※この作品はR-18です。

フウリンザキヴォトス   作:一般通過ゲマトリア

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「……なぜ、服を着ていないのですか」

 

開口一番、リンがワカモを睨みつけながら疑問を口にする。

 

’ちょっと汚しちゃって……それよりほら、ワカモちゃん?’

 

先生に促されたワカモは、リンの前に歩み出ると深く頭を下げた。バスタオル一枚の恰好で。

 

「手荒い真似をしてしまい申し訳ありませんでした」

「馬鹿にしていますか?」

 

なおも頭を下げ続けるワカモを見て、リンがため息を吐く。

 

「はぁ……まあ、いいです。先生、こちらを」

 

差し出されたのはシッテムの箱。

 

’ああ、お帰りアロナちゃん’

 

早速電源を入れると画面に映し出されたのは例の教室、と床に座り込んだ姿勢のままこちらを見つめるアロナ。

 

「……せ、せんせい?」

’え、えと、うん。その、アロナちゃん、元気にして……た?’

「ぜぇんぜぇえぇええええええええええ!!!!」

 

アロナがものすごい勢いで立ち上がり、こちらへ走ってくる……そのままビタン!!と画面にへばりついた。大きな瞳からはボロボロと涙が零れ、鼻水が垂れるのもお構いなしである。

 

「おっ、起きたら! 先生いないしっ!! 私の身体も繋がらないし!! ぜんぶ、ぜんぶ夢だったんじゃないかって! ぐすっ、うわぁぁあぁあああああん!!!!」

’ご、ごめんごめん!! ちょっと忙しくてさ! ごめんね、怖かったよね?’

「わぁあぁああああああん!!!! ごわかったですうぅぅううううう!!!!」

’おー、よしよーし、大丈夫だから、先生いるからねーー’

 

「あの、先生……いったい誰と会話を?」

’あー、ごめんごめん、紹介するね。こちらアロナちゃん、このシッテムの箱のメインOSなんだって。アロナちゃん、この子はリンちゃん。連邦生徒会の偉い人なんだ’

「うぅ?」

 

そういってリンに画面を見せると、彼女は一瞬何かに驚いたかのように目を見開いた。やっぱりキヴォトスでもこういうのは珍しいのだろうか。

 

「……OS、そう、ですか。……んんっ、先生、その様子だとやはりシッテムの箱が起動できることはご存じだったのですね」

’いやぁ、もっと早く言うつもりだったんだけど、ちょっとタイミングが……’

「わかっています。私たちは現在の状況について早急に確認しなければいけません。特に原因不明の【時間遡行現象】とでも言いましょうか、これに関しては原因の究明および対策が急務です」

’うーん、原因かぁ……’

「現時点で判明している情報は二つ、時間遡行で戻される時間は2月4日の午前9時付近で、先生の知覚している限りこの現象は既に2度発生しているということです」

’なるほど’

「問題は、この現象がいつ、どういった条件で発生するのか、そして時間遡行発生時に記憶を失わないためには何が必要なのか、ということです」

「幸いここには、両方の時間遡行を知覚した先生と、2度目の時間遡行のみを知覚した私がいます。条件の絞り込みは難しくないかと」

’うんうん’

「ちゃんと聞いていますか?」

’もちろん’

 

リンが訝しげにこちらを見つめているが、話を聞いていないように見えただろうか?正直話の内容を理解するのに一杯一杯で碌に発言できなかったのは違いないが。

 

’時間遡行が発生するタイミングについては……確証がないんだけど、たぶん午前4時のような気がしてる’

「? ずいぶんとピンポイントですね、何か根拠が?」

’……’

’怒らないで聞いてほしいんだけど’

「怒られるようなことをしたんですね」

’うっ’

 

それからあの夜、【笛吹き】にあった時のことを説明した。多少端折(はしょ)ったが最低限必要なことは伝えたのでいいだろう。

 

「……はぁ」

 

リンが頭を抱える。

 

「いえ、理解します。先生にも考えがあったのですよね、それについて深く聞かない判断をしたのも私でしたから」

「なにはともあれ、確かにその人物の言うことはこの現象と無関係ではないように思います。言葉を借りるのであれば【ターニングポイント】。これは午前4時と仮定してよいでしょう」

 

リンがちらっと時計に目をやる。現在時刻21時49分、ターニングポイントまで約6時間。

 

「最初のターニングポイントまであまり時間がありませんね……」

「時間遡行の発生条件について考えましょう。先生のお話通りであれば、前々回は1日目、前回は2日目の深夜に時間遡行が発生しているはずです。そうとなれば、前々回と前回の差異について考えるのが妥当でしょう」

 

’前々回か……そんなに細かく覚えてないんだけど……そうだね、まずリンちゃんに会って、キヴォトスのことを教えてもらって、ユウカちゃんたちと一緒にシャーレに向かって……ああ、この時はワカモちゃんと戦ったんだった’

(そういえばさっきから一言も喋らないな)

 

チラッとワカモの様子を窺う。バスタオル一枚で微動だにせず突っ立っていた。先生を凝視して。

 

’……寒くない? 寒いよね?’

「御心配には及びません♡ ですが、あなた様からそのようなお言葉をかけて頂けるなんて、このワカモ、感激です♡♡」

’いや、そうは言うけどさ……この話結構時間かかっちゃいそうだから仮眠室で休んでおいでよ’

「そんな! 悲しいことを言わないでください……私はあなた様のお傍にいられるのが一番幸せなんです!」

 

むにゅん。ワカモがしがみついてきたことにより先生の腕が二つの柔らかい感触に包まれる。

 

’おおっほ♡♡’

「先生?」

 

リンに睨まれる。

 

’こほん、どこまで話したっけ、そうそうそれでシャーレの地下室に行ったらワカモちゃんがいて……そういえばあの時は何事もなく向こうから引いてくれたんだよな……なんでだろ?’

(まあ、今ここにいるワカモちゃんに聞いても無駄……)

’あれ、ワカモちゃんって俺と会ったのは今日が初めてだよね?’

「? はい、そうですが……もしや以前にお会いして!? そん――」

’ああいや違う違う、ちょっと気になっただけだから、混乱させてごめんね’

’……で、その後はシッテムの箱が起動できなくて、リンちゃんたちと別れた後は……あっ’

「何か思い当たることでも?」

’い、あ、いや、なんかあの時は寝つきが悪くて……’

「……? 先生、この状況で隠し事をするのはやめてください」

’いやぁ、そのぉ……’

「はぁ、そこまで言いたくないのであれば……いえ、待ってください」

 

(そう、今思えばあの時の先生は明らかに様子がおかしかった。私が記憶している先生との初対面時、あの時の先生は完全に理性を失っていた)

(そして先生にとってその直前となるのは前々回の深夜のはず……やはりここを見逃すわけにはいかない)

 

「先生、話してください。恐らく先生の隠しているそれが今回の鍵です」

’ぐぅう’

「……先程から聞いていればあなたは何様ですか! この方がこうまで――」

’待て待て待て!! わかった話すよ! リンちゃんもワカモちゃんもごめん’

「いえ、ご決断いただき感謝します」

「あなた様……」

 

息を深く吸って、吐いて、心を落ち着かせ、覚悟を決めて口を開く。

 

’…………オナニーをしてたんだ’

 

「……はい?」

 

’オナニーをしてましたぁ!!’

 

「……??」

 

’いや、だからオナニーだよ! オナニー! 自慰行為って言えばわかるかなぁっ!?’

 

「先生、申し訳ございませんが寡聞(かぶん)にして存じ上げません」

’あーー!! キヴォトスってほんともうっ!!’

’性欲がね? 溜まるでしょ? 発散しなくちゃいけないからさ、自分で処理するわけ’

「……??」

’マジかよ、ワカモちゃんは? アロナちゃんは?’

「申し訳ございません……あなた様」

「ごめんなさい……」

’おいどっから説明すればいいんだよ保健体育0点か!?’

「すみません、先生、落ち着いてください」

’くっ……! ……ふぅ’

 

目を閉じて、深呼吸をして心を落ち着ける。先生は目を開くと腕を組み口を開いた。

 

’よし分かった、今から保健体育の授業だ!!’

 

To Be Continued…

 




お世話になっております。

お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが
度々過去投稿文のお話について改稿を実施しています。
大きくお話の流れが変わるような修正はありませんが、
言葉の意味合いが変わったりするようなものは今後活動報告に残します。
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