手癖と目つきと口が悪い冒険者の盗賊が呪いで女の子にTSした結果エッチなことをされる話 作:うきつねこ
あれから二ヶ月が経った。
ここ二、三日は依頼も探索もなく、俺たちのパーティはそれぞれ自由行動をしていた。俺はといえば、特にやることもないのでぶらぶらした後、いつもの酒場のカウンターで安酒を飲んでいた。
ふと、カウンター横の姿見に目をやる。そこに映っているのは、相変わらずの少女だった。黒髪を肩までで切りそろえた彼女の顔は、こんな冒険者やごろつきが出入りする酒場には似つかわしくない。しかし、彼女が羽織る赤いフード付きの真っ黒な外套はその印象を覆すように異質な雰囲気を醸し出している。男だった頃に俺が着ていたものを仕立て直したものだが、これを羽織っていないと、一人で飲んでいるときにナンパされたりして面倒なのだ。
ため息をつき、また酒をあおる。今のところ女の身体でも冒険者としての活動にはほとんど支障がない。それにまあ、ほんの時々だが、ソーリョと……その、女の身体を楽しむこともある。
だが一方で、元に戻る手がかりはほとんど見つかっていなかった。
俺を女に変えたゴーレムは、頭部に赤い光を発する器官があったが、セージ爺さんの調査によると「赤い一つ目のゴーレム」というのが古代ゴーレムの特徴らしい。それを見つければ何か手がかりがあるかもしれない。
だが、それらしい魔物の話は全く聞かない。
そんなわけで俺もさすがに少し焦りを覚えるようになっていた。
もちろん俺は俺だ。「男じゃなければ俺じゃない」とまでは別に思っていない。
しかし――最初は朝起きるたびに違和感を覚えていたこの身体に、今ではすっかり慣れてしまっている。
食べ物の好みが変わり、甘い物が好きになった。ソーリョがうるさく言うので、男の頃には無頓着だった服装や髪型を気にするようにもなった。
一つ一つは大したことではない。だが、このまま変わり続けていったら、俺は俺でなくなってしまうのではないか。それで、本当に大丈夫なのか――。
そんな不安が、ずっと頭の片隅にこびりついて離れない。
いや、そもそもこんなことでぐずぐず悩むこと自体が「女々しい」って話で、それも身体の影響じゃないのか。
そんなことを考えていると、気分が晴れない。それを紛らわすように酒を飲んでいると――。
「よう、シィフも今日は一人?」
声に顔を上げると、見慣れた顔があった。
パーティメンバーのセンシが断りもせず隣に座る。
コイツはもともとガサツな奴だからか、俺が女になっても態度を変えないのはありがたい。
しかし、今日はお前も休みじゃないのか?いつも探索のときと同じ、脚と腕を丸出しの鎧を着てるのかよ。
そんなことを思いながら、俺たちはしばらく酒を酌み交わした。
センシが手元のグラスを傾けながら、不意に切り出す。
「男どもの前で言うのはどうかと思ったから黙ってたけどさ、シィフあんた…ソーリョといつからやってるの?」
思わず、酒を吹き出しそうになる。
「は、はぁ!?お、お前何を言って――」
「悪いけど、見ちゃったんだ。この前、ソーリョの部屋でしてるところを」
――げ。
「……やってたら悪いのかよ?」
「いや、別にいいけど。で、いつからしてたの?」
「いやその」
「いつから?」
ずいっと顔を寄せてくるセンシ。俺は観念した。
「この前の祝杯のとき、俺、倒れただろ?あの後、部屋でソーリョがその、誘ってきて」
「祝杯……って女になった当日じゃないか!?さすがにシィフ、それは早すぎない?」
その点については、ぐうの音も出なかった。
「しかもその後も、シィフはことあるごとに『女の身体はやりづらくて仕方ねえ』とか『股間のモノが戻ってこないと調子が出ねえな』とか言ってたけど、あれはどういうことさ」
「まあ、それはだな……」
「パーティ内でそういう関係になるのは構わないけどさ。最近なんか髪や服装も女っぽくなってきてないか?男に戻りたくなくなったの?」
センシがからかうように言う。まあ、いつもの軽口だ。酔っているし、大した悪気もないのは分かっている。こいつがそういう奴だというのも知っている。
だが、さっきから一人でモヤモヤと考えていた俺は、つい声を荒らげてしまった。
「あのなあ!俺だって、本気で悩んでんだぜ」
「え?」
「俺だって、女のままでいいなんて思ってねえ!でも、時間が経つにつれて勝手に身体が慣れてきちまって……。だから、別に口だけで『男に戻りたい』なんて嘘をついてるわけじゃねえ。でも、そうでも言ってないと、身体に流されて、どうなるか分かんなくて、怖いんだよ。男らしくないか?女々しいと思うか?悪かったな。でも、それが本当のところなんだ」
そう言い終え、酒をあおる。下を向いて、つぶやいた。
「……一人にしてくれねえか」
隣で席を立つ音。
センシが何かをつぶやいたが、よく聞き取れなかった。
***
明くる日も特に用事がなかった俺は、ぶらぶらした後夕方から冒険者ギルド(一応、俺も所属している)に顔を出し、隅の方のテーブルで新人の冒険者相手にイカサマコイン賭博をして暇をつぶしていた。
テーブルの向こうの赤髪の新人君が両手を合わせて俺に懇願する。
「くそっ!もう一回!もう一回お願いします!」
今やっているのは、「逆さにした2つのカップのうち1つにコインを入れ、素早く動かした後でコインの入ったカップを当てる」という賭博。しかし、実際には最初にコインを入れるふりをするだけで、どちらのカップにもコインは入っていない。そして、相手が選んだカップとは逆のカップに、俺が後で素早くコインを入れる。だから絶対に当たるわけがない。
まあ、こんなものにホイホイ騙されるようでは、冒険者失格だ。にしても、新人君、熱くなってないでそろそろ気づいてくれよ。どんどん勉強料が高くなっちまうぞ。
少しうんざりしながらそんなことを思っていたら、表通りのほうがざわついているのが聞こえた。ちょうどいい。「じゃあまた今度な」と新人君に声をかけて席を立ち、表に出る。すると、担架を運んでいく冒険者ギルドの腕章をつけた男たちの姿があった。
「道を空けてくれ!」
ギルドの救護隊。依頼中に大怪我をした奴を運んでいるのだ。それ自体は珍しいことではない。だが、運ばれる負傷者に目をやると、そこにいたのは、センシだった。
思わず大声が出る。
「センシ!?おい、どうしたんだよ、おい!」
センシは俺に気づくと、目だけをこちらに向けた。身体を動かすのは億劫な様子だ。
「ちょっと、やっちまってね」
柄にもなく弱々しい声だった。
「お前らしくもない、何があった?」
「まあ、ちょっとな、大丈夫だ」
そう言いながら、センシはギルドの医療施設へと運ばれていった。ここまで来ればギルドのヒーラーもいるし、大事には至らないだろう。しかし、危険だったことに変わりはない。なんでこんなことに?
「あんた、あいつの知り合いか?俺は彼女と一緒だったんだが」
大弓を背負った冒険者が話しかけてきた。
「ああ。……で、なんであいつは大怪我をしたんだ?」
「ギルドで受けた魔物の討伐依頼に出発する直前、打ち合わせを仲間としていたら、いきなり彼女が同行したいと言い出してな。そのまま一緒に行ったんだ」
「なんでそんな……」
「魔物は、彼女を含めた四人がかりでもなかなか手強くてな。日も落ちてきたので帰ろうと思ったんだが、彼女が何としても倒すと言って聞かなくてさ。それで頑張ってあと一歩のところまで行ったんだが、結局逃げられちまった。彼女は深追いして、ああなった」
「そうか……」
「知り合いなら、彼女に言っといてくれ。『勇敢なのはいいがもう少し命を大事にしろ』ってな」
「……ああ、分かったよ。ところで」
俺はどうしても気になっていたことを聞いた。
「その相手はどんな魔物だったんだ?」
***
その夜、俺はセンシの宿を訪れた。部屋のドアを叩いて声をかける。
「入っていいか?」
「シィフか、いいよ」
扉を開けると、彼女は窓際のベッドから上半身を起こした。近づいて顔をのぞき込むと、顔色は悪くなさそうだ。
「もう大丈夫なのか?」
「ヒーラーに回復してもらったからな。大丈夫だ」
普通に話せるようだ。ならば、彼女に聞いておきたいことがあった。
「お前の同行者から聞いたんだが、『赤い目の単眼の魔獣』の討伐に行って、やられたんだってな。……それって」
「ああ、古代ゴーレムかなと思って。まあ、最後に追い詰めて近くで見たら、違ったけどね」
やっぱり。
「なんでわざわざそんなことを」
「たいしたことじゃない。たまたま、お前の身体の件に関係ありそうな依頼の話をギルドで聞いただけさ」
フッと笑うセンシ。
――いや。休みの日にすぐ依頼に行ける装備を揃えて、たまたまギルドにいた、なんてことはねえだろ。……そういえば昨日も、こいつは鎧装備だったな。もしかして、いつもなのか?だとしたら。
「……すまん。いや、ありがとう」
ベッドの横に膝をつき、彼女に頭を下げた。
「たいしたことじゃないよ。お前に男に戻ってもらって、酒を飲みながらあのでかい図体の背中をぶっ叩いてやりたいんだよ。こんな小さくちゃ叩きがいがないだろ?」
センシはベッドの上から俺の肩に手をのせる。
「……ありがとう」もう一度言った。
「はぁ?柄でもないだろ、やめろって。アタシが自分のためにやってるんだから」
センシが微笑む。本当に、俺には過ぎた仲間だな、彼女は。
……と、その時、突然センシの笑顔が歪む。