布団を被ると、四つん這いで覆いかぶさってきた。妹の熱が布団の中にこもって全身が温かくなる。
「ああ、あったかい」
「だよね……私も上脱ぐ?」
「いや夕月が風邪引くだろ」
「そ?」
「脱ぐなら窓閉めろ」
「やだ。布団から出たくない」
「気持ちは分かる」
「じゃ、入れるね」
夕月は俺をじっと見つめながら、布団の中で腰を浮かし、ゆっくり落としていった。
「ンッ……」
ぬぷりと、ペニスが粘膜の中に飲み込まれていく。すごく熱い。
股間まで冷えていたからそう感じるのか、それとも妹の膣内がとびきり温かいせいか。……間違いなく後者だ。それを俺は十分に知っている。
「うっ」
ぐにゅりと膣内がうねり、思わず情けない声が漏れてしまった。
昨夜もさんざんに出し入れしたはずなのに、まるで初めて挿入をしたみたいに気持ちがいい。いやそれ以上の快感だ。
きっと布団の外が肌寒いから、余計に下半身の性感に神経が集中してしまうのだろう。だとすると夕月もきっと——。
「んッ……お兄ちゃん、なんかやばいかも」
「だな、少しじっとしてろ」
「ん」
兄貴風を吹かしてみるが、今動かれたらやばいのは俺のほうだ。
挿れてからというもの妹の膣内が絡みつき、ぎゅっぎゅと締め付けてきている。
狭い膣内がペニスに馴染んでいるのが分かる。夕月の中はもう俺の形にフィットするようになっていた。
気を抜くと昇天しそうなほど気持ちいいのに、このまま眠ってしまいそうになるほど落ち着く。
慣れ親しんでいるのにいつまで経っても慣れない。不思議な心地だ。きっとこれが兄妹のセックスなのだろう。
「お兄ちゃん」
「ん?」
「これ好きかも」
「じっとしてるのが?」
「寒いとこで、お兄ちゃんとこうしてるの」
「ああ、コタツに入りながらアイス食う的なやつか」
「それ例え合ってる?」
「さあ」
「ん……うごくね」
性感に慣れてきたのか、夕月がゆっくり腰を動かし始めた。
「ぁっ……ンっ」
熱のこもった吐息が俺の顔を温める。
布団の中からぬちゅぬちゅと淫らな音が聞こえてくる。妹の膣内が絡みつきながら肉棒をしごいてくる。正直もう射精しそうだ。
「ん、あっ……おにいちゃっ、んんッ……」
四つん這いを維持していた細腕から力が抜け、彼女が俺の胸元にしがみついてきた。
その心地いい重みを受け止め、やんわりと抱き締める。朝一番の妹とのハグに酔いそうだ。
夕月は可愛い声を漏らしながら、苦しげに息を切らしている。俺の上でべたりとうつ伏せになったので腰を動かしづらいらしい。
俺は布団の中で腕を伸ばすと、夕月のお尻をぎゅっとつかんだ。
「んッ」
「夕月はじっとしてろ」
「……うん」
彼女が動けないなら代わりに動いてやるのが兄というものだろう。
すべすべで弾力のあるお尻を何度か揉むと、しっとりと汗ばんできた。力を込めてつかみ、妹の腰をスライドさせる。
「あッ……あぁんっ——」
膣奥がきゅうっと亀頭に吸い付いてきた。膣口も根元をぎゅうぎゅうと締めてくる。夕月がイった証拠だ。
俺も射精感がペニスの付け根まで上がってきている。早々にイってしまいそうだ。
できればもっとこの射精寸前の快楽を味わいたい。でも妹の可愛い反応に耐えきれず、彼女のお尻を前後に揺すってしまう。
「んぅッ、あんっ、お兄ちゃんっ、これ」
動かすたびに手のひらを開けたり閉じたりする妹がたまらない。やがて俺の両肩をつかんだ。ようやく手の行き場を見つけたらしい。
彼女のロングヘアーが胸元をくすぐって気持ちがいい。時おり甘えるように肩のあたりを吸ってくるのも可愛い。
優しくしてやりたいのに、つい柔らかいお尻を揉みしだいてしまう。
「あっ、まって、んぁっ、ンッ……んぅっ——ッ」
夕月が中イキしたのを感じ、胸の奥が熱くなる。
妹とセックスするといつもこうだ。最愛の女の子への獣のような欲望と、最愛の妹に対する庇護欲で心がぐちゃぐちゃになる。
大きな瞳に涙を浮かべ、それでも必死に俺を見つめてくる様子が愛おしい。
「ぐっ、イくっ……!」
尻奥からせり上がってきたドロドロの熱が尿道へ駆け抜けていく。
「ん゛ぅッ、あぁっっ——ッ」
妹の顎が上向いた瞬間、ペニスの先端から大量の精液が放たれた。
ビュクビュクと精子が流れ出ていく快感がやばい。熱い膣内がきゅううっと肉棒を吸い上げてくる。夕月の尻肉を強くつかんでさらに精をひり出す。
いつのまにか俺の腰は浮いていた。背中も少し浮いている。強烈な射精感が引くまでずっとそうしていた。
息を吐くとともに体がシーツに沈み、妹の重みものしかかってくる。
彼女のお尻を手のひらでぐにぐにと揉みながら、朝一番のセックスの余韻に
夕月は眉間にシワを寄せ、たまに押し寄せるのだろう快感に悶えていた。
そんな彼女の茶色髪を優しく撫でる。汗でじっとりと湿り、甘くて濃い匂いを放っている。
鼻を寄せて吸い込んでいると、妹が顔をこちらに向けてきた。顎先が胸元をえぐってこそばゆい。
「……汗かいちゃった。さっきシャワー浴びたのに」
「もっかい浴びな」
「ん。お兄ちゃんも一緒に入ろ」
「へいへい。朝メシ食ってからな」
「だね。味噌汁冷めちゃうし」
「あ、そういや火は止めたのか?」
「止めてきたよ」
最初から俺を起こすのに時間が掛かると思っていたらしい。多分、こうしてモーニングセックスをするのも想定していたのだろう。
「……朝メシ食うか」
「うん、お腹すいたー」
などと言いながら、妹はなかなか離れようとしない。
俺も同じ気持ちだ。寒い中、布団の中で繋がり合っているのが気持ちよすぎる。というか全裸で布団の外へ出たくない。
「……お兄ちゃんの、抜くね」
「ああ」
先に理性を働かせたのは夕月だった。
ん、と感じ入った声を漏らしながら彼女が腰を浮かす。そのまま上体も起こしたので、俺は再び冷たい空気に裸をさらした。
彼女を追いかけるように上体を起こし、萎んだペニスからコンドームを外す。
すると妹がベッドサイドに置いてあるティッシュ箱に手を伸ばした。ティッシュを三枚抜き、両手のひらに乗せて差し出してくる。
「お兄ちゃん、はい」
そこに使用済みゴムを置けということだろうか。三枚では足りないと思うのだが。
仕方なく乗せるとやはり足りなかったらしく、彼女は追加で四枚ほどのティッシュでくるみゴミ箱へ捨てた。少し眉を寄せているのは、最近激増したティッシュの消費量に頭を悩ませているからだ。
ささいな出費増でも、毎日家計簿をつけている妹からすれば気になるらしい。
俺は申し訳ない気持ちになりつつも、さらに五枚ほどティッシュを抜く。
「夕月、拭くよ」
「ん……ありがとお兄ちゃん」
妹が膝立ちになって脚を少し開く。その股下に重ねたティッシュをあてがい、ぐっしょりと濡れたアソコを拭いていく。
「んッ」
夕月が俺の両肩に手を置いた。膣口を優しく擦るたびに声を押し殺している。まぶたを痙攣させ、肩をつかむ手に力が込められる。
……まずい。せっかく事後の儀式をしているのに、下半身が二回戦の準備を始めてしまいそうだ。というか始めている。
俺は純粋な兄心をフル稼働させて拭き終えると、もう五枚ほどティッシュを抜いて自分の股間にあてがう。
次々消費されるティッシュに不服そうな妹をスルーしながら、ペニスに付着した白濁液やら愛液を拭き取った。
「じゃ、味噌汁温め直してくるね」
「サンキューな」
「お兄ちゃんも早く来て」
「ああ」
「そのまま来ないでね。服着てよ」
「ああ……って、お前それ俺のトランクスじゃね?」
夕月が脚を通しているショートパンツらしきものは、見まがうはずもない俺のトランクスだった。
その下にパンツも穿いていない。俺の下着が妹の下着に流用されている。
「さっき借りたー」
「さすがに自分の穿けよ」
「だって裸で自分の部屋いくの嫌だったし」
「ん? てかTシャツも俺のか」
「うん」
悪びれもせずに兄の服を盗んで着る妹……さすがに兄として叱っていいのではないだろうか。
だが普通の兄妹だったらそもそも服を着られることもないのだろう。つまりは叱って良いのか悪いのかが分からない。困った。
それに妹の気持ちも分かる。
昨夜は風呂上がりで裸のまま俺の寝室にもつれ込み、深夜までセックスに耽ってしまった。
朝起きて、裸で自分の部屋に服を取りに行くのは確かに寒いだろうし、兄のタンスにある服を借りパクするのは妹として自然な行動にも思える。多分。
結局、俺たちはやることなすことが普通の兄妹ではないから、常識で考えようとしても意味がないのだ。
「ちゃんと洗って返せよ」
「当たり前でしょ」
そう言い残し、夕月は寝室を出ていった。
ふぅとため息をつきながら、ティッシュだらけのゴミ箱を眺める。
コンドームの箱を確認してみると残りは3個。
一昨日に12個入りを買ったばかりだから、俺たちは二日弱で9回もセックスしたことになる。
(さすがにヤりすぎだよな……?)
それも分からない。
ただこれが、二人暮らしの——閉じた世界で生活する俺たち兄妹の当たり前だった。