「……そうして、先生と私たちは3度の繰り返しを経てこの場に辿り着きました」
「これが、現在キヴォトスで発生している原因不明の特異現象です」
「まさか、そんなことが本当に起こっていると……?」
「驚きました……」
この世界がループしていること、これまでに得た情報から導き出したいくつかの推論についてリンが語り終えると、チナツとスズミは驚愕に目を見開いた。
「そこで皆さんに協力して頂きたいのは、現在確証を得るに至っていない記憶保持の条件に関する調査です」
「なるほど……そこでこのカードが出てくるのですね」
「ええ、そこには私たちが推察した、記憶保持の条件であろう行動が書かれています」
(そうなると、『口頭説明のみ』のカードを引いた私はこれで終わりですか……スズミさんが引いていたカードは『口頭説明となかだし』でしたね……)
「はぁ……ハズレですか」
「スズミさん、そちらのカードですが、こちらに譲っていただけませんか?」
「え?」
「チナツさん、そういった交渉はご遠慮願います。敢えてこのような形式を選択した意図をくみ取っていただけますと……」
「……今から追加の人員を呼びますので、そちらに【なかだし】をお願いすることは?」
「そちらもナシです」
「…………そうですか、承知いたしました」
チナツは考えた。今回用意されていたカードは『口頭説明のみ』、『口頭説明となかだし』、『なかだしのみ』、『そとだしのみ』の4枚。この中で一番の当たりを挙げるとすればスズミが引いた『口頭説明となかだし』だろう。そして『口頭説明のみ』と『そとだしのみ』はハズレだ。
(用意されたカードからして、シャーレは既に【なかだし】を記憶保持のトリガーとして決め打ちしていますね……)
恐らくはこれまでの情報から既に記憶保持のトリガーについてはほぼ確信を得ていると見ていい。それ以外のカードは『可能性を潰す』ために用意されたものだと考えるのが妥当だ。あくまでリンの言うことを全て信じるのであれば、記憶の保持は1週分早いだけでも相当なアドバンテージになり得る。三大校のうちゲヘナだけがその権利を逃している可能性が高いというのはかなり厳しい。今回ばかりは自分に運が味方しなかったことに落胆を禁じ得ない。
『いくよ! ハスミちゃん!』
『はい♡♡ 来て、ください!♡♡』
『あっ♡♡ あっ♡♡ あぁっ♡♡ んぎっ!! ぃぃぃいいいいいいいいいいい!?!?♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡』
先程から度々ではあるのだが、どうにも尋常ではない叫び声が隣室から聞こえてくる。
「…………」
「ほ、本当に大丈夫なのでしょうか?」
「……その点においては、私も既に経験済みですので心配には及びません」
「……そう、ですか」
「ハスミさんとユウカさんが終わり次第スズミさんにもなかだしを受けてもらいますので、それまではご質問にお答えしましょう」
「それでは――」
こうして仮眠室の行為が終了するまでの間、再び問答が繰り返されたのであった。
To Be Continued…