服を着てリビングへ行くと、夕月がテーブルに朝食を準備し終えたところだった。
ご飯に味噌汁、納豆、皿には目玉焼きとサラダ。
美味しそうないつもの妹手作りモーニングだ。
「一人で運ばせちゃって悪いな」
「いーよ、お兄ちゃん洗濯物持ってきてくれたし」
夕月が、俺の手に抱えられた洗いたての衣類を見てつぶやく。
寝室を出るときちょうど洗濯機がピーと鳴ったので取り出しておいた。
「いやそもそも今日は俺が洗濯当番だろ」
「そーだよ。でもお兄ちゃんぐっすり眠ってたから、私が洗濯機回しといた」
「そうか」
やけに妹の気前がいい。
こういうときは後で面倒なお願いごとをされるのが常だ。まあたいてい聞いてやるんだが。
「って、もうこんな時間か。夕月学校は?」
テレビから流れている朝の情報番組。その右上の時刻表示を見れば朝の9時過ぎだった。
「代休だって言ったじゃん昨日」
「あー修学旅行のか」
週末を修学旅行に費やしたので今日、月曜日が代休だ。だから昨夜は遅くまでセックスをしたのを思い出した。
ということは、今日も一日中夕月と二人きりということになる。
無意識に疼いてしまう股間に気づかないふりをしながら、リビングの窓を開けてベランダに出た。
あいにくの曇り空だが、洗濯物が乾くくらいの陽射しはある。ちょうど情報番組でも雨は降らないと言っているし。
妹の下着を自分のシャツで隠すように干していると、室内から「ありがとー」と気の抜けた声が聞こえた。
ちなみに夕月からは一度、内側に干されると乾きづらいと文句を言われたことがある。
まったく、自分の魅力に無頓着な妹を持つと苦労する。兄の心、妹知らずというやつだ。
俺は夕月の下着が外から見えないことを確認してから、リビングへ戻った。
「いただきます」
「ん、いただきます」
なぜかうなずいてから言う夕月に苦笑しつつ、味噌汁に口をつけた。二人並んでテレビをぼんやり眺め、いつもの朝よりゆったりとした時間を堪能する。
テーブルの反対側には郵便物やらセールのチラシなんかが積まれ、今日はその上に修学旅行のお土産も乗っかっている。
今にテレビすら見えなくなりそうだ。でも俺も夕月もどかそうとはしない。
親父と不仲だった母が出ていき、親父も長期出張を言い訳にほとんど帰らなくなってから数年。
妹はテーブルの対面に何かを積み続けている。まるでこの家には俺たち二人しか住んでいないことをアピールするみたいに。
隣を伺えば、夕月は食事中にも関わらずスマホをじっと見つめていた。
うん、これは行儀が悪い。
「おい夕月、スマホいじるのは食べてからにしろよ」
「んー」
「んーじゃねえわ」
「あのさお兄ちゃん」
「あん?」
俺の小言をスルーし、妹がスマホを眺めながらつぶやく。
「今日これからマユに会うよ」
「へえ、珍しいな」
夕月が休日に友だちと会うのは珍しい。もしかしたら初めてかもしれない。
妹の交友関係は決して狭くはない。人当たりがいいというか外面がいいというか、人付き合いを器用にこなしている。友だちの少ない俺とは違って。
それでも彼女は一定以上踏み込まれないように絶妙な距離感を保っているらしく、今まで遊びに誘われても、家事があるからとか、そういう角が立たない理由で断ってきた。
だからマユちゃんのように親しい友人ができるのは多分、初めてのことだ。妹に親友と呼べる存在ができたことが、兄としては素直に喜ばしい。
「——お兄ちゃん、聞いてる?」
「すまん、考えごとしてた」
「はぁ……だからお兄ちゃん付き合ってくれる?」
「はい?」
いきなりの告白めいた言葉に時が止まる。
付き合うというのは好き合う男女がデートしたりキスをしたりすることを指す。知ってる。夕月とはそのどちらもしているし、なんなら一緒に住んで毎日のようにセックスをして、何度か中出しまでした。もはや恋人を通り越している。
だから改めて付き合ってほしいと言われたら、もちろん兄としても男としても二つ返事でOKだ。すでに中出しセックスまでしているわけだし。……いかん思考がループしてる気がする。
「お兄ちゃんまだ寝ぼけてる?」
「いや起きてるよ、バキバキに」
「で、お兄ちゃん一緒に来るの? マユがお兄ちゃんにも会いたいんだって」
「……ああそっちね」
「どっち?」
夕月が怪訝そうな顔を向けてくる。
どうやらこれが、俺の予期していた面倒な頼み事だったようだ。
そして付き合ってとは一緒に付いてきてほしいという意味だ。アホみたいに古典的な誤解をしてしまった。妹のいうとおり俺は寝ぼけているらしい。
しかし、すぐに勘違いをしてしまうあたり、俺はつくづく妹をそういう存在として意識しすぎている。まったくどうしようもない色惚け兄だ。
「……てか、俺が付いてったら邪魔だろ」
「だからマユが会いたいって。お礼言いたいらしいよ。お土産も渡したいんだって」
「へぇ」
そういえば修学旅行で体調を崩した夕月を京都へ迎えに行ったとき、マユちゃんはすごく申し訳なさそうにしていた。自分が一緒にいながら気づけなくてごめんねと。俺に対しても夕月をよろしくお願いしますと言ってきた。
やっぱり妹はいい友だちを持ったと思う。
「じゃあ行こうかな」
「来るんだ」
「お前が誘ってきたんだろ」
「そーだけど」
なぜか釈然としないといった口ぶりの妹が分からない。釈然としないのはこっちなんだが……やはり年ごろの女の子の情緒は謎だ。
「じゃーシャワー浴びよ? お兄ちゃん早く食べて」
「待ち合わせ何時なんだ」
「モール前に11時」
「あんまり時間ないな」
無言で食事を終え、食器を洗い終える頃には9時半だった。モールまではバスに乗って20分くらいだから、余裕があるといえばある。無駄に時間を過ごさなければ。
急かされるように二人で洗面所へ行き、ささっと服を脱ぐ。
全裸になって振り返ると、こともあろうに夕月は服を着たままだった。
ん、と両手を伸ばして脱がしてのポーズをしている。
「あのなぁ」
「お兄ちゃん急いでー」
「はぁ……」
ため息をついてから、彼女の着ている俺のTシャツに手を掛ける。
「下からがいい」
「急ぐんだろ」
夕月はなぜか、いつも下半身から脱がしてほしいと言ってくる。だが今は無視だ。もう裾をつかんでしまった。
えいやと上に脱がすと、妹の白いおっぱいが現れぷるんと揺れた。
見事なお椀型のふくらみの先端で、桃色の可愛らしい乳首が立っている。いつ見ても目の毒だ。
ふわりと浮いた茶色髪が元に戻る前に、俺はしゃがみ込む。
彼女の穿いている俺のトランクスをずいっと下ろすと、なめらかな下腹部とぷっくりとした恥丘、そして一本筋の割れ目があらわになった。いつもながら目の毒どころの騒ぎではない。
急いでいる状況でなければ数秒は見入ってしまう。夕月の裸はあまりにエロすぎる。
目を逸らし、顔を上げる。
じっと俺を見下ろしている妹と目が合う。
(だからなんでそんな顔してんだよ)
彼女は頬を染め、少し恥ずかしそうで、それ以上に物欲しそうな表情で俺を見つめていた。
思わず見惚れてしまう。
夕月の上機嫌そうな口元がニンマリと弧を描いた。
「お兄ちゃんのえっちー」
彼女の楽しそうな視線が俺の股間あたりに注がれている。
気づけばギンギンに勃起したペニスが、腹に当たるほど反り返っていた。
「お前もぐっしょり濡れてんじゃん」
「え、言い方キモい」
「見たまんま言っただけだろ」
「じゃあ、私もえっち?」
妹が無邪気に聞いてくる。
……どうだろうな。
夕月はめちゃめちゃエロい。でもそれは俺から見た夕月がエロいんであって、そんなふうに思っている俺は間違いなくエロ兄だ。
だけど彼女自身がエロいというのは違う気がする。というか面と向かって妹に「お前はエッチだ」と言うのはすごく抵抗がある。
きっと俺は頭のどこかで妹には純粋無垢なままでいてほしいのだろう。
まったくもって身勝手な、兄のエゴだ。
「夕月はえっちじゃないよ」
立ち上がり、彼女の頬を軽くつまむ。
「そ?」
「ああ。……体は自分で洗えよ」
もう片方の頬もつまんで左右に引っ張る。ふにふにして柔らかい。不細工になった顔を見てクールダウンしようと思ったのだが、この妹はアホ面でも可愛いままだから困る。
「ほぁ」
キョトンとした顔で夕月がうなずく。
頬を引っ張られているというのに、その表情はどこか嬉しそうだった。
◇
いくら夕月がエロいからといって、風呂に入るたび襲っていたら発情した猿と一緒だ。
たまには純粋に可愛い妹と、幼い頃みたいにシャワーを浴びたい。
そもそも待ち合わせに遅れるわけにはいかないし、セックスなんてしている暇はない。
お互い体をさっと洗ってばばっと出よう。
浴室に入る前、俺はそう心に決めた。
だが土台無理な話だった。
「——あッ、んんっ、あっあッ、おにいちゃっ、おく、深いっ……あぁんッ」
シャワーの音に混じり、バチュバチュと忙しない抽送音が浴室に反響する。
鏡に手をついた夕月が顔を上げる。お湯にまみれた二つの乳毬がピストンのたび時間差で揺れ動く。俺は妹を後背位で犯していた。
——お互い順番に体を洗い流したまではよかった。
待ち合わせ場所のショッピングモールに新しいドーナツ屋ができたとか、お昼ご飯どうするかなんて和やかな会話をしていた。
それから妹にねだられて髪を洗ってやり、「いつもより雑ー」なんてぶーぶー文句を言われたりして、そこまではいつもの兄妹のやり取りだった。
振り向いた妹が「お返し」と言って俺の髪を雑に洗い始め、鼻先で形のいいおっぱいが揺れていて、洗い終えた彼女が不意に「まだ時間あるから手でヌいとく?」と勃起したペニスを優しく握ってきて。
俺も思わず「ああ」なんて返事をしてしまって。
彼女の器用さを舐めていたのだ。
単純にしごくのではなく、絶妙な力加減でいたわるように肉竿を揉み込んできて、細い指で亀頭をこすられ、敏感な裏筋も指で押され、そんな感じに愛情たっぷりみたいな手ヌキが始まった。
無自覚な上目遣いで「お兄ちゃん震えてる?」なんて言いながら俺の胸元にキスしてきて、トドメに「どうせなら中でヌく?」と聞かれた瞬間に俺はもうだめだった——。
「あっンッ、おにいちゃんっ、はげしっ……んっうッ、あぅっ——ッ」
まんまと乗せられた腹いせとばかりに激しく夕月の奥を突く。突き出された腰をつかみ、白いお尻に股間を叩きつける。
結局は俺もシたかっただけだというのに、やはり身勝手な兄だ。
具合のよすぎる膣内を掘削するように出し入れする。一突きごとに快感で腰が砕けそうだ。
パンパンと音を鳴らすたびにお湯と愛液が飛び散る。濡れてしっとりと垂れた茶色い髪先から水滴が飛ぶのも興奮する。
本能に駆られるまま腰の振りが加速していく。
「夕月、待ち合わせ何時だっけ」
「えっ……ん゛っぅッ、じゅう、いちじ」
「今、何時だ?」
夕月が揺すられながらも給湯パネルの時刻表示を探す。
「えっと、わかんなっ……んッ、じゅうじ」
「そろそろ風呂、上がんないとやばいな」
「ん、もう……出そ?」
「ああ、もう出る」
待ち合わせに遅れるわけにはいかない。そう無意識に急かされているせいか、ゾクゾクとした快感が上ってくる。
いつもより妹の膣中が気持ちよくてヤバい。このままでは間に合わないかもという焦りで快感が増幅されていく。すごくいけないことをしている気分だ。そんな状況にありえないほど興奮してしまう。
こんな背徳的な快楽があるなんて知らなかった。すごく変態ちっくだ。
多分妹も似たような快感に見舞われている。時刻を聞いてから膣の圧迫が強まり、ぐねぐねとペニスに絡みついてきている。俺たちはどうしようもない兄妹だ。
「……やば、ゴム」
「いい、取りにいく時間ないし」
「そう、だな」
「うん、お兄ちゃんっ……中、出して」
切実に求められ、体がカッと熱くなる。精巣から濁流がこみ上げてくる。
「ぐぅっ、うぅっ……!」
小尻をつかんで股間を押し付ける。その奥にビュルルと精液を流し込んだ。
「あぅッんうぅぅっ————ッッ」
夕月が顎を上向かせ、すぐ顔を伏せた。全身をビクビクと痙攣させ、鏡に伸びた腕が震えている。あまりの絶頂に身悶えているようだ。
妹の背中へ覆い被さって抱き締めると、細い体がさらに震えた。
重力で下を向いたおっぱいを鷲掴みにし、快楽を塗り込むように揉みしだく。震える背中に口を付けて汗やお湯を吸う。「んぅ」と喉奥で呻くのがたまらなくて、尿道からまた精子が放出されていく。
(くそ……止まんない)
膣内で肉棒がビュクビュクと脈動する。そのたびに気を失いそうなほどの絶頂が襲ってきた。焦燥感に煽られて体が必死に種付けをしようとしているらしい。それが本能的に分かる。
間違いなく、今までで一番気持ちのいいセックスだ。またそれを更新してしまった。
シャワーの音と、二人分の熱い吐息が浴室内を満たす。
結局俺たちは5分以上、快楽に震え続けていた。
◇
一人玄関に立ち、はぁとため息をつく。
さっきまで情事にふけっていた洗面所のほうを見る。
すっかりお風呂場がエッチなことをする場所として頭に——股間にインプットされてしまった気がする。
最近までは、妹とするのは俺の部屋のベッドだけだった。
他の場所でもスイッチが入るようになったら、ただ暮らしているだけでお互い万年発情猿になってしまう。それは非常にマズい。
年ごろの男女である前に俺たちは兄妹で、二人暮らしなのだ。
中出しをして賢者状態になった頭で反省する。
それにしても、玄関先で妹をかれこれ10分ほど待っているが一向にやってこない。
俺は廊下の先へ呼びかけた。
「夕月、もう出られるかー?」
「んー」
妹の部屋から焦ってるんだか焦ってないんだか分からない声が返ってくる。
「バスの時間ギリギリだぞー」
「ごめんお兄ちゃん、お待たせ」
外行きの格好をした彼女がゆったりとした足取りで歩いてきた。
もっと急げと言いたくなるが、やめる。
すまし顔の夕月のほっぺたが赤らんでいたからだ。吐息にも熱が滲んでいる。靴を履く動作も、どこか心ここにあらずといった感じだ。明らかにさっきの絶頂セックスの余韻だろう。
半分以上俺のせいでもあるので、怒るに怒れない。
外へ出ると、俺は妹に手を差し出した。
「少し急ぐからな」
ポカンと目を見開いた彼女が、やがて嬉しそうに小首をかしげる。
「うん」
花の咲いたような笑顔には、子どもの頃の面影があった。