笛吹きが帰った後、先生は改めてシッテムの箱の機能リスト、笛吹きが言うにはカタログに目を通していた。彼の言っていた通り、以前より項目が減っていることは分かるのだが、どんな項目があったのかをさっぱり思い出せない。
’うーん……’
(モモトーク、名簿、クラフトチェンバー……? それにアロナちゃんの着せ替え機能と、どこでもシッテム機能っていうのも気になるな)
幸い要求される精輝石が少ないものが殆どなので順次開放していけばいいだろう。しかし中には妙にコストが高い項目もあり……
(【保育エリア開放】……正直一番気になるけど、50個かぁ……)
流石に50個は多すぎる、しばらくはお預けだろう。ちなみに精輝石20個消費で【おしおき部屋設置】というのもある。解放条件は【七囚人の生徒に膣内射精済み】、恐らくワカモのことだとは思うが七囚人とはどういったものなのだろうか、というか何をおしおきするのか。
(今日はもうセックスはしないとして……あ、そうだ)
すっかり忘れていた、現在シャーレには布団が足りないのだ。
’リンちゃん、布団って用意できたりしないかな’
「……ああ、忘れていました、そうですね、手配します」
’え、できるの?’
「はい、連邦生徒会にある予備品を持ってきてもらいましょう。先生のお陰でインフラの復旧も大方終わりましたので、すぐに届くかと」
’ありがとう! それじゃあ、お願いするね’
思ったよりすぐに問題が片付いたので少々手持ち無沙汰になる。
’そういえばリンちゃんってさ’
「はい?」
’家には帰らなくていいの? 緊急事態はひとまず落ち着いたんでしょ?’
「家……というと、寮のことでしょうか。現状行政制御を行える場所がここしかありませんので、基本的にはこちらに身を置かせて頂く予定ですが……問題でしたか?」
’え、いや、全然いいんだけど、てかリンちゃんて寮住みなんだ’
「私がというより、生徒は基本的にそういうものではありませんか?」
’そうなの? へえ、家族とかと離れて寂しくなったりしない?’
「?? 私に姉妹はいませんが……」
いまいちピンときていない様子のリン、どこか話がかみ合っていないように感じながらも先生は会話を続ける。
’いや、ご両親とか’
「……りょうしん、ですか?」
これまたリンの訝しげな表情、ここに至ってようやく先生は気付いた。
(そうだ、ワカモちゃんは妊娠や出産といった概念を知らなかった……そもそも、そういった行為が存在しないのなら、彼女たちには親子という概念が無い?)
’ご、ごめん、今更なんだけど、キヴォトスの人ってどうやって生まれてくるの?’
「うまれる……? 先生、生徒は動物のように産まれたりしませんよ」
(なん…だと…)
リンの口から当然のように告げられた驚愕の真実。驚いて固まった先生をリンが訝しげな表情で見ている。
’そ、そうだったんだ、先生がいたところでは、人間も親から産まれてくるものだったから、てっきり……’
「そうなのですか? 驚きました、ということは先生も?」
’うん、普通に母親のお腹から産まれたはずだけど、記憶が無いからなぁ……’
そこまで言ってふと思い出す、シッテムの箱の機能解放条件のうち、既に達成済みのあの項目。
(え、じゃあ、受精済みってなに? いったい何が起こるの??)
「記憶が……そうだったのですね。言われてみれば名前を聞いたこともありませんでしたが、それも?」
’うん、外の常識とかは覚えてるんだけど、自分のことは何にもわからないんだよね’
「そうでしたか……だというのにここまでのご協力を頂いたこと、感謝します」
’いやいや、むしろできることがあって助かったよ。そういえば、これからのシャーレって何をすればいいの?’
「これからですか? 特に決まりはありませんので、先生の好きなことをして頂ければ……」
リンは少しだけ考えるそぶりを見せる。
「もし連邦生徒会にご協力いただけるということであれば、他の学園自治区で発生しているのトラブルを解決して頂けたら助かります。連邦生徒会長を失った連邦生徒会にそこまでの余力はありませんから」
’ああ、行方不明だったっけ、何ならその人を探すのもありかもね’
「……ええ、もし見つけたらどんな手を使ってでも連れてきてください。言わなければならないことが山ほどありますから」
’おっけー! まかせてよ!! 首根っこ掴んで引きずってくるから!!’
どこか切なげな表情で微笑むリンに、先生は握りこぶしとやる気満々の表情で頷いた。
To Be Continued…