※この作品はR-18です。

裏アカ快楽責め系ハメ撮り系連作(仮)   作:ふりーじ屋/家庭内禁書

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 有償依頼123件目です。ご感想くださるとうれしいです。
ご依頼は http://skeb.jp/@freege_affected か、 http://twpf.jp/freege_affected からどうぞ。pixivリクエスト https://www.pixiv.net/request/plans/7443 も受け付けています。 ※pixiv、ハーメルンとくるっぷに転載しています。

 Vtuber(架空)の魂をやってる2X歳のお姉さんが年下男性の誘いに乗ってさんざんにイカされてしまうお話です。元ネタは有栖川宮詐欺事件とかいろいろです。
 いこちゃんみたいに税務や法務に詳しいVtuberが実在したらぜひ教えて下さい!

オリジナル作品リクエストのご参考までに、ご依頼内容を引用します。
(引用元 https://skeb.jp/@freege_affected/works/57)



某Vtuberの中の人(=2X歳お姉さん)が、ストレス解消で年下男性に激しくイカせてもらうお話

――人間は〈姿形〉だ。そして、人生は全て〈配役〉の問題である。

 

(久世光彦『有栖川の朝』第一章 謀)

 

 

 

※

 

(あの、それ、私の……まさか)

 

“彼女”は現在、某Vtuberの中の人を仕事としている。それを隠してオフパコの約束を取り付けた。待ち合わせ場所を、某フランス画家から名前を借りる喫茶店チェーンとした。行ってみると、待ち合わせ相手の男性がスマートフォンでVtuberの動画を見ていた。

 

(あの子がリークとかしたのか……!?)

 

 曇った伊達メガネのフレームがズレるほど表情筋が引きつってしまった。

 

 

 

「……“晴美”です、“二階堂”さんでよろしいでしょうか?」

「僕が二階堂です、お待ちしておりました」

「それ……確定申告? って、つい……覗き見してしまって」

 

 かわいらしいアニメ調の女の子がLive2Dでわちゃわちゃ動いているのはVtuberらしかったが、テロップでちらりと映った単語はかわいらしくなかった。

 

「すみません、消しちゃいます」

「いいえ、最近職場に入ってきた若い子がこういうの好きで、気になってて……二階堂さんも?」

「若い子って!? 晴美さんって僕とほとんど同じぐらいでは?」

 

 彼女は“晴美”と、男性は“二階堂”と偽名を名乗りあう。そこは約束どおりだった。

 

(……ちょっと興味があるていのほうが、無難に振る舞えそう)

 

 カフェが、小さく丸いテーブルに、向かいあわせで2人ぶんのイスを配置していた。晴美はあえて、空いているイスを彼から見た左90度までずらして座る。彼のスマートフォンに映る自分の動画を覗きこみつつ、彼のようすをうかがう。

 

(私がこの子の中の人、ってリークされてたとして……二階堂さんがこんな「知ってますよ」ってようすわざわざ見せるの、妙ね)

 

 二階堂は、一見すると中肉中背のような体格を、地味で気楽なオフィスカジュアルに包んでいる。大学生か新社会人かといった顔立ちが、整っているけれど――(……私より3つ4つ年下ってとこでしょう)――男性的な力強さと少年のような初々しさが入り混じっている。

 

「あとでアドレスとかお送りしますよ」

「二階堂さんがよろしければ、でいいんですけれど……見ながら、ちょっとおしゃべりしていきません? こういうの初めてで、いま私緊張しちゃってて」

「ぜひ! なんならケーキとかもいかがでしょう? 僕の会議費で落とすんで遠慮無用です」

「ではお言葉に……このバレンタインデーのケーキとか、もし二階堂さんがチョコ行けるんなら……分けて食べましょうか」

「デートみたいですね、ドキドキしちゃう」

「緊張しちゃってるのほぐす趣向と思って……あはは、会議費で落ちるデートかぁ」

 

 晴美と二階堂は、すでにダイレクトメッセージでオフパコを約束していた。顔を隠しつつもあられもない写真もやり取りした。他方、対面で話すのは初めてである。

 そういった関係にありがちな、初対面ながら浮ついたやり取りごしに、お互いの出方をうかがう。

 

「実は僕も、する前にお茶飲んだりおしゃべりしてからでないと、緊張しちゃうたちです」

「……あれで?」

「あれで、って」

「もう1年以上マメに更新されてらっしゃるから、慣れたものかと」

「晴美さんとは始めてですから」

 

 晴美が二階堂の名前を知ったのは、Vtuberコラボで知り合った個人勢の女性からだった。晴美が配信外の雑談でストレス解消について話題をふると、なんとネットで知り合った男性とのセックス、つまりオフパコを勧められた。

 

(『商売でやってるヒトだからかえって安心です!』とか言ってたね……一理あるけどさぁ)

 

 その女性が具体的な男性として推したのが二階堂であった。

 雑談が終わったあと晴美が調べたところ、彼が素人女性とのハメ撮りをSNSにアップし、ファンクラブサイトで運営するアカウントのサブスクに誘導していることがわかった。サンプルを見て、さまざまな女性とのハメ撮りを1年以上も定期更新しているとも知った。

 

「このイヤホンでいいですか?」

「けっこう昔のドラマとかだと、ありましたよね。イヤホン片方ずつ分けて音楽聞いて、距離をさり気なく縮めるって」

「うわぁ懐かしい、そういう趣向なら有線のほうが似合ったかな……髪、失礼します」

 

 晴美はあえて、彼に右耳を近づけた。無線イヤホンの右耳側を、彼の手で自分の耳にはめさせた。彼の触れ方を探るつもりだった。

 

(ハメ撮りで素人さんを本当にあんなに感じさせてたなら、このぐらいさらっとできるでしょうね)

 

 彼が晴美の右耳にかかっているストレートの黒髪を、彼女にとって少しじれったい調子でかきあげて、あっさりとイヤホンを装着させた。

 

「その子、名前は……ええと」

「読み方は、有洒川(ありしゃがわ)尉子(いこ)、通称いこちゃんですね」

「あり……しゃ? ああ、これ有栖川(ありすがわ)じゃないんですね」

 

 二階堂がワンタップで動画を頭出しする。ジングルのあと、尉子の高く甘ったるい声が『ことしもこの季節が来てしまいましたわ……』と芝居がかった嘆きを漏らす。

 

「晴美さんの後輩さんも、いこちゃんが……好きかどうかはともかく、たぶん名前は知ってると思います」

「……ちょっと、おもしろい言い方されますね」

「VTuberとして、いこちゃんは異色で有名で……これを見てると、VTuberよりも別方面の勉強になる感じです」

 

 尉子の銀髪の縦ロールが揺れる、小柄で華奢な体を黒基調のシックなドレスに包む。過剰にお嬢様らしさをアピールするデザインの“肉体”で演じている自分を――(現実の私と、わざと逆になるよう作ってもらったんだよねぇ……)――これからオフパコする気の男性と並んで鑑賞する。

 晴美の背筋に、尉子を世に出して間もないころのムズムズした感じが蘇る。

 

「タイトルが……“お悩み相談、確定申告直前の特別編”ですか?」

「毎年2月から3月ですからね」

「Vtuberって、雑談とかゲームとか歌とかやるってイメージなんですけど」

「一般的には」

「いこちゃん、は……?」

「ゲームも歌もへたっぴなんです。それに深窓のご令嬢で体が弱いから長時間の配信ができない。その代わりの持ちネタが“帝王学”です」

「帝王学……確定申告が?」

 

 晴美は、画面端に小さく映る――『※相談者のプロフィールをプライバシー保護のため一部改変しております。個別相談はお近くの各種事務所や公的機関などにお問い合わせください』――テロップを指差す。耳あたりにうずく白々しさを抑えながら二階堂に聞く。

 

「……お嬢様になりすましている、ってキャラなんです。法律とか経理とか、15歳のお嬢様らしくない話題に詳しい。それを突っこまれて、帝王学として教わった、と言い張る」

「なりすまし、っていうのは……見た目から、なんとなくわかりますが」

「前に有栖川宮事件って、宮家になりすました詐欺事件が実際にあったそうです。有洒川はそれのもじり。名前でもなりすまし、って主張してます」

「異色、って二階堂さんがさっき言った理由がわかってきました」

 

 なお彼女が使っている偽名・晴美も、詐欺師が名乗った偽名が由来である。彼女には悪ノリがすぎるところがある。

 

「中の人が、本当に税理士だか会計監査だかなんか士業の事務所にお勤めで、職場にバレたら引退になっちゃうそうです」

「ちなみに二階堂さんのお名前の由来は?」

「不慣れだったころ……相手の方から、なんてお呼びすればって聞かれて……困ったら、ちょうど吉四六の瓶があって。吉四六はイヤだなぁと思ったら二階堂しか」

「ふふっ、どこぞの名探偵みたい」

 

 Vtuber・有洒川尉子は、すべてが晴美の悪ノリと有り合わせのスキルでできている。

 晴美が就職3年目の仕事に慣れたころ、遊び半分副業半分で個人勢として始めた。持ちネタの帝王学は晴美の都合である。『税理士だか会計監査だかなんか士業の事務所にお勤め』であるのは、かつて本当だった。少し前に、Vtuberとしての月収が本業を超えて晴美が調子に乗って職場にバレかけ、やむなく退職。伝手を駆使して大手の箱へ入り、現在は専業として上位の人気・登録者と“異色”の存在感を誇っている。

 

「いこちゃんはほかにも、税理士とか公務員の国税専門官とか試験受けてきたり、定額減税とか法令、通達が変わるとネタにしてるんです」

「Vtuberというか、お勉強系のYoutuberよりですね、ノリが……しかしネタづくりがたいへんそう」

 

 尉子の外見は、ボリュームたっぷりの銀髪縦ロールと、それに埋もれそうな小柄で華奢な体つきである。対して晴美は、ストレートの黒髪を肩甲骨まで伸ばしているし、女性として平均を少し上回る身長と、平均をけっこう上回るバストとヒップというスタイルを持つ。これも悪ノリで、わざと当人と似ても似つかないビジュアルにデザインさせた。

 尉子の声は高く甘い。対して晴美の地声はハスキーぎみに低い。二階堂が言った『深窓のご令嬢で体が弱いから長時間の配信ができない』本当の理由は、尉子の発声が晴美の声帯にとってハードワークなせいである。

 

「……『尉子は孤児でも捨て子でもありませーんっ!』って……あの、いこちゃんって設定重いんですね」

「わっ……あぁ、ええと、不憫ふうなキャラでもあります……いこちゃんはママの名前を言えないんです、やんごとなき身分だから……ここでいうママはキャラデザとかモデル制作担当のことです」

「クレジットが載せられない、ってことですか」

 

 晴美は女優くずれであった。学生時代に学業と並行して芸能活動をして『競争が激しすぎてムリ』と諦めた。尉子を演じるスキルはそのときのボイストレーニングの杵柄である。“帝王学”の由来は、晴美が芸能界を垣間見て『法律やお金について知らないと最低限の身も守れない』と痛感して勉強したことと、それを就職に活かしたあとの数年ばかりの実務経験である。

 尉子が『ママの名前を言えない』のは、晴美がモデルを安くあげるため仕事上の後輩に発注し、その後輩がのちにゲーム会社に就職して名義を出せなくなったためである。

 

「いま、僕びっくりさせられちゃいました、晴美さんに……うまいんですね、声マネ」

「ああ、まぁ……ちょっとした特技です」

「僕も洒徒(しゃと)の端くれで……ああこれファンネームでして……マイクごしだったら聞き分けられないかも」

『――尉子が税金に一家言あるからといって、尉子を庶民の生まれと連想するのは短絡的ですわっ――』

「言うのちょっと恥ずかしいんですけど……私、昔は演劇とかやってて、いろいろ練習してたことが」

「やっぱりやってたんですか、そういうの」

「わかっちゃいます?」

「だって晴美さん美人だもの、そんなおとなしい格好してても目立つ」

「……えっちなとこ撮られようって、あなたに持ちかけるんですからね、実は目立ちたがり屋とか……引いちゃいます?」

 

 二階堂は声を落としていたが、その笑いの聞こえ具合が近かった。

 距離が座ったばかりのときより、そばにいる。

 

『――例えば伊●忠の岡●さんが、かつてアル●ーニを輸入しようとジュ●ッペ・ブ●ゾーネと交渉したとき、契約成立の決め手になったのは節税術だったとか――』

 

 晴美が二階堂をうかがっているように、二階堂も晴美をうかがっているらしい。

 

「ぷ、ふっ……いきなりピーって音で修正されると、昔のバラエティみたい」

『――どこから引っぱってきたネタだって? それはですね~……い、いや尉子は日●新●からリベートも何も――』

「いこちゃんは時事・法律・マネー系のネタが多いんですけど、関係各所に配慮して危なそうな固有名詞は修正を」

「これ確か、ちょっと前の『私の履歴書』です」

「えー……何日づけでしたっけ? 僕も電子版とってるけど、なかなか読む時間とれなくって」

「ありがちですねぇ新聞って」

 

 晴美は、彼が“そんなおとなしい”と評した格好――リクルートスーツよりは少しくつろいだジャケット、ブラウス、スカートで、二階堂と並んで座って、カフェの店員や客に、ちょっと距離が近いけどただの仕事の打ち合わせです、と主張するような――のまま、右腕の位置を少しずらす。

 

(送った写真、盛ってなかったよ……って察してくれるかしら? 盛っちゃあダメよね、実際に会うときを考えたら)

 

 控えめな物腰と裏腹に自信を持っているバストのふくらみを、ゆさっ、とさり気なく示す。これで釘付けにしてきた男性は一人二人で済まない。プライベートでも、芸能界に足先だけ突っこんでいたころの“営業”でもよく効く武器だった。

 それに見合うほど晴美を釘付けにさせてくれた男性はいなかった。

 

「二階堂さん、いまの時期お忙しいんですか?」

「いつもまんべんなくです。本業もありますんで……ただ、いまの時期は、いこちゃんも言ってたけど確定申告が」

『――年間の利益20万円未満でしなくていいのは所得税の申告です。実は、住民税は――』

 

 “お忙しいんですか?”は、つい口から出た晴美の投射であった。最近の彼女は多忙でストレスをためている。退職による収入減少を補おうと焦って仕事を増やしたことや、空気の乾燥しがちな季節でノドのケアに神経質になったことで、時間をとられていた。

 

「帳票、ちゃんとチェックしなきゃですね」

「晴美さんみたいなお姉さんが処理手伝ってくれたらはかどりそう」

「よく『経理課にいそう』って言われるんですよ……二階堂さぁーん、この伝票書き直してくださいね」

「うわ、言ってそう」

「笑わないでください~っ! まぁ、笑わせようとしましたけど……もう紙の伝票減ったから、こんな文句を言えてませんね」

 

 ストレスによって、晴美は欲求不満になっていた。ついきのうも、二階堂の投稿したハメ撮りをチェックしている時、つい道具を使っての自慰もしていた。

 

「二階堂さんこそ、本業は……本業も、こう、お体を使うような?」

『――有酒川ではありません! 洒(しゃ)ですっ……尉子はお酒も飲めませんの――』

「晴美さんも、ちょっとおもしろい言い方をされますね」

『――こらぁ~、名乗るんならちゃんと洒徒って名乗ってください~っ――』

 

 隣で照れ笑いを浮かべる二階堂は、そのオフィスカジュアルの下に、引き締められた筋肉質の手足や胴を隠している。童顔よりの顔立ちとのギャップで女をどきりとさせる。スマートフォンを軽く操作した指先が、愛撫で何人もの女性をもだえさせ、泣きわめかせ、ついにはその愛撫を何度もせがむようにさせている。モザイクごしでもわかる優れた大きさと、持続力を備えた一物がある。

 

「二階堂さん……その格好だと目立たないけど、鍛えてらっしゃるようで」

『――もうっ! 酒徒じゃないですわっ、それじゃ偽物みたいです~っ――』

「見栄えが必要でして。副業でも、本業でも」

 

 それらを晴美は、動画でなら見たことがある。

 

(感じさせられてるようすは演出込みだろうけど……)

 

 ダイレクトメッセージのやり取りをする前に――(1か月は有料会員やってないと格好が……映像が怪しくないかチェックもしなきゃ)――有料会員になって、彼のハメ撮りを何本も見ていた。

 晴美は半ば以上その気になっていた。

 

「私との動画じゃあ、せっかくの見栄えが活かせなくて、もったいないですね」

『――青色申告の承認申請書も、締切りが迫ってます。3月ですわ。例えば夏に急に売上が増えたから青にしたい、と相談されても当年ぶんは後の祭りです――』

「……確認ですけど、晴美さん、ここでいいんですよね? 度胸あるなぁ」

『――節税のためだけに白を青にするべきか? 疑問ですわね。青色の控除って65万円ぽっちです。それで複式つけて電帳もちゃんと保存しなきゃって……不慣れなヒトには手間が――』

 

 とはいえ晴美にとって、セックスを顔出しで撮影されて、それを配信されるとなると抵抗があった。

 

「顔出しNGにして、動画もショートだけ……ってワガママ言うぶん、私も肌を脱がなきゃ、ってことです」

『――マ●ーフォ●ードやら、フ●ーやら、●よいのヒトたちは揃って簡単に青できます、と言いますが――』

「外でするの興味はあるって言うけど、実際に自分がというとちょっと……って方が多くて」

『――帳簿の複雑さ、つまりつける難しさは、人それぞれ、仕事それぞれですわ、つまり――』

 

 晴美は二階堂とのオフパコ交渉で、顔はモザイク処理、撮影した動画の公開もSNS向けのショートだけとの条件をつけた。

 その埋め合わせとして、カフェでの痴漢プレイを提案した。

 

(二階堂さんのお手並み、拝見させてもらうわ……こんな場所なら、ムチャもできまいし)

 

 事前交渉で、二階堂は提案をすぐ了承した。晴美の魂胆をどこまで察しているかうかがわせなかった。

 

「……私、緊張がほぐれてきましたよ、ほどよく」

『――会計ソフト使えばいけるだろ~って見よう見まねでつけたら、ぜんぜんダメでつけ直しって悲劇も――』

「いいですね、僕もです。お茶やケーキどころじゃなくなっちゃいました」

 

 二階堂が再生を停止させるとき、彼の指先がモニター上の尉子の姿に触れた。念押しするようなソフトなタッチだった。

 それと同時に肌へそわそわと走った感触を、晴美はただの錯覚だと思った。

 

 

 

※

 

「すみませんが、ここではこれつけたままで、させてください」

「スマートリングですか?」

「痴漢してる服の中を撮影します。ライトもついてます。映像もリアルタイムで伝送できます」

「……ただの興味で聞いちゃうのですが、おいくらぐらいで?」

「少額償却資産には収まります」

 

 二階堂がカバンからノートパソコンを取り出してテーブルで開くと、カフェで作業中らしき雰囲気がさらに増す。彼と並んでノートパソコンを見ているふうに、晴美は彼と腕やヒザがくっつき合いそうな位置までイスを近づける。

 

「指にそのカメラつけて撮りながら……できるんですね、痴漢」

「……がんばります」

 

 くだんの喫茶チェーンは、客席のあいだを数歩ほどあけている。さらに、二階堂が壁際で多くの場所から死角になる席を取っていた。2人を視界に収められる席が1、2脚あるが、都合よくそこが空席になっている。あとは店員の目を警戒するだけだった。

 

「いっそ、私がカメラ係やりましょうか。撮れてる範囲がパソコンで見えるんなら、なんとか」

「わぁ、それは……頼みたいなぁ」

 

 二階堂から渡されたスマートリングを、晴美はころころ手のひらで転がしたあと、笑いながら左手薬指にはめて見せつける。

 

「ふふふ、指輪ったらここですよ」

「そういう趣向も、お好きですか」

「見た目によらない、って思います?」

「僕は素敵だと思いますよ」

「中身がそうじゃないほど、見た目でそういうふりするんです。いこちゃんのお嬢様キャラと同じかな?」

「いこちゃんはやりすぎてネタになってる気もしますが」

 

 二階堂がさらにウェブカメラを出す。モニタにウィンドウが増える。パソコンに彼女自身と二階堂のバストアップが並んで映っている。そちらのカメラも接続されたらしい。

 

「私もメガネはやりすぎかしら。マスクつけるとレンズも曇っちゃいそうだし」

「……それはそれで雰囲気出そうですね」

「経理課のお姉さんっぽい雰囲気が?」

 

 モニタごしに、自分と二階堂の姿を見る。

 

(華やかさは……うぅん……これはこれで需要があるんじゃない?)

 

 晴美はそう自己評価している。芸能界に需要があるぐらいに整っていて、入って数年で彼女自身がすっぱり見切りをつけるぐらいに地味な顔立ち。それを引き立てる、肩甲骨まで伸ばしたストレートの黒髪。きょうはそれに、控えめな化粧、地味なスーツや伊達メガネを追加して、冷たく野暮ったい雰囲気をわざと強調している。

 晴美が左手を動かして、薬指にはめたカメラをわざとデコルテ、バストへ過剰に近づける。

 

「どこ映したらいいか、指図してくださいな」

「とりあえずマスクつけておいてください……本当に顔バレNGなんですよね」

「はい、はい……私ったら、マスク着けたときのほうが美人に見えちゃうなぁ」

「いやいや、さすがに外したときのほうが美人です」

「お上手ですね、もう動画撮ってます?」

「着けて隠れちゃうの惜しいけど……でも」

「でも?」

「モザイクつける手間が減るから編集はラクです」

「はいはい」

「では、撮りますよ~」

 

 紙マスクをつける。吐息が頬から目側に漏れて伊達メガネのレンズが曇る。

 

(……うわぁ、興奮しちゃってるみたい……緊張はしてるわね。外でなんて……昔の“営業”でも、あんまりした覚えが)

 

 数秒だけすっかり視界が塞がり、すぐ戻る。

 

「お名前は?」

「……晴美です」

「視聴者の皆さま、今回はいつもと違う趣向です……某駅近くのカフェにやってきております」

 

 晴美の指にあるカメラ、ノートパソコンの内蔵カメラと別に、もう1台ウェブカメラを接続するようごそごそやりながら、視聴者向けの説明をマイクにささやく――(うわぁ、台本なしのぶっつけ……?)――晴美はとりあえず、顔を伏せて恥ずかしそうに、肩に力が入って緊張してそうに見える素振りをカメラに映してやる。

 

「晴美さんは東京でしたっけ?」

「大学からですね」

「東京って電車が信じられないぐらい混んで……痴漢の被害をよく聞きますが」

「足の踏み場もないくらいのぎゅうぎゅう詰めで、ただの押し合いへし合いと区別が難しいぐらいですよ……痴漢する側も、触りたいように触れないのでは?」

「僕は痴漢が未経験なんで、なんとも」

「ふつう未経験ですよ」

 

 晴美はアドリブに付き合いつつ、手で胸元を隠すふりをして、バストのふくらみを強調する――(ちょっとかまととぶりすぎかも……まぁ、やりすぎなら止めてくださいな)――さらに、指輪のカメラとつながっている動画ウィンドウを見て、ブラウスごしのバストの谷間を画角に収めるよう左手を動かしてやる。ノートパソコンのモニタに3つの動画ウィンドウがきゅうくつそうに並んで表示されている。見ていると隠し撮りをされている気分になる。

 

「店員さんとお客さんのようす、晴美さんが見張っててくれますか」

「構いませんが……いいんですか?」

「公然わいせつで警察に連れてかれるときはいっしょにお願いします」

「わぁ、責任重大」

 

 3台目のカメラはクリップつきのペン型だった。それを二階堂が片手につまんで動かしながら、晴美のストッキングごしのヒザやふくらはぎをなめるように接写する。触られるほどではないが、それに似たそわそわが晴美の肌に広がる。

 

「脚きれいですねっ、痴漢プレイなのに、撮ってるだけで楽しくなっちゃう」

「このほめられ方で喜んでいいのかしら」

 

 二階堂のテンションにつられて、妙にサービス精神が湧いてくる。晴美は二階堂にペン型カメラを渡すよううながし、スカートのすそにクリップで留めてしまう。ペン型カメラで内ももや下着が大写しになってしまう。おかしくて恥ずかしくて笑い出したくなる。どうにか押さえつけて、お腹より上で素知らぬ顔をしている。スカートの中で、弱いはずのライトの熱が温かく感じる。ふだん意識しないストッキングの肌触りがやけにざわつく。

 

「ジムとか通われてます?」

「……ちょっと太ももが太いのが気になりますが」

「そうでしょうか? 勝手で恐縮ですが、僕はこの調子でぜひとも続けていただきたく」

「二階堂さんは、ジム通って長いんですか?」

「ええ、体型維持に……」

 

 二階堂が続けて、そっと晴美の耳元に近づいてささやいてくる――(ジムは仕事場なんですけど、そこは伏せておいて……)――アンバーらしき香水がふわり漂う。あざといことしやがって、と晴美は目だけでじろり視線を投げつける。とがめているつもりが、モニターに流し目のように映って、照れ笑いしてしまう。

 

「お手を、よろしいですか」

「こんどは何かしら?」

「握らせていただきたく」

「……もっといやらしいところはよろしいんですか」

「いきなりじゃあ、本当の痴漢ですからね」

 

 ささやきから遠ざかった二階堂の表情をうかがいつつ、右手を伸ばして二階堂に握らせてやる。女性の痴態を切り売りしているくせに、紳士的で温かく優しい手だと思う。イヤホンや指輪のときより、心なしか火照って感じられる。

 

「お好みはございますか?」

「……二階堂さんにお任せしたいですね。いつも拝見してて、ドキドキしちゃってるんですよ」

「いまは僕もドキドキしちゃってます、晴美さんみたいな人が痴漢させて、しかもそれを撮らせてくれるなんて」

 

 動画で見る限り、二階堂は女慣れしていると判断できる。ここまで話して触らせた限り、動画と実態がひどく乖離していないはず、とも思う。

 

(多少、女が大げさに反応しているかもしれない、食レポの演出ぐらい?)

 

 でも、たぶん――(自分でいじってるほうが気持ちいいでしょうけど……)――それなりに気持ちよくさせてもらえる――(この撮ってるのでオナニーしたらどうかな……あとで送ってもらうよう頼もうかしら)――ぐらいは、期待してしまおう。

 それがこの時点での、晴美から二階堂への評価であった。

 

「私は……ん……ゃ、ぅ……っ……!」

 

 手の甲を指先で撫でられ、言おうとした言葉が曇って濁ってしまう。

 

「あぁ、ちょっとびっくりしちゃって……」

「……くすぐったがりさんですか?」

「そうかもしれませんね……手加減は、二階堂さんにお任せします」

 

 二階堂の目元がすうっと細くなって、笑顔が消えた。

 

「お任せください、晴美さん」

 

 それでいて、口元には半分だけ笑いが残っていた。

 

 

 

 

※

 

(痴漢って提案、まずかったかも……)

 

 晴美は、マスクにこもる自分の吐息が、やたらに熱く感じる。伊達メガネのレンズの下半分が、呼吸に合わせて曇ったり晴れたりを繰り返している。

 

「ブラ、ずらしちゃいましたが……だいじょうぶですか、見られても」

「……店員さんが怪しんできたら、止めますからね」

「それは本当に頼みます」

 

 二階堂にささやかれて、反発するようにいろいろ言い訳が心に浮かぶ。

 カフェでの痴漢プレイ、撮影付き。晴美にとってイレギュラーづくしの性行為。公衆の面前で男に太ももやウエストや胸を愛撫させている。自分がそんなことを許すなんて、と想像するだけで頬が熱くなる。

 

「っ……っん……ぅ……そこ……」

 

 それを実際にやっている。

 またノートパソコンの映像も晴美の理性をじくじく侵している。ちょっとでも二階堂の指がいい感じに触ってくれると、ペン型カメラが映す内ももが、かすかに、しかし気持ちよさそうに震えてしまう。

 あるいは指輪のカメラでブラウスの内側を映させられる。二階堂の指が、ブラジャーごしにじりじりバストを撫でてくるさまが目視できてしまう。注射されるとき針先を見てると痛みが増すみたい、とわざと色気のない例えを考える。

 

(……いや、認める、認めますとも、二階堂さんがうまいの、も……)

 

 デリケートな部分を最初に触らせてやったとき、晴美は安心と落胆を同時に感じた。ていねい、繊細ではある。物足りなくもある。これで何がどうなれば、動画の女性たちのように喜悦にむせび泣き叫ぶのだろうか、と疑う。

 晴美がこれまで経験した男の中では、だいぶマシと言っていい。ヒザや脇腹など敏感なところをくすぐられても、胸をもまれても、不快ではない。ストッキングやブラウスや下着を挟んでいるぶん、むしろじれったい。ときどき、肌がしびれるような、むず痒くなるような気もする。

 その程度だろうか、と思っていた。

 

(……一度コツをつかんだら、次から外してくれない感じ)

 

 体がだんだん落ち着かなくなっていく。もっと強くしてもらいたい。その瞬間、二階堂が的確に加減を変えてくる。“もっとして”に、ほんの少し足りないぐらいに。

 

「さっき、晴美さんが演劇やってたって聞きましたけど」

「……女優さんになりたい、って夢見てた時期もありますよ……笑わないで、ください、ね」

 

 口ぶりと裏腹に、晴美は笑ってほしかった。二階堂にここで雰囲気を壊す失言をしてもらえたら、そうやって幻滅させてくれたら、気楽になれたはずだった。

 

「いままでの人にも、演技してあげてたんですか? ……感じてる演技、ですよ」

 

 ささやかれた瞬間、マスクの中の表情と、スカートの中の太ももと股間はごまかした。指輪をはめた指先がびくんと揺れてしまった。

 二階堂のささやきは、晴美にとって無自覚だったが事実だった。

 

「……優しい女性に多い気がします。男って、女が感じてると勝手にうれしくなっちゃう。それを察して、感じてるふりをしてくれる。僕も何度乗せられちゃったことか」

「……少なくとも、いまは、演技どころじゃありませんよ……?」

 

 晴美はこれまでセックスするとき、恋愛的な意味であったり実利的な意味であったりで、相手の男性に気に入られようと、実際以上の快楽を味わっているふりをしてきた。

 

「いまじゃなかったら、晴美さんにすっかりだまされちゃってたと思う」

「だます、なんて」

「優しいウソですね」

 

 その男たちをだましてきたふりこそ、晴美がこれまで男性とのセックスで快楽に浸りきれなかった原因である――とは、二階堂は言わなかった。晴美にも考えさせなかった。

 

「……んっ、ぅう……っ!」

「痴漢プレイで、ふりはできないでしょう。あと、いつもよりカメラが多い。僕は晴美さんのことしっかり観察させてもらえる」

「……二階堂、さんも……人目とか、気にしててくださいよ……」

 

 ブラウスのすそから忍び込んでいた二階堂の片手が、晴美の左手にぎゅうっとすがるように絡みついてくる。敏感なところをくすぐって感じさせてもてあそんできた一瞬あとに、こんな弱々しく切羽詰まった加減で手を握ってくる。

 

「勘弁してください、いま晴美さんを押し倒さないでがまんしてるのでせいいっぱいです」

「見つかっちゃったら……どう、するんですか」

「……同意のうえ、ということだけは、頼みます」

 

 もし見つかったら、という妄想が晴美の後頭部でぐるぐる回る――(二階堂さんは確かに私のおっぱいもんだりスカートの中にカメラ突っこんでましたけど、それは私も承知のことです……そう説明してあげるの……?)――勝手に太ももがぎゅうと閉じる。ペン型カメラで、股間が薄笑いのようにぷるぷる引きつる光景を覗かれてしまう。

 

「同意書とか交わしておけばよかったですね、いま書きます? ダイレクトメッセージを見せてもいいでしょうけど」

「あっちのことは伏せたく……本業の職場にバレると」

「ふふ……ただの公然わいせつと、お金をとるための公然わいせつでは、違うんです……?」

「副業、内緒にしてまして」

「バレるとめんどうですもんね……仕事で何かへますると、副業のせいで身が入ってないんじゃないか、とか思われがち」

「でも本業だけですとね……奨学金、さっさと返したくて……借りた時は気にしてなかったんですが、利子って意外と……」

「ん……ふふっ、それも“いこちゃん”の薫陶ですかぁ」

 

 彼が雰囲気を壊してくれないなら自分から、とばかりに勢い任せの戯言を飛ばす。

 

「はぅうっ……!?」

「声、抑えて」

 

 二階堂の指1本が、ブラからこぼれた晴美の乳輪を不意に引っかいてくる。いきなり高く甘い声を漏らしてしまう。

 

「晴美さん……失礼かも、しれませんけれど」

「……何を……いま、乳首、触っておいて、遠慮も、なにも……」

「似てますね、声が」

「似てるって、誰に……ん、んっ……」

 

 有洒川尉子の名前を出すまでもあるまいとばかりに、二階堂が黙って愛撫を再開する。

 晴美は二階堂の目から快感を隠すどころか、周囲の耳から嬌声を隠すことさえ危うい、と自覚させられる。ほんの少し足りない愛撫を重ねられ、肌の内側でたっぷり期待させられている。それがあふれたように乳輪がぽってりふくれている。乳首もしこりたっていて、ブラウスの表に突起を形作ってしまうかもしれない。それらがカメラを通して、自分と二階堂の目にさらされている。

 

「ひっ、ぃ……んっ、っふ、ん、あっ……」

「強すぎますか」

「ぁ……ごめんなさいっ、うるさく、しちゃって」

 

 二階堂の指先が2本、乳輪から乳首へにじり寄ってくる。爪先も触れられる前から興奮させられてしまう。痴漢にはまりつつある自分を意識してしまう。太ももで挟んだままのペン型ライトが、拒むようにこわばる股間を映している。けれど本当に拒んでいるわけではない、と晴美は知っている。おそらく二階堂も見抜いている。

 いまに下着やストッキングにシミができて、それも動画に撮られてしまうだろうか。

 

「……一服しますか? コーヒーとお茶は冷めちゃいましたけど」

 

 けれど二階堂が手を退く。

 

「コーヒーより……お水のほうが、いいですね」

 

 晴美は氷のすっかり融けてぬるくなったグラスをテーブルから取る。くちびるを濡らす。ノドが鳴る音を抑えるよう少しずつ飲みこむ。

 口腔とノドが少し冷える。それ以外はまったく収まらない。

 二階堂が店員を呼び止める――「お茶のおかわりを……え、こっちも無料なんです?」――そう言いつつ、湯気の立つ湯呑みを卓上に置いたまま、グラスをとって水を半口ほど飲む。

 

「晴美さんは、コーヒーが苦手ですか」

「……苦手というほどでは」

「いけない、僕さっき飲んじゃった……マウスウォッシュでもしてこようかな」

「気にしないで、そんなの」

 

 晴美はきょう初めて二階堂にいらだった――(いまさら妙なことを言うんじゃないわ)――雰囲気を壊してくれるには遅すぎる。

 

「だってコーヒーですよ、匂いが」

「そんなに、気にしなくても」

「これからキスするとしたら」

 

 スカートごしのヒザを、二階堂の指先がくすぐってくる。それだけで太ももや腰がもぞついてしまう。二階堂の表情が、レンズの曇りに隠れる。

 

「すみません晴美さん、僕、したくってたまらないです」

「それ……キスだけじゃ済まない、ですよね」

 

 肌が汗と体温でじっとりしてしまって、ブラウスも下着もストッキングもますます心地がおかしくなっている。

 二階堂がクリップ留めのペン型ライトをスカートから外す。

 

「……ま、だ……する、なんて」

「こっちのカメラはもういい、ってだけです」

 

 二階堂の指先が、晴美の両もものあいだに滑りこんでくる。

 

「ヒザ閉じないで、開いててください」

「ん、ぅ、あっ……だ、めっ……」

「本当にダメなとき、指輪外して返してください」

 

 パソコンのウィンドウの一つに、くしゃくしゃの白いブラウスのシワと、その向こうで波打つ肌が大写しになっている。

 

「はぅ……んあぅっ、ん……!」

「エロいよ、晴美さん……見てたときから、触りたくってしょうがなかった」

 

 スカートを太ももまでまくりあげられ、股間の特に敏感なところを指先でとらえられ、こすられる。店員か他の客が一瞥でもすれば即座に公然わいせつと非難される。彼の手を感じるところがどんどん後ろめたく火照って、ついに秘所も潤んでほころぶ。彼が強引に足を開かせるくせに、秘所をほぐすようにゆっくりと往復する。

 

「……はぁっ、はぁっ……ぅ、う……」

 

 一番気持ちのいいポイントを的確に見つけ出し、その周りをくすぐる。晴美が腰をよじって刺激を逃がそうとすると、するすると追従してくる。どうにか声を抑えられる程度の刺激の、そのすれすれをかすめてくる。手加減がありがたくも憎たらしい。二階堂の愛撫に感じさせられている。それをカメラに撮られている。実像とモニタの虚像のあいだで反射しあってますます昂ぶっていく。

 

(……片手だけでこんな……じゃあ、両手も、舌も……あと、あそこも……使って、されたら……)

 

 ストッキングとパンプスに包んだ爪先まで、勝手に力が入ってしまう。お腹の奥がどうしようもなく縮こまって、細かく何度も震える。

 

(イ、く……まさ、か……ここ、で……?)

 

 それは自慰でなら何度も味わったことがあり、男性の手からは初めて味わった感覚だった。

 

「……あっ」

「にか……あ、ぅ……ごめん、なさい……気づくの、遅くて……」

 

 二階堂がいきなり苦虫を噛み潰したような顔をして、晴美から離れた。

 2人を視野に収められる客席に他の客が案内された、と気づいた。

 晴美はその瞬間、痴態が露見するよりも、二階堂の不興を買ったかもしれないことが恐ろしかった。

 

「晴美さんホテル行きましょう、続きを」

「……撮っちゃいます、か……やっぱり……」

「撮るときは、また言いますよ。ここまででも撮れ高たっぷりです……5000円以上だと接待交際費でしたっけ?」

 

 着座でブラジャーの位置を直す晴美に、二階堂がノートパソコンを閉じて笑いかけた。

 

 

 

※

 

「ん、ダメ、二階堂さん……んっ、くぅ、んっ……んぅうっ……! せめて……」

「シャワー浴びるんですか? ダメです。さっきから誘う匂いプンプンさせておいて、シャワーなんか浴びる? 怒りますよ~」

 

 晴美はカフェを出る前からずっと、一刻も早くシャワーを浴びたいと思っていた。彼女自身にはっきりと感じられるほど秘所が濡れていて、歩くたびに湧き上がる違和感が、カフェで絶頂させられた羞恥を蒸し返してたまらない。

 ラブホテルを見つけて二階堂とともに門をくぐって部屋をとって扉を開けて、すぐ脱衣スペースへ向かおうとしたが、後ろから抱きとめられた。

 

「ああ、指輪つけっぱなしだ」

「撮るのは……!」

「いまは撮れてませんよ」

 

 折がいいのか悪いのか、洗面・化粧用の大きな鏡に晴美と二階堂の立ち姿が映りこむ。抵抗しきれそうもない姿が彼女自身の網膜と意識にも映る。

 鏡の中で、二階堂が首と背中を傾げて晴美の後ろ髪やうなじあたりに顔を埋めている。それを裏付けるように、晴美は背筋にくすぐったい風を何度も感じる。

 

「僕、匂いフェチじゃないんですけど……でも、晴美さんには、ね」

 

 晴美は二階堂から片腕をとられ、為すすべもなく腕をつかみ上げられる。片手だけ真上近くまで挙げさせられた瞬間、何をされるか理解してしまう。

 

「ひゅっ……!?」

「わぁ、いいな……ブラウスが汗吸って、ジャケットでたっぷりこもってるっ」

 

 理解していてもたまらず悲鳴をあげてしまう。体にあるくぼみのうち特に神経が密集している腋窩をさらされ、匂いを嗅がれる。意識するまもなく声が裏返る。

 

「……ちょっと感じてるときの声、やっぱり似てますねぇ」

「それ、って……誰か、知りませんけど……いま、ほかの人の話、するんです……?」

「すみません、つい」

 

 申し訳無さをまったく感じさせない声音が耳障りだったが、晴美も一言とがめたあとが途切れる。腋窩を意識させられただけで、乳房愛撫の残り火が切なくくすぶる。

 

「……わかり、ました……二階堂さんからいい匂いって言われて、悪い気はしませんし……でも、服とベッドは……れぅ、はむ……んくっ……!?」

 

 片腕を下ろさせてもらったかと思いきや、肩と首を半身にねじられながら、二階堂からくちびるを奪われる。一つ瞬きをしてすぐ、歯列を舌でなぞられる。全身を彼の意のままにされているような被征服感が、晴美の熱をいっそう広げる。

 

「ん、く、ん、んっう……ぁ、ふぁ……ちょ、ちょっと、怒りますよっ」

「決めた、晴美さんには1回イッてもらいます。よろしいですね」

 

 晴美はくちびるを無防備にぱくぱくさせてしまう。頭の中でも絶句している。

 

「晴美さん?」

「え、ぇと……二階堂さんが、その……お上手なのは、承知、ですよ……さっき、痴漢したときだって」

「痴漢なんて初めてでしたので、というと言い訳になりますが、行き届かず、じれったい思いをさせてしまいました」

 

 カフェのイスで股間をまさぐられ絶頂に追いこまれた瞬間も、その前後も意識に蘇る。

 

「で、でも、だって、あんなにっ……ふ、ひゃんっ……!?」

「ただ、あれで晴美さんの体をちゃんと勉強できました……答え合わせ、させてください」

 

 柔らかく、それでいて絶対に逃さないという二階堂の愛撫の気配を感じる。気配だけで背筋も足も震える。

 肌のどこかに、ぐい、と彼の意志を感じるだけで高ぶってしまう。指先や手のひらが迫ってくるだけでそこが期待させられる。

 

「あ……ああ……ん、ぁ……! ……いっ……ぅんっあ……!」

 

 ついにブラウスをはだけられる。スカートをまくられる。

 

「きつかったら、僕に体重かけてくださいね」

「ぃ……や、そぇ、は……っんんっ……!」

「立ったままイク女の人が寄りかかってくれるときの重み、好きなんです。そのぶんだけ、その人をもらえた気がして。晴美さんは……どうかな?」

 

 またくちびるを奪われる。こんどは歯列の向こうの口腔まで舌で愛撫される。頭蓋骨でふくらんであふれ出しそうな幸福感に、早くも腰やヒザがおぼつかなくなる。

 

「んん、ふうぅ……っぅ! んぅ、んく、ぅ……っ!」

 

 せめて秘所だけは容赦を、と脚を必死で内股に閉じる。二階堂がそれに応じてか、愛撫の矛先をバストに向ける。

 

「んぅ、んっん……ぇう、あ、ふぁあ……っ……いっ……ぅんっあ……!」

 

 絶頂の寸前で愛撫を止められる。秘所が耐えかねたようにじわり愛液を漏らす。クレヴァスが濡れて布地が擦れて勝手にぞくぞくする。晴美にすがられていないほうの二階堂の手が、ブラウスの合わせ目をかき分け、ブラジャーの肩ひもを引きずり下ろす。行きますよ、と無言で語るように、何本かの指で晴美の乳輪を取り囲む。

 

(こ、これ、もしかして……ホント、やばい、の、では……?)

 

 キスと胸愛撫だけで、まず1回イカされる――(き、きもちい、けど……これ、ダメ、ダメな、あ……)――抱きすくめられたまま、息を整えきらぬうちにもう1回――(はぁっ、はぁっ、ああ゙……らめ、らめらめ゙っ……)――ストッキングの内ももからヒザに、ふくらはぎに、どんどんシミが広がって――(せ、せめてキスやめ……これ、アタマに、ちょくに、キちゃ……)――晴美の腰がかくんと落ち、床へヒザをつく。

 くちびるが離れる。眼前に、着衣を拷問するように突っ張らせている二階堂の勃起が、目に入ってしまう。

 

(……おっきい、かたい、ぜったい)

 

 ここまでこすられていただけの膣穴が、勝手に苦しげに収縮する。下肢があまりにもままならず、二度と立てないかのような錯覚に襲われる。

 

「寄りかかってください、って言ったのに」

 

 また二階堂の愛撫が迫ってくる。

 

「ぁ……だ、めぇ……も……っお、っ……!」

 

 絶頂にひどくもだえるあまり、ストッキングがぴりぴり伝線し、さらに濡れて色がすっかり変わりきるまで、晴美はベッドに運んでもらえなかった。

 

 

 

「晴美さんは、顔出しNGですよね」

「二階堂さん、あの、私……怒ってる、から、ね……?」

 

 二階堂の腕でベッドに運ばれたときの晴美の怒りは、3分の1がせいぜいだった。怒らなければ羞恥と屈辱と快楽で何も言えなくなるからしかたなく怒っている、というのが実態だった。からからにされたノドとべとべとにされた肌からぶつけられる恨み言が、その程度だった。

 

「顔隠すなら、ここでハメ撮りしてもいいですか?」

「……私をイカせようと思えば、ちょいちょいってイカせられるんでしょうね」

 

 着替えを調達するまで、このぐしょぐしょになった下着やストッキングと一緒に歩いていかなければならないのか、と思う。想像だけで頭がしびれる。

 

「晴美さん、もう僕と会ってくれないかもしれないし……心残りがあったらイヤなんで」

「さすがお金とってるだけあるわね、けど……私……」

 

 二階堂が両手を、晴美の耳に近づけてくる。それだけで言葉を失う。伊達メガネのつるをつままれ、そっと外される。

 

「タオル巻いて目を隠しましょう」

 

 これまでの勝手に先にイッて満足して終わってしまう男たちと、いま勝手に自分をイカせて楽しんでいる二階堂と、どちらがマシか考える。

 

(せっかくキスが気持ちよかったのに……イカされすぎて、口が、妙な後味になっちゃってる)

 

 伊達メガネの曇りで隠れていた二階堂の表情が見えるようになる。彼が少しでも得意げだったなら、ホテル代の札びら叩きつけて逃げ出す心づもりだった。

 

「晴美さんのあそこに入れたいです」

「……パイズリフェラでもして抜いてあげようか」

「カフェのときから、びくびくって反応してくれるの見てて、ずっと入れたくてしょうがないんです」

 

 心残りに後ろ髪を引かれた。

 

「きみのヨガる声も聞かせてよ、私に」

 

 二階堂にゴムとカメラを用意させつつ、晴美は白いタオルで自らを目隠しする。必要以上に力をこめてきつく巻く。

 

(……このまま二階堂さんにやらせてたら、負けちゃいそうだもんね)

 

 ベッドに寝かせた二階堂の太ももと腰をさすり、いよいよペニスの根本に触れる。

 

「ちゃんと着けてくれてますねぇ」

「そりゃあ、さすがに」

「動画だとモザイクでわかりにくいから、これまでナマのハメ撮りだったらどうしようかと」

 

 熱、大きさ、硬さを感じつつ、それを軽く流すそぶりだけで息苦しくなった。

 

 

 

「ん、ハッ……! はーっ、はーっ……あ、ア……んはっ……!」

「う、ぉ、フー……晴美、さん……!」

 

 目隠ししたまま、二階堂にまたがって対面騎乗位で挿入する。バストが大きくデリケートゾーンが見えにくい晴美は、もとより見ないで入れることに慣れている。

 それ以外はまったく未知の感覚だった。

 

(うわ、ちょっ……腰、浮いちゃう……これ、動かさせたらやばいチンポだ……っ!)

 

 晴美が腰を使っている騎乗位であり、膣内快楽のツボをわざと外している。彼も動かないでいてくれている。にもかかわらず、愛液やら嬌声やら痙攣やら、勝手に反応がこぼれてしまう。

 

「んッ……ふ、ふふっ、あはっ……♥ 覚悟してたつもりだけど……すごいね、きみの……♥」

「晴美さ……ん、ぅっ……!」

「私も、くすぐったいぐらいの加減から始めたいけど……どうする?」

 

 わざと高く甘ったるい声でしゃべりかけつつ、二階堂の腹筋や胸板、首筋を手でさする。筋肉の凹凸が汗にまみれ呼吸で浮き沈みしている気配を触覚で味わうと、絶頂より気楽な高揚感が湧いてくる。

 

(目が塞がっててナカ敏感になっちゃってるけど……そのぶん、二階堂さんの反応も感じとれるはず……)

 

 彼の乳首の近くを指先でさすると、ペニスがびくりと反応する。手持ちカメラで彼がハメ撮りしているとしたら、そのフレームもぶれてしまっただろうか。その考えだけで悦に入ってしまう。

 

「ホント、すごい……こうしてるだけで、声、出ちゃ……♥」

「……晴美さん、あの……んんっ」

「何かしら?」

「……声は、作らなくても……ぅうんッ、き、つッ……」

 

 二階堂を強引に釣り出した瞬間、思っていた以上に腟内を引き締めてしまう。喘ぐばかりになりそうなノドに鞭打って、晴美は勝負を仕掛ける。

 

「ん、ふっぅ……別に、作ってるつもりはないけど……ねぇ、二階堂さんって、もしかして」

 

 相手に追及させたくなければ、自分が問い詰める側になればいい。

 

「二階堂さんって、いこちゃんのガチ恋勢というあれかな?」

「晴美さん……!?」

 

 強引な不意打ちで、主導権を奪う。

 

「オンナの声は全部惚れた子のそれに聞こえちゃうんだ~、かわいいねっ」

「え、その、あの……いや、やっぱり似て……っぇうッ」

「おかしいと思ってたんだよね、きみみたいなオンナの扱い慣れてます~って人が、待ち合わせで女の子Vtuberなんか見てる?」

 

 理屈がおかしいことは、晴美自身にも承知である。それでも愛撫や肉棒によって追いつめられているいま、彼女は勢いで押し切る腹しかない。

 

「ごめんねぇ、私が変なことしゃべって動画に使えなくなっちゃったら……でもきみも業が深いよ? いくら好きだって、いこちゃんとはえっちできないのにね……♥」

 

 何か抗弁しようと息を吸いそうな二階堂の胸板に、これまでゆさゆさ見せつけてきたバストをむにゅりと上から押しつけ黙らせる。大きく上体を動かしたせいで、結合部でもにちゃりと水音が鳴って聞こえる。彼のペニスが膣奥までぐいぐい届いて、それだけで頭が真っ白になりかける。

 

「はぁ、はぁ……かわいそうだけど、ニセモノの、私のマネっこで、がまんしてねっ」

 

 手探りでくちびるを二階堂の首元に近づけてささやく。アンバーがすっかりかき消え、季節外れの暑い海のような雄臭く、酔うほど心地良い。

 

「うお!? あ、くっ……!!」

 

 膣内快楽に噛みつくように腰を揺らす。ずりゅずりゅ、ぐちゅぐちゅと肉も粘膜もこすれ、あっというまに快楽がふくらむ。

 

「あ、はっ、すご……♥ んぅ……うっ、あお゙ッ……ぅうう、ちょっと加減してくださいぃ……おっきいし、きもちよすぎます~っ……♥」

「や、やっぱり、いこちゃん、では……ゔ、くゔっ……!!」

 

 二階堂から『似ているのは本物だから』と言われる前に『似ているのは似せてあげているから』と言い張る。捨て身を通り越して自爆に近い対応。こうするしかないと思いつめるほど、晴美は彼への評価を上方修正している。

 

(かっこよくてうまくて……ちょっとイキってるけど……次は余計なこと考えずにシたいわね……)

 

 考えさせる余裕を与えず、考える余裕を捨てる。ヒザと内ももを閉じかけながら膣でぬちゅぬちゅとしごく。

 

「二階堂さん、私ね……男の人とのセックスでイカされちゃったのはきみが初めてだけど……ね?」

「それは、男冥利というか、お気の毒というか……ふぁっ、ひぁっ……!?」

「セックスそのものはきらいじゃなくてね……きみみたいな男の人がヨガるのを感じるのは、好きなのっ」

 

 腰を浮かせて膣の浅いところで締めつけつつ上下させて、亀頭やカリ首を集中的に責める。視覚を閉ざして、ほかのすべてが敏感になって、彼のぶんの快楽さえも感じとれそうに思える。

 

「ひッ……ふーッ、ふふ……怖いぐらいだよ、きみのあそこ……目隠ししてるのに、チカチカしちゃう……♥」

「おおぅっん……晴美さんは、素のほう、が……ッあ、くっ……!」

「んっぎゅ……ッ……ふ、ふっ……太もも、ピンとしましたね……足先までキちゃったんですかっ♥ あっははっ、もう、がまんなんて、いいんですよっ……♥」

 

 亀頭が抜けるギリギリまで引いてから、一気に根元まで呑みこむ。脳天まで響くような快楽に襲われ、びちゃびちゃと彼女自身にも何か不確かな体液を噴き出してしまう。

 

「ウソだからね。こんなこと、いこちゃんはぜったい言わないよね? でも……聞かされて興奮しちゃうんだぁ♥」

 

 しかし主導権を握っていれば、まだ動ける。煽れる――(禁洒党のエロ二次創作みたいなこと、私が言っちゃったぁ……)――羞恥と後悔を振り切るよう腰使いを激しくする。パンッパンッパンッと、引っぱたいているような音を響かせる。

 

「あぐ、ぅ、ふ、ぅ……っ!? だ、め、イッちゃ……んぉ、まだ、ぁ……ぉお、ッほおぉ……♥」

 

 肌どころか耳も快楽で白飛びして、彼の声がぼやける。深い絶頂で、太ももと膣肉が激しく痙攣して止まりかける。ノドも悲鳴を上げる。気が狂いそうな苦悶と快楽が押し寄せる。

 

(あ゙っうっ……ダメ……これ、すご、ぃ……ッ……)

 

 それでもどうにか騎乗位を続ける。二階堂のペニスや胸板もびくびくと反応しているのが最後のよすがである。

 いつしか、二階堂も晴美の裸体を荒々しく抱き寄せ、ガツガツと下から腰を突き上げ始める。思わず晴美が背筋をそらす。イッたばかりの膣肉が、そのひと突きでまた絶頂に押し上げられる。互いに言葉を失って、ただ互いの肉体をむさぼる。膣の奥まりを突いてくるペニスの感触が、あともう少しというところを行き来している。ほんの一瞬、じれったかったカフェでの彼の指先を思い出す。

 

(……ぁ、もぅ、ダメ)

 

 晴美の体が勝手にガクガクと揺れ始める。感電しているかのように苦しいのに、それ以上の快感が体にも心にぶちまけられる。

 

「んぐぅうっ、ううゔっ!! はぁっ、はぁっ…ぃ、いぐっ……むっ、もおおお゙っ……!」

 

 がっくり首を垂れる。横髪と首筋のあいだに、はぁはぁと荒い息を感じとれる。二階堂が射精した、と確信できた。彼の射精が終わるまで離すまい、とおぼつかない手足を彼の胴に絡ませる。

 

「……気持ちよく、出せましたかぁ……♥ ふ、ふふ、あはっ……えぅ、あ゙ぅぅう……っ……」

 

 それからふっと力を抜く。二階堂に思いっきり体重をかけつつ――(すっきり満足して失神しちゃった、ってことで一区切りに……)――タヌキ寝入りを決めこむ。

 

「……晴美さん、おーい、晴美さんっ」

 

 まさか堕ちた相手に追い討ちすまい、と信じる。

 

「おォおお゙ッ♥」

 

 尻をつかまれて奥底を押され、ぶじゅうっ、ぶじゅうっ、と結合部から汁を漏らした。

 

「おはようございます。僕、寝たふりされたの始めてです」

「え、ぁ、う……ち、違うの、きみのホント気持ちよくって、気ぃ失っちゃったの……ああ、ごめんね重かったね、いま、退くから……あッおおっ♥」

「確信しました。晴美さんって、いこちゃんの中の人ですよね、ぜったい」

「いま……!? いや、その、ここは……できればお風呂とかでちょっとイチャイチャしたい気分で……えっううぅ♥」

 

 ずるり引き抜かれるとき、クリトリスの表裏をずりずりこすられて、晴美は不意の快楽で本当に気絶しそうになっていた。

 

「もうウソついちゃダメですよ……晴美さんは、いこちゃんですね?」

「ん、んも~っ……もしかして怒ってます? いこちゃんのことネタにしちゃって……ごめんなさい、調子に乗っちゃっただけで悪気はなかった……お゙っ♥」

「もう1回戦しましょう。すぐゴム替えるんで」

 

 晴美は必死にベッドから這い出ようとしたが、這いつくばっただけで動けなくなった。絶対に逃げなければならないのに絶対に逃げられない、と理解してしまった。どくどくと荒れた脈拍が、残りわずかな理性を無駄にうるさがらせていた。

 

 

 

「ぁ、あ……あうっ、あああゔっ!! ひうっ、ぃい゙んゔっ!」

 

 晴美は後ろから貫かれ、あっさりイカされる。二階堂にヒザ立ちさせられたまま肩や腕を引っぱられ、後背位を強いられる。強く引っぱられて自重を持っていかれると、そのぶん彼女自身まで彼に持っていかれた錯覚に襲われる。

 

「晴美さん、ぜったい、いこちゃんでしょ」

「ひゅ、ふ、ぅ……ち、違う、もんっ……私とは違うのっ、清楚でかわいい、人気者のお嬢様……お゙っ♥」

 

 晴美の膣肉は絶頂の余韻でまだ痙攣しているが、二階堂はお構いなしに奥底をつつく。ペニスで、ほんの撫でるような刺激だが、性感の核を捉えられ、為すすべなく、あっけなく達する。

 

「や、ぁ、そこ、ぉ゙……ぐっ、い、くうゔゔっ……!」

 

 繊細に、執拗に、時に力強く、ピンポイントで子宮口を刺激してくる。晴美の内ももがあまりに力んで溝を作り、ついにびちゃびちゃとベッドへ失禁してしまう。

 

「晴美さんも言ったけど、おかしいよね、待ち合わせでいこちゃんの動画あんな見せつけるなんて……僕がそういうタレコミもらってたんです」

「……ぅ、ぅ……ち、がぅ、の……ぉ……」

「タレコミがホントでもデタラメでも、晴美さんがえっちだからいいやと思ってたけど」

「そう、そう、えっちなのは私……いこちゃんは無関係で……はっあお゙おおっ……!?」

 

 晴美が限界まで手足をバタつかせても、少しも体勢を変えられない。二階堂の筋肉が伊達ではない、と思い知らされる。

 

「ニセモノとか、真っ赤なウソついてくれましたね……さっきのマネ、もっかいヤッてくださいっ、いこちゃん」

「う、ウソなんか、じゃ……ちがぅ、ちがっ、わらひ、は……お゙っ、ひ……♥」

 

 せめてピストンの矛先を急所からそらそうと、晴美が腰をよじる。

 それが功を奏したのは一瞬だけだった。

 

「う、お、お、く……ぁ、あ、い゙っ、イって、ぅ、ぁ、あ゙あ……!」

「かわいらしい声で、税金とか経理とかお堅い帝王学をまじめに話してたのに……これ、ギャップがウケるだろうなぁ、助かるなぁ」

「……ふぇ……え、まさか撮って……や、やめ……おォおお゙……ッ!! ふかいっ、ふかい゙いィイっ……!」

 

 晴美が腰を逃がすのに合わせて、二階堂のペニスによる責めもズレて、どう動いても急所に当てられ、拷問のような絶頂を見舞われる。もう何をしてもどうにもできない、とただの膣奥絶頂よりも強く彼女に屈服を強いる。

 

「ぇ、ぉ……げほっ、ぉ……ぜ、ぜぇ……はぁっ、はひゅうっ、ひゅーっ……」

「ねぇ、いこちゃんの声で喘いでみてくださいよ、動画的にほしいんです。そのオホオホしてる声も個人的には好きですけど」

「そ、その……ま゙ッて……ぃ、いきが、くぅ、し……ぁ、ぷゃっ!? せ、背中っ、さするの……それは、そぇで、やば……♥」

「いこちゃんだよね?」

「ちが、違う、よ……もう終わりにしよ? さすがに私も……ゃ、やめ、もうイクのやばいから、あ、あ゙っ」

「いこちゃんってこんなケダモノみたいな声も出せるんだ……うう、さすがにチンポにくる……!」

 

 あまりにも好き放題に絶頂を見舞われて、恥ずかしい、悔しいといった気持ちさえも、汗やよだれや涙や愛液とともにぽろぽろ流れ落ちていく。

 

「だ、ダメだから、ホント、これ以上……ま、マネしてほしいってんならしてあげるから」

「いこちゃんだよね?」

「……な、泣いちゃうよ私ぃ……信じてよぉ……お゙ッぐうぅううぅ……ッ……!」

 

 苦しいほどの快楽に抗おうとする晴美に、恐怖と意地だけがどうにか残っている。

 

(み、認めちゃったら……もう終わり……私、終わっちゃう……♥ いこちゃん、悪ノリまみれだけど……ネタづくりと演技はまじめにやってたんだぞ……洒徒にもいちおうまじめに聞いてたのに……うぅぅう……)

 

 二階堂のペニスに、膣肉がどうしても媚びてへつらって、精液をねだるように吸いついてしまう。それ以外のことを下半身がしてくれなくて、彼が支えてくれなければ1秒ももたずベッドに倒れてしまう。

 

「晴美さん、泣いちゃってます?」

「……きみには……ぇない、だろうけど……ぇ……」

「レイプってこういう感じなんでしょうか」

「……ら、なぃ……」

「僕、レイプも晴美さんが初めてですよ、痴漢も初めてでしたけど」

「ぷひゅっぉっ♥ わ、わらわっ……ひゃ、い、息、できな……ひぬ、し、しんじゃ……お゙っ、おッぐ……」

 

 二階堂が腰を止めているのに、笑わされお腹がほんのわずか引き攣った拍子に、晴美はまた膣奥絶頂を食らわされる。

 

「お、おねが、ぃ……もうおかしく、なっちゃぅ……」

「だいじょうぶですよっ」

「そんな、わけ、ぇ……」

「みなさんそうおっしゃいますが、言うほどおかしくなってません」

「ふざけっ……ぉ゙、ッ!? ぁ……もゔっ、もぉ゙ゃっめ……ぇ……」

 

 二階堂から絶頂させられるたびに、晴美が泣き落としと逆ギレのあいだを往復する。屈辱と快楽が、晴美の理性をこそげ落とし、彼女の肉体に屈服を覚えさせる。

 

「ぅ、うッ……晴美さんと、こうしてるだけで、イケちゃいそう……ぁ、はっ……!」

 

 晴美がもう何度目の絶頂か判然としなくなったころ、二階堂が2回目の射精を告げる。

 

(ぉ……おわ、り……)

 

 ずるり、とペニスが引き抜かれる。晴美がベッドにどさりと倒れかけ、背中側から引っぱられつつ、ゆっくり突っ伏す。

 

「ちょっと待っててくださいね、もう1回ぐらいはできるんで」

 

 さっきまでペニスに蹂躙されていた膣肉が、それを恋しがるようにどうしても収縮する。

 

(な、わけ、ない、か……♥)

 

 晴美はまた抱き上げられる。二階堂に体重を預けてしまうと、どこまでも連れて行かれて、どこまでも受け入れてしまいそうな自分に気づく。気づいても何一つままならない。

 

「晴美さんは、いこちゃんですね?」

「……ぉね、が……ぃ……言わない、で……」

 

 二階堂に背中側からのしかかられる。寝バックなら晴美になんの抵抗もさせずすぐできる、と尻肉に押しつけられた勃起で理解させられる。それでいて二階堂が沈黙し、静止する。

 

(……もう、待ってるだけで、堕ちる、でしょ、ってか……)

 

 ぐしゃぐしゃになってしまった黒髪が梳かれるのを感じる。

 

「み、みとめ、たら……やさしく、して、くれ、る……?」

「優しくしたら、いこちゃんはどんな声を出してくれるんでしょう」

「ぇ、ぇへ、へ……してくれたら、わかる、よ……んひぃっ、お゙っ、ほぉぉおっ♥」

 

 晴美が思うより、二階堂は待ってくれなかった。それだけ晴美が二階堂をそそった、という証であった。捨て身が裏目に出たことに気づく余裕はとうに失っていた。

 

「もう1回やってください、さっき騎乗位してくれたときみたいに、いこちゃんの声出して、演技も……女優だったんですよね?」

「だ、だぇ、ですぅっ……こんなの、おかしく、ぅ……」

「いこちゃんなんですよね?」

「ぃ……ぃこ、はぁ……いこはっ、あ、あ、ダメ、そぇっ、イッちゃ……ゔ……ウっ……ゔ……ッ♥」

 

 演技と絶頂でさんざんいたぶられてきた声帯が、またも嬌声を絞られじくじく痛む。快楽以外に感じられるのはそれだけになっていた。

 

「ぷふっ、ふっ……いこちゃんってそんな声で喘いじゃうんですね……イメージ変わっちゃうなぁ」

「ち、ちがう、よぉ……いこは、おじょう、さま、で……ぉお゙ッ、い、いっ……っ……♥」

「これ……アップしなきゃダメです。聞いてください、これ動画アップしますよ、晴美さんっ」

「ゔェ……ぜ、ぜったい、やめてぇ……」

「うん、って言ってくれるまでイカせます」

「……言うまえに、気絶、しちゃうよ……こんどは、ホント、に……」

「じゃあ、気絶したら了承ということで!」

「ぞん゙な゙、ぁぁ……ぃ、ぃや、ア゙……お゙っぉっ――」

 

 

 

※

 

――某有名VTuberが会いに来てくれました。チャンネル登録済みでした。

 

――顔出しNGだったぶん、痴漢させてもらったり、かわいい声を台無しにしてもらいました。本編は後日に。

 

 

 

※

 

『迷惑料払うからどうかお慈悲を……いこちゃんがまずくなると、収入ホントやばい、やばいんです……!』

『いこちゃんにお金のこと言われるとシャレに聞こえないですね』

『シャレじゃないよぉっ!』

『ちなみにご予算は――うぇえ、それハッタリじゃないですよね!?』

『あとねぇ……私のことほかの子を使って釣ったでしょ、そんなら私も泳がせて……有洒川尉子の人脈をなめちゃ困るよーっ……芋づるにしたほうが、きみの営業的にもお得では~?』

 

 二階堂が絶句した――洒徒として中身の堕落っぷりに衝撃を受けているのか、動画投稿者としてそろばんを脳内で弾いているのか――晴美は構わず続けた。

 

『お、いい反応だね? ふっふふ~、私がロイヤルカスタマーになっちゃうよ~っ♥』

『……そっちのロイヤルは、シャレに聞こえちゃいますね』

『なぁに? このロイヤルはroyal(高貴な)じゃなくてloyal(ひいき筋の)ですが~?』

『……僕が過労死しない程度にお願いしたく』

『あと女の人メロメロにしすぎておかしくさせてナイフで刺されたりとかしないでね。お姉さんそっちもけっこう心配してるんだよ?』

 

 そちらの“心配”が演技か否かについても、二階堂は迷った。

 

(おしまい)

 

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