裏アカ快楽責め系ハメ撮り系連作(仮) 作:ふりーじ屋/家庭内禁書
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あらすじ紹介兼オリジナル作品リクエストのご参考までに、ご依頼内容を掲示します。
(引用元 https://skeb.jp/@freege_affected/works/59)
神々の使者、アルゴス殺しの神が乙女の胸に、
嘘と甘言、それに盗人の性を造りこんだのは、
雷鳴殷々たるゼウスの意を受けたもの。神々の伝令はさらに、
乙女に声を植えつけたが、この女をパンドラと
名づけたのは、オリュンポスの館に住むすべて〈パンテス〉の神々が、
パンを食らう人間たちの禍いとなすべく、彼女を贈物〈ドロン〉としたからだ。
――ヘシオドス「仕事と日」中務哲郎(訳)
※
「さすがにこんな初めてはあんまりです、やめときましょう」
「そうね、私たちも年長者として最低限の分別が」
「いまになって常識人みたいなこと言うんですか!?」
ダブルベッドは3人を乗せるときゅうくつで、1人ががばりと身を跳ねさせると、その手足が残りの2人のどこかにごつんとぶつかる。
けれど手足がぶつかったぐらいを気にする段階など、とうに過ぎ去ってしまっている。
「このオラオラ系バター犬もそのくらいの気遣いはできるってことね」
「……ばたーけん、ってなんです?」
「えっ……ええと、知らなくてもだいじょうぶなことよ」
「とりあえず、パンちゃんが最初に僕へDM送ってきて――」
「――あんたにまでパンちゃんって呼ばれる筋合いはないって言ってるでしょうっ」
何しろ、3人でラブホテルに入り――『3人でも使えるんだ』『予約のとき聞いておけば』『チェックアウト前でも外に出られるの?』『……1人が道に迷って遅れちゃって迎えに行きたいんですが、って言い訳を』『……人を勝手に迷子にしてっ』――素肌もあらわに同衾している。
けれど3人のうちセックスしないでこの場を済ませたいと思っている女が1人いる。
「じゃあ“そら”ちゃん?」
「何それ」
「パンちゃんが僕をおびき出すとき使った名前です。いこちゃんが聞き覚えないなら偽名でしょうか」
「だぁかぁらぁ、あんたはパンちゃん言うな~っ!」
「いいじゃん、ややこしいもの……パンちゃんもいこちゃんも二階堂くんもどれも芸名みたいなもんでしょ」
「ですけど……うぅうぅ」
そらちゃんだのパンちゃんだの呼ばれているセックスしないで済ませたい側の1人が、細いうなり声を漏らす。さっき跳ね起きさせた体をかがめて座り、小さく細い背中を丸めながらうなっている。不機嫌な小型犬を残りの2人に連想させる。
そんな犬彼女が胸の前で両ヒザを抱えこんでいる。体育座りのような姿勢だが、乳房が太ももと二の腕とに押し合いへし合いしてあふれかけ、小型犬らしさがやや打ち消されている。
彼女がしぶしぶ認めた呼び名“パンちゃん”は“芸名”と言われたとおり本名と異なる。
「……パンちゃんってどうやって知ったんでしょうね、僕といこちゃんとのこと」
「私がボロ出したでしょ、って言いたいの?」
「手がかりがショート動画1本ですし……もしかしてパンちゃんが僕の更新チェックしてたとか」
「そんなわけないでしょう!? あんなのっ」
「あんなの?」
「っ……ただ……その……」
身を守るように、ヒザもとで両手を組み直しつつ言い淀む。
彼女はVtuber・有洒川尉子と同じ事務所の一員である。尉子が呼ぶ“パンちゃん”はVtuberとしての名前に由来する。
3人のうち、“ボロ出したでしょ”とくちびるをとがらせたほうの女が、尉子の中の人である。こちらも別名を名乗っていたが、いつしか“いこちゃん”呼びになってしまった。
「……いこお姉さまのようすが、なんか……あやしくて」
「彼女っていこちゃんの妹さんですか、何かの意味で」
「何かの意味で、って」
「血縁以外にも、義理とか“ママ”が同じとか設定上の姉妹とかいろいろあるかもなので」
「……あたしが勝手に呼んでるだけ」
「まぁ妹分ね」
※
彼女はかねて尉子とリアルでの交流もあった。その中で最近、尉子のようすがうっすらおかしくなった気がした。こっそりうかがうと、尉子のスマートフォンに“たまたま”とある男性がSNSに投稿した動画が映っているところを見てしまった。
ハメ撮りだった。
「パンちゃん、いこちゃんのスマホこっそり見ちゃったの?」
「……ぐ、偶然よ」
「そっかぁ……ボロ出しちゃったといえば、そうなるかぁ」
「そんなっ、お姉さまが責任を感じるなんておかしいよっ」
顔が隠されていたものの、声や体つきからその痴態が尉子のものである、と確信した。
「パンちゃんにはびっくりさせられてばかりですよ、このあいだパンちゃんに誘われて初めて会ったときも」
「パンちゃんがかわいくておっぱいもおっきいから?」
「……いちおう、それもそうですけど……いこちゃんみたいにDMで誘ってきたんですが、会うなり“あんた、まだ間に合うからお姉さまの動画データ消しなさい~っ!”とかきゃんきゃん言い出して」
「それでびっくりして私に話を持ってきた、と」
「あと一瞬“あんまり聞き分けが悪いと、リアルはまだしもネットでたいへんだよ”ってドスをきかせてきてギャップでちょっと怖かった」
「それでいきなり“いこちゃんの事務所ってヤのつく自営業のフロントじゃないよね”とか相談してきたのね」
「……人聞きの悪いこと言わないでよ」
「反社排除ならちゃんとやってるはず」
「事務所じたいのやり口については否定しないんですね」
引きつり気味の苦笑いを浮かべた3人の最後の1人が、“パンちゃん”からハメ撮りデータの消去を要求された男・二階堂だった。
彼は戸惑いつつ彼女をのらりくらりかわし、隙を見て尉子に相談し――『自称“そら”ちゃんって子から、いこちゃんのあの動画を消しなさいって……わざわざ対面で言ってきたんですけど』『そんなことやらかす子に、心当たりがあるわけ……ないでもないわね……』――後日、尉子も含めた3人で話しあう約束をして別れた。
「……やり口ったら、あんたのもどうかと思うけどね、ガチ悲鳴あげちゃったよ」
「動画よりだいぶ切迫した悲鳴だったね。僕、耳にキーンってきちゃった」
話しあう場所について、二階堂からラブホテルを提案されて“パンちゃん”は驚き動揺したが、承諾した。
遅刻した、との体で二階堂に部屋まで案内された。
先に入室していた尉子がベッドの上で裸で縛られていた。
「パンちゃんって私が脅されているって認識だったんでしょ、まずそれをね……言葉よりえっちがいいかなぁって、インパクト重視で」
「酒飲みながら考えたのは失敗でしたね」
「インパクト以外に考えることなかったのっ!?」
「パンちゃんみたいに……初対面の男にドスをきかせたり、セックスするつもりもないのにラブホに一緒に入ろうとしたりする……度胸のある女の子相手だから」
「ラブホは下手なとこより安全よ、騒げばホテルの人が来てくれる」
「うん、ガチ悲鳴でホテルの人が」
「視線が痛かったなぁ」
ホテルの人に言い訳し終えて帰してすぐ、二階堂は見せしめ半分八つ当たり半分に尉子を失神するほどイカせた。
2人から非難がましくにらまれても二階堂は気にしなかった。
こんな展開になった主因が――『だって忙しくてしばらく会えないんだもんっ、どうせ会うなら気持ちよくしてもらいたいんだもんっ』『もしかしてもう酒を……この格好でどうやって酒飲んだんだよ~っ!』――待たされてアルコールで暇つぶししていた尉子だろう、と断じたからであった。
「……で、よく帰らずにいてくれるよねパンちゃん」
「いこお姉さまがこんなオモチャにされてるなんて何かの間違いよ、何か隠してるでしょ」
「邪魔するつもりなら……ここできゃんきゃんしてくれてるだけで僕の邪魔になれてるよ、割と」
「そう! ここであたしが帰っちゃったら、また……えっちなの撮るでしょ、だからお姉さまのためにあたしがあんたを邪魔してるの!」
撮影妨害なのに自分も脱衣してベッドに乗っている、といういまの状況との齟齬が彼女からすっぽ抜けていた。
ホテルに入ってすぐ痴態を見せつけられたときに動揺していた彼女だが、あらためて動画の削除を要求した。対して二階堂が――『僕に抱かれたあとでも、いこちゃんの動画を消さなきゃダメ、って言えたら……削除してもいい』――と蹴らせる気満々の条件を提示して挑発した。
そこに“パンちゃん”から介抱してもらい起きた尉子が――『こらこら、パンちゃんにまでおかしなことさせちゃダメ』――と止め、二階堂が――(パンちゃんが呆れて帰ってくれたほうが話が終わって楽なのに)――表情についにじませた。
それを察したらしき彼女が、一瞬ためらったものの撮影妨害と称して居座っている。
「ここでお姉さまだけ残して帰れるもんですかっ!」
思慮はともかく容姿と度胸と勘が良い女の子、というのが二階堂の“そら”もとい“パンちゃん”への印象だった。
「でもさ、処女は困るよパンちゃん」
「あたしが処女とは……こほんっ、処女の何が悪いのよ~っ!」
二階堂は彼女のVtuberとしての名前が“八百会パンドラ”である、と尉子から教えてもらった。それまで彼は“パンちゃん”だと――『そんな名前のわけが……ないとは言えないわね、Vtuberって……』『でしょう?』――思っていた。
由来についてもいろいろ聞いた。
しかし――『パンちゃんのお名前のうち、八百会(やおあい)は多くの人が集まってくることや場所って意味。祝詞に出てくる古い言葉よ。それからパンドラは』『箱だか瓶だかを開けちゃったパンドラのことでは?』『もとの意味があるの。パンが“すべて”、ドラが“与えられた”……いや“与える”だったかも……とにかく気宇壮大に験を担いでる名前なの』『頭に八百ってついててウソとか詐欺が由来かと思っちゃいました。パンちゃん僕をだましてきたし』『有洒川じゃあるまいし』――もう忘れかけている。
パンドラという物々しい響きが彼女の容姿・雰囲気にあまりにも不似合いだった。
小型犬のようにちんまり可愛らしくやかましく、けれどおっぱいは大きい。
「念のため言うけど、本当に抱くよ」
「動画と違ってずいぶん慎重ね~」
パンドラより“パンちゃん”と――『あんたはパンちゃんって呼ぶんじゃないって言ってるでしょうが~っ!』――呼んでいるほうが、二階堂も話しやすかった。
「むしろ、もしあたしが処女だったら、うまくイカせられなくってどうしよう……!? とか動揺してるんでしょ」
「動揺ならしてるよ、きみちょっと度胸ありすぎて何するか予想つかないし」
「処女はともかく、パンちゃんが二階堂くんの前で平然と肌出してるのはびっくりしてるわ。けっこういいとこの出なのに」
「えっ、そうなんですか?」
二階堂はあらためて、ベッドに座りっぱなしの“パンちゃん”の体をじろじろうかがう。
ホテルに入る前の待ち合わせでは、ピンク色のニットセーターにタイトなデニム、ベレー帽に赤くて太いフレームのメガネをかけて、ややインドア派の女子大生らしき出で立ちで現れた。
ホテルに入ってメガネを外す手つきが不慣れそうで、それが伊達だと察せられた。コーディネートのほかのアイテムも、ふだんの彼女を隠す変装か、と判断した。
「高校までお嬢さま学校通ってたっていうから、ネタ出し手伝ってもらったことも」
「……冗談ですよね――うぁいたっ!?」
「そんなにあたしがお嬢さまでおかしいか~っ!」
肩と腕を動かして二階堂を小突くと、素肌の乳房がぶるんと揺れる。
大きい。
二階堂がとっさに、それをもむときの具合をシミュレートする。片手で片乳を覆いきれるか。もんだときのボリュームが尉子に比肩しそうで、しかし“パンちゃん”のほうが一回りほど身長と肩幅が小さい。その対比を含めると彼女のほうが大きく見える。
そう言えばニットセーターの着こなしが妙だった、と思い出す。そでが手の甲まで半ば隠すオーバーサイズだったのに、すそが腰の少し上でのれんのようにひらひらしていた。急な変装で胸のサイズに合わせて服を用意したらそうならざるをえなかったのか、と苦労をしのぶ。
「Vtuberって……リアクションがわちゃわちゃしてる人が向いてるんでしょうね」
「バカにされてる気がするけど、否定できない……」
「パンちゃんもしかして私のこともそう思ってた?」
「……あたしたちガワかぶってモニターごしにリアクションするんで、オーバーにしてようやくリスナーにちょうどよく伝わるって感じですもんね」
「ちょっと間があったね、もっともらしいこと言うまでに」
「い、言い訳じゃありません~っ」
尉子のツッコミを受けて、“パンちゃん”がしおれた花のように首を垂れる。
彼女の髪は、12トーンほどの明るいブラウンをふんわりしたボブカットにしている。両こめかみから頬にかけて目立ってふくらむセットが入っている。ふんわりした髪型をさせつつ頬の輪郭を隠して小顔に見せようとしている。けれど少しやりすぎで、横髪の主張が強く犬の垂れ耳のようにも見えてしまう。二階堂にミニチュアダックスフントを連想させる。
二階堂は、尉子から“そら”と“パンちゃん”の関係を教えてもらったときに予習した切り抜き動画を思い出す。“パンちゃん”は八百会パンドラと雰囲気がかなり似通っていて――(ガワをかぶってる意味があるのかなぁ、尉子ちゃんみたいに中身と真逆ならまだしも)――彼の印象に残っていた。
「本当にお嬢さまなら少し考えなきゃ。手加減の具合を間違えると、いこちゃん怒りそうだし」
「いこお姉さまにひどいことしておいて、よく言うよ」
一転、“パンちゃん”が頭をもたげて二階堂を横目でにらむ。
尉子の――(さっきこの子の前で失神アクメをキメさせられたの、ひどくされた扱いに含めていいかな?)――疑問が軽く流される。
「……触ってもよろしいかな」
「二言はないよ……紳士ぶらなくていいよ、どうせケダモノになっちゃうんでしょ」
「パンちゃんヤケになってる?」
尉子から見ても、いまの“パンちゃん”が冷静とは言い難い。覚悟しているらしき声音を吐いた直後、二階堂から手を伸ばされてパッと胸と秘所を手で覆う。彼から値踏みされるように見つめられ、ぎくしゃくと手を下ろしてデリケートゾーンをさらす。
「あと、パンちゃんに彼氏さんがいたら悪い気がしちゃうね」
「……いたことないよ、残念だねっ」
「残念って?」
「あんたみたいなのは、いたほうが興奮するんじゃないかと」
肌をなでつつ、なでさせつつ、お互い平静を装う。
「私は二階堂くんから、彼氏さんいるの? とか聞かれたことないよ。ねぇ聞いてみてよ」
「いこちゃんに聞くとアダルトビデオの前フリみたいですよ」
「えっちな動画撮って副業にしてるくせに、素人ぶって」
2人の体裁からかすかに立ち上る緊張を打ち消すため、尉子が強引なシャレを軽い声音で飛ばす。ほぐしてやろうという気遣い半分、緊張に巻きこまれて空気が硬くなるのが嫌という勝手も半分あった。
尉子に合わせてか、二階堂も雑談を交わそうとする。
「パンちゃんはきょうだいっている?」
「それ、いま関係あるの」
「ねぇねぇ、それも私に聞いてくれたことないよね」
「いこちゃんのことお姉さまお姉さまって呼ぶけど、本当のお姉さんはいるのかな、って……ちなみに、僕はむさ苦しい三人兄弟の真ん中」
「ふんっ、どうせろくでも……いや」
「どうしたの?」
「あんたがろくでもなくっても、親きょうだいまでそうとは限らないって思っただけ」
二階堂が“パンちゃん”に向ける言葉と手が少しズレている。親しくなる前の女の子を口説こうと探りを入れるような親しみやすくも軽く響く声に対し、手つきがややこわばっている。探るにしてもどこからどうやって、という迷いや、“パンちゃん”がまた悲鳴をあげてホテルマンがやってきたら、という心配らしき気配がチラつく。
「んん、んっ……」
「すべすべしてるなぁ」
「……別、に……」
「若いっていいわよね、いいなぁ女子大生」
尉子がまた混ぜっ返す。こんどは、広い水面に投げた石のように細かい波紋を起こしたあと、すぐ収まってしまう。
“パンちゃん”からすると、見知らぬ男に触られている恐怖を紛らわしてくれているようでも、自分を棚に上げて胸愛撫を眺めているようでもある。
「……僕は尉子ちゃんのほうが楽しいですよ」
「あらら、パンちゃんのおっぱいなでながらそんなこと」
「自分がソソられるかどうかしか気にしてないんでしょ」
「それも大事ではあるよ」
二階堂は悪態をぶつけられ、むしろ手つきを優しげにする。たとえ悪口でも会話に付きあってくれるほうがやりやすくて助かる、とでも言いたげで、“パンちゃん”を逆撫でする。
対して体は彼の手を拒絶する手前にいる。アンダーバストや乳首などデリケートな部分への刺激を避けられて、遠慮がちすぎて反発しようにも甲斐がない。
しかたなく悪態を余計にぶつける。
「……いこお姉さまがあんたにやらしいことさせてあげるなんてまともじゃないよ、脅迫か何かに決まってる、あんた早く自首したほうがいいよ」
「パンちゃんはいこちゃんに何かお世話になってるの?」
「話すことじゃないわ」
「お姉さま呼びの由来が気になって。もとはと言えばそれが……いこちゃん?」
「……あ、ごめん、おっぱいがほんとでっかいなぁって見惚れてて」
「ん、んっ」
尉子のふわふわした感想が、透明な手のように乳房をくすぐったがらせる。
「ウソ、ウソ、ちゃんと聞いてるわ……お世話って、パンちゃんに? そんなにしてあげたっけ」
「いまのうちの事務所はいこお姉さまあってのもの、ってみんな言ってますよ」
「ええ~っ、そんな大げさなぁ。しかもパンちゃんが入る前のことでしょ」
「僕、興味ありますね、いこちゃんの武勇伝」
二階堂の手が、“パンちゃん”の乳房を離れて肩や背中に移る。気配を感じるだけでくすぐったい。同時に、彼が何もしていないかのような声音で雑談に興じていて驚かされる。
「……うちの事務所ってか業界全体の話だけど……Vtuberってビジネスが成り立つようになったの最近だよね」
「せいぜい10年ぐらいでしたっけ」
「うん、いまの大手もちょっと前までスタートアップだった。そういう東証プライム上場から、数人規模や個人勢までが乱立してる」
「群雄割拠ですね」
「ところでスタートアップってみんな独裁主義なの」
「きっぱり言いますね」
「小さくて小回りきいて仲良しごっこしやすいのがスタートアップよ。独裁主義で意思決定サクサクしないとその強みが死ぬ。会社も死ぬ」
ほんの少しでも痛いと感じさせられたらビンタをかましてやると自分に言い聞かせながら、“パンちゃん”は二階堂の顔をにらむ。彼が尉子ちゃんのほうを向いていて、にらめるのは彼の顔の片側だけ――やや童顔で大学生にじゅうぶん混ざれる、よく見ると整った顔つき――目をそらすと引き締まった四肢と胴まで視界に入ってしまう。
羞恥と動揺がますますひどくなる。
「でも、うちのはでかくなってからもしばらく独裁主義を引きずってたようで」
「それをいこちゃんがぶっ壊してやったんですか」
「別にぃ~、私はせいぜい蟻の一穴よ。尉子ちゃんのキャラだと雑談ベースでも業界のそういう話題が耳に入ってくるの。まだ個人勢だったからでかい事務所の悪い噂をネタにしてやろうといろいろ聞いたりして、まぁ」
「それ本当に一穴だったんですか」
「そのうち、事務所の中でみんな不満がたまってたのか、クーデターで創業メンバーがほとんど追い出され」
「“そのうち”で尉子ちゃんが暗躍してたのでは? 煽動とかお得意でしょう、たぶん」
「別にぃ~、あちこちにムチャ言ってて反動がきてたんでしょ……委託のとき違約金とかムチャクチャな契約書にハンコ捺させて……炎上してないの含めりゃあちこちにある話」
「よそ者で“孤児”で副業だったいこちゃんだと、ブラック事務所相手でも言いたい放題」
「言わなきゃこっちにしわ寄せがくるのよ。もうこの業界もレッドオーシャンになってきてて下請けイジメが横行しててさ……」
尉子による配信より数段ぶっちゃけた話題を二階堂と聞く。“パンちゃん”はこれまでオフレコでは何度も聞いている。Vtuberである前に女子大生である彼女からすると、いちいちもっともらしく世慣れて聞こえる。
その尉子の話と、酒精と強制絶頂のほとぼりが赤く残る素肌のまま、という尉子の姿とがまったく噛み合わない。
「で、いこちゃんがどうしてその事務所に」
「残ったほうから“あなたのシンパが主導権とったからうちに来ませんか”って」
「入るいこちゃんも誘うほうもすごい」
「会社に強烈な刷新感がほしかったらしくて」
「……そういうことっ、お姉さまの偉大さがわかった?」
「ま、けっきょく私の理由はおぜぜだけど」
「さすがですね」
「これが昔むかし、このパンちゃんが入るちょっと前の話」
「なるほど、パンちゃんは事務所の有力者であるいこちゃんにお姉さまお姉さま~って媚びてすり寄っておこう、って」
「ち~が~う~っ!」
二階堂は、彼自身でもウソくさそうに言い捨てた。
もしそれが“パンちゃん”の単なる処世術だったなら、わざわざ二階堂にコンタクトしたことも、こうして顔を合わせていることも不自然である。ハメ撮りを何かの間違いと思って無視するか、当人に確かめるか、別の人間やしかるべき機関に相談するか、妥当な行動がほかにいくつもある。
「じゃなきゃ、いまここでこうしているのは……パンちゃんも、実はこういうことに興味あったとか」
「んくっ……!? あんたこそ……ケダモノの尻尾が出てきてるわ……!」
二階堂の手がアンダーバスト側に添えられている。めいっぱい指も手のひらも広げている。乳房をすっかり覆うにはもう一歩だった。
指のところはまだいい。
手のひらの部分が、やけに乳房の肌とぴったりくっついてる感触がする。
肌がしっとり汗ばんでいるせい、と彼女が気づくまでもう少しかかる。
「いこちゃんがパンちゃんみたいな子に泣きつかれたら、しょうがないわね~ってお世話しちゃいそうなイメージも」
「むしろ私がパンちゃんにお世話になってるかなぁ。さっき言ったっけ、パンちゃん中高一貫の女子校出てるの」
反撃してやろうと構えると、二階堂に手をゆるめられ肩透かしを食わされる。その二階堂と尉子が気安く話しているのは気に食わない。仲間外れにされている気分が後頭部あたりを無性にイラつかせる。
彼女が内心で地団駄を踏んでいるうちに、彼の愛撫がじわじわ進んでいく。
「……私学の中高一貫って、学費どのくらいだろう」
「別に、いくらだって、あんたには関係……っ……ない、よ……」
「1年150万円で足りるでしょうか」
「あとで勝手に調べたらいいでしょ」
Vtuberとしてデビューして尉子に確定申告を手伝ってもらうまで“パンちゃん”の金銭感覚は自分のおこづかいだけに収まっていた。有栖川宮家のような貴顕から縁遠くとも、子が教育費その他支出を気にせず済む家庭環境であった。
「そういう女の人って……独特の気配があるような」
「ぷふっ……!? 言うんなら、どっちか、はっきり……っん……」
「お母さん似なんです」
「っ……ぁんた……」
「二階堂くんったらまた適当なことを……適当だよね?」
ただ不意をつくだけの二階堂のウソだと99パーセント思いつつ、2人とも残り1パーセントだけ否定しきれないでいる。彼女らが二階堂の投稿してきた動画をチェックしてきたせいであった。
「はぁ、はぁっ……こんなの、最低の気分、よっ」
「いこちゃんの動画を消さなきゃならなくなったら……しょうがないと言えばしょうがない、けど」
「個人勢のころは、そういうのごめんなさい一つでだいたい済んで楽だったわぁ」
「何か別の動画で穴埋めできればいいんですけどね」
「……まさかあたしを撮ろうなんて考えてないでしょうね」
「撮ってもいいのなら」
「良いわけないでしょ」
そのせいで2人は危うく口にしかける。
二階堂が痴態を撮影・公開している女性の年齢層の上限が、ちょうど“パンちゃん”の母親ぐらいであった。
「それはそれとして……パンちゃん、かわいくておっぱいおっきいし、あと……」
「ホテルの時間が来たら終わりよっ、覚えてるでしょうね」
「……その体をお姉さまのために張れます、って健気だなぁって」
「二階堂くんの言えることかしら」
「まるで自分なら言える立場、って言い方を」
二階堂は“パンちゃん”のほんのり不自然な反応でそこに何かあると勘ぐって瀬踏みしているだけだったが、実際に彼女は自身の母親に思うところがあった。
「パンちゃんがお母さんのことお母さまって呼んでたら、びっくりしちゃうかも」
「あたしもびっくりするわよ」
「中高の同級生にいなかった?」
「……よその家のお母さんを呼ぶならともかく」
「ご母堂とか言うの?」
「大河ドラマじゃないんだから……」
高校まで箱入り娘のようだった“パンちゃん”も、それから大学生やVtuberとしてセクハラされた経験がある。けれど尊敬するお姉さまの前で男に胸をもまれながら家族の雑談をされる、というと気にすることが多すぎて気が散っている。
「パンちゃんってリアルお姉さまはいたっけ」
「わぁ、美人姉妹なんだろうなぁ」
「いや、いないから……」
「じゃあ妹さんは?」
「んっ……いいえ、弟が一人……」
「わぁ、パンちゃんがリアルお姉さま……っえうっ!?」
「あんたは調子に乗るんじゃないっ」
二階堂にビンタならぬヒジ打ちを食らわせる。彼のしかめっ面を見て一瞬だけ溜飲を下げる。
「……ふむ、あんまりご家族には触れられたくない?」
「いっそ体に触るのも遠慮してもらいたいわね」
触れられたくないのは図星だった。
二階堂も尉子も知らないことだが、“パンちゃん”の容姿は瓜二つなほど母親に似ている。母親がその容姿を生かして良家の子息を誘惑し、いわゆるできちゃった結婚をして彼女が生まれた。その来歴で親戚から腫れ物のように扱われたので、性欲をあらわにする態度や行為について人一倍の忌避感を抱いている。
「それじゃあ“抱く”とは言えないよ……いや、触らずに抱く、ってできるのかなぁ」
「なかなか意欲的な挑戦に聞こえるわね」
「さっきオモチャとアルコールで勝手に気持ちよくなってた人に言われても」
それを知らない二階堂ではあるが、興奮を抑えて事務的に触ると彼女の反応が良い、とは察しているらしい。
「ん、ふ……こんなの、気持ち悪い、だけで……」
「冷房つけてもらう?」
「何言って……」
「肌、ちょっと火照ってるから……いこちゃんつけてきてください、いま手が離せないから」
「他の女の子のおっぱいもみながら言うことか、それが」
呼吸に合わせて、赤らんだ肌と桃色の乳輪の丘がぷるんと揺れる。二階堂がアンダーバスト側から手のひらと指で支えるように触れている。
いつも感じている重みを奪われて、妙な気分にさせられる。
「ん、ぁ、はぁ……火照って、なんて……これは、恥ずかしい、だけで……」
「乳首も触っていいかな」
「きれいなピンク色で……見てるとちょっとうらやましくなってきた……」
「いいなんて言うわけが……っ……!?」
乳首へ彼の指先が触れかける。仕草どまりで、当然触られた感覚などないのに、息が止まりかける。
「……触らなくても感じちゃうほど敏感なら、あるいは」
「ばかなこと言って……! きゃっ、ひぅっ……!」
「そりゃあデリケートだから丁寧に扱えって言うわけだね、いこちゃんも」
「えっ、私そんなこと言ったっけ」
雑談のあいだを、押し殺した吐息と甲高い鳴き声が行ったり来たりする。
「くっ、ふぅぅう……っ! ひふっ、きゅ、ぅ……っ!」
「緊張してるようだね、やっぱり無理かなぁ……しかしおっぱいだけで生殺しとか、おっパブってこんな感じなんでしょうか」
「行ったことないの?」
「セックスは、もう半分商売ですから」
「でもパンちゃんのおっぱいでおちんちん興奮してるねぇ、お姉さんが抜いてあげようか~?」
「いこちゃんの声で言ってみてください」
「いやですぅ~いこはそんなえっちなことしません~♪」
「はふぁあっ!?」
「ごめんパンちゃん、ちょっとイラッときちゃって」
痛気持ちいいとしか言いようがない快感が刺すように走って消え去り、余韻が彼女の動揺を誘う。もう二階堂が興奮して勃起しているらしい――“パンちゃん”は年ごろの弟と暮らしているので男の生理現象に多少の理解がある――なのにこともなげに尉子とおしゃべりしている。
「……別に……あたし、敏感じゃ、ないもん」
「もう少し強くしてもいいかな」
「それより、約束覚えてるでしょうね」
「契約って口約束でもいちおう有効なのよね~」
「契約書がなくても?」
「意外と紛争になっちゃうのよ」
尉子とやり取りしながらの二階堂からもてあそばれ、それでいて快感に背筋や指先を震わされる。くちびるを引き結んで声や吐息を殺さなければならない。お前なんて片手間でじゅうぶん、と言われているふうに感じてしまって屈辱感でますます体が熱くなる。
「んっ……そ、そこっ……んっ、んくっ……」
「……繊細だね、パンちゃんは」
つん、と乳首の根元をつつかれる。じぃん、っと背中にまでもどかしい感覚が這いのぼる。思わずうつむく。視界の端に自分の乳輪と、もてあそんでくる二階堂の指先が嫌でも入ってくる。ぷくっ、と隆起していて水気をまとっているようにも見えてしまう。
直視するとますます敏感にさせられる。
「えぅ、うううーっ……ああっ……!」
「このぶんだと、下も神経を使うかなぁ」
「きゃああ二階堂くんのくせに甘々だーっ、いつもはもっとオラオラしてるくせにっ」
「人に合わせてるだけです」
優しくなでられながらわちゃわちゃ会話していると、もとは不本意な同衾とわかっていても“パンちゃん”は心までくすぐられてしまう。セックスに忌避感があるいっぽう、熱心なVTuberだけあってチヤホヤされていると感じられればうれしくなってしまう。自分へのイラ立ち混じりにくちびるを噛む。
「いこちゃん、飲み物あります?」
「飲む?」
「お酒じゃダメですよ」
「なんで?」
「パンちゃんにキスする前に、口を潤わせておきたいと思って」
「き、キスって」
途端に、自分のくちびるがカサカサしてやしないか、くちびるに変な歯型が残っていないか気にしてしまう。キスを許してやるつもりなどないはず、と二階堂をにらむ。
「……噛むわよ」
「ワンちゃんみたいって言っちゃったの根に持ってる?」
「はぁ……って、あんたそんなこと思って……っ……!」
「うわ、口が滑った」
クスクス笑いながら、尉子がホテル備え付けらしきミネラルウォーターを持ってきて、ぱきりと開栓したふうな音が聞こえる。
「ありがとうございます、飲ませて」
「口移ししてあげよっか」
「僕がこれから何しようとしてるか知ってます?」
「ああ、パンちゃんが先ね」
このまま胸愛撫をさせたままでいるとどうなってしまうか、知っているのに振り払えない。むしろ、心待ちにするように胸がじわじわした熱でうずいてくる。
「はうぅ、んぷっ……ちゅっ、ちゅう……ぁはあっ……やぁっ、あぁっ……!」
尉子のはからいでキスが冷たくさらさらしている。おしゃべりを続けていたままのくちびるよりずっとマシなキスの味、と言い聞かせる。
思考操作の隙を二階堂につかれる。
「れぅ、はむ……んくっ……そ、そこっ……んっ、んくっ……!」
くちびるを重ねられながら、乳首の先をかりかりと爪で軽く引っかかれる。自分と彼の吐息が同時にふわりと波打って、それが妙に恥ずかしくて頭がいっぱいになる。
何度も執拗にいじられる。
「ダメ、んっ、はぅ、んっ……んぅうっ……!」
「ふうん、二階堂くんったら触られてもいないのにおっきくしてるー」
刺激がもどかしいぐらいなのに、快楽が羞恥に乗ってか、急速に高まっていく。尉子がペニスについてからかう声音が流れて秘所への意識に飛び火する。このままではここでこの男に処女を奪われてしまう。太ももを閉じて、まだ触れられてもいない秘所を守ろうとする。未開の膣肉がこすれて切なくなる。
「んぅ、んっん……ぅぷ、あ、ふぁあ……っや、やめ……は、ぉ、ァ、あ……ッ!!」
「……なんだか手持ち無沙汰ね、私……」
こんどは乳房全体に快楽を行き渡らせるかのように、指と手のひらだけでなく手首や前腕も使ってもみくちゃにされる。抵抗しようとじたばたしたつもりだが、彼の腕がしつこく着いてくる。視界がちかちかして震える。息が苦しいのにもっと続けてほしい。こねられる1回ごとに乳房が性感帯に仕立て上げられる。未知の感覚を引き出され、羞恥と性感に恐怖さえ混じって彼女を乱す。
「ぴちゃ、れぢゅ、れぢゅ……ん、く、ん、んっう……」
さらにずっとキスを続けられていると、彼の舌につられてしまうようになる。好きでもない男、それどころか尊敬する尉子を凌辱しているらしき憎き二階堂のそれに、気づけば自分の舌を絡ませてしまう。味蕾どうしのざらつきをこすれさせると、彼もよだれを催されるらしい。ささやかに反撃をぶつけて一矢報いた気分も彼女を浮つかせる。
「あ、イカせにかかってるのか……えー、おっぱいとキスだけで?」
キスと胸愛撫の快楽が、彼女の理性と全身でせめぎあう。尉子の淫らな疑問を聞いてしまう。執拗な愛撫で性感らしき――“パンちゃん”はそれが性感だと、この少しあとにはっきりわからされる――何かを目覚めさせられたが、“イカせ”られたらどうなるというのか。
「んぢゅ、んぷ、ちゅう、んぷ、ぱぁ……っ」
内心で反発しても粘膜や神経が二階堂へなびきはじめている。恋人でもなければ許さない行為を懇切丁寧に受け入れさせられている、そんな現実に追従しかけている。
「ぁ、ああっ、う、く、ぐぐ、ふぅううっ……!」
キスされながら乳首を強くつねられる。頭の中が熱く真っ白になる。どれぐらい続いたのかもわからない。彼に残りの手で頭と背中をなでられ、自分が彼のくちびるに歯を立ててしまったと気づく。
「ぅぷ、あ、ふぁあ……っ……」
「……ふぅ~ん……?」
彼から目をそらし、うつむく。よだれと汗だらけの乳丘に、ぽってり膨れ上がった乳輪と乳首が目に入って、残り火がまた一瞬弾ける。
「……くっ、ふ、はぁっ……あぅぅう……っあんた、こんなの……いつまで……」
「……時間が許す限り、かな」
淡白だったキスの味がいつのまにか彼のそれに移り変わっている。相手にも自分が同様に感じられていると思うと、すでに犯されてしまった気さえしてくる。
脳が形のない金槌で殴られたように無痛でおののく。
「そんなに残ってないはず、だけど……っ」
「名残惜しむには、まだ早いよ」
「余裕ぶっちゃって」
説得の残り時間が迫っている――(説得されてやるつもりもないけど)――とプレッシャーをかけたつもりだった。
言い終わってすぐ、胸愛撫をこれ以上は勘弁してほしい、と懇願しているかのように思えてしまった。
「……やれるもんなら、やってみなさいよ、ケダモノのくせに……!」
ここでも彼女は、思慮はともかく容姿と度胸と勘が良い女の子だった。受け身でいるままよりいっそ、と閉じていた太ももを広げた。
「もうちょっと濡らしてからのほうが」
「も、もうじゅうぶんあんたに合わせてあげてるでしょうが」
処女は痛みが強すぎて気持ちよくなれない、と彼女は聞いていた。だから映像を“消さなきゃダメ”と言いつづける、どんな辛い痛みがあっても。その覚悟だけ、どうにか決めていた。
「ねぇ、いこちゃん、パンちゃんってやっぱり処女なんですか?」
「え、見てわかるの?」
「いえ、さっぱり」
「……あの」
「なぁに?」
彼女は何か言おうとして、言葉が見つからなかった。
本当に好きあっている人にだけ見せるべきところを尉子と二階堂に見せてしまっている羞恥には、もうすぐ耐えられなくなりそうだった。
※
「へぇ、これが……見てもわかります? 僕にはさっぱり」
「だろうね!? くっ……なんなのこの状況……」
二階堂と尉子から膣肉をのぞきこまれながら、“パンちゃん”は卒倒しそうな羞恥に必死に耐える。
「処女膜って膜じゃないんでしたっけ、言葉と裏腹に」
「言葉どおり膜が張ってたら経血がつっかえちゃいそう」
すぐに2人が視線を上げる。視線の先が秘所から顔へ移っても羞恥が収まらない。自分よりきょう非常識なことをやらかしている2人のほうが冷静らしく見えてしまい、むしろ自分が場違いなのではという気さえして腹立たしくも居たたまれない。
2人だってラブホテルであられもない格好のくせに、というちょっとした反発心も浮かぶ。
「僕、処女の相手してうまくいったためしがないんです」
「うまくいった? イカせたじゃなくて?」
「あたしが処女なのにえっちな女の子って言いたいんですか~っ!」
「うまくいったかどうかは……“あーやっと終わってくれた”みたいな雰囲気が事後の相手になければ、という基準で」
「そっか、相手をイカせまくって気絶させれば“あーやっと終わってくれたよ”なんて雰囲気……そんな理屈が通るかーっ!」
「……え、しょ、処女でもイッちゃうことなくはないですよね?」
二階堂が“パンちゃん”を見つめたあと、沈黙のまま尉子に視線を移す。
尉子も無言になる。視線が右上のあたりをうろうろしていて、何か思い出そうとしている素振りのまま、うんうんと何度かうなる。
変なことを口走ってしまったかも、という後悔が引き伸ばされて薄っぺらくなるまで沈黙が続く。
「……私は二階堂くんに会う前だとオナニーでしかイッたことなかったからなぁ」
「え゙ッお゙ッ……ぞん゙な゙、ことっ……聞きたくありませんでしたぁ……」
彼女はベッドに崩折れた。年長者2人からおそるおそる触れられがばりと身を跳ねさせるまで、悪夢の最中さながらにうなっていた。
「妹分としていこちゃんのために体を張っちゃうのは健気だと思うし、いこちゃんがパンちゃんを放って置けない気持ちもちょっとわかったけど……ねぇ?」
「……それよりどうするの、ここで終わったら約束どおりアレ消してあげなくちゃ」
「何か代わりにアップするものがあればいいのですが……そうだ、差し替え用の動画、いま撮りましょう」
「別のアップしたら無意味でしょうが~っ!」
こうして“パンちゃん”の処女が守られるかと思いきや、乳愛撫とキスで屈辱も羞恥も恐怖も性感も高められっぱなしで、ふいと放り出される。約束の実質踏み倒しに負けず劣らず、無性に腹立たしい。
「きょうここまであんたにキスさせておっぱいもませてやったあたしは何なのっ、ばかみたいじゃない~っ!」
「いや、それは……野良犬に噛まれたとでも思って……」
「ふ、ふ~んだっ、ホントはあたしが処女だって気づいて、うまくイカせられなかったらどうしょう……!? とか動揺してるんでしょ」
「パンちゃんには呼び出されたときから何度も動揺させられてるよ」
「パンちゃんこそ、もう少し動揺してもいいんじゃないかしら」
裸のまま怒声を浴びせていると、声量のぶんだけ羞恥心まで増えていく気がする。
「しかし言われてみると……処女ってイカせられるものかな、応用と言うか発展課題って感じです」
「高校や大学の勉強と違うからね!?」
しかし怒って気を張っていなければほかの感情に飲まれてしまう。
「ああ、そうか、わかってきたわ、パンちゃんのこと」
「な、なんですか、いきなり」
そうだと自覚していても、驚かされ、怒るどころではなくなる。
「パンちゃんはいじめてもらいたいからきゃんきゃん言うのよ、マゾなんだね」
「……は?」
「……あの」
「え、知ってるよね? 二階堂くんは絶対知ってるでしょ……あ、哀れむ目で私を見るんじゃないっ、あんたらも裸のくせにっ~!」
当事者からすれば真剣でも、むしろ当事者が真剣であればあるほど、もし第三者が見ていたとすれば滑稽に見えてしまう光景がある。尉子はそれにお構い無しで、二階堂もそれに流されつつあるらしかった。
“パンちゃん”だけ、これが自分のゲームプレイを配信しているときの雰囲気に似ている、とほんの少し客観的な意識を保っていた。
「よし、いこちゃんが教えてあげよう、マゾはいじわるされたいんじゃなく、気持ちよくいじわるされたいの、わかるよね?」
「いや、わかりませんけど」
「ザッヘル=マゾッホとかめっちゃワガママよ?」
「……パンちゃん、これ常識なのかな」
「お姉さまって……けっこう知識が偏ってて」
「おい」
「このあいだも、アイプチとかエアロバイクとか配信で言っちゃダメって」
「登録商標なんだから配信では言い換えておくのよ、一般人ならともかく配信者でしょ」
「あれ、スノーモビルが引っかかってスノーモービルがスルー、とかときどき不思議なのありますよね」
「あたしのリスナーでああいうの気にする人いるんでしょうか」
「社員や関係者がプライベートで見てたらどうするのよ!?」
裸でもっともらしくくだを巻く尉子のようすがシュールすぎて怒る気が萎えてくる――このまま流されたらたまらない――手のひらに爪を立てつつ否定する。
「……アイプチはともかくっ、あたしはマゾなんかじゃありませんっ、いくらお姉さまでも言って良いことと悪いことがありますっ」
「でもけっこう興奮してくれてたでしょ、ここまでで」
「こっこれは、怒ってるんですって!」
「うんうん、ここから処女喪失させられてよろこべるほどの重症のマゾではない、と」
「軽症でもありませんよ~っ!」
「じゃあパンちゃんは、こっから私がえっちするところ見せびらかされてくれてよ。それならほどよくいじわるでしょ」
「……いこちゃん、自分がムラムラしてるだけでは?」
「マゾはわがままなんだよ?」
「うわ」
「そういう反応は求めてないわ」
「いこちゃんのわがままを聞いてあげると言ってもいません」
幸か不幸か、“パンちゃん”はまだほんの少し冷静だった。
彼女をそっちのけにして尉子が二階堂とセックスに耽ろうとしている。それを傍観しているだけで済ませてくれれば、そのうちホテルの残り時間が尽きて、純潔を守ったままこの場から解放される、という予測もできた。
形の上では、彼女が二階堂の毒牙にかけられそうになったところを尉子が身代わりになってくれた、と言えなくもなかった。
「ねぇ~二階堂くぅ~んおちんちんイライラさせられたままでしょう? 私が処理してあげる~」
「茶番は置いておいて、差し替え用の撮るならもう撮りたいですね」
「え~やだ~っ! あれだといこちゃんのマネさせられちゃう、あれノドにダメージが……んひぃっ!?」
「こっちは遊びじゃないんで……」
彼女自身にされた愛撫と比べると、ずいぶん強引な愛撫に尉子が甘えたふうな声を漏らす。その光景から目をそらせない。“ここでお姉さまだけ残して帰れるもんですかっ!”という啖呵を切った手前――ある種のマゾヒズムは虚勢を伴い、それを投げ捨てる解放の快楽という面を持つ――尉子の興奮が焼け木杭を燻らせてくる。
「あっ、あ……あっ、ふああ……っ……♥」
「ほら、いこちゃんのマネをしてください。じゃないと誰もわからないでしょう」
「わかっちゃ困るでしょう……あ、パンちゃんにはバレちゃってたな……あっ、あっ、うっ……」
尉子の乳房がもみくちゃにされているのを見ると、誰にも触れられていないはずの自分の胸まで、幻のような快感にじんと痺れる。
耐えがたくて目を閉じても尉子の嬌声が耳から浸透してきて、まぶたの裏に彼女の痴態が勝手に再生されてしまう。
「へひゅっ!? く、んひぃっ、やぁ、あァ……♥」
「いこちゃんのマネして、って言ってるのに、むしろ声が低くなっちゃってる」
「こんなのされながら……ムリぃ……あうっ!? ま、待って、く、んんっ、おほっお……っ……♥」
「ああ、パンちゃんちょっと離れたほうがいいよ」
「ふぇぇっ!?」
「いこちゃんの粗相が引っかかっちゃうかも」
目を閉じている彼女の耳に、ストローで何かをすするような音が聞こえる。あんまりに激しくてキスの音と認識できなかった、と気づく。
ほどなく足元のほうから響くくちゅくちゅという音が混ざってくる。さらに尉子の手足のどこかが立てているのか、ベッドシーツのどこかをずるずる擦ったりぱたぱた叩いたりする感触が彼女の肌にまで伝わってくる。
ぷしゅっ、と破裂音のような何かが割りこむ。
「……いくら声がまんしたって、こうするとすぐおもらししちゃうんだから」
「っ……っうぅー……ぅ……!」
「前より早いね。アルコールのせいかな」
彼の低い笑い声と、泣きじゃくるような響きが断片となって彼女に刺さる。痛いはずなのに、かゆみのようにもっとそこを傷つけてもらいたくなってしまう。
体がとても熱い。
「それとも、パンちゃんがここにいるから……興奮しちゃってるんでしょ」
「そんな……きゃっひんっ♥ ば、ばかっ、お尻叩かないでっ♥」
「下品にデカケツふってくれてるから……礼儀として、ね」
彼の言うとおり、べちん、べちんという打擲音らしきそれが、彼女の耳にも儀礼的に聞こえる。対照的に、尉子がどんどん息を荒くして、気づけば彼女のほうにまで汗らしき匂いが届く。
「尊敬してくれてる後輩の前でケツ叩かれて気持ちよくなってるなんて、どういうことですか」
「やぁん、二階堂くんサドキャラも堂に入って……ひんっ♥ やめなさっ、あぐっ♥」
「減らず口とはこういうのを言うんでしょうね」
尉子が明らかに発情している。同じ女であり、さきほどまで彼に無理やり発情させられかけていた彼女には、どうしてもそう理解できてしまう。
二階堂の動画を事前にチェックしたときに押し殺したそれと似ていて、それと比べ物にならないほど強い。
「んぷ、んぐ……! ちゅ、れぅ、むぢゅっ、んんぐ、ぁぷ……っ♥」
どうやら問答がまたキスで途切れたらしい。あくまで尉子が味わっている快感であるはずのそれが、彼女の胸にまで弾ける――自分がああされるはずだったのに――錯覚にぶんぶんと首を振る。
「ひ、ぅ、ぁ……ふぇ、ぁ、な、か……っ……♥」
「まだ指だけですよ」
「くっ……ぅ、ぅう……っ! く、くすぐったい、わぁ……」
「ふーん……ねぇパンちゃん、見ててあげてよ、やっぱりきみに見られてるほうがいいらしい」
ぐじゅ、ぐじゅ、と愛液まみれの女陰を指でいじられているそのさまを、うっすら目を開いて見てしまう。尉子のむっちりした脚が、ぬらぬら光るに濡らされながらきゅうっと力んでいる。大きくて重そうな乳房もゆさゆさ揺れる。
スマートフォンごしに見た痴態よりも、ホテルの部屋に入ってすぐ見せられたそれよりも、ずっと彼女をぐらぐら揺り動かす。
「ぁ、はっ……ぁぁっ、くっ……ぉ……っ……」
「声を殺してるときのほうが敏感なんだよね」
彼女に見られていることに気づいたらしく、尉子がくちびるを引き結んで声を殺そうとする。二階堂の手を振り払おうとする腕や手の動きさえ見せる。
けれどそれも長くはもたない。
「ひっ……もぁ、ああっ、う、く、ぐぐ……だ、めぇ……!」
「パンちゃんも同じようにしてもらいたくなってきた?」
「う、うそ、そんな、の……!」
二階堂と尉子に向き合う“パンちゃん”の位置からだとちょうど彼の手で隠れているが、尉子が手マンでクリトリスやGスポットを責められているらしい。彼の指が動くたび、尉子ががくんがくんと足や腰を震わせてもだえる。仕草一つひとつが気持ちよすぎてしんどいくらい、と彼女に訴えかけてくる。見ているだけで体がかあっと熱くさせられる。
「うらやましい?」
「……寝言なら、寝て言いなさいよ……っ……」
「まっ……待って……んんぅううっ♥」
「そうだね、処女じゃこうは……ねぇ」
尉子が強すぎる快楽に押されてか、腰をよじって指の狙いを外そうとする。それを二階堂に腕や脚で押さえつけられ、逃れられなくなって、太ももが力んでぐいぐい筋張る。
「ふぁあ、はぁ、ッ、くぅ……あぁ、あふ、あっ♥」
「でもカメラまわしたら、案外……どうかな」
「まさか……っ!」
「女の人ってカメラまわしてると変わるから……VTuberもそんな感じでは?」
「も、い……っく、い、い、い……ッあ……っ……♥」
「ほら、いこちゃんの声でイッて」
「や、やぁです、ぅっ……は、ぁ……あ゙うっ……お゙ッ……!?」
尉子が何度目かに絶頂させられる。彼女は目をそらしたいのに見てしまう。自分が否定していた世界がすぐそばに実在して、このまま自分もこうされてしまうのかもしれないという恐怖が沸き起こってくる。それでも視線を吸われる。怖いとわかっているのに崖下を覗きこんでしまう心境に似ていた。
「パンちゃんが処女喪失するときは撮ってあげるよ。きょうはいこちゃんで手いっぱいだから、こんどの話になるけど」
「も、もぅ……私を抱いてるのに、パンちゃんばっかりかまって……んあぅ! ひぅっ、ひぃうっ♥」
「そ、そんなの、ぜったぃ……!」
「うはぁ!? ぁ、あァ、ぉおおお゙っ……♥」
彼女の途切れ途切れの抗弁が、尉子の濁りすぎている嬌声に遮られる。二階堂がついに挿入してやったらしい。
屈辱感でいっぱいであるのに、その上わけがわからなくさせられるほど妬ましくもある。
「お゙っ、ひ……う、お、お、く……ぁ、あ……ッ……♥」
「はっ、はぁっ……ほら、入れてあげたんだから、いい加減いこちゃんになってよ」
「やだぁ、やだぁっ♥ いこは、こんな、えっちな……あひぃっ、んぐぅっ……いいっ、これいいっ、これすきぃっ♥」
「そうじゃないだろ……」
尉子が四つん這いにされて後背位で貫かれながら、尻を二階堂の手でスパンキングされている。例によってべちん、べちんと小気味の良くない打擲音が鳴る。
「いっ、っうぅーっ! あ、ァア、あ゙……っ♪」
「こらっ、勝手にイクんじゃないっ……!」
打たれたい。泣いてしまいたい。そうして無様を晒しても……自分の中に芽生えた欲求に戸惑う間も与えられず、彼女の目に映る尉子がどんどんいやらしくなっていく。彼のピストンで体を揺らされるたびに、尉子の胸もゆっさゆっさと揺れながら汗をしとどにベッドへ垂らす。時おり首や背中が弓なりに反り返って、長い黒髪がさんざんに乱れる。これでは傷んでしまって事後のお手入れがたいへんだろう、と彼女は興奮の隙間で他人事のように心配する。
「う、ぅうう、ぇへ……ダメかなぁ、こんないこちゃんは……」
「もしかして、わがまま正当化のためにマゾぶってるんですか」
「……ぁ、ああっ、う、く、ぐぐ、ふぅううっ……♥」
「いこちゃんがいい女なのは認めますけど、こうも注文が多いと、さすがにただでセックスしてやるのは……ねぇ?」
尉子へのピストンを続けつつ、二階堂が粘っこくなってきた声音でからかう。それは尉子だけでなく彼女の心もさざなみ立てる。
「あ、あたし、は……」
「パンちゃん?」
「撮って、ほしくなんて、ない……ないっ、から……っ……」
「じゃあ……きみのスマホでいいや、撮って。あとで送ってね。いこちゃんの差し替え用映像に使いたいから」
「な、ぁ……っ!?」
「はぅ、ほぁっ、はぁっ……ふへ、ぇへ、撮影助手に使っちゃうの……?」
「請求書出してもらったほうがいいでしょうか、八百会パンドラで」
「ぷ、ふっ――ぉおおォおお゙……ッ♥」
「ぐあっ……わ、笑うなって、いきなりナカきゅってなるから……!」
「ぅ……は、あっ……二階堂くんだって、楽しんで、さぁ……」
ぱん、ぱんと、肌を打ちつけあう間隔が短くなってくる。尉子も性感のボルテージを上げてかピストンを誘導するように尻を揺らす。
彼女もどんどん追い立てられるような感覚に――このまますべてを放り出して自分もいっしょによがり狂うしかないのでは――尉子と二階堂の痴態が涙でとっくにぼやけてしまっているが、それにさえ引っぱられてしまう。
「んあっ、く、うう――んあああっ! あ、あっあっ、そ、そこ、うああぁあっ!」
「ナカがぐにゅぐにゅしすぎて、しょうじきどこだかわかんないですよ……」
「ゔぅー……あぐ、く、ぁ……も、ぅ……むり、むぃ、です……ゔっ、ゔっ……♥」
触れあってさえいないのに、全身がセックスに絡めとられている。自分と同じ屈辱と快楽を尉子と共有している。また絶頂している。ずく、と初めて意識するほど深いお腹の底で興奮がふくらんで広がる。何度目かの波が、彼女を押し留めていた一線をさらさらと消し去る。
彼女の手が自分の秘所に滑りこむ。当たり前のように濡れている。尉子の嬌声がひときわ大きくなって、それに負けないくらい激しく指を動かす。
「あ、あぅ、んんぅうぅ……あ、ああーっ、二階堂くんっ」
「……なんです?」
「パンちゃんが、パンちゃんが一人えっちしてるっ――きゃんっ! それはいたいよーっ!」
「他人のオナニーを邪魔しちゃダメです、エロ配信者の鉄則ですよ」
「私は、ちが……ふぎゅううっうっ♥」
気持ちよくなってしまっている。憧れていた年上の女性のひどい痴態を見せつけられながら、とうとう自分まで興奮しきって自慰に及んでしまっている。完膚なきまでの敗北で、屈辱感がさらに興奮を煽る。
「や、やだぁ、こんな、の……やめ、てぇ……♥」
信じられないほど急速に絶頂感が高まっていく。片手で乳首をいじり、もう片方の手で充血したクリトリスをまさぐる。その最中にも尉子と二階堂の性交と痴態から目をそらさない。それが本当に恥ずかしく心地よくてたまらない。秒読みのように当たり前のように絶頂が近づいていくのをぼうっと待ち受ける。
「うわ、処女だと思うとエロさ100倍ぐらいになりそう」
「……男の人って、やっぱり初めてのほうが……? きゃんっ」
「パンちゃんがオナニーでイクとこ撮っといてください、スマホでいいから」
「ホントにきみは商売でやってるんだね!?」
カメラを向けられるかもしれない、と漏れ聞いてますます昂ぶってしまう。息が切れて、薄暗いはずのホテルの部屋がまぶしく感じる。性感帯をいじて自分を快楽で燃やすことに没頭してします。一人のオナニーでは考えられないほど甘ったるくて苦しくて深くて重い。
「やだぁ、やだぁ、パンちゃん撮ってちゃダメぇ……!」
「本当にいこちゃんはわがままだなぁ……」
「っくイ、グイ……! あ゙あっイグ……ま、またっ、あ゙、あ゙っ」
「いまさらお姉さんぶったってダメだよ、パンちゃん巻きこんだのいこちゃんでしょうが」
「お゙っ、ひ……だ、ダメ、これダメなの……♥ う、お、お、く……ぁ、あ、い゙っ、イって、ぅ、ぁ、あ゙あ……!」
相変わらずばたばたしているが、性的絶頂へ追いやられているのは彼女にもはっきりわかる。そう察しただけで彼女もダメになる。自分の指を膣肉が食いちぎりそうなほど締めつける。反発するように強く激しくクリトリスを押しこみながら乳首をつねる。快楽の極みまで昇りつめていく。声が高くなったり低くなったり、体全体がこわばったり痙攣したり、尉子も“パンちゃん”もまとめてめちゃくちゃに乱れる。
「あ……あ、あっ、あ、だ、めぇっ、来るっ……!」
彼女がきょう初めて、自らの手で絶頂を迎える。体ががくんと跳ねて、ベッドのシーツをびちゃびちゃと濡らしてしまう。ホテルに踏みこむ前の彼女が予知できたとしたら、それだけで卒倒しかねない屈辱と快楽に、尉子と二階堂のすぐそばで溺れる。絶頂が収まるのを待たず、彼女の指はさらに痙攣する膣肉をかき分けるように動く。
「う、うっ……うううっ、ぐっ……う、ふううっ……!」
終わりの見えないそれらに、彼女は涙をこぼして感じ入る。見せてはいけないもの、見せてほしいものをすべてさらけ出してしまっている。撮られてしまっていると思うとずっと絶頂が続いて狂ってしまう。
「……あっ」
「こっちが嬉ション引っかけられることは考えてませんでしたね、本当に犬みたい」
「もうどっちだかわかんないわよ、ぐちゃぐちゃで……あ、はっ……んぐ……うっ、あお゙……ぉお゙ッ、い、いっ……っ……♥」
「よく他人事みたいに言えるもんですね……ちょっと感心しちゃった」
「あっあ゙っ、こぇ、これダメなやつ、ダメだってば、あ……ふゅうっ、あ゙、あ゙ーっ……!」
※
こうして、二階堂は尉子と“パンちゃん”の痴態をどうにか撮影した。
しかしまだそれをチャンネルにアップできていない。
できる見通しすら立っていない。
『ど、どっ、どうか勘弁してくださいお兄さま~!』
『……ええと、お姉さまを見習ったのかな?』
“パンちゃん”があまりにも調子の良い女で――(この子、お姉さまがどうこうより、自分が妹になりたいのが主なのか……?)――いまさら罪悪感がチクチク刺さるというのも理由だった。
しかしそれより重大な支障があった。
『勘弁してくれなきゃ……そっその、ホントに、処女……うわーっ!』
『マイク着けたまま叫ぶの、やめて……耳が……』
二階堂がカメラに収めた痴態の長さ・濃さに対して――(2人といるとどうしてか、流されてわちゃわちゃとなっちゃって……下手すると僕の動画の空気が乗っ取られてしまう……)――チャンネルに沿う部分が、つまり撮れ高があまりに少なく、編集で大いに悩まされていた。
『ねぇねぇ二階堂くん、申告手伝ってあげようか~。最近この時期になると流行るようになったよね~手伝ってくれる女の子が』
『……もう4月ですよ? 申告も青の申請も開業届も終わってますが』
『じゃあ編集手伝ってあげる~。これでも個人勢あがりだよ、自分で編集もできるよ? なんと手間賃は現物払い可にしてあげちゃう!』
『……不安しかないんですが』
『ひ~ど~い~っ!』
『だからマイク着けたまま大声は……』
『配信者の声をなめちゃダメ、こんなの大声のうちに入らないわ』
編集以外においても、いささか悩まされていた。
(おしまい)
こぼれ話
エピグラフにとった最初の女性「パンドラ」の由来は、ヘシオドスによるでっちあげ説が濃厚です。
>(…)ヘーシオドスの与える語源解釈は、ギリシア人の愛好したいわゆる通俗語源解釈に類するもので、語の構成形式からいっても妥当なものではなく、こじつけであることは明白である」
(松平千秋訳の『仕事と日』岩波文庫p150)
>(…)ギリシア人が好んだ語呂合わせにすぎない。「全てを与える大地」の神格としてのパンドラも知られていたが、最初の女性の名前としてのパンドラはその神とは別とすべきであろう。
(中務哲郎訳『ヘシオドス 全作品』京都大学学術出版会p163)
などと言われています。