01
深夜3時。1日目のターニングポイントを目前に、確認が済んでいなかったことについて先生が口を開く。
’まだちょっと時間があるけど、もしもターニングポイントを越えられないと俺たちは今日……もう昨日か、昨日の朝に戻ることになる’
’俺とリンちゃんはその時点で同じ場所にいるし、アロナちゃんはシャーレの地下室で回収できる’
’問題はワカモちゃんだ。あの時間だと既にワカモちゃんは脱獄した後、可能であれば脱獄自体をしないで欲しいけど過ぎちゃったものは仕方ない’
’だからもしも時間が巻き戻ったら、ワカモちゃんはなるべく周囲に被害を出さずに投降して欲しい。そうしたら俺たちが迎えに行けるはずだから。だよね? リンちゃん’
「そうですね、ヴァルキューレに捕まると少々面倒ですが……事前にシャーレから通告を出しておけば何とかなるでしょう」
「連邦生徒会側も防衛室に話を通す必要がありますが、そちらも私が対応します。くれぐれも、被害は最小限に抑えてください」
「ふふ、かしこまりました」
いずれもワカモが記憶を失わないことが前提条件とはなるものの、予定を立てておくに越したことはない。
「ただ問題なのは、この中の誰か一人でも記憶を引き継げなかった場合です」
’……そうか、確かに記憶を引き継ぐ条件が明確でない以上、俺やリンちゃんだって記憶を失わないとは限らない……’
「はい。どちらにしろ時間は
’そうだね、正直な話ターニングポイントを超える条件が
考えたところで今から打てる手は無いように思える。であればもっと先の話をするのがベターだろう。
’よし分かった、今はこれ以上考えても仕方ないね。話は変わるけどアロナちゃん、例のリストを出してもらえる?’
「お任せください!!」
アロナの手の動きに合わせて、シッテムの箱に前に見たリストが表示される。
’リンちゃん、これを見て欲しい’
「サンクトゥムタワー制御機能……! 先生、これはもしや?」
’恐らくね。俺たちが最優先で解決しなくちゃいけないのはサンクトゥムタワーの行政制御権。きっとこの機能が解放できればその辺りは解決すると見ていいと思う’
「解放できれば……ということはできないのですか?」
’うん、それが解放するためには条件がいるみたいで……’
「先生! そのことなんですが、こちらを見てください!!」
突然アロナが大きな声でそう言うと、シッテムの箱の画面右上に青い宝石のアイコンとともに【17】という数字が表示された。
「いつの間にか精輝石が17個ほどに増えていました! これならそちらの機能を解放できそうです!!」
’えっ!?’
前回確認したときは3個しか無かったものが今は17個、増え過ぎである。
’アロナちゃん、なんで増えたかっていうのは……’
「すみません……私もさっき確認したので」
’そっか、でもありがとう! それならなんとかなりそうだね!’
「先生、それはつまり……条件を満たしているということでしょうか?」
’うん、前回確認したときに必要だったのは10個だったから……アロナちゃん、お願いできる?’
「はい! いきますよ~~!! サンクトゥムタワー制御機能、解放!!」
アロナが元気に声をあげるが、特段何かが変わったようにも見えなかった。シーンとした空気が周囲を満たす。
’ど、どう?’
「むむむ…………!! はい! いけました!! 制御権を獲得、現在サンクトゥムタワーは私アロナの統制下にあります!!」
「今のキヴォトスは、先生の支配下にあるも同然です!」
’ほんと!? 流石アロナちゃん!!’
「ふふーん♪」
アロナが誇らしげに胸を張ると、小振りなおっぱいがぷるんと揺れる。鼻の下が伸びそうになるのを抑えてリンに声をかける。
’ところでリンちゃん、この後はどうすれば?’
「本来は連邦生徒会の各行政委員会が処理することになっています。ですが、シッテムの箱のサンクトゥムタワー制御機能は先生以外にも使用可能なのでしょうか?」
「それは厳しいと思います……あくまでもサンクトゥムタワー制御機能はシッテムの箱の機能の一部ということになりますが、これらの機能は先生がシッテムの箱を使用する前提でしか動作しないので……」
「うーん、調べてみましたがやっぱり駄目みたいですね……あ、こんなのがありますがどうでしょうか?」
アロナがリストの中から一つの項目をピックアップする。
’【行政制御端末設置】……? 確かにそれっぽい名前だね’
「サンクトゥムタワー制御機能を解放するのと同時に条件を達成したみたいなので、精輝石を5個消費すれば今すぐにでも設置できますよ!」
「なるほど、先生、お願いできますか?」
’そうだね、どのみち必要になりそうだしやっちゃおうか。お願いアロナちゃん’
アロナは頷くとなにかを操作すると、次の瞬間、先生のデスクの隣に青い光の柱が出現した。光の柱はしばらく明滅を繰り返すと次第に小さくなっていき、その後には白く無機質なデザインの演説台?のようなものが鎮座していた。リンがすぐさまそれに近寄り表面に手を触れると、どうやら上面が画面になっているようで、青白い光がリンを照らした。
「ええ、確かに操作できそうです。表示されている内容を見ても目的のもので間違いないかと」
’そっか!! よかった、これで何とかなるかな?’
「はい。しかし、これは連邦生徒会には設置できませんよね? 台数も一台のみとなると……業務プロセスの見直しが必要ですね」
リンはそのまま俯いて考えこんでしまう。
そのとき、ピロリン!とどこかで聞いた覚えのある電子音が聞こえる。同時にシッテムの箱が強い光を発し、そこから伸びた光の束が近くの床に何かを形作り始める。その輪郭は次第に人型を象っていき、発行が収まるとそこには、すやすやと寝息を立てるアロナが現れた。
「あ、あ~~~~~!!!! 私の身体!!」
アロナが叫ぶや否や、いそいそと近くの椅子に座り机に伏した。直後、寝息を立てていた【外のアロナ】がぱちりと目を開ける。
「よかった! ちゃんと動きます!!」
「こ、これはいったい……」
先生がちらっと時計に目をやると、納得したように頷く。
’なるほど、ターニングポイントを越えたみたいだ’
To Be Continued…
予定は未定なので今日でも許されますね。
書き溜め期間ではありますが、
それはそれとしてちまちま更新することにしました。