洗面所に向かっていると『追い炊きを開始します』と機械音が聞こえた。
「夕月、追い炊きサンキューな」
「お兄ちゃんお湯溜めといてくれたんだね」
「お前が帰ってきたら入るかと思って」
「うん、ありがと」
夕月は鏡の前で、制服を着たままだった。ポニーテールが解かれ、肩にかかった茶色い髪をブラシでとかしていた。
少しがっかりしてから、下着姿のラッキースケベを期待していたことに気づく。つくづく俺は変態兄だ。
「てか、シャワー浴びんのにとかす必要あるんか?」
「お兄ちゃんと入るし、一応」
「そうか」
意味はよく分からないが適当な相槌を返しておく。年頃の妹の考えることなど、兄にはほとんど理解できなくて当たり前なのだ。
髪のほつれを整え終えた夕月が、こちらを向く。
「お兄ちゃん、脱がせて」
両手を広げ、期待のこもった視線を寄越してきた。
「おまっ、甘えすぎだろ」
「えぇ……だって昔はよく脱がしてくれたじゃん」
「それお前が幼稚園のときだろ」
いや、思い返せば夕月が小学校低学年くらいまで、俺が脱がせてやっていた気もする。とっくに自分で脱げるはずなのに、なぜか一緒に風呂に入るときにはこうして甘えてきたのだ。
そういえば、妹と一緒に風呂なんて数年ぶりだ。
「わかったよ、その代わり目閉じとけ」
「え、なんで」
「なんか見られながら脱がすのって恥ずかしいだろ」
「それって私のセリフじゃない?」
「いいから、じゃないとやってやんないぞ」
「ん……」
夕月が不服そうに目をつむる。
両手を広げたままの彼女のブラウスに手を伸ばし、ボタンを上から外していく。指がわずかに胸に触れ、柔らかさが伝わってくる。
ボタンを4つ外すと、ブラウスの隙間からベージュ色の布地が覗いた。夕月はブラの上にインナ―を着ているようだ。透けブラ対策だろう。そりゃそうかと一人納得する。
(というか……思った以上にエロいな……)
洗面所で、目を閉じた美少女の服を脱がしているという状況はすごく背徳的な感じがする。まだ目を開いてもらっていたほうがよかったかもしれない。
「お兄ちゃん、ちゃんと下まで外して」
「……ああ」
スカートにインされていたブラウスを引っ張り抜き、6個目まで全部外す。
「上脱がすから、腕下げて」
「ん」
ブラウスを左右に開き、下ろしていく。
下をなんども脱がしたことはあるが、上は初めてだ。夕月が制服の中に着ていたのはベージュ色のタンクトップで、細い肩や、白くて柔らかそうな二の腕が露出している。そして二つのふくらみがピッタリ張り付いた布地をこんもりと押し上げていた。
せっかく半勃起にまで治まっていた股間がぐぐっと屹立してしまう。紺色スカートにタンクトップ姿の破壊力がやばい。人形のような顔立ちと色っぽい体つきのギャップが――。
「お兄ちゃん?」
「すまん、ブラウスどうしようかと」
「適当に洗濯機のとこ置いといてくれればいいよ」
「わかった」
「脱がすの、スカートが先ね」
「へいへい」
動揺を悟られないようぶっきらぼうに返事をして、その場にしゃがみ込む。目の前のスカートに手を伸ばし、一瞬考えた末に、サイドにファスナーを見つけてそれを下ろしていく。最後にスカートを引っ張るとすんなりと床に落ちた。
眼前に、純白のパンツが現れる。繊細な刺繍が施してあり、いつも見ていたものより値が張りそうだ。薄い布地はぐっしょり濡れて、夕月の割れ目が透けていた。
つい、ゴクリと喉を鳴らしてしまう。
「なんかお兄ちゃん手慣れてない?」
「妹を持つ兄としては、こんくらいできて当然だろ」
「え、なにそれキモい……」
妹の心ない言葉で平静さを取り戻す。
俺は立ち上がると、タンクトップの裾をつかんだ。
「ほら、夕月バンザーイしな」
「ふふ、なんか子どものころ思い出すね」
「今もそう変わんないけどな」
「は?」
眉間にシワを寄せながらも、夕月が素直に両腕を上げる。
布地をまくり上げていくと胸元のところで引っかかる。ぐいっと一気に上げると、純白のブラジャーに包まれたおっぱいがぷるんと揺れた。思わず動きを止めてしまう。
(これが、夕月の……)
ブラジャーはパンツと同じく高そうで刺繍が花柄を形作っていた。部活をやっていないからか夕月の肌はブラジャーよりも白い。瑞々しくて健康的な白さだ。
汗のにじむ谷間に視線が吸い込まれていく。いつも服の上から揉んでいた乳房は、思った通り綺麗なお椀型だった。夕月自身が言っていたように、確かに巨乳ではない。でも決して小さくもない。いやむしろ同年代に比べると大きいほうではないだろうか。全体的に体つきが細いから、より乳房が強調されて見えるのかもしれない。
これが、試合中にあの男子たちが夢中になっていた夕月のおっぱい。多くの男子たちが妄想して抜いているだろう下着姿だ。
(……あいつらには、見せたくないな)
こうして夕月の体をまじまじ眺めるのは、初めてだ。セックスをするのは薄暗い部屋だったし、ジロジロ見ると抗議されるし、兄としての後ろめたさもあるので、見る機会も少なかった。
けど今は、夕月は目を閉じているので鑑賞し放題である。腕を上げているせいで、なめらかな腋の下も丸見えだ。
「ねぇ、なんでそこで止めてるの?」
「すまん、見惚れてた」
「……さすがにキモキモだよ、エロ
うっかり漏れた本音に、夕月は言葉のわりに優しいニュアンスでつぶやいた。
再び一気にまくり上げ、頭と腕先からすっとタンクトップを抜いた。
すると夕月は髪を手ぐしで直しながらくるりと背中を向ける。
「はい、下着も」
さすがに正面からブラとパンツを脱がされるのは恥ずかしいのだろう。
「へいへい」
「先にパンツからね」
「はいよ」
わざとため息まじりな返事をしながら、まずはパンツを下ろす。愛液が糸を引いたようが気がして股間が熱くなる。
白くて丸い桃尻があらわになる。きゅっと締まっているのは夕月が緊張して力を入れているからだろう。
次にブラジャーを外そうとして背中のホックを探す。だが見つからない。布地の中に指を入れたりして探ってみるも、やっぱり見つけ出せない。ブラを脱がすのってこんなに難易度高かったのか。
「なぁ夕月、このブラってパンツとセットだったりする?」
ごまかすように、さっきうっすら気づいたことを聞いてみる。
「お兄ちゃん気づくのおそい……そーだよ」
「噂の勝負下着ってやつか?」
「……別に、たまたま。可愛いから付けてるだけ」
夕月の声色が曇る。なんの気なしに聞いてみたのだが、妹を不機嫌にさせる話題だったようだ。
「確かに可愛いな」
「…………でしょ?」
声のトーンが高い。機嫌が直ったようでなによりだ。
「というかすまん、これホックどこにあるんだ?」
「これフロントホックだから」
「そうか」
なら早く言ってほしい。
背後から妹の胸元に手を回し、谷間の下あたりにあるホックを見つける。ピクっと夕月の肩が小さく震えた。
「そう、それずらすんだよ」
「できた」
ブラが左右に外れた瞬間、淡い乳輪とその真ん中でピンと立つ桃色の突起が見えた。
だが夕月はやんわりと腕で胸元をガードしてしまう。やっぱり胸を見られるのに抵抗があるらしい。
「お兄ちゃんって不器用だよね。ブラ外すのにすごい時間掛かってるし」
「ああでも、もう覚えた」
「練習になった? これで女の子とするとき恥かかなくて済むよ」
「する予定はまったくないけどな。今んとこ」
「ん、そっか」
夕月が肩からブラ紐を外す。後ろを向いたままブラジャーを適当に洗濯機の
「お兄ちゃん先入ってね」
「へいへい」
夕月と場所を入れ替わり、俺も適当に服を脱いでいく。
後ろから妹に見られていると思うと確かに恥ずかしい。よく夕月は耐えたものだ。
「前から思ってたけど、お兄ちゃんってけっこう筋肉あるよね」
「万年帰宅部なめんな。まあ前に引っ越しバイトしたとき、ちょっと鍛えられたんよ」
「あぁ、去年の夏休みね。たしかにあのときくらいから、お兄ちゃんふよふよ感なくなった気がする」
「そ」
さすがほぼ毎晩抱きついて寝ていただけあって、妹は兄の変化に敏感だ。
背中をぺちぺちと叩かれ、俺は急かされるように浴室に入った。続いて入ってきた夕月が胸を隠しながら風呂イスに座る。
「私、先に洗っちゃっていい?」
鏡越しに夕月が聞いてくる。
俺は床に膝立ちになりながら「おー」と返した。
キュ、と蛇口をひねる音がして、シャワーの水流が妹の体にかかる。
「つめた」
夕月が腕を伸ばしシャワーヘッドを俺のほうに向けた。
「うおっ」
「どう、あったかくなってきた?」
「ああ、もう温かいよ」
「んー」
気持ちよさそうにシャワーを浴びる妹をぼんやり眺める。艶めかしい背中にくびれた腰、そこから見事な丸みを見せるお尻に、否が応でも勃起してしまう。夕月の裸の後ろ姿がエロ過ぎる。
ハンドタオルを泡立てて体を洗っていく姿を見て、また少しがっかりする。そこで初めて妹とのヌルヌルプレイ的なものを期待していたことに気づき、心の中で自嘲した。
「お兄ちゃーん、髪――」
浴室に反響した声がそこで止まる。
「どうした?」
「シャンプー部屋に忘れてきちゃった。ちょっと取ってくる」
「え」
シャワーヘッドを俺に託すと、夕月は慌てて浴室を出ていった。
「新しく買ったのか?」
「これマユと同じやつ、教えてもらったんだー。シトラスの香りがするんだよ」
「シトラスって柑橘系の匂いだっけ」
「そうそう。髪がさらっさらになるんだって」
うきうきと嬉しそうな様子が可愛い。俺の前では基本ダウナーな感じの妹も、こういうところは普通の女の子なんだなとしみじみ思う。
「お前寝起きの髪すごいもんな」
「バカ
夕月は俺にシャンプーを押し付けると、こちらを向いて風呂イスに座った。「はい」と頭を差し出してくる。お兄ちゃん髪を洗えということだろう。
「へいへい」
シャンプーのビニールを剥がしていると、妹がボソリとつぶやく。
「お兄ちゃんの、さっきからずっと大きいよ」
下を向いた夕月の目の前に、ちょうど俺の勃起したペニスがあるのだろう。確かに茶色い前髪が亀頭をさらさらと撫でてくすぐったい。
「いやそこは見て見ぬフリしろよ」
「でも視界に入ると気になっちゃうじゃん」
「んなこと言われても、仕方ないだろ」
「先にヌいとく?」
「いや、いいよあとで」
唐突に誘ってくる夕月に、思わず肉棒がビクンと反応してしまう。だがするなら俺も体を洗ってからがいい。今おっぱじめたら確実に洗うどころじゃなくなる。
「てか目、閉じてろ。シャンプー目に入るぞ」
「へいへい」
俺の口癖を真似て夕月が返事をする。
そんな小生意気な妹の頭をポンポンと撫でてから、シャワーで髪を洗っていく。十分濡らしてからシャンプー液を手のひらに垂らし、こすってから妹の髪に当てた。
「ん……」
夕月が喉から発したような声を漏らす。
シャンプーを毛先と頭皮に塗り込みながら、俺は場をつなごうと会話を探した。
「てかお前、さっきすっぽんぽんのまま部屋まで取りに行ったのか?」
「え、うん、ささっと」
「なんか想像したら恥ずい光景だな」
「エロ
「万が一泥棒と出くわしたらどうすんだよ」
「そしたら叫んでお兄ちゃん呼ぶ。すぐ来てくれるでしょ?」
「ああ、すっぽんぽんでな」
「ぷふ」
「想像すんなよ」
「いやだって、全裸で登場するお兄ちゃんって、面白すぎでしょ」
「カチコチ全裸マン登場ッ、なんつってな」
「あぁ、うん」
「引くなよ……」
急につれなくなる妹にため息をつく。
(なんか懐かしいな、この感じ)
昔一緒に入っていたころ、よくこうして風呂場でくだらないことを言い合っていた。2時間くらい居座っても親は注意しに来なかったから、二人で気が済むまで盛り上がっていたっけ。
あの頃の夕月は俺が何を言っても笑ってくれて、それがすごく楽しかった。
そんなことを思い出しながら、髪の流れにそってシャンプーの泡を染み込ませていく。優しくマッサージするようにシャカシャカと小刻みに洗う。数年たったけど妹が好きな洗い方は変わっていないはずだ。
「んっ……お兄ちゃんって、髪洗うのほんとうまいよね」
「お前昔、気持ちいい~って漏らしたことあったよな」
「……だって気持ちよかったんだもん」
「また漏らすなよ」
「漏らさないけど、めっちゃ濡れてる」
だから冗談の途中でそういうことを不意に言うのやめろって。
「ほら、今度は上向いて」
「うん」
夕月はそうするのが当たり前のように、イスに座りながらくるりと背中を向けると、顎を上向かせた。俺の目の前に逆さになった美少女顔が差し出される。
(この光景、やばい……)
両腕をだらんと下げているせいで、夕月の生おっぱいが丸見えになっている。背中を仰け反っているせいで綺麗なお椀型の乳房がやや上向き、可愛らしいピンク色の乳首も斜め上に向いていた。
無防備な妹の生乳に、つい手が伸びそうになる。
だが、我慢だ。
俺は夕月に頼まれるまでは手を出さないと誓っている。どんなにさっきから夕月がエロくても、この誓いをそうやすやすと破りたくない。
妹がこうまで無防備なのは俺のことを信頼しているからだ。俺は兄として、妹に世界一の安心を与えなければならない。
こんな状況でも夕月を襲わない男は世界で俺だけだろう。そういう意味では、俺はやっぱり夕月のただ一人の兄なのだ。
「……小学生がショウガくせぇ」
「え、なにいきなり」
「カエルが学校から下校」
「ぷ、それダジャレ? あ……なんか懐かしいかも」
髪を洗いながら渾身のダジャレを放つ。この体勢で洗うとき妹はよく「泡が目に入りそう」と泣いていた。その恐怖を紛らわすために俺は、ガキながら一生懸命に考えたダジャレを披露していた。レパートリーはすぐ枯渇したが、それでも夕月は飽きもせず毎度笑ってくれたっけ。
「よし、シャワーで洗い流すぞ」
「うん」
お湯でシャンプーの泡を落としていると、夕月がふっと口を開いた。
「朝食がなくて超ショック。……どう?」
このわずかな時間に考えたのだろう。なかなかのセンスだ。
「その四天王なにしてんのう」
「それ懐かしい、お兄ちゃん考えたやつだよね」
泡をすべて流し終える。
夕月は昔と同じように楽しそうな笑みを浮かべていた。まるで心地よく浮かんでいるように見える。その顔は純真無垢な妹のものなのに、形のいい乳房や尖り立った乳首、乳首の色に似た唇から放たれる、この女の色香はなんなのだろう。
俺からは手を出さない。そう誓っているはずなのに。
「んッ……」
気づけば、俺は逆さになった夕月の唇にキスをしていた。
浴室の湿気のせいか、くっついた唇が溶け合うような感触だ。
軽く下唇を動かすと、彼女も応えるように下唇を震わせた。
「……すまん」
我に返り、謝罪を口にする。
夕月は目を閉じたまま、開いていた唇を引き結び、上と下の唇をゆっくりこすった。まるで、今のキスを確認するみたいに。
「すまん」
もう一度謝ると、夕月は小さいため息をついた。
「別に、あやまんなくていいのに」
「まあこれは、なんというか、兄として」
「ふーん……ぁ、お兄ちゃん、もしかして妹に堕ちちゃった?」
ドキリと、胸の奥を突かれた気がした。
だがこれは、きっと俺をからかっているだけだ。
「はいはい、オちたオちた」
「え、ほんと……?」
「……冗談だよ」
「そっか、だよねー」
少しの沈黙のあと、夕月は姿勢を正し、こちらを向いた。長いまつ毛がゆっくり開かれる。
「お兄ちゃん、シャンプーありがと」
ふんわりとほころんだ顔は、いつもの妹のものだった。
その笑顔に、なんでだか罪悪感を覚える。
「……で、どうなんだ、新しいシャンプーの感じは」
「うーん、なんかしっとり感が違う?」
夕月が難しい顔をして毛先をくるくるともてあそぶ。
「お兄ちゃんちょっと触ってみて」
「触ってわかるもんか?」
茶色い毛先に触れると、いつもよりサラサラ感も増してる気がする。
「あー、いつもと感じが違うかも」
「だよね」
急に嬉しそうに破顔した夕月が、髪をいじっている俺の手を覗き込んでくる。
「お兄ちゃんは、こっちのほうが好き?」
「まあ、好きかな」
「私も」
鼻先同士が当たり、目が合う。その茶色がかった瞳の中に、欲情した俺の顔が映っていた。
自然と唇が近づいていく。今度は俺からじゃない。互いに求め合う同意のキスだ。
「んっ……ん……ちゅ、ぅ、ンッ……」
唇のくっつく音が浴室に響く。舌を絡ませ合ったわけでもないのに、離れていく唇に銀糸のアーチがかかった。
その瞬間、夕月の体がブルリと震える。
「そろそろお湯入るか。もう温かくなっただろうし」
「いいよ、湯舟でしよ」
「のぼせないようにしないとな」
「じゃー、お湯の中では一回」
当然のように一回以上やるつもりの夕月が、たまらなくエロい。
「そう言ってもっともっとってせがんでくるなよ」
「そこはお兄ちゃんなんだから、止めてよ」
「へいへい」
了承のサインのような軽いキスをしてから、夕月はコンドームの箱に手を伸ばした。