手癖と目つきと口が悪い冒険者の盗賊が呪いで女の子にTSした結果エッチなことをされる話 作:うきつねこ
「やったぜ!……!?」
突然、ゴーレムの全身から紫色の煙が吹き出した。同時に、巨体は音もなく砂となって崩れ落ちる。俺は身長以上の高さから突然落下し、バランスを崩しかけたが、何とか着地した。しかし、その拍子に――ちくしょう、煙を吸い込んでしまった。
途端に両脚がふらつき、俺は地面に膝をつく。視界を紫の煙が覆い、意識が遠のいていく。
「シィフ、大丈夫か!?」
「いま回復します!」
「それより早く!『帰還の宝珠』を使うんじゃ!」
「…わかった」
仲間の声が聞こえる。そうだ。街まで一瞬で戻れる『帰還の宝珠』を使えば、どんな毒でも死にさえしなければ大丈夫なはずだ。
だが、身体に痛みが走り、力が入らない。尻餅をつきながら、歯を食いしばる。絶対に死ぬものか。死ななければ、街での治療が間に合うはず。そうであってくれ。霞む視界の中、砕ける『帰還の宝珠』の音が聞こえた。閃光が辺りを包み――俺の意識は、そこで途切れた。
……と思ったが。
直後、意識が急速に戻ってくる。身体の痛みも消え、頭もはっきりしていた。閃光が消えると、目の前には開けた草原が拡がり、風が頬をなでる。草の香りが鼻をくすぐった。どうやらダンジョンの外、『帰還の宝珠』の転移先である町外れに出たらしい。
しかし――何だったんだ、あの紫の煙は。今の俺には何の異常もない。これなら『帰還の宝珠』の無駄遣いじゃないか?
「あー、くそっ。最後の最後でしくじっちまったな」
座り混んだまま独り言をつぶやいた瞬間、妙な違和感が襲ってきた。
「あー、あー、あー。……あれ?なんだこれ」
声が変だ。喉がやられたのか?そう思って顔を上げると、パーティの皆が俺をじっと俺を見下ろしていた。
驚きに目を見開き、沈黙している。誰も何も言わない。
なんだ?どうしたんだ?
そう思っていると、沈黙を破ったのはセンシだった。
「あの、お前は……シィフ、なのか?」
「は?なにを当たり前のこと言って、けほっ」
思わず咳き込む。やはり煙で喉をやられたか。そう思い、喉がに手を当てようとして―――気づいた。
俺の手が、妙に、小さい!?
「おい、俺は、いま、どうなってる?おい!?」
「どうなってるって……それは、見た方が早いじゃろ。《水鏡》(ウォーターミラー)」
セージが魔法を唱えると、水面のような鏡が目の前に現われた。そこに映っていたのは――。
赤いフード付きの黒の外套。俺のトレードマークだ。しかし、それを着ているのは、サイズが合わず服に埋もれるようにしている、小柄な黒髪の少女だった。
彼女は、信じられないといった表情で、自分に向けた両手のひらを閉じたり開いたりしている。そして、その右頬には――俺と同じ古傷があった。
俺が震える手を胸元に持っていく。鏡の少女も同じ動きをする。するとささやかだが柔らかな感覚が手から伝わった。
まさか……まさか……まさか。
「おれ…これが、おれ!?」
「あー。本当にシィフなんだ。どう見ても女の子じゃないか。やっちゃったね」センシがぼやく。
「…なんということだ」タンクは顔に手をやった。
「ふむ、呪いの類じゃろうか。だとすると、専門外じゃな。ソーリョ、分かるか?」
「そうですね…私も、性別を変える呪いのことは聞いたことがありません。しかし、すぐに教会に行って対処した方がいいでしょう」
俺はただ呆然としながら仲間たちの声を聞いていた――。
***
「まあ、とりあえずさ。命に関わることじゃないって分かったのは良かったよね」
教会からの帰り道、センシはそう言いながら小さくなった俺の肩をぽんぽんと叩く。元の服がまったく合わなくなった俺は、とりあえず教会で借りた白い上着と膝下までのパンツを着ていた。センシは女とは思えないほどの体躯をしているが、それでも以前の俺は背丈だけは勝っていた。だが、今の俺は頭一つ以上彼女より小さい。それだからか、いつもなら遠慮のない肩たたきも、どこか加減されているように感じた。
俺はあの後、センシとソーリョと共に街の教会へ向かい、解呪のエキスパートである神官に診て貰った。結果は――
「大変珍しい状態で、呪いの類いかどうかも分かりません。明日、詳しく調べるので再度来てください」
ただし、こうも言われた。
「命に関わるような兆候は見られませんので、ひとまず安心してください」
命に別状はない――それは確かに良かった。だが、問題はそこじゃない。
もしすぐに元に戻らなかったらどうする?
この身体、手足は短いし、筋力も落ちている。それよりも何よりも、俺の武器であるナイフは扱えるのか?鍵開けはできるのか?そもそも、冒険者としてやっていけるのか?
やれなかったら、明日からどうする?もしずっとこのままだったら、俺の人生は…?
教会を出てから、頭の中で様々な考えがぐるぐると渦巻いていた。
「大変だと思うけど、アタシたちに頼ってくれていいんだよ?」
センシが、そんな俺の様子を察したのか、気遣うように言いながらまた俺の肩を叩く。
「大丈夫。神様は誰も見捨てることはありませんよ、シィフさん」
ソーリョもにっこりと微笑みながら、穏やかな声で言った。
「どうだかねえ。俺みたいな盗賊に、本当に神が目をかけてくれんのかよ」
わざとぶっきらぼうに言ったつもりだったが、今の姿では、ただ少女がすねているようにしか聞こえなかったかもしれない。
「ええと……まあ、多分、きっと神様は大丈夫です」
少し考え込む素振りをしてから答えるソーリョ。
「いや、そこは即答してくれないのか、神様は」
センシが笑いながら言う。
「確かにお前は、手癖も悪いし、目つきも悪いし、人の名前で勝手に酒代をツケるし、ソーリョをいやらしい目で見るし、笑い顔も気持ち悪いけどね。でも、ソーリョの信じてる神様はそういうのを差別しないんだよね?」
「はあ?酒代はちゃんと返しただろ。あと俺は気持ち悪くねえぞ。ニヒルでかっこいいって言われてるんだ。なに言いやがる、この脳筋女が」
「ソーリョをいやらしい目で見てるのは否定しないんだね」
「そりゃあ、ナイスバディな子が同じパーティにいたら男なら目が行くもんだろ。セージやタンクだってそうだと思うぜ」
「……最低ですね。今の発言で、神様は貴方をお見捨てになったかもしれません」
大げさなため息をつきながら言うソーリョ。
「そんなぁ……勘弁してくれよぉ」
そんな軽口を叩きながら歩いていると、向こうからタンクとセージの姿が見えた。センシが大きく手を振る。俺たちが教会に行っている間に、彼らは発見したお宝の鑑定をしに行っていたのだ。
「お前たちがいなかったので今日はとりあえず見積りだけもらったが――期待以上じゃった。二つ合わせて『これ』くらいじゃと」
セージが指で示した数は俺の予想を超えていた。頭数で割っても二、三ヶ月分の稼ぎにはなるだろう。
「本当に!?最高じゃない?」
センシが嬉しそうに言う。
「……シィフの方は?」
タンクが少し眉をひそめながら尋ねる。普段は無骨な鎧姿だが、町中で兜を外していると意外と優男に見えるんだよな。
「俺の身体のことか?神官様は明日にならないと分からないってさ」
だが、周囲に気を遣わせるのはもう十分だ。俺は声を張り上げる。
「そんなことより、今日は祝杯だ!行こうぜ!」
そう言って酒場へ向かって歩き出す。
――明日のことは、明日考えよう!