裏アカ快楽責め系ハメ撮り系連作(仮) 作:ふりーじ屋/家庭内禁書
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あらすじ兼オリジナル作品リクエストのご参考までに、ご依頼内容を掲示します。
(引用元 https://skeb.jp/@freege_affected/works/65)
すさまじく気位の高い女性にかぎって、すさまじく卑しい奴隷になれる。
――ドストエフスキー『賭博者』第八章、亀山郁夫訳
※
「ねえ、この動画のお姉さんってパンちゃんところの――」
「――言わないで、言うな、ストップ!」
「やけに厳しいね」
「……他の人を巻きこみたくないだけよ」
某ラブホテルの一室で、いわゆる〝裏アカ〟男性である二階堂はノートパソコンを開いて1本の動画を見せた。
見せた相手がすぐ手を伸ばしてきてパタンと閉じられてしまった。液晶やヒンジにダメージが入っていないか少し心配になった。
「ちなみに動画タイトルだと〝エンタメ業界勤めのおっとり系お姉さん・林檎さん〟ってなってる」
「林檎さん?」
「仮名だけどさ」
再びノートパソコンを開き動画再生のアイコンを押した。
『それでスタイルに自信がない素振りをされると、それなら私は……とかいう反応が怖いんで』
『おだてても木には上りませんよ。確かに、学生時代ぐらいまで自信たっぷりあったんですけど』
『何か重大事件でも?』
『仕事を始めたら、私って井の中の蛙だったかも、って……最近も、後輩に若くておっきいのが……』
『では、昔を思い出してもっと堂々とお願いします』
再び見せた相手のパンちゃん――彼女の名前はパンドラだが、二階堂はそう呼ばない――に止められる。
「この後輩の若くておっきい……ってパンちゃんのことだよね?」
「それは……いや、だから、もう終わりっ、どうでもいいでしょ、あたし撮るのでもなんでもやりなさいよ~!」
「やけっぱちでカメラの前に出られたら困る、配信だってそうでしょう」
二階堂は動画で映されている女性・林檎と、動画を見せている相手であるパンドラとを、バストを見比べていますよ、と露骨に伝わるように首と視線を動かした。
パンドラはVtuber名であってもちろん本名ではないが、二階堂が本名を知らないのでそう呼ぶ。彼女は小柄でありつつ胸が大きい、成人になりたての女子大生である。さっきあわてて手を伸ばして乱暴にノートパソコンを閉じたとき、服とブラで支えられているのにいかにも重そうにゆさっと揺れたのが、二階堂の視界の隅にとらえられていた。彼の目測では、Gはある、もしかしたらHカップか、といったボリュームだが正確には未確認である。
触ったことはある。それなりに大きい彼の片手でめいっぱい指を伸ばしても、彼女の片乳を覆いきれない。彼女は性格のせいか仕事のせいか、チワワのようにきゃんきゃん騒ぐリアクションが多い。そのたびに巨乳がゆさゆさ目立つ。
「あんたは、あたしに……これを見て落ち着け、っての?」
「お手本があったほうが気楽かと思って。お手本にしてはハードなのだけど」
対して画面の中の林檎は、パンドラよりずっと落ち着いた物腰である。竹垣と石張りの小さな浴槽を背景に裸で立って、手で乳房と股間をゆるく隠している。ボッティチェリの『ヴィーナスの誕生』さながらのポーズ。スタイルが並以下の女性ではただの茶番で、パンドラだと胸が大きすぎてポルノになってしまう。
ところが、林檎は高い頭身とバスト、ウエスト、ヒップの優美な曲線を生かしている。長い手足で実にコントラポストが映える。背景が旅館の個室付き家族向け露天風呂といった雰囲気でなければ、ヌードモデルの仕事中というのが――少なくともハメ撮りの切り抜きというより――自然に見える。
「林檎さんのこと気になってパンちゃんにご意見うかがいたかった、というのもある。きれいなお姉さんなんだろうな」
「顔にモザイクついてるのに何を見て……そもそも、これの何が気になって、あたしに何を聞こうってのよ」
「僕もパンちゃんのおかげでVtuberを履修しはじめて、ふと気づいたんだ。パンちゃんの事務所の先輩に、この林檎さんと声がそっくりな人が」
「声が似てるだけじゃないの? あるいはボイスチェンジャーとか。もうだいぶ自然にできるし」
あの人はこんな体つきではない、と否定されなかった時点で、二階堂はほとんど一致を確信した。
彼は裏アカ男性として、パンドラとのハメ撮りを撮影するつもりで約束し、いま彼女とホテルの同じ部屋にいる。しかし、いざという瞬間に彼女がいくらか怖気づくと考えた。
どうしようかと考えていた数日前、彼女のVtuber事務所の先輩らしき女性が別の裏アカ男性によりハメ撮りされている動画を見つけ――(自分だけじゃないし、これよりソフトにするから、と言って丸め込んで……裏目に出たら、それはそれ)――ハメ撮りする前に見せてみることにした。
「梨さんはボイチェン使わないよ、ひぃひぃ言わせる路線の人なんだ。生声にするはず」
「……なしさん?」
「果物の梨。これ撮ってる投稿主さんの名義」
「ずいぶん家庭的なお名前だこと」
「パンちゃんとこの界隈と違って、こういうプラットフォームだと二階堂とか梨とかのが目を引くから、どこぞの数学老師と違って動画の中身はポルノだけど」
「にしても梨って、検索性すっごく悪そう」
二階堂から見て、梨はポルノ系動画投稿プラットフォームの同業者である。性癖やターゲット層がズレているが、撮影・編集やセックスの参考とするため梨の有料会員となっている。
「……昔、拷問器具に〝苦悩の梨〟ってのがあった。それに引っかけたんじゃないか、って話も」
「梨さんはハードなの?」
「ふだんは……林檎さんの動画が梨さんにしてはソフトなのも気になって、もし路線変更で僕とかぶったら……と注意してみているうちに、なんだかどこかで……そうだパンちゃんところの! って、そういう話」
「言っておきますが、ふつうの女性にとって、家族風呂とはいえ露天で裸を撮られるのは〝ハード〟です」
「……はい、そうですね、僕の感覚がおかしい」
また動画再生のアイコンを押した。もうパンドラが止めてこなかった。
『夕日だとノスタルジックな雰囲気になってしまいますね』
『演色性がないからお肌の手入れがまずくてもごまかせちゃいます』
『すみません、えんしょくせいってなんですか』
『夕日って見ての通りオレンジでしょう? 太陽光の入射角が水平に近くって、赤っぽい光しか届かなくなって……日焼けとかシミとかあっても目立たない』
『ちょっと嫌味に聞こえるご謙遜ですね』
『あらあら』
梨がカメラを持っているのか、画面が林檎の立ち姿に近寄ってなめるように映しはじめる。
彼女はやや低く落ち着いた声――(Vtuberとしてのガワとノリがほとんどそのままだな、あらあらまぁまぁ、ってお姉さん系の)――と対照的に、肌がなめらかで水滴が玉のように乗っている――(そういう演出かもしれない)――デコルテから胸元を接写されて、恥じらうように身震いしてから手をどけると、小ぶりのつんと張り詰めた乳首が見える。
「あたしがいまから何を言っても……あくまでも、この林檎さんが、あたしの事務所の先輩だったとして……という根拠のぜんぜんない仮定が前提ってことにしておいて」
「……心得ましたとも」
二階堂が横をうかがい、絶句しかける。パンドラがあまりに食い入るような目つき、顔つきで画面を向いている。そんなに興味津々でも彼にはかえって困る。彼女の緊張をほぐせれば、という思惑から遠ざかる。
いつそちらの動画再生を止めて、こちらの撮影という本題に移ればいいのか、ほんのり不安がきざした。
※
『林檎さん。あらためて、ご関心、ご協力いただきありがとうございます。きっかけをうかがわせてください』
『まぁ~、仕事のストレスが、ですね……あとは、怖いもの見たさ、と言いますか~』
『そうですか、怖いですか』
『怖いですよ~、見てますよ、女の人が首とか絞められながら、手足バタバタさせて泡吹かされて……』
『やっちゃいけない、やられちゃいけないと思うことほど気持ちいいですから』
『そうでしょうかね~』
露天風呂のへりに腰掛け、ふくらはぎから下を湯けむり立つ温泉に浸からせながら、林檎が受け答えしている。
「これどうやって撮ったらレンズ曇らないんで済むんだろう……?」
二階堂がつぶやく。動画にのめりこむパンドラの気を軽くそらそうとしたが、空振りに終わる。彼女は画面を黙って注視してばかり。
『会うなら温泉でどうですか、ってご提案、私が仕事のストレスとか言っちゃったからですか?』
『それもありますが、単に俺が温泉好きで』
『それはそれは、私は温泉にうとく……興味はあるんですが一人だと行きにくい、あと誘いやすい温泉好きの友達がいなくて。梨さんがお友達になってくれちゃったり』
言いつつ、林檎はゆったり足を組み直したり、髪をいじって――モザイクごしに推測する限り、ゆるいギブソンタックにまとめているらしい――カメラに腋下をちらりと見せたりする。
あざといな、と二階堂を苦笑させる。
『ストレスがたまるというと……林檎さんのお仕事、ハードなんですか?』
『当てられたら、教えてあげます』
『……お医者さんとか』
『大外れです、しくじっても人が死なないです……それ以外のことは、わけのわからないことでもやります』
『ハメ撮りよりわけのわからないことでしょうかね』
『ええ』
『まさか』
『例えば……美術館の展示で、わぁーすごいっ、とかひたすら感心して差し上げるサクラ役とか、とく……クライアントとかあちこち日参して雑談している体で、盗み見、盗み聞きしたり……』
『確かにわけがわからないですね』
『エンタメ業界、ぐらいでご勘弁いただきたいですね』
雰囲気が和やかに、ハメ撮りとしては焦れったく、ハードセックスが通例の梨の動画としては奇妙なほど静かに進む。
カメラが林檎の背中側に回る。モザイクからはみ出た細いうなじと黒いおくれ毛に、二階堂がどきりとさせられる。
「……パンちゃんもそんなスパイみたいなことしてるの? 守秘義務とか引っかかるとたいへんだよ」
「そんなことあたしがすると思う?」
「だろうねー」
わざと小バカにした声音で、二階堂はもう少し強めにパンドラの反応を誘ってみる。
彼女は生返事だけで、顔を画面に向けてびくともさせない。
『撮られる側、慣れてます?』
『そんなには……んんっ……あらら、イタズラですか』
『するときはカメラを置きますけど、その前に』
梨の左手が林檎の肩、腕をなでる。右手はカメラを構えたままだろうか。林檎が自分の手を伸ばして軽く振り払うまねだけする。手が触れあって軽く絡む。夕日の下でも、浅黒く太く節くれ立った男の指と、白く細くしなやかな女の指の対比が際立つ。
「林檎さんってガワかぶってるとき、もっとずっと男に当たりキツいよね。わざと除け者にしたり」
「そういうキャラぼちぼちいるわ……あの人は素が混じってるかもだけど」
二階堂は知らないふりをして誘導尋問を続ける。
「かわいい女の子が相手だとデヘデヘして態度に落差ありすぎで実は中身がおっさんでは、ってツッコまれてるのも?」
「便利よ。例えば男をあしらうとき、枕詞に……かわいい女の子にうっかり甘くなるだけでこっちが平常運転なの、驚かせてしまったらごめんなさい……とか、つけとく」
「かわいい女の子をひいきするな! とかいう男はたぶんVtuberを見ないもんね」
「イケメンは嫌いです、かっこよくて女の子の気がそっちに行っちゃうからー、とか貶す体で持ち上げることもできるわ」
「……パンちゃんも、林檎さんに甘々にしてもらったり?」
「元ネタがギリシャつながりで……あ、あんた、またあたしに何か言わせようとしてるわねっ」
パンドラが出ている配信動画を一通り見た記憶の限りでは、林檎(仮)とのそうした百合営業的な絡みがなかった。
隣で彼女が何かを言いかけ、止まる。
『――お風呂でハードに責められちゃうのかしら、のぼせちゃうかも』
『ご期待のところ恐縮ですが、ここでは甘口です』
『あらら、手加減されちゃいますか』
『のぼせるのもそうですが……カレー屋さんみたいなものです』
『その心は?』
『5辛を完食した人限定で10辛を出すとか、10辛完食した人限定で15辛を出すみたいな』
『……うふふ、聞いただけで肌がぴりぴりきちゃう』
『俺のお得意さん方は辛さに慣れっこになっちゃって、ああなんです』
また梨の左手が伸びる。林檎がいかにもくすぐったそうにケラケラ笑う声が響く。
『ん、ふふっ……甘口のままで終わっちゃったらどうしましょう』
『温泉でのご静養だった、ということで』
『だいじょうぶですか、撮れ高』
『ご心配には及びません』
画面とスピーカーの向こうで、2人のあいだに透明な火花が散った。
『これであんまりいいことされたら……足を滑らせちゃうかも』
『立ち位置、こうしたら手すりをつかみやすいですか。カメラ動かします……林檎さんの脚が長くて細くてきれいなのを映えるように』
『お上手ですね、照れちゃいます』
『脚にフォーカスすれば顔にモザイク入れる手間も少なくなりますし』
あっさりしたブラックアウトを挟んで動画のカットが変わる。
林檎がやや前かがみで腰を突き出しつつ、露天風呂の浴槽そばに設えられた2連U字手すりをそれぞれの手でつかんで立っている。カメラが床近くに置かれているのか、女体の足首から肩までをあおりのアングルでフレームに収めている。
インタビューパートが終わって最初の濡れ場、といった趣向だった。
「なんだか本格的にそういうビデオみたいね」
「個撮って、つい長回しを垂れ流しにしたり、ハイライトだけ撮って出しがちだけど、梨さんは編集に手間かけてる」
林檎の女体のそばに、彼女より頭1つ高い筋骨たくましい男がフレームインする。
「あれが梨さん? すごいわね、あんた本業で負けちゃってるよ」
「うん、すごい、ビッグスリーいくつ上がるんだろう……あと、僕は他人が鍛えるのをはかどらせるのが仕事だよ」
梨の肉体だった。ハメ撮り相手の女があまりの快楽で暴れても難なく抑えこみ、背面座位に嵌めて女を壊す。そのさまをたっぷり撮影するとき、物理的にも視覚的にも遺憾なく威力を発揮する。
林檎の体が均整の取れたルネサンスなら、梨のそれは大げさなバロックじみていて、同じ画面に並ぶとひどくアンバランスだった。
『それは……?』
『ちょっとしたオモチャです』
その梨の右手に、黒くぴったりとフィットした手袋がはめられている。
「あんた、オモチャを見る目じゃないわね。知ってるでしょ」
「……こんな勘だけ鋭いの、パンちゃんったら」
「ソフトじゃないの?」
「中辛はある」
パンドラからこちらをうかがうこともできる、という状況が二階堂の意識から抜け落ちていた。
一時停止する。
「遠くからだとただのゴム手袋だけど、よく見ると……表面がうっすらキラキラして見えるよね。極小の産毛みたいなのがびっしり仕込まれてるんだ。なでられるとめちゃくちゃゾワゾワする」
「……ちなみに、あんた、どこでそれを?」
「メーカーさんに試作品を使わせてもらって……ちなみにイマイチ」
二階堂は裏アカ男性ながら活動期間の長さと登録者数ゆえ、セックスグッズのメーカーからクローズドモニターをたまに依頼される。梨もそのモニターとして入手したらしい。
「このオモチャだと、ハードなことになっちゃうから?」
「……相手が敏感になりすぎてふだんと勝手が違うのが、難しい」
「誰か練習に付きあわせればよさそうだけど」
「あと、とてもお高い。産毛もどきが繊細ですぐダメになるし、手入れがたいへんだしで、実質使い捨て。マラソンの超軽量シューズかと思った」
「でも敏感になりすぎるんでしょ」
「……すごい代物ではある」
「〝すごい〟って」
二階堂の大ざっぱすぎる評価を聞いて、パンドラは鼻で笑った。
再生アイコンを押してからじきに、その笑いが乾く。
『――んんっ、く、ぅ……っ!?』
内ももをほんの少しなでられただけで、林檎のほっそり長い脚がびくりと反応する。相当に力が入ってしまったのか、太ももの凹みと盛り上がった部分に段差が一瞬だけ生じる。
『林檎さんって敏感ですね、助かります』
『ちょっと……おもしろい、オモチャ、ですね』
『つかまって立っていられますでしょうか?』
林檎の女体がどれほどセックス慣れしているか、パンドラは知らない。にもかかわらず〝ゾワゾワ〟の威力が一目で想像できる。単に声を出してしまうほど異様な感覚――おそらくむずがゆさのような――だけでも辛いとわかる。しかも指が離れたあとも余韻として残る。愛撫されたところに意識を集中させられてしまう。
それが二度も三度も重ねられたら。
『腰砕けの骨抜きに……されちゃったら、どうしましょう、ね』
『止めて、というときは右手以外に触れてください。頭はたいてくれても構いません』
『あら、そんなはしたないこと、できません』
『お気遣い痛み入ります。俺よく女性にぽこぽこぶたれたりどしどし蹴っ飛ばされたりするんですよ』
お互いを気遣う体で探ったり挑発したりが、スピーカーごしの音声でもどこか白々しく響く。
『んっ、んんっ……そこ……んんっ……?』
『最初は……俺にも必要でして、心の準備が。少しお付きあいお願いしたく』
黒い特製手袋をはめた右手で、林檎のデリケートゾーンの周りをするりとなでる。5本指を軽くカギ形に曲げたまま尻や下腹部を行き来させる。
すらりとした足が揺らめいて戸惑う。
『あっ! これ、はっ……あ、あぅ……っ!』
『声、そのぐらいにしてくださると、助かりますね』
『……梨さんにマイクをつけたらどうでしょう、つけられるところがあるかわかりませんが』
『うっかり濡らさないようにしないと』
本当にマイク入力が切り替わったのか、そういう演出なのか、動画にクロスフェードを挟んで、音声が急に近くなる。息遣いが波打っているのも聞き取れる。
『くふ……うぅンっ……それ、ちょっと、たまらない、ですね……!』
手袋での手マンが始まって動画の中では数十秒。愛撫の実時間が不明確だったが、林檎の興奮は明確だった。背中が耐えるように丸まり、全身が細かく震えて骨や筋がわずかに浮き沈みする。尻肉が緊張と弛緩を行ったり来たりして、ずいぶん表情豊かな印象を与える。肌に汗が幾筋も垂れている。いくらかは愛液かもしれない。
『よろしければ、これのご感想をうかがえると……諸事情ありまして、ご理解いただけると助かります、無理にとは言いませんが』
『ん、ふ、はぅ、感想ですか……なんだか、じんじんして……山芋にかぶれちゃったみたいな……でも、これ、触られれば触られるほどひどく……梨さんに、もっとずりずりってやられちゃったら、って……』
『なるほど、加減を考えないといけません』
梨が手と腕の姿勢を変える。映像でぎりぎりうかがえる程度だが、彼の意図が二階堂に察せられる。人差し指と小指を尻肉に食いこませて支点にし、中指か、あるいは薬指を使って陰核と膣肉をこすりはじめる。
『くあぁあっ!?』
林檎の声に重なってぐちぐちと音が響く。尻肉や下腹部が侵入者を拒むように引き締まる。それも一こすり、二こすりのあいだに震えてぐらつく。水音と荒い吐息がどんどん激しくなる。梨にぐちゅぐちゅ、ずるずるとさらに音を立てて掻きまわされ、腰が逃げ、梨の指が抜けかけたが彼の左腕に抑えつけられる。
『ん、ぇう、っく……ぅふ、はっ、はぁ……っ……』
『加減が難しいんですよ、この通り』
『……でも、こんなの初めてで……それ、あとで貸してくれません? 欲しくなってきちゃったかも』
『構いませんが、そろそろこれ賞味期限切れです』
『……足が早いんですね~』
『これ性能と引き換えに耐久性捨ててまして、一こすりごとにすり減って威力も減るんです。もう少しでお役御免です。このコンドームよりずっとやわです』
『……オナニーグッズにしたらヒットしそうですのに』
『作るのも、たいへんらしいですよ』
林檎が息を整えたあと、梨に再び指を挿入される。陰核を表と裏から責められる。たまらないのか、ヘコヘコと柳腰が上下する。首筋が、鎖骨のくぼみに水をためられそうなほど力む。水音や下腹部どころか、ふくらはぎやアキレス腱の筋の浮き具合さえ耐え難い快楽を訴える。
『っく、ふ……ひっ、ひぅっ! んんんっ……はぁぁっ、んぅぅぅっ……!』
『ここ、外ですから……もう少しだけ、声を落として』
『う、ふ……なぁに、いい年してちょっと羽目を外しすぎたカップル、ぐらいで済みますよ』
梨が右手を止める。林檎はまた荒い呼吸を整えている。さっきよりぷっくり張り詰め赤みの強くなった乳首が、美乳の白い肌を背景にちらちら揺らぐ。
「……ほ、ほら、声が似てるだけでしょっ、あの人だったならさすがに気にするわ」
「ブラフでしょ」
「あ~ん~た~っ!」
愛撫が再開される。
梨の右手が休まず動き、黒い手袋に白い泡の筋が垂れて目立つ。林檎の背中と脚が震え続け、嬌声が低くこもる。さっきの言葉と裏腹に、必死で嬌声を押し殺している、とありありと伝わる。太ももがきつく閉じられかけるが、すでに割りこんでいる梨の右手は強引に続ける。
ついに白い粘液が風呂床までだらりと糸を引く。
『ふっ……っうぅー……ぅ……!』
林檎が嬌声を抑えているものの、ほかに無理がにじんで見える。ヒザ頭がガクガクと笑いだす。ヒザ裏などの筋は、何か重たいものを必死で持ち上げようとしているふうに緊張している。
『っくはっ……!? んぅはぁっ……はぁっはぁっ、ん……』
無言で急に梨が右手を引く。ぱたん、と林檎の両ももが閉じ、急にバランスが動いてかふらつく。手すりを握りしめながら、よろよろ腰が沈んでついに床にヒザを突く。肩で息をしていて呼吸が収まらない。梨の手にすっぽり収まりそうな胸のふくらみが、肺腑につられて浮き沈みする。
黒白混じりになった手袋を、梨が手荒に脱ぎ捨てる。
『っく、っぅふ……あぁ、本当に、使い捨て、なんですね』
『ちょっとお気に召されたようですね』
『……梨さんも』
『何か?』
『もうおっきくしてくれてるんでしょう』
『ええ、林檎さんがとってもエロいから……見えなくてもわかるんですか?』
『温泉に反射しているのが見えて』
『ふふ、びっくりしました』
林檎に言われた通り、梨のペニスは引き締まった腹筋に迫るほど勃起している。それを彼女の背後に突きつけ、細腕と腋下から太い男の腕を回し抱き上げ、立位を強いる。
『……本当にお風呂でやっちゃうんですね』
『しつこいですが、ここ外ですから、声を落として』
林檎の尻側から膣肉を割ろうとしているらしき梨の動きが、ふっと止まる。
林檎が右手だけ手すりを離して、自分の首筋をなでて、戻す。
『気を遣わなくてもいいんですよ……私、マゾみたいなんでっ……んんっ』
梨が彼女の柳腰を両手でがっしりつかむと、林檎が露骨に不満そうに鼻を鳴らす。
「……首?」
「首絞めは梨さんの十八番なんだ」
「ご教示どうも、聞いて後悔しちゃいましたがっ」
林檎が何かささやかれたらしかったが、マイクが拾い損ねて、ただこくんとうなずく首だけが見える。
『はぅ、ほぁっ……は、あ……っ!』
梨のペニスが林檎の奥にずるりと埋めこまれていく。彼女は背筋を急角度に反らせ、全力疾走の直後のような汗と荒い息を漏らす。梨の手が腰を支えつつ陰核側をうかがうと、びくりと身をよじる。声をどうにか殺しているのか、あまりに気持ちよすぎて声も出ないのか、どちらともとえる。
『う、ぅ……もしかして、入れたまま……ダメ、おっきな声、出ちゃう、かも』
『構ってちゃんは好きですよ、俺は構いたがりすぎるみたいなんです』
『ダメ、です、ぅ……ね、あそこ、こんなにされてるのに、クリも、なんて』
『でしょうね、こんなにおまんこきゅうーって締めてくれて。俺は入れごたえがあっていい気分ですが、林檎さんは痛くありませんか』
『痛く、って……何、そんな、別に……ぉっ……!?』
梨の腰が一歩ぶん前に出る。二階堂からすると、立小便器によく書き添えられている注意書きに従って一歩前に出たぐらいの無造作な動きだった。しかし膣奥に食らった林檎にとってはとてもそんな次元ではないらしい。腰どうしが当たる音もぺしっと控えめなのに、彼女の腰や脚が強烈な快楽を受けて耐えられない、と叫ぶように一段と激しく痙攣する。股間から潮か失禁かといった体液がびちゃびちゃ落ちる。彼女の乳房もぶるぶる揺れて、手すりをつかむ手が何度も滑る。
『あのオモチャでほぐしたので、これでもけっこうヒリつくと思うんですが』
『ん、ぁう……ッ……っふ、ふーっ……い、いいえっ、いい、ご加減で……』
スピーカーが林檎の嬌声をひそかに拾う。高く、かすれて、懇願混じりで、危うい快楽につきまとわれて聞く側さえ身震いさせる声音が途切れ途切れに届く。
『……いやぁ、実を言うと、林檎さんのナカ気持ちよくって、迂闊に動くと』
『そんなこと……おっしゃって……』
『動いたほうが画がよいのは確かですね』
梨が林檎の腰をがっちり抱えてピストン運動を行う。抜き差しに合わせて肌のぶつかる音と液体の漏れる音がうるさくなる。林檎の上半身が快楽にもだえて激しくうねる。彼女につかまれて支えているはずの手すりが拘束具のように見えてくる。対して下半身はほとんど梨に体重を預けるように寄りかかって、抜き差しされるがままになっている。
『ふひゅ、そ、そぇ……ぉ、く……され……いっ、いっちゃ、ぁ……ッ……!』
『ナカだけじゃなくて、そういう色っぽいところ……いい表情してて、モザイクで隠すのがもったいない』
『だ、ダメですっ、顔は、さすがに……ぁ……だ、めぇ……も……っお、っ……!』
梨の腰の動きが変わる。逃さない、とばかりに腰に加えて腕まで使って膣奥をぐりぐり抉る。どしどしと細かく何度も責める。林檎が少しでも刺激を逃がそうとしてか、つま先立ちになったり腰をよじったりするが、すぐに梨に引き戻される。膣壁と陰茎からの音が、にぢゅ、ぐじゅ、と粘着質になる。
『っか、は……ぁ……こんな……ッ……』
梨の大きなペニスが林檎の膣内を押し広げ、引き締まった下腹部を内からぽっこり押し上げて子宮口を小突いている。シルエットにペニスが浮き出るわけではないが、林檎の反応も合わせて映ると、もしかして、と思わせる光景である。そんなハードな行為が未経験のパンドラが、目にしているだけで下腹部が緊張する。絶頂への恐怖と期待で体が震える。敏感なところが勝手に小刻みに震えて、背筋に沿ってゾクゾクとした寒気が這い上がる。脳髄が痺れるような感覚とともに視界がチカチカと明滅する。
『……やっぱり構いすぎでしょうかね、俺』
『ちょっと、いま、ぃ……ぁあぁ、でも……!』
『林檎さんにウザがられたら、俺はこう見えて落ちこみますよ』
『あの、あの……首じゃなくて、いいから、抑えてて……っ』
林檎の腰が、ガクンガクンと大きく揺れる。しゃべるどころか姿勢を保つのもせいいっぱい、という風情で懇願する。
『もう少しで、思いっきり、いって……初めて会う人、なのに……ふ、ふふっ、私、ぃ……う……っ、ぅはっ……はあ、は……っ!』
梨が腰を使いつつ、右手で林檎の口元を覆っていた。前のカットでは裸婦像のように取り澄ましていたスレンダーな裸体が、声どころかほかのタガも外れたように絶頂に踊り狂いはじめる。首も背中もぴぃんとのけ反らせ、両腕も手すりをつかんだまま痙攣する。
結合部から白濁した愛液がしとしと雨のように落ちてまた床を汚した。
『……やっちゃいけないと思うことなら気持ちいい、って言ってくださる人は限られています』
『ぅふ、ふ、ウソ……そんな……ね……』
『林檎さんは言ってくれそうな側で、ホッとしてます……おっとと』
『こ、こらぁっ……もう……』
梨がペニスを引き抜いて、足元の愛液で足を滑らせるふりをしたところで、動画のシークバーがほとんどいっぱいになっていた。
「これ……パートいくつまであるの?」
「パート2まで……あ、3もアップされてる」
「見るわよ、いまっ」
「パンちゃんも梨さんところ登録したら家で見られるよ」
「……1人じゃ……ちょっと、あんたの言うこと聞いてあげるから」
パンドラの涙目は色っぽいと言うよりまだまだかわいらしい、と二階堂が心中だけでつぶやいた。
※
『あら、タップ……クラフトビールのサーバーがありますよ、いかがでしょう』
『……そこまで神経を使わずともだいじょうぶですよ』
『メーカーの関係者さんが見てるかも』
『こっちのサーバーはハイボールのようです』
『オリジナルのブレンド作って見てください、と言わんばかりですね』
『大学生のころだったらやってたかも』
『あらあら』
パート2は露天風呂と打って変わって、飲食店のドリンクバーのようにサーバーが並んだ一角から始まる。浴衣姿の林檎が空のガラスコップを持って立っている。モザイクのかけ方が薄いのか、それともわざと薄くしているのか、他の客が林檎のほうをチラチラ見ているのが映像からもうかがえる。
他の客も多くが浴衣姿であった。
「やっぱり林檎さんって美人さんなんだろうな」
「……マスク着けてると美人に見える、とも言うわよ」
「これで美人じゃなかったら詐欺だよ」
「男って勝手よね」
美貌とスタイルだけで目を引いているのではない、と二階堂は直感している。彼の経験上、濃厚なアクメを味わった女性の一挙手一投足からは、しばらく独特のオーラが匂う。単に満ち足りているだけでなく、たおやかで、それでいて傲慢。強いて言葉にするなら、この世の幸せのすべてがここにあるんですよ、とでも語る佇まい。濃厚なアクメを与えた側の二階堂すら、時に飲まれそうになる。
映像の林檎もそう見える。温泉宿で羽根を伸ばしている客がすれ違えば、目で追ってしまっても不思議ではない。
『梨さんは……お水ですか』
『お酒入れると眠くなっちゃうんです。勃ちも悪くなるし』
『さすがにお仕事って感じですね』
『林檎さんはお酒を召されますか?』
『私もお水で。お酒は注いで呑ませるものですので……ごはん、取って差し上げますよ』
映像がサーバーの一角から離れる。長テーブルに白い陶器の大きな平皿、銀色のホテルパン、籐らしきバスケットなどが並ぶ。遠目でぼやけているが、中身は緑が野菜で黄色や茶色は肉か魚か。
「ちょっとお腹が減っちゃうかも」
「……別に」
「ならいいけど」
林檎がトレーを取ってそちらに向かい、カメラも歩くように追従する。梨の衣服の胸ポケットかどこかにカメラを装着しているらしい。
『自分で好きなもの取りますって』
『お肉とかがっつりいきましょうか~』
『……とりあえず紙エプロンを』
『麺類がお好きなんです?』
『麺類はそこそこですが、別の理由で必要なんで』
カットが切り替わり、林檎が窓際のテーブルに座っているようすが画面の半分以上を占めるようになる。彼女の向こうに、すっかり暗くなっている窓の外が、横にはテーブルと皿へ取り分けれたサラダやグリル、フライとが端に映りこんでいる。
「……ただ晩ごはん食べてるシーンなら、アップしないわよね」
「Vtuberじゃあるまいし」
「こら」
映像から聞こえる会話がひそひそとしたボリュームだった。梨が林檎の隣に着席しているらしい。
『林檎さんは、お仕事のお付きあいとかで、お酒を〝呑ませる〟んですか?』
『ちょっと前なんですが、私の……後輩にですね、勤め先の会社を言ったら、すごい〝うわぁ〟って顔されたんです』
『うわぁ、ですか』
『根に持たないから、って理由を聞いたら……なんと、わが社が労働問題で元社員ともめて敗訴したのが有名な判例になってるんですって』
『そりゃあ、うわぁ……ですね』
『いまはもう少しマシと……私が入ったころに比べたらマシ、ですが。というわけで、私のお仕事についてはもうおしまいにしてください。悪名高いんです、あまり聞かないで』
人差し指を1本立ててくちびるに添える。いたずらっぽい笑い声がスピーカーの向こうまでくすぐってくる。
「モザイクで隠れていてもあざとい。これで林檎さんが美人じゃなかったら泣くよ僕」
「勝手に泣いてなさいよ」
「ところで林檎さんってヤクザなの?」
「そんなわけないでしょーっ!?」
「話を信じる限り、堅気には聞こえないな」
「ハメ撮り売って稼いでるあんたに言われたらほとんどおしまいよ」
「林檎さんの本業についてだいぶご承知のようで」
「……あんたの考えすぎよ」
「じゃあ、林檎さん本業を隠すためにデタラメを言ってるとか? にしては実感がこもってるふうに聞こえちゃう」
「そりゃあ……お願い、あたしに何も聞かせないで」
「ああ、いこちゃんみたいに前職の話かもね」
「黙ってってたら……! んっ……」
林檎は笑い声を収める。浴衣姿の胸元から帯のすぐ上あたりまでをすっぽり覆う白い紙エプロンを着けかける。
『しょうじき、梨さんのこと侮っていました。ヤラセだろうなぁって』
『動画のことなら、ご推察の通りかもしれませんよ』
『だったとしても、いまは許しちゃう……あんなに乱れさせられちゃったもの』
『やっちゃいけないと思うことなら気持ちいいですから』
『こってりしたものとかパクパク食べるの気持ちいいですからね~』
紙エプロンの紐をうなじで結びながら、ささやく。
『首はまだですか……なんでです? 私、焦れちゃいます』
『さっきが5辛ならこれから10辛です。周りに人の気配がしっかりありますね、これがけっこうぴりぴりしませんか』
『本当に、ここでも……頭、かぁって、なって、おかしくなっちゃいそう』
『ただ、こういうところでなら、怖くなった瞬間に止めて逃げられます。俺も下手なことはできませんから』
『……そんな無粋をするように見えます?』
『相性とか気分とかにもよりますので』
調整するようにフレームがかたかたと動く。回しっぱなしのカメラが、梨の手でつままれたらしい。
『これ、胸しか映らないのでは』
『さっきは林檎さんの脚でしたから、こんどはおっぱいをメインに……モザイクの手間も減りますし』
『……撮れ高になればいいのですが』
『精一杯努力いたします』
紙エプロンで隠れた林檎の胸元がフォーカスされた。かと思えば、ホテルの大食堂の喧騒から紙一枚隔てた内側がフレームインする。そこで女の細い指が、自ら浴衣の胸元をはだけて、ブラジャーもずらして、素肌の乳房をさらす。
「こんな、その……ありえ、ないわ」
「見ず知らずのたくさんの人がメシ食ってるすぐ横で、撮られながら痴漢させてあげるなんて……梨さんにお風呂で気持ちよくされたのがよほど効いちゃったのか、それともお風呂以外でも……?」
あり得ないどころか、裏アカ男性に連絡をくれる女性にはそれなりにある、そう二階堂は思いつつパンドラに告げないでおく。気持ちよくしてもらえた相手のことならだいたい言うことを聞いてくれる、そんな淫乱かつある意味で律儀な女性がいるからアングラな二階堂や梨の稼業が成り立つ。
『んんっ……』
『どきどき、してますね』
『伝わりやすいでしょうね~』
林檎の乳房は、右側が手前、左側が奥としてカメラに映っている。高い頭身や余裕ありげな物腰と比べると、乳房のボリュームが慎ましい。大人になりかけの少女に近いとさえ見える。けれど先端の乳輪や乳首がぽってりして、紙エプロンの内側でかなり暗くてもわかるほど色づいて、貪欲に性感を求めているらしい。
そこに梨の片手が、獲物に忍び寄る野生動物のようにゆっくりと近づく。
『こっちまでどきどきしそうです』
『どきどきしてるほうが、梨さんもはかどりそうですか』
『……それは、もう』
『じゃあ、許してあげます~』
音声だけなら、恋人どうしがいちゃつきながらふざけている甘ったるい空気にも思える。
けれど梨を知る二階堂にとっては嵐の前の静けさで、林檎を知るパンドラにとっては青天の霹靂である。
『……こんな体勢で、ちゃんと触ってくれるんですか~』
『難しいですが、いっぱいごはん食べてお腹がふくれて一息ついてる……ぐらいに、周りからは見られてなきゃなりません』
『私はごはんどころじゃない、っていうのに』
『ですから、林檎さんにご協力お願いいたします』
『無茶ぶりして、困らせないでくださいね?』
二階堂が横から小声を聞き取った――「こんなところで……触らせてる時点で、無茶ぶりよ……」――パンドラは独り言のつもりらしかった。
『簡単です。おっぱいをどうやって刺激してほしいか、ご指示をください』
『つまり、私からのおねだりがほしいと~』
『おねだり! そう言ったほうがそそりますね』
『あおり文句にいささか覚えがありまして』
林檎の息遣いとささやきがゆらりと動く。乳房がレンズにふっと近づく。
『どうせおっぱいしか映してないなら、これでどうです?』
『林檎さんの顔が近いと、もっとどきどきしちゃいそう』
『それに、このほうがちょっとおっきく映りますよね』
『おっきく映ったほうがいいですか』
『おっぱいばっかり見るから、男の人は』
梨の手が指先以外見切れる。アンダーバスト側をするりとなでたらしく、画面端のデコルテがきゅっと反応し、一瞬だけ悩ましくなった吐息が二階堂とパンドラもくすぐったくさせる。
『そんなに貧乳ぶると、かえって嫌味ったらしいですよ。ほら、たぷたぷしちゃいます』
『っは……ぁ、ふ……まぁ、おっきくてもどうかな、という気もね』
『これぐらいがちょうどいいわ、って本心では思ってるでしょう』
『そりゃあ、おっきいと……ん……っ……』
『しゃべるか触るか、どっちかにしたほうがいいですか』
『……いいえ、おかまいなく~』
さらりと乳輪をくすぐられ、林檎の吐息とデコルテがまた刹那に揺らぐ。
『……例えば、梨さんは180センチぐらいですよね、身長。ちょうどいいっ』
『中学生までは背の順で前のほうでしたけど』
『これが2メートルとかそれ以上になると、あんまりじろじろ見られて恥ずかしくなる……って思いません?』
『そうですね……あと、服がたいへんそうですね、選べない』
胸愛撫が淡々と続く。ふくらみを指先がかすかに沈むほどの加減でもむ。張り詰めた乳首の周りをくるくるとくすぐる。林檎はされているのがウソのように軽くおしゃべりを続ける。
『おっぱいがおっきいってそんな感じですよ~、服や下着、水着で困るのも……んっ……』
映像だけでこりこりとしこりたっている具合が察せられる乳首を、梨の手がくりくりとつまみ、親指と中指で挟んで乳輪ごとしごく。乳房の肌が熱っぽくなっているのか、接写の画面がほんのり曇って戻る。触れられていない奥側の乳首まで期待でぷっくりふくらんで見える。
『それ、いいです……乳首、そういうの、しばらく……私が、いいって言うまで』
『右側だけでよろしいですか?』
『……届きますか、左に』
『肩を抱くようにすれば』
『ビュッフェでいちゃつきすぎに見えませんかね』
手のひらと指を使って乳房全体をふんわりと包み、それから指の股で乳輪を挟み、続いて指先で乳首をしごく。その甘い触れ方のローテーションが2度、3度。
『ああ、これ……続けられたら、たまらないですね……梨さん、素手ですよね~?』
『オモチャは何もなしです。信じていただけますか』
『少し疑っちゃうぐらい』
『オモチャなしのほうが、直に感じられて、繊細にやりやすいんです』
『ああ、納得しましたわ』
優しく繰り返される愛撫が、次第に林檎の期待をふくらませているらしい。声をノドにこもらせる頻度が増えていく。梨の指先が巧みに動く。光に乏しい紙エプロンの内側の映像ですら、白い肌がうっすら紅潮して見える。
「……オナニーする?」
「し、してないわよっ……そりゃあ、ムズムズぐらい、してる、けど」
二階堂が不意打ちで釘を刺すと、パンドラは内ももをパッと手で隠す。座ったままデリケートゾーンをもじつかせていたらしい。おそらく林檎も画面外で同様に、あるいはもっと露骨な反応をさらしているだろう。
『梨さん、その……ちょっと、ダメかも、です』
『おっぱいだけでイキそうですか? こんなみんながいるところで』
『どうしましょう、さっきちょっと目立っちゃったのに』
『だったらもっと気持ちいいですよ』
乳首をこりこりと刺激する長さが、少しずつ引き伸ばされる。息が荒くなって胸全体にぴくりとした反応が広がる。梨の手がいきなりぐい、とズレる。画面外で、林檎の手につかまれたらしい。
『ん、ぅ、あっ……は、あっ……』
『おっぱいイキは止めておきますか?』
『まだ、イッて、ません……』
『ええ、まだ間に合います』
紙エプロンの下で行われる密やかな行為が、慎重と大胆のあいだを揺れ動く。梨の指が、乳房全体をふっくらもむのも、ピンと尖った乳首だけを集中攻撃するのも、林檎の性感をじりじり刺激する。
画面に映る乳房の肌が、雫を落とした波紋のように乱れる。雫が断続的に不規則にぽたぽた落ちる。
『ぇ、あっ、んくっ……だ、め……っ……』
『ええ、ここで満足してもきっと思い出にはなりますよ』
『満足、できる、かしら……』
『もし間違ってたら、俺の後学のために訂正していただきたいのですが、イカされるとかえって気分が悪くなる、って女性もいますよね』
『……まぁ、妙にノドが乾いたり、口に変な味がしたり、しますね』
『イカせてやったぜどうだーって男の態度で全部台無し、とか。怒られたことあります』
『それは……相手しだいですよ、きっと』
『ぜひもっとご意見うかがいたいです、触るの止めていいですか』
『……相手のことを気に入ってたら、得意顔されてもかわいいなぁって思える……かも』
『じゃあ、俺はもっと林檎さんに気に入られないと……再開します?』
林檎が小さくこくんとうなずくのが、二階堂は首筋だけ見て推して知れる。傍観者なのに、頭がさっきの黒手袋でなでられたようにゾワゾワしてたまらない。
理解してしまった。梨がここで林檎を寸止め責めにかけようとしている。あなたがイケるかイケないかの境目を、体の奥のことをわかっていますし、イカせることもイカせないこともできます。そうわからせて被征服感を叩きこむつもりだ。
『ぁ……は、ふぅ……っ』
『俺はこれでも楽しいですし、興奮しますし、勉強にもなって助かってます』
乳首をいじっていた指先が一度離れて、乳房のふもとを取り巻く。小刻みな指圧で乳房がぷるぷると揺れる。
『っ……な、なにこれ……ッ……』
『おっぱいの根元にスペンス乳腺があるとかないとか……都市伝説はともかく、神経と胸筋があるんだから感じるのは当然です』
脂肪の多い乳房をこねられしごかれといった刺激と打って変わった、じわっと体の奥に浸透する甘い快楽。林檎の声と呼吸が一瞬詰まって漏れる。
『あ゙っ……ん、くぅっ……!? ゃ、あ、ぇぅ……い、っ……んんっ……』
『ごめんなさい、ついこっちでイカせようとしちゃった』
『……そういうところ、じゃないですか~?』
『俺としては、林檎さんがこんなところで恥ずかしいおっぱいイキするところ、見たくてたまりませんよ』
沈黙が広がる。拍子抜けと切なさが混じった吐息と、性欲と嗜虐欲のせめぎあう声音と、それぞれの余韻を引き立てる。
『……サドって、神経を使うんですね、私も勉強しました』
『サドは相手の反応がエサです。お料理だったら皿までぺろぺろなめてる勢いです』
愛撫が中断されて困惑と安堵を感じた林檎に対し、梨はさらなる愉悦をちらつかせる。林檎は内側でも葛藤している。受け入れるか拒むか迷いながらも、体が確実に快楽を期待してしまう。すぐに再開できるよう控えている彼の手を待っている。
『ぁ……っ……ん、ふ……っ……ぁ、うっ……!』
『……おねだり、いただいてもいいですか?』
『ぃや……もっと、焦らせるところまで、焦らして、ください』
すぅ、という深呼吸が聞こえる。林檎の吐息とリズムと色合いがズレていて、明らかに梨のものだった。〝おねだり〟で彼も身構えたらしい。手の甲に浮く筋の動きも意味深に映る。
『ん゙っ……あぅ、それだぇ、イくっ……』
『……まだ焦らせますよね』
『ふ、ふふっ、っく……』
また乳輪、乳首刺激を絡めたローテーションに戻る。画面は乳房と紙エプロンの一部のみのまま、外のビュッフェから完全に隔絶された空間を作り出す。
『ふ、ふぁっ、あ……あはっ、はっ』
『声落としてください、聞かれちゃう』
『んんっ……こんなの、聞かせてるようなものですっ』
『難しくしないでください、俺も真剣にやってるんです』
『……あなたの前で素直になっちゃうの、ちょっと、怖いです』
梨が愛撫を急に変える。乳房と脇腹の中間地点に指や掌底を添え、じわじわと胸の先端に行き来させる。横から手を伸ばして角度がきついはずなのに、まるで牛から乳を絞るかのように器用に愛撫する。
『んお゙っ……あ゙、はぁうっ……!』
搾乳に似た動きで乳房の性感帯を底から頂点まで順番に刺激される。規則的な動きで絶頂まで順調に近づき、こんなにされたらイカされてもしかたない、との諦めに追いこまれる。
『……っはぁっ……!?』
『もっと焦れていただけますか?』
林檎の手がパタパタ画面に入って動く。フレームがぐらりとズレて、梨の手が離れてアングルを調整しなおす。再調整が終わると、林檎が自分の乳房を、爪痕が残りかねない強さで握りしめているようすが映った。
「……ダメ、でしょ、こんなの、ぜったいおっぱいおかしくなるって……」
「おかしくしてもらいに来てるんだよ、こういう人たちは」
自分で刺激してでも絶頂したい、と乳房と手つきと吐息が無言で叫んでいる。よく思いとどまっているものだ、と視聴している2人は感嘆する。
『……時間とか、余裕、あります……?』
『ごはんにかける時間しだいですね』
『梨さんは、セックスしたあと眠くなるほうですか、お腹が空くほうですか』
『たいがい眠気が勝ちますが、お腹が減ったままだと変な時間に目覚めちゃって困りますよ』
林檎の手が自分の首筋とあごをなでて、画面から見切れたところで止まる。
『口を抑えるとむせてるみたいに見えちゃいますね……ごめんなさい、いじわるがすぎました』
『許します、許します、許しますから』
梨の指先が林檎の乳首をとらえる。念押しめいて二呼吸だけ静止し、乳首の根本と側面をこする。林檎の体がはっきりと震える。悲鳴と抗議と羞恥と歓喜がごちゃまぜに漏れる。
乳房をわしづかみにする梨の手指にも緊張が走る。乳首を指3本で取り囲む。そのまま単純にぐりぐりとひっぱる。
『ひふっ……ぃ……きゅ、ぅ……っ!』
林檎の体が何度も痙攣する。肌がパタパタ震えてレンズにぶつかって、汗がじっとり画面に残る。
『……水をこぼしてしまったことにしましょうか』
林檎が愛液か失禁かでイスを濡らしてしまったらしい。梨が嫌味ったらしく言って、動画のパート2が幕を下ろした。
※
「このパートから僕も初見だけど」
「……時間は? ホテルの」
「延長すればね」
「できたっけ」
「できるところじゃなきゃ、撮影に使いづらいし」
「おいくら?」
「ご視聴後のパンちゃんのご気分しだいかな」
戯れと聞こえたのかパンドラは頬をふくらませたが、真っ赤な頬では林檎かトマトのように見えてしまう。
二階堂はかろうじて笑いをこらえた。
「このあと、とてもセックスなんてする気分じゃなくなるかもしれないし、逆にする気まんまんで再延長するかもだし」
「そう。あたしに二言はないわ」
「きみも変に律儀なんだから」
パート3の再生アイコンを押す。
『この浴衣を着ると、なんだか勝手に肌が腫れぼったくなっちゃいます』
『温泉旅館の風情に合っていますし、林檎さんにもお似合いですし、何着も使わせてもらえますし』
『……着せられたまま、私、あんなに濡らされて、何度も』
『たっぷり吸ったのをこっそり手洗いしてましたよね』
『あんなのそのままお洗濯に出せませんもの。ちょっとでもマシにならないかと』
『言ってくれれば手伝いましたのに』
『いやです、恥ずかしいったら』
『下着に夢精しちゃった思春期男子みたい』
『怒りますよ~』
『ごめんなさい』
画面は広縁と思しきスペースだった。そこで林檎がイスに浴衣姿で腰掛けている。窓から昼間らしき外光が差しこんでいる。
口ぶりでは、あれから林檎は浴衣を着せられたまま〝何度も〟濡らされたらしい。素直に推測するなら、パート2の夕食から少なくとも一晩経っている。それ以上の間が開いているのか、どうか。アップロードの日時からは不明だった。
二階堂から見て、林檎の例のオーラはますますべっとり濃くなっている。
『……ねぇ、梨さん。自慢というより愚痴ととっていただきたいのですが、私、仕事が忙しくって、次にいつお会いできるか』
『あしたチェックアウト、予定通りですね』
『お別れする前に、もっとひどく、本気でしてほしいんです……じゃないと、おかしくなりそう』
梨がわざわざパート1と2をアップした理由に思い当たり、二階堂は興奮と戦慄に身震いする。この女の落差を見せたいのだ、と確信する。
『ご存じの通り、首絞めを俺はよくやってます。ただ、林檎さんにするとまずくありませんか、ご商売的に』
『お気になさらず、私も節度ある大人のつもりです』
恐怖にも似た期待が湧き上がる。十中八九、梨の一番〝辛口〟なプレイが収められている。二階堂には、梨が竜頭蛇尾な動画にはしない、という奇妙な信用が前提にある。
ちらりとパンドラをうかがう。乾いた笑いを浮かべていた。〝節度ある〟がおかしく聞こえたらしい。
「もしかしてこの梨さん……林檎さんのこと」
「Vtuberかどうかは……ただ、アイドルとかお水とかそっち系だな、ぐらいは察してそう」
「ずいぶんとまぁおおざっぱな分け方ですねぇ!」
「これら、いい顔が必要な商売でしょう。あと仕草やおしゃべりとか駆使して……これも素質が必要で、しかもそれを続けてると……うっすらだけど、出るよ、雰囲気に」
浴衣姿の林檎の女体を接写する画面に、カットが切り替わる。着こなしでは肌を隠しているのに、薄布ごしの女体が透けるように錯視させられる。胸元のシルエットでノーブラかも、と疑わせる。
アンダーバストに梨の左手が伸びて、すくい上げるように一もみして、やっぱりノーブラだと回答のように示す。
『んっ……私は、遊びのつもり、だったんですけど……梨さんは仕事人って感じ、ですね』
『ええ、俺にとっては仕事ですから、そのつもりです』
『私を気持ちよくさせて、恥ずかしいことさせるのばっかり……それもお仕事だからですか』
『ご視聴者さまのご期待を背負ってますから。気になりますか』
『私ばっかり仕事の話を聞かれたお返しです』
乳房の次は、梨の手が林檎のウエストに迫る。つるり、といたずらのようになでる。それだけで林檎がぴくりと力んで、浴衣の薄布ごしに太ももや下腹部の形が裏写りする。
『俺のプロ意識がもっとちゃんとしてたら、動画のクオリティだけを追求できるのですが』
『うふふ、遊びのない仕事なんて、それはそれで辛いですよ』
また梨の手が林檎の下腹をなでる。こんどはじっくり味わうように、指をわずかに食いこませたり、手のひらを押し当てたり。
『んんっ……! んっ、ん……うぅうぅ……』
『林檎さんみたいな人がめちゃくちゃになってくれるの、俺の趣味ですね』
『んんっ……あら、まぁ、うれしがっていいのかしら』
梨の指が、恥丘のふくらみに沿って円を描く。1周、2周。どちらかの唾を飲みこむ音がマイクに拾われる。恥丘の曲線と茂みの姿がうっすら透けてくる。ズームしているわけでもないのに、食べごろの果実が甘い汁を滴らせているようで淫靡だ。そこを梨の手が執拗になぞる。浴衣ごしに陰部全体を揉みほぐすように圧迫しはじめる。ぴくり、と腰と太ももが反応する。脚を閉じかけるが、閉じきらない。ムズムズとヒザがしらをこすりあわせる。
『んぅはぁっ……はぁっ、ふっ……あなたのこと、尊敬しちゃうようになってきました……努力して身につけたって、伝わってきます』
『そうです? ほかの女の影が見えてイヤじゃありませんか』
『うふふ、もちろん……でも、それより……』
また浴衣ごしの女の下腹部がひくつく。また梨の指先が恥丘の中心に向かってつうっと滑り降りる。太もものあいだに指先がもぐり、緊張が飛び火してか、浴衣の胸元やすねまでも布地にシワが刻まれる。官能を孕んだため息が数回漏れる。
不意に、林檎が梨の手首をつかむ。
『……してください、何を使ってもいいから』
『ちなみに、首は手だけです。道具はダメです、本当に』
『ダメ、というのは』
『紐とかうっかり強く締めすぎて解きにくくなったことがありませんか? これがお買い物袋の結び目ならともかく、人間の首だとお陀仏です』
『わかりました、確かにお陀仏は困ります』
『裸絞……格闘技の絞め技みたいな腕でやるのもダメですよ。あれ落とす技です。苦しめるものじゃない』
『……せっかくのご教示、活かせればよいのですが』
『俺以外の誰かにやってもらいたくなったときがあったら、と思いまして』
林檎が彼の手首に爪を立てんばかりにしながら、笑う。
『梨さん以外に頼もうという相手は、いませんよ。これからもきっと』
『林檎さんなら、探せばあっさり見つかるかも』
『どうだか……女好きは寄ってくるけど、とんでもないのがね……』
『とんでもないの、とは気になる言い方を』
『カラ立ち寄り、出張や副業なんてマシなほうで、大麻や強制わいせつでとっ捕まったり、なんだりかんだり、聞いた最初はヤクザや芸能界かと……なんです~っ、また仕事の話にっ』
『ついででよろしければ、愚痴の聞き役も承っております』
『愚痴なんか言いたくても言えなくしてください、あとは梨さんの趣味にお任せしたい』
『趣味と商売、すっかり重ねるのも危ないですよ。止め時、割り切り時を見失います』
『あなたは……?』
『どう見えますか』
林檎がカメラから少しズレた先をじぃっと見つめている。外が明るいのに瞳孔はひどく開いて真っ黒に潤んでいて、そこに梨の姿らしき像が反射している。
『ねぇ、これ以上焦らされたら、あなたのこと大嫌いになっちゃう』
またどちらかが唾を飲みこむ音が聞こえた。
『ふふ、お布団で抱いてもらうのが一番ですね』
『終わったあとそのまま寝られますものね』
『うふふ、ご冗談を。寝られないほどびしょびしょにしてもらいます』
カットが変わって、和室に敷いた白い敷布団と、その上で腕を絡ませる男女が固定カメラに映る。
『先に申し上げますが、首絞めの半分以上は画の問題なんですよ』
『あんなに苦しそうにしてたのに』
『絞められる前から息苦しいんです、イキすぎで……それで首絞めたら、失神されて、すぐ終わっちゃいます』
『それは困りますね、あなたも、私も』
梨の手が林檎の浴衣をたくし上げ、内ももを這う。汗ばんだ肌が指に吸いつく感触が、視聴者の二階堂にさえ真に迫って、手をムズムズさせられる。
林檎は少し恥じらうようにヒザを曲げ、梨からそっぽを向いてごろりと横寝する。けれどカメラに対してほぼ正面となり、浴衣からしどけなくこぼれる乳房や太ももがよく映っている。固く尖った乳首を無造作につままれ、電流が走ったように肩から腰までをくねらせる。
『はぅ、うっ……んくぅっ、んんんっ……』
『声、もう出してもだいじょうぶですよ』
『ノドが、その、あんまり……はぅ、ほぁっ、はぁっ……あああっ!』
『やっぱりノドはよくないんですか』
『ちがっ……かわいくないでしょ、私の声……きゃあッ、や、ぁっ!』
『ご謙遜もここまでいくと』
梨のもう片方の手で浴衣の内側をまさぐられて、きゅっと短い悲鳴をあげる。ほんの入り口に近づかれただけなのに、子宮や膣壁がわしづかみにされたように苦しくて、なのにもっとほしい。浴衣の生地にはっきりしたシミがじわりと広がる。早く責めてほしいのに梨にねだりがたいのか、八つ当たりのように両手でシーツを引っかく。まだ理性を保とうとする自制心が欲望と葛藤している、と肌や声からにじんでいる。
「うわあぁ、あれぜったい、したくてたまらないあれよ……」
「Vtuberらしい具体性のあるコメントありがとう」
「でもね本当に恥ずかしいんだからね、イカせてあげようって言われながらイカされるのって。自分の体がこんな人のモノにされちゃったみたい、って……認められなくて、かえってひどく嫌いになっちゃう」
「……覚えておきます」
「男はそういうの……ない?」
「あるとは聞くけど」
林檎の自制心をお望み通りに溶かしてやれるかが、梨の手腕の見どころである。
膣の入り口付近に侵入していた梨の指が動き出す。手首を下腹部にぴったりつけて、膣肉を掘削のように強引に開く。林檎はイヤイヤと首を振って背中を反らして大きく喘ぐ。両肩や両ももが早くもびくびくと震えている。
『ちょっと動けなくしますよ』
『ぃ……いやじゃ、ない、けど……ちょっと、怖い、です~……』
梨が、林檎の片足を布団の上に抑えつけたままその上にどしりと腰を下ろす。林檎のもう片方の脚は彼の肩に抱えあげられる。上半身に暴れのたうつだけの自由が残り、下半身がすっかり拘束されてしまう。
『ん、ダメ、んっ、はぅ、んっ……も、もう、ぃっちゃ……あ、ああイクっ、イグイグ、ぅ……ッ……!』
もぐった指が膣壁を内から摩擦し、外で親指がクリトリスを圧迫する。林檎の全身がガクガクと震え、ぐちゅっ、じゅぷっと淫らな水音が響き渡る。引き締まったウエストが痙攣する。彼女自身の手で手マンを止めようとするが、ほんのわずか手を伸ばすのが届かずさらなる絶頂に襲われる。
『んんっああぁ、ダメぇ……ま、まら、ぃ、ぃ……!』
『ほら、じゅうぶん息苦しいでしょう』
あまりに苛烈な絶頂なのか、シーツを強く握りしめすぎて彼女の手が真っ白になる。潮がびちゃびちゃとうるさいほど噴き出す。焦点の合わない目で虚空を見つめ、口からだらしなく涎が垂れている。
『……っく、ッは、あ……ひ、ふふ……それは……そう、ですけどっ……』
『そうそう、首絞めるとおしゃべりが止まっちゃうのも、イマイチです。ご視聴者さんウケ的に』
『えへ、へ……こうされて……死んじゃいそうなほどいいの……ぜひともお伝えしてあげたいですねぇ……』
『そんなヤラセみたいなこと言わなくていいですって』
手マンの一区切りと見たか、梨が手を引き抜く。精液のようにどろりと白濁した本気汁がこびりついて二階堂さえ息を呑む。それからしばらく息も絶え絶えだった林檎だが、その息も整えきらないうちに梨の股間に手を伸ばす。こんどはほんの少しふらついただけで目的地に届く。
『入れて、入れながら、首、してください』
『もう一度、もっといやらしいセリフでお願いします』
『……り、林檎の、おまんこ……指だけでも、もうたまらないんですけど……もっとほしいんです……梨さんのおちんちん、入れて、それから首もぎゅって絞めて……お願い……!』
『……お上手ですね、では生ですが』
梨のペニスが林檎の濡れそぼった膣口にあてがわれるかどうかというところで、林檎の全身ががくがくと震えてくねる。口では生と言っているがこれはハメ撮りであり、実際はゴムをつけているか、あるいはゴム以外のピルなどで避妊している可能性もある。
『んひぃっ、お゙っ、ほぉぉおっ……!』
『きっつきつですね、初めてのときよりすごくなってる』
林檎の壮絶な雌吠えのせいで、賢しげな解釈が二階堂とパンドラから吹っ飛ぶ。林檎の強制的に開かされた太ももの間で、梨の大きく硬いペニスがずりずりと挿入されていくのは処刑じみて凄惨でもある。膣肉が痙攣しっぱなしで粘っこい愛液が泡立ちつつあとからあとからこぼれる。
『ぜぇっは、ひ、はっ……あっ、あっ、はひっ、はっ……!』
『横向きのままでいてください、じゃないと、よだれで窒息しちゃう』
二階堂がついごくりとノドを鳴らす。梨のペニスが入れられたまま動かず、けれど林檎の膣肉が1回ひくつくごとに梨のペニスに合わせて作り変えられている。まれに二階堂も体験することだった。相手の膣肉が自分のために変わってくれているさまを味わって、つい仕事を忘れて気持ちよく達してしまう――(腰使いなら男から女に合わせられるけれど、ペニスの形は完全勃起したらいつも同じはずだし……)――相手の女性から、頭がおかしくなるほど気持ちいいと勝手にそうなる、とも聞いたことがある。
それがカメラの向こうで起きている。まさかと思いつつ、どうしてもそう考えてしまう。
『ふぇ、え、へへ……そんな目で、見下されながら、絞められちゃうんです、ね……』
『休み休みですよ』
『やだ、やですっ、きゅって……おっ、ぉぉっ、ぉっ……!』
膣奥までペニスに蹂躙された上に、ゆるくとは言え首を絞められ、負担がかかった林檎のからは〝お〟の声しか出てこない。強すぎる刺激に手も足も爪先までぴんと張り詰める。松葉くずしに似た体勢に実に映える反応だった。ふつうのハメ撮りであればフィニッシュにふさわしい。
『っかはあっ!? おォおお゙……ッ!! ふかいっ、ふかっ、あ、っ……!』
首に手をかけられたまま、梨からどしどしとピストンを見舞われる。膣内から与えられる暴力的な快楽と酸欠の恍惚に溺れる。彼女の頭髪が枕とシーツに何度も乱暴に擦れてギブソンタックが半壊する。
急にピストンが止まる。
『あっ、だっ……お、お、く、や、め……う、ぅぅ、どうしてぇ……』
『髪が……傷んじゃいますよ?』
『わ、わぁ、さすが動画のプロ……』
『あと、バックもやるとき、背中とうなじ見ながらしたいんです。ごめんなさい、わがままで』
林檎が寝転され貫かれたまま髪を整える小休止は――『すみません……ちょっと手伝って』『僕の手、べとべとですよ』『私も一緒ですよ……』――明らかに激しいセックスの興奮を保ったままいきなり内緒話のように静かで親しげになって、かえって非現実的だった。
「あーもう、これで事後でいいでしょ、雰囲気がさあっ」
「まだ残り時間がいっぱいあるよ」
「だって、これ以上……」
髪がどうにか整った。二階堂は、首や肩やデコルテにまとわりついて乱れていた様も捨てがたいと半分だけ思った。もう半分は、あとでまた崩してくれるのだろう、という梨への信用だった。
『梨さん、しょうじき、もういまにも意識が飛んじゃいそうなんですけど……でも、飛んだら……終わり、ですよね……』
『すっかり疲れたり眠くなったりしたら、あともうダメですよ、セックスどころじゃありません』
『……あ、あしたも……』
いっぽうパンドラは驚いてくちびるをパクパクさせていた。林檎が男にこんな媚びた顔と声を向けているなんて、と何度も目と耳を疑った。
『ダメです。きょうを悔いのないようにしましょう』
『お金ならっ、このぐらいどうとでもしますからっ』
『いや、あの……もう聞くまいと思っていましたが……いかがわしいお金じゃないでしょうね。林檎さんって話を聞いてる限り、堅気にはとても』
二階堂も目と耳を疑うことになった。
『っく、く……くううう、ぁあっ、か、勝手にイカせようとしないでくださいぃっ……これでも上場して……い……っく、い、い……ひたっ!? ひたはんじゃいましゅっ!』
『ご職歴をうかがっても?』
『ほ、ほうほふ――はぎゅっ!?』
『なるほど、本当っぽく聞こえます……でも、林檎さんの体は……それは知られてもぜんぜんいいこと、って言ってます』
梨と林檎の会話は滑稽だったが、絵面は惨たらしさの混じった痴態で、シュールさがますますひどくなる。林檎がガクガクと腰を震わせながら失禁し、モザイクごしにもくちびるから泡まみれの唾液がこぼれていると察せられる。
『く……そんないじわるは求めてませんっ、お金なら払えますよっ、あなたが専業だとしたら、私その5倍は稼いでますっ』
『5倍は……ちょっと気になりますけど、わかるんですか』
『こちとら予算のぶん取りから始まる商売でしたよっ、他人の懐具合なんてちょっと見りゃあ……』
二階堂は耐えかねて、さして聞きたいわけでもない質問をこぼす。
「……Vtuberってそういう商売なの?」
「ええと、たぶん……企業案件とかの話、かも――」
現実逃避の問答が濁った悲鳴に叩き割られる。
『――っくひっ、ひぅっ、ひ……ァひッ! あ、あぁ、ぉく、っだ……ッおお゙おお゙っ……!』
『気になりますけど、ごめんなさい。僕にも予定がありますんで』
『ひぃ、ひっ……う、ゔッ……っくぅ……う、恨み、ます、よ……?』
『その顔、視聴者さんにも見せたかったなぁ』
『わ、私、こんなにしてッ……ぜったい許さない、許しませんったら……んぐうっ!? あお゙……ぉお゙イグ……ぅ……っ!』
『こんなに恨まれちゃったら、もう会えませんね』
『やだっ、ばかっ、いけずっ、しんじゃえっ……あ゙っ、だ、ぇ、こぇらめ……あはっあお゙おおっ……ひゅっ……き、ぃ……』
梨と林檎の行為は、べちゃべちゃと腰がぶつかって音が鳴る程度の松葉くずしで、ときどき梨が首を絞めてやるだけだった。ソフトSMの範囲に収まっていた。
林檎の反応だけが狂乱じみていた。
「パンちゃんは、できれば後学のため見ておくべきだよ」
「……うぅう」
「もしパンちゃんが、いこちゃんじゃなくて林檎さんをお姉さまって呼んでたら、次きみの番だったかもよ」
「嫌な説得力があるわ」
二階堂が動画を一時停止させたのを確かめられたのか、パンドラは目を開けて耳から手を離した。
「……あのね、一応……林檎さん、ちゃんと仕事はしてるんだよ」
「うん」
「カドが立つからお金ってお互い細かいところ伏せがち、だけど」
パンドラにパート3まで見せてしまったのを若干後悔しつつ、早く林檎の痴態と破綻の先を見たいという欲望をなだめつつ、二階堂はどうにか相槌を打つ。
「広告代理店あがりで企業の広報部署の扱い方に慣れてるの」
「だろうね」
「企業案件の件数ならダントツで、いろいろ教えてもらったわ……社内稟議にかけたとき役員のおじさんが納得するかどうかは、チャンネル登録数よりクリーンっぽさとギャラのお手ごろ感と前例の数だ、とか」
「ああ、女の子びいきってキャラそういう意味も」
「役員のおじさんが有能ならすぐ別の会社にヘッドハントされるから、それを待って引き抜き先でもう1件のチャンスあり、とか」
「おじさんキラーなんだねぇ」
「……ごめん、話をそらしちゃった」
「無理はしなくても」
「いい、見る、見ますとも、乗りかかった船です」
パンドラが動画再生ボタンを押す。止まっていた狂乱の痴態が動き出す。
『もうむり、む、ぃ……あっく、はっくっ! んんあああっ!! ご、ごめんなさい、ごめ……んんん゙っ!』
『首、絞めたくないです。林檎さんって喘ぎ声がいいし、お話も面白いし』
梨のペニスがずるりと押し入ったり、ぬるりと抜けかけたりする。緩慢な動きにもかかわらず、林檎の全身が火あぶりにされているようにもだえ苦しむ。
『い、いいから、もう……ひ、い……いぐううゔぅうーっ!』
金切り声を上げながら、林檎が梨に逆らって背中から太ももまでを弓なりにする。梨の肩や腕の筋肉が力んでこんもりとふくれ、そこに女の割れ目から噴き出した透明な飛沫がぶつかって弾ける。
『すっごい力ですね、負けそうになっちゃった』
『っうぅ、ひゅ……ぜぇ……っは、ぁ……ま、まいった、わね……』
『時間が来れば終わりますよ』
『で、す、よ、ね……』
『でも……ただ、一つ言うなら』
梨の肩に引っかけられ宙ぶらりんだった林檎の片足が布団に、静かに下ろされる。それだけでずいぶん地に足が着いた安堵感がやってきて、何も安心できないのに笑えてしまう。膣肉を貫かれたまま、梨の顔が耳元まで迫ってくる。
男が女に覆いかぶさる、オーソドックスな正常位が画面に映る。
『一番やっちゃいけないと思うことが、一番気持ちいいんです』
『……ぅ、ふふ、へ……聞いちゃいけないこと、聞いちゃったぁ』
林檎が2度、3度しゃくり上げたあと、梨の首に両腕を絡めた。
『ねぇ、聞いて、私――』
それからは梨の本領だった。
『あ、ふあ……ああ゙っグ……ひぃいいっぐいぐっ……イッでるっい゙っでる゙!!』
まず正常位で突き殺す。首をゆるく絞めながら膣奥ばかりを責め抜く。林檎が総身を汗だくにしつつめちゃくちゃにのたくらせて絶頂する。絶叫じみた嬌声がかすれて途切れ、ほんの少し止まったあとまた引きずり出され、何度も響き渡る。
林檎から背中をかきむしられ、腰にかかとをぶつけられ、それを拍車のように梨がピストン運動を激しくする。林檎の秘所から何度も潮を浴びせられる。
『あぐ、ぐひいい……っげええほ、ぉおっ、ご、ぉ……』
『……失礼しました』
林檎がむせる。梨から横寝にさせられ背中をさすってもらう。モザイクごしでぼやけて見えないはずなのに、彼女の瞳孔が開ききって、時おり白目を剥いて、舌がだらしなくくちびるから垂れ下がっているように思えてしまう。
『林檎さん、こんどはあなたが上に……』
『……うごけない、わ……』
『俺が動かしてもいいんですけど、でも』
『ああ、おねがい、おねがい、よ、私……』
肉体が限界でも拒否は不可能だった。
『ひいい、いい……も、もう……イク……お、お……ぉほお゙お゙お゙っ!』
『ああ、いいです……それに林檎さん、スレンダーで腰振るの映える……』
『う、うぅう、ぅ……嫌い、です……』
『この腰使いで男嫌いはウソでしょう』
林檎は梨のたくましい体にまたがってゆさゆさ動いている。しかし彼が主導権を明白に握っている。
『ぉ……男なんて、嫌い、です……あ゙あ゙っ……ちっちぐびダメぇ……い゙ぐっ! い゙ぐぅぅっ!!』
『ウソついてるほうが気持ちいいですか』
梨の指が乳首を挟み潰し、クリトリスを指先で弾く度に彼女の腰が跳ね上がる。下からの突き上げが始まる。林檎の背筋が弓なりに反り返り、梨の上で激しく跳ねる。結合部からべちゃ、ぐちゃと熟れすぎた果実を潰したような異音も鳴る。膣痙攣で膣肉とペニスの密着が乱れて、〝マン屁〟のように響いてしまったらしい。
『ぅ、ぅあ、あ……ご、ごめん、なさいぃ……これは、これは、ダメ、なんです……わたし、ぃ……』
『口だけは素直じゃないですね』
『ひっ、ひっ……! お、奥も……きもちぃ……あっ、はっ、はぁっ、あっ……!』
男にまたがり、ペニスをくわえこんで踊り狂う。そんな痴態を曝け出して屈辱の極致であるはずなのに林檎は自分から何度も尻を打ちつけてしまう。そうするたびに梨の亀頭がポルチオをノックしてくれて、すべてがどうでもよくなるほど甘美な快楽に征服してもらえる。あまりにも即座で明白で強烈な快楽で、それ以外どうでもよくなってしまう。
『おほっ、お……おおぉっ……おっほぉっ、んおおお゙お゙おお゙っ……!』
林檎が力尽きたところで動画は終わった。
「……何かするつもりなら、その前にまず、いこちゃんには相談するんだよ、最悪僕でもいいけど」
ラブホテルの時間が切れるまでパンドラは黙ったままだった。二階堂も強いて促さなかった。
※
撮影翌日の林檎は下半身の筋肉痛がひどく、チェックアウトのとき梨の肩を借りてよたよた歩き、宿に呼んだタクシーにやっとの思いで乗った。
「途中まで相乗りしていきましょうよ、私が払うから」
「俺の荷物も乗りますかね」
「余裕でしょう、まさか大荷物じゃあるまいし」
梨も乗りこんで、2人とも後部座席でシートベルトを締めて発車したあと、こっそりささやく。
「きのうあなたに言ったことは真っ赤なウソなんですよ、うふふ」
「……それも言っちゃいけないことではありますがね」
「取り消しちゃえば、もう1回言えますよね~、言わせてくれますよねっ」
彼女がハメ撮りに映ったより貪欲であることを、彼だけが知っている。
(おしまい)