※この作品はR-18です。

裏アカ快楽責め系ハメ撮り系連作(仮)   作:ふりーじ屋/家庭内禁書

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 有償依頼140件目です。ご感想くださるとうれしいです。
ご依頼は http://skeb.jp/@freege_affected か、 http://twpf.jp/freege_affected からどうぞ。pixivリクエスト https://www.pixiv.net/request/plans/7443 も受け付けています。 ※pixiv、ハーメルンとくるっぷに転載しています。

あらすじ兼オリジナル作品リクエストのご参考までに、ご依頼内容を掲示します。
https://skeb.jp/@freege_affected/works/66



チワワ系女子大生(※胸はでかい)のマゾこじらせをどうにかしようとがんばるお話

 もちろん、会議室的な建前は社会にとって重要で、だから本気じゃなくても「そういうことにしておこう」として演技する。しかしそれが演技だと自覚する場として、廊下の本音も必要になるわけです。

 ここで両者の境目をなくせば「すべてが建前通りの美しい空間ができる」というのは錯覚で、逆に全部がウソにしかみえないカオスに陥ってしまう。

 

――千葉雅也(與那覇潤『過剰可視化社会』第4章p155-156)

 

 

 

※

 

『だから、ここらでひとつガツンと無理やりひぃひぃ言わせてやって、お手伝いしてあげて』

『だからと言われても意味不明なんですが』

 

 二階堂はスピーカー越しにも間違いなく伝わるよう、本心より少しだけ大げさにため息をついた。

 

『あのねぇ、パンちゃんはガワかぶってるときほぼ素なせいか、気持ちの切り替えが難しいらしくって、それをね』

『そこからどう強姦につながるんですか』

『このあいだは合意の上でしようとしてできなかった、と』

『セックスすれば気持ちが切り替えられるけど合意の上ではダメだ、と?』

『えっちしたいなんて言ったらパンちゃんのキャラめでたくぶち壊しですもの』

 

 否定されることを期待した推測をあえて言ったら、スピーカー越しの反応から察する限り、当たってしまったらしかった。

 こんどは本心どおりのため息が漏れた。

 

『ぶち壊してどうするんですか』

『たまには必要なのよ、で、太陽でダメだったから北風で』

『下手な美人局に聞こえますね』

『んもう! お姉さんの顔を立ててよ!』

『……いこちゃんの道連れを増やしちゃえ、って邪推もしちゃいます』

『パンちゃんがきみの味を覚えちゃったのが私のせい、って責任感からですぅ~』

 

 ウェブカメラの向こうで、有洒川尉子が自分の額を片手でこつんと叩きながら小首をかしげた。数歳とはいえ自分より年上の女性からそう見せられると――(ガワをかぶっていれば、さまになるとしても)――かわいげより居たたまれなさが勝った。時折、所作があざとすぎると感じさせられる。彼女のVtuberとしての職業病か、元からの性格か。いまだセックス(と、ちょっとした税務のアドバイスをもらう)だけの付き合いである彼は判断を差し控える。

 二階堂は彼女の額をはたきたくなる衝動にかられた。代わりに人差し指を立てて彼女の頬を突くまねをした。

 

『……素でやってるから気持ちの切り替えが難しい、というのは?』

『観ている側から同じように見えても、演じる側からしたら、生身の人間に向かって演じるか画面の前の人間に向かって演じるかじゃ、ぜんぜん勝手が違う。なのに同じように見せようとするから、演じているパンちゃんだけギャップにぶち当たる』

『心理学とか哲学みたいなお話はけっこう苦手です』

『例えば演劇の世界では……毎朝自分の部屋で靴下を履くのと舞台の上で靴下を履くのでは同じ動作でも全然違うって……ほら、きみだって初めはカメラの前でのセックスでなんか違う、って感覚あったんじゃない?』

『ハメ撮りのとき、僕は素よりもサドを演じてますよ』

『そんな言い方されると、お姉さん素の二階堂くんにも興味が出てきちゃ……じゃなくて、話をレイプに戻すと』

『戻さなくていいんですけどね』

 

 二階堂は副業として裏アカで素人女性とのハメ撮りをアップしている。相手女性を快楽で屈服させる(ように見せる)のが〝作風〟である。いま通話している尉子からもAVさながらの痴態を引き出してアップロードしてやったことがある。

 

『……念のためですが、パンちゃんについての話ですよね、いこちゃんじゃなくて』

『うん、パンちゃんと話す?』

 

 二階堂は――(横で聞いてるってわざと隠してやがったな)――悪態をつきかけて、どうにか表情を歪めるだけにとどめる。

 

『……そんなにびっくりする? あんたがあたしに最初にやったことに比べりゃ大したことないでしょ』

『ひょっとして根に持たれてしまったかな』

『持たないほうがおかしいわよ』

 

 八百会パンドラがモニタの端から顔を出す。仰々しい名前が見た目に不釣り合いで、二階堂も、尉子を含む同業やファンの大半も〝パンちゃん〟としか呼ばない。

 二階堂が初対面で『経理課にいそう』なお姉さん、と思って口にまで出した尉子の横にパンドラが並ぶと、彼女のそそっかしそうな印象と記憶がますます引き立つ。

 パンドラの髪は、12トーンほどの明るいブラウンをふんわりしたボブカットにしている。両こめかみから頬にかけて目立ってふくらむセットが入っている。ふんわりした髪型で頬の輪郭を隠して小顔に見せようとしている。少しやりすぎで、横髪の主張が強く犬の垂れ耳のようにも見えて、おかげで顔もかわいらしいが犬っぽく見える。それもきゃんきゃん騒がしい小型犬である。二階堂の記憶のままの姿だった。

 パンドラは成人女性にしては低めの背丈で、二階堂からすると見下ろすアングルの印象が強かった。パンドラが興奮すると怒っていても感じていてもチワワかミニチュアダックスフンドのようにきゃんきゃん騒がしい、という印象も呼び起こされた。

 

『いこちゃんの言ったことについて、補足や訂正があった聞かせて』

『あのね、ただあたしは、このあいだあんたにムダに時間とらせちゃったってのを……レイプされたいなんて成り立たないでしょ』

『七文字で矛盾できるってすごいよね』

 

 彼の記憶と裏腹にパンドラがうつむき気味にぼそぼそつぶやいた。オーバーサイズのTシャツに背中が丸まり気味になった姿勢で、こんもりとしたバストだけが偉そうに重々しく突き出ている。彼女はそこだけ小型犬らしくない。

 

『さぁてあとは若い2人だけで、お姉さんは――』

『――自分でおばさんだと思ってないくせにおばさんムーヴするのかえって見苦しいですよ、めんどうそうな話から逃げるためならなおさら』

『やだなぁ邪推しちゃあ、元はと言えばきみと私から始まった話じゃない』

 

 尉子に釘を何本も刺してモニタの中に引き止めつつ、二階堂はパンドラからも話を聞いた。

 まったく矛盾は解消しなかった。

 ただ、パンドラは二階堂からレイプしてもらえることに、二階堂はそれをハメ撮りとして裏アカ活動に使えることに、尉子はハメ撮りを手伝う見返りに別途〝いい感じに〟セックスしてもらえる話でまとまった。

 3人とも、理屈や体面を棚上げして金銭や快楽で話をつけられるほどには俗物であった。

 

 

 

※

 

『これ……あんたや、あんたんとこの視聴者サマの趣味?』

『ふだんやらない趣向だと、マンネリ防止の工夫だと思ってくれて、滑ったとしても大目に見てもらえるかも』

『ずいぶん消極的な理由ね……』

 

 都心部の某環状線、車両連結部近くで吊り革をつかんでパンドラが立っていた。白いブラウスにリボンタイを締めて、紺色のブレザーにマドラスチェックのプリーツスカートをまとい、黒いニーソックスとローファーを履いた出で立ち。ややクラシカルな女子高生に見える。

 実際、パンドラはハメ撮りに際して、自分の高校時代の制服を引っ張り出してくる羽目になっていた。

 

『そもそも屋外ってのが大冒険なんだよ、僕には』

『あたしだって』

 

 乗客の目線から彼女を隠すように、二階堂が斜め後ろに立っている。平日昼前の中途半端な時間で、車内は席が半ば埋まり立ったままの人影がちらほら見える、といった具合だった。

 

『それと、資料の都合もあった』

『何の資料よ』

『痴漢モノAVを参考にしたら、圧倒的に女子高生が多かった』

『実際の痴漢は参考に?』

『痴漢の経験者が知り合いにいないよ』

『あたし、痴漢に遭った友達ならいるけど』

『めくったりボタン外したりで、画面が作りやすいのも大きい気がする』

『撮るの楽しくなってきましたか』

『やるからには真剣にやるわよ』

 

 内緒話に、パンドラの横・二階堂の斜め前から尉子が割りこむ。片手に持ったスマートフォンをじっと眺めながら、残りの手にはめた指輪――に見せかけた隠しカメラで、二階堂が貸した――をパンドラに向けている。

 レイプの趣向は、二階堂の難色を2人が押し切る形で電車痴漢となった――『あたしにとってはいちばんイメージが湧きやすいかな』『現実的には、他人がいるところなんて気が散って無理だよ』『私、二階堂くんからカフェで痴漢されたことあるけど?』――とりあえず1回やってみる、ということにされてしまった。

 

『うわわっ、何ですかいこちゃん』

『……両手が塞がっててバランスがとりにくい』

『線路の方向に対して斜めに立つと揺られにくくなりますよ』

『するとパンちゃんを撮りにくくなっちゃう』

 

 二階堂は尉子の肩越しに彼女のスマートフォンを覗きこむ。パンドラの姿をうまくフレームに収めようとして四苦八苦しているらしい。フレームが不規則にくらくら揺れて、編集のとき酔ってしまいそうだと心配になる。

 そんな悪条件にもかかわらず、パンドラの女体はモニタにあふれんばかりのセックスアピールを放っている。

 

『みんなパンちゃんのこと見てて、困っちゃうな』

『こんな時間に制服着て電車乗ってるなんて堅気に見えないからよ』

『いるもんだよ、パンちゃんの高校にはいなかったかもしれないけど』

 

 ブラウスとブレザーはきっちり校則どおりのようにボタンをしめていて、細い肩とウエストに対しバストがぱつぱつに盛り上がっている。いこちゃんのぎこちないカメラワークでもきっちりとらえられる迫力。高校入学のころはもっと慎ましいバストで、在学中に成長してきつくなったけれどもうすぐ卒業だから、とそのままにしてしまったのだろうか。二階堂にそんな邪推がよぎる。

 そんなバストを以前もんで喘がせたことがあり、これから電車内でもんでしまうと思うと、危ういとわかっていても逆らい難い優越感も湧きあがる。他人に隠れてすする甘い蜜は2倍おいしい。

 

『怪しまれてるんじゃないよ、パンちゃんがかわいくておっぱいでかいから、めっちゃ視線がきてる』

『こんなもんでしょ』

『このぐらい慣れっこってことかな、言うことが違う』

 

 尉子がもぞもぞ立ち方を試行錯誤したあと、不意に3人の前の空いていた縦座席の一つに座った。

 

『いこちゃん、それじゃ僕が丸見えなんですけど』

『こうしないとパンちゃんのおみ足が撮れないの』

『スマホに棒でもつけたら』

『一緒に鉄道警察に出頭しようか』

『だから電車は嫌って言ったのに』

 

 尉子が座って遮蔽物が減ったのを補うようパンドラの真横に立ち位置をずらす。そうなった二階堂の視界では、パンドラの下半身はプリーツスカートと、ソックスに包まれたヒザやふくらはぎ、ローファーぐらいしか見えない。尉子のスマートフォンものぞきこみにくい。

 本当の痴漢ならば触れればじゅうぶんだろうが、ハメ撮りのためのヤラセ痴漢としては映り具合がわからず、手を伸ばしかねる。

 

『プリーツスカートが似合う若々しいおみ足、いいなぁ、触りたくなっちゃうかも』

『いこちゃんがパンちゃんを痴漢すれば俺いらなくなりますね』

『……お姉さまは、痴漢なんてしないもんっ』

『僕だってしたことなかったのに』

 

 開き直って、片手の指先をぬっと伸ばして、パンドラの横乳をむにゅりと突く。愛撫というより、相手の肩を叩いて振り向きざまにほっぺたをつつくぐらいの勢いだった。さっと手を引っこめる。彼女がヒジでいたずらな手を追い払おうとするが遅れて空振りに終わる。むしろその拍子にゆさっとバストが重そうに揺れて、彼女の羞恥を上塗りしてしまう。

 それから何度か、パンドラの乳房や尻や太ももにヒット・アンド・アウェイを繰り返す。パンドラが大げさに――かつてラブホテルで二階堂に胸をもませたときよりずっと――肩や腰をくねらせるせいで、乗客から怪しまれていないかますます気になってしまう。

 

『う……うぅ~っ、この痴漢め……』

『こら、私が撮ってないところで痴漢しないっ』

『やっぱり、いこちゃん撮る側を楽しんでるでしょ』

『役割をちゃんとこなそうとしているだけよ』

 

 頬を赤らめながら顔をしかめるパンドラはすでに痴漢被害者という役割らしかった。これに見合う迫真の痴漢を演じろ、と言われると二階堂も腰が引けてくる。ごまかしがてら首を振って周囲の視線を探る。

 

『……そりゃあ見るよね、かわいいし、おっぱいおっきいし』

『好きでここまでおっきくなったわけじゃないわよ』

『かわいい、は否定しないんだね』

『あたしたちいつもかわいげを値踏みされてるの。出番がないときだって、あいつは本当にかわいいやつなのか、っていつも見られているの』

『顔を出していないぶん芸能人よりかマシだけど、キャラクターで売るってそういうとこあるのよ。二階堂くんは本当にセックスうまいのか、とか見られてないだろうけど』

 

 もしかしてそんな強迫症じみた意識のせいでレイプされなきゃなんて暴論に向かってしまうのでは、と言いかけてどうにか飲みこむ。

 

『逆に芸能人よりVtuberのほうがきついということはあるんですか』

『……Vtuberの立ち居振る舞いには、界隈全般に言えるコテコテのだったり、ハコやキャラごとのだったり、お約束の数も種類も多い。これは芸能人よりしばりきつめかな』

『多いときついんですか?』

『二階堂くん私たちと付き合ってる割にうといよね……例えるなら……ミュージカルって見たことある? セリフを言うときその場に相手がいたら手振りで指す、〝私〟と言うなら必ず胸に手を当てる、言うとき一歩前に出て言い終わると元の位置に……うんぬんかんぬん、お芝居ってそういう決まりきった所作があるけどVtuberはもっと多い』

『再生数とかヒートマップとか数字でフィードバックでちゃうから、種類も数もどんどん増えちゃう……わざわざ言わないけどね』

『そんなにシステマチックだと、Vtuberって見た目よりずいぶんきゅうくつなんですね』

 

 パンドラに必要なのは痴漢よりカウンセリングでは、という言葉も飲みこむ。受診を勧めるにしても一度やることやってからで良い、というほどの下心はある。

 

『煩雑なお約束はVtuberの盾でもあるわ』

『何からの防御なんですか』

『例えば芸能人だったらファンとじかに接する機会が少ないし、そんなことやってられないぐらい仕事が多くて初めて専業で食べられるって世界だし、厄介な人も背広の人がはがしてくれるし、煩雑なお約束なんかいらない、でもねVtuberって』

『オンラインなら、厄介ファンにハラスメントされないで済みますよね』

『そのぶんほかのところで歯止めがきいてないきらいがあるわ。それを抑えるため〝私がこうしてるんだからあなたたちはこうしなさい〟って歯止めにしている』

『多くなると、古参が新参にマウントとる道具に使いやがるってマイナスも無視できないけど……』

 

 愚痴を聞きながら合間に痴漢のまねをするという、人より女性経験が多い二階堂でさえ想像だにしなかった行為をどうにか続けていると、不意にパンドラが高く短い声を上げた。

 

『降りなきゃっ』

『なに、お手洗いでも……痛いっ、わざと踏んだな!?』

『不正乗車になっちゃうわよっ』

 

 

 

 パンドラから数歩遅れて下車しようとしたせいで、二階堂と尉子はドアに挟まれかけた。

 

『……不正乗車ってなんですか』

『遠回りでもいいけど、経路が一筆書きじゃないとダメ……らしいわ』

『パンちゃんって……詳しいの?』

『……詳しかったら電車痴漢なんて持ちかけないと思うなぁ』

 

 やっぱり必要なのはカウンセリングでは、とまた二階堂は言いかけた。

 

『セックスなら任せとけ~みたいな顔してるくせに、へたっぴっ』

『痴漢がへたでバカにされる日が来るとは』

『お姉さま、この電車代って交通費で落とすんですか』

『……いいんじゃない?』

『投げやりですね!?』

 

 ここまで振り回されてあげたからには、ぴぃぴぃ鳴かせて溜飲を下げさせてもらってもいいだろう、という気がかろうじて勝った。

 

 

 

※

 

 次の趣向は尉子が主になって決めた。

 

「薄暗かったり、他の部屋の歌声がたまに入りこんだりするの、雰囲気出てるわね」

「そのぶん、尉子ちゃんがカメラとマイクに四苦八苦したようですが」

「まぁね」

 

 次の〝リハーサル〟場所に、駅前カラオケボックスの個室を選んだ――『昔バイトしてたころのお店がね、飲み会のあとの大学生がラブホ代わりに使いやがって、ひどくてさ~』――尉子が御座なりと自覚しているふうな声音で提案して、それがするりと通った。

 二階堂からすれば、手近にあって電車よりマシな場所であれば申し分なかった――『次にいつ集まれるかわからないものね……』――パンドラも反対しなかった。

 

「パンちゃんはどうだった?」

「……めちゃくちゃ恥ずかしかったんですけど」

「店員さんにおしぼりもらったときのパンちゃんの顔ったら見ものでしたね。撮れてました?」

「それをこれからチェックするんじゃない」

 

 映像チェックにたえるほどハメ撮りをできた時点で、電車痴漢よりまともなリハーサルだった、との感触はあった。

 

「カラオケは固定カメラも置いて回せるから、電車のより編集しやすそうですね」

「いこちゃん、そこだとパンちゃんが隠れちゃう、ズレて」

「言うならその時に言ってよ~っ」

「……なるほど、監督なしで映像を撮るとこうなるのね」

 

 個室の長ソファに腰掛けているパンドラが、二階堂から体をまさぐられる。腕やヒジを揺らして抵抗する。2度、3度ぐらいはそれなりに本気で嫌がっているふうに写っていたが、彼の手がエスカレートするのに抵抗がそのままだと、いかにも抵抗しているふりだけ、といった印象に移り変わる。

 ほどなくセーラー服のトップスをまくりあげられる。パンドラが手で下着を隠そうとして、むにゅりとバストがはみ出て――『うわ、やっぱりでっかぃ……』――かえって胸の豊かさを強調してしまっている。

 

「いこちゃんのつぶやきが映像に入っちゃってるんですけど」

「言うでしょ、これは」

 

 二階堂の矛先がパンドラの下半身に移る――『ちょ、あんた、本気で……ん、ダメ、んっ……!』――抵抗にびくり、といった不随意運動が入り交じる。

 

「思ったよりレイプっぽく見えるね」

「あんたが無理やり……その……だって……」

「これならもっと続けてもよかったかな」

 

 パンドラは太もものあいだに二階堂の手を滑りこまされ、抵抗するも下着をずらされ愛撫でこじ開けられる。店員をごまかしやすいよう半脱ぎで肝心なところだけ露出させられているのが強姦らしさを高めている。

 パンドラが不意に背中をそらし、黄色い悲鳴が上がる。二階堂が何事かささやいて、もう一度。

 

『ふむぅうううっ!?』

 

 こんどはくぐもった悲鳴が映像に乗っている。パンドラが顔を覆ってどうにか声を殺している。

 

「ここ、見つかっちゃうから声を落とせ、とか言ったの? 本当にレイプ魔っぽいっ!」

「それハーレクインか何かに出てくるレイプ魔でしょう」

 

 二階堂が尉子とカメラをちらりとうかがったあと、パンドラの秘所だけでなく乳房にも責めかかる。もむ。つねる。ねじる。弾く。

 

『んぐぅうっ、ううゔっ! ひぅ、う……お、ねが……とめぇ……えああっ!』

 

 尉子のカメラが急にパンドラの顔を接写する。手に隠された下からあご、首筋へと伝う雫は、汗か涙か、よだれかもしれない。

 紅潮した肌だけでなく、嬌声と吐息も急に近くなる。

 

「こっからクリ責めだったね」

「……あんたもカメラで撮ってたの!?」

「ここからはね」

「顔とあそこと2画面で流したら受けそうね!」

 

 パンドラの下半身を接写するほうのカメラは、もっと露骨に痴態を収めている。薄暗い中でも下着のシミが見て取れ、そこを二階堂の指先が軽くなぞると、すぐ上のウエストや太ももが叩かれたようにびくびく痛々しく震える。けれど尉子側に収まる映像と音声では――『ん、あっ……は、あっ……』――興奮の気配が濃密になりつつある、と機械ごしにも伝わる。

 

『あまり大きく動かないでね、敏感なんでしょう、弾みで変な動きされたら、傷ついちゃうかも』

 

 閉じあわせようとして閉じきれないパンドラの太ももが、下腹部とともにもだえる。二階堂の指が下着の内側に滑りこんでうごめく。にち、にち、とかすかな水音を鳴らす。カメラは二階堂も尉子も動かさず構図が単調になる。それと引き換えに、巧みな指責めによるパンドラの反応の変化を漏らさず収める。

 

『う、うっ……うううっ、ぐっ……う、ふううっ……!』

 

 二階堂の指先からヘソ側をこすられ、ソファからパンドラの腰がはっきり浮き上がる。

 

『Gスポット、わかるかな。ここをいい具合に刺激すれば……イケるかもね』

『ん、んん……っ!!』

 

 パンドラの性感への反応は、首筋や太ももなど、脂肪の薄いところに露骨に出る。さらに尉子の撮る首筋は皮膚が薄く汗もにじみやすく、カラオケボックスの照明でもわかるほど発情が色濃い。

 

「パンちゃんのGスポって触っててわかるんだねぇ」

「そんなの、ただのハッタリで」

「わからないけど」

「けど?」

「触ってて反応がいいところをそう言ってます。それがいちばん重要で、それでじゅうぶんなんで」

 

 二階堂が下着をずるずる引き下ろし、ぽってりとふくらんだ膣口周りやクリトリスまで映像にとらえられる。リハーサル映像チェックに付き合っている現実のパンドラも、尉子に撮られている当時のパンドラも、そろって首をぶんぶん振る。

 

『あっ、んひっ、く……んやっ、やめ……ふあっ!?』

 

 膣内の浅いところを中指と薬指で圧迫しながら、親指でクリトリスを直接なぶる。二階堂の前腕にも筋肉の浮き沈みがカメラから見てとれて、そこにもパンドラの愛液がまとわりつく。

 

「やっぱり男の手はえっちだね! お姉さんこれ見てるだけであそこがムズついちゃう。お金取れるよ!」

「取ってますよ」

 

 対して尉子はよほど見入っていたのか、カメラでパンドラの顔を接写しすぎてレンズが曇っては戻り、曇っては戻りの繰り返しになっている。映像が白くぼやけるたび、パンドラが必死に押し殺している音声が波打って聞こえる。

 

『ん、んっ!! ぁ……く、んっ……!!』

『イケちゃいそう?』

『はっ、はぁっ、はぁっ……! そんなこと、ない……っ……んぁああっ!?』

『そうだよね、こんなところで無理やりされてイケる女の子、なかなかいないよ』

 

 合成皮革のソファの表面も白く泡立つ愛液が汚す。

 

『ひっ!?』

 

 パンドラからついにはっきりとした悲鳴が上がる。スカートをすっかりまくりあげられ、指責めを食らう女陰の反応をさらされている。抵抗らしき気配は、ときどき太ももを閉じようとするとか腰をよじるかで、ほとんど薄れてしまった。

 

『あ、あ……ああだ、めっ……くっ……!』

 

 尻がぎゅうっとソファに深く沈みこむ。ソファの表面と愛液と肌がこすれてずりずり奇妙な摩擦音が目立ってくる。それと張り合うように、じゅぶ、じゅぶ、と水音がますますうるさく鳴る。

 ついに顔を隠すのもおぼつかなくなる。くちびるを噛みしめてまで声を殺しているが、鼻息が荒くなってしまって視聴者に興奮を伝えてしまっている。

 

『い……っく、い、い、い……ッ!?』

 

 がくんと腰が跳ねて、尉子のほうにパンドラの巨乳がゆさり大きく揺れて一瞬映りこむ。乱れた制服の合間にぷっくりふくらんだ乳首や乳輪がちらりと見えて痴態をいっそう引き立てる。

 それから何度かパンドラが体をくねらせ、背中を丸めたり反らせたりする。ぶんぶん振られる彼女の顔をどうにかフレームに収め続けようと尉子が悪戦苦闘して、カメラの片方がぐらぐら揺れる。

 

「このあたり、ハメ撮りテクの差を感じちゃうわね」

「しょうじき僕も、どうにか収めたって感じですけど」

 

 二階堂の指責めだけは途切れずパンドラを追い詰める。

 

『ん……んーんっ、っく……! う……あっはあ、ぁ……あ、ぅあ゙っ……!』

 

 不意にパンドラの割れ目からびゅっと液体が吹き出す。ついに女陰が決壊して潮吹き。AVであれば撮り直しになったかもしれないほど唐突だった。

 

『あ、ぁ、だ、めぇっ……でちゃ……』

『警告なら、ちょっと遅かったね。いいけどさ』

 

 

 

 そこでリハーサル映像が途切れる。

 

「やってるときは撮りにくいから続けてもしょうがないか~って思ってたけど、編集まで考えたら、意外と撮れ高あったかも」

「店員さんにおしぼりをもらったときのパンちゃんの顔は撮っておくべきでしたね」

「う、ぅうぅ……」

 

 パンドラの潮吹きの後始末をしていると、なんとなく一区切りがついた雰囲気になった。

 そこで尉子は『撮りにくい』、二階堂も『撮られにくい』とこぼし、カラオケボックスでのリハーサルが切り上げられた。

 

「もしかして、パンちゃんとしてはあのまま無理やりもっとイカされたかったとか」

「そんなの、あんたの勝手な思い込みよっ」

「まぁ、3人も集まってそれぞれの目的で相乗りして一つのことやってりゃ、あるわよそういうことも」

「お姉さまは……」

「好奇心と性欲かな~」

 

 パンドラがきゃんきゃん泣いたり怒ったりしたあと、無事に次の撮影日が決まった。

 

 

 

※

 

「今回ご協力いただく女性はマゾをこじらせていて、たってのご希望があり、寝ているところを無理やり犯されるという趣向で……こら、いこちゃん笑わない」

「笑かしにかかったでしょ~!」

「笑わせようとしたのは視聴者さんです、いこちゃんがぷぷぷっとか噴き出したらそれカットしなきゃ」

 

 パンドラは都内某所のラブホテルで狸寝入りをしながら、二階堂と尉子にカメラ、マイクを向けられていた――『やっぱり店員さんに迷惑でしょう……』――最年少にそうぼそりと苦言されると2人とも黙ってしまい、〝本番〟は性行為をしてしかるべき場所となった。

 二階堂が口にして、聞かされたパンドラも思わず反応しそうになった〝寝ているところを無理やり〟とは、ラブホテルという空間によって減ってしまう凌辱感を補うためどうにか付け加えた趣向だった。

 

「着てくれるとのことだったので、ご本人が高校時代に実際に着ていた制服を」

「胸がぱつんぱつんで、さぞ男子生徒の目の毒だったでしょうね」

「いこちゃぁ~んっ」

「パンちゃんは女子校だったか」

「合いの手を挟んでくれても出演料は出しませんよ」

「一人語りだと間をもたせにくくないかしら」

「僕のハメ撮りで間をもたせるのは全部これです」

 

 パンドラは目を閉じたままだったので、〝これ〟が何を差したのかわからない。自分の体が〝これ〟扱いだったかも、とちらり思う。寝転がって無防備にしている顔やデコルテの肌がぞくりとする。

 まだ制服もはだけられていないのに、視線だけでじわじわ犯されている気分になってしまう。

 

「それならここ映像だけ使って二階堂くんの口上はアフレコすればいいじゃない」

「海外のビデオみたいにBGMかけておきますか」

「ヒーリングミュージックとかかけてみたりして」

 

 パンドラはベッドに体を丸め気味にして横向き寝している。〝ぱつぱつ〟の乳房を両二の腕と前腕とで軽く圧迫してむにゅりとあふれさせ、ボリュームと弾力を強調する、と(尉子が勝手に)指示した。尻と太ももの曲線もカメラに収めやすい、と二階堂も追認した。

 電車やカラオケのときよりスカートのウエスト側を折っていて、現役時代であれば一発で校則違反と言われたほど太ももを露出してしまっている――『パンちゃん、脚も触ってみたくなる肉付きしてますよね』『いいなぁいいなぁお肌すべすべしててーっ』『いこちゃん、わざと言ってます?』『いろいろね、なかなかね……ここは座り仕事だと意外と……』――好き勝手に評された記憶が幻聴のように勝手に湧き上がってぐるぐる回る。

 寝姿をなめるように撮られているらしい。何分経ったのだろうか。2人が黙っているときはベッドから伝わってくる衣擦れや体重移動だけが2人の気配としてわかる。まだ寝ている体裁であり、レンズにもまったく無抵抗にさらされる。

 寝返りでも打ってやろうかと思うが、ゆさりと揺れてしまうであろう乳房が気になる。ふだん、邪魔とまでは思わないが物理的にも心理的にも重荷と感じているそれらが、こんな趣向で言いようもなく浮つく。

 ぐったりと力を抜いた(体裁の)体を、一方的に欲望のはけ口として扱われる。もし自分が、睡眠薬などを盛られてこうしていたなら、何をどうされても無抵抗でいなければならなかった。性感帯に執拗な愛撫を重ねられ失禁や痙攣が止まらなくなっても、あるいは勃起した男性器を無理やり口にねじこまれて呼吸を止められてしまっても。

 

「すぅ、はぁ」

 

 髪と耳が気配のゆらぎを感じ取る。わざとらしい呼吸音が耳障りでたまらない。

 

「匂いは女の子だなぁ」

「何の匂いがすると思ったの」

「犬の」

「えっ」

「飼ったことあります?」

 

 よもや側でわざと妙な振る舞いをして、つい狸寝入りを止めてしまうのを誘っているのか、と邪推する。そんなことをしたら彼だって余計な手間が増えるだろうに、と言い聞かせる。

 

「ぁ……っ」

 

 そうっと手ぐしを入れられる。睡眠姦で最初に触れてくるところがそこか、髪フェチらしい素振り見せなかったくせに、と心中でツッコミを入れてしまう。ぴくり、とツッコミの余波が肌に及んでしまったかもしれない。髪は女の命、というほど古風に考えていないが、外見からとても目立つ上に手入れに手間がかかるのでパンドラも人並みに意識している。

 この髪型が犬扱いの一因、とも察しているが――(あたしが、いこお姉さまみたいにしても、中身がね……もっと落ち着きが……落ち着き……最近ちょっとそのイメージ壊れてきたけど……)――現状、変えるつもりはない。

 

「犬、猫を吸うなんて人もいるらしいわね」

「アレルギーになりそうなんで、僕はやったことないです」

 

 くるくる毛先をもてあそばれる。頭髪そのものに神経が通っていなくても、敏感である頭皮につながっているから独特のくすぐったい心地にさせられる。ここまでこんなじれったい愛撫しなかったくせに、撮れ高がどうのこうのと強引に感じさせて来たくせにここにきて、とつい歯噛みしてしまう。

 

「ん……っ……」

 

 腕、胸を制服越しにさらりとなでられ、こんどは素肌の太ももをくすぐられる。あまりにかすかで、二階堂なのか尉子なのかもわからない。ぴくり、と反応してしまって、視聴者からも狸寝入りだとはっきりバレてしまうだろう。それでいて知らんぷりを続ける。無防備に犯されることを望んでいるこじらせマゾである、と一瞬で告白してしまったことにもなるだろうか。

 事前の〝台本〟では、スカートをめくられて下着まで映されたところでパンドラが起きて〝抵抗〟する流れだった。

 

「……っ……!」

 

 スカートのすそを指先がちらりとかすめる感触。また、ぴくり、と反応してしまう。下着の内側までもぞついてしまう。すぐそこにいる男からこれまで押しつけられてきた痴態や快楽が思い出されて、ただ寝て動かず息を殺しているだけでも息苦しい。

 

「……ぅ、ぅっ……」

 

 肌や筋肉が敏感になって、スカートのすそまで体の一部のように、いままさに二階堂の指先でつまままれているのを感じている。ついさっきまで無関係な話題で駄弁っていた2人が黙ってしまっている。衣擦れさえ失せてホテルの空調の微音が聞こえる。

 ふぅ、とため息らしき気配。

 

「本当に寝てないよね」

「寝てるわけないでしょ~っ!?」

「わぁ、いきなり何さ」

 

 しびれを切らして跳ね起きたパンドラの所作も小動物じみていて、二階堂と尉子の笑いを誘った。

 

 

 

「パンちゃんさぁ、焦れるの早いね。そんなに待ち遠しかった?」

「こんなんじゃ視聴者さんがいなくなっちゃうわよっ」

「編集で圧縮すればいいかなぁって」

「ライブ配信ならすぐつかみを入れなきゃならないけど、これはね~」

 

 パンドラはあお向けに組み伏せられて、小道具の手錠をはめられる。そのまま二階堂の片手で、両手、両腕をひとまとめにされて頭上に押しやられる。両腋をさらす格好で彼から見下される。

 まだヒジを振ったり脚をバタつかせたり抵抗できる。手錠が拘束具らしくじゃらじゃら鳴ってくれる。

 

「無理やりじゃないと気持ちよくなれない女の子になっちゃった?」

「……あいにく、男には気持ちよくしてもらった覚えがありませんでねっ」

 

 認めはしないが、何を味わえるか期待してしまっている。

 

「や、ぁ……え、く……っ!」

 

 見下されたまま、二階堂からキスを迫られる。とりあえず首を振って嫌がる。耳殻をなめられ、演技なしの悲鳴を漏らしてしまう。

 

「しないでおくよ、噛みつかれちゃうかもしれないし」

「く、ぅ……あんたのほうがケダモノのくせに……」

「おおっ! 昔の女の子向けアニメで、敵に捕まって拷問されようとしてるヒロインみたいだねぇっ!」

「……いこちゃんがいちばん興奮してませんか」

「チャンネル登録者の1人としてつい感想が漏れただけですぅ~……なんだ二階堂くんも笑ってるじゃん」

 

 有洒川尉子の声で言われて二階堂が苦笑いした。パンドラは少し口元を緩めるだけだった。体のほうが張り詰めていて、反応の余地などそれしかなかった。

 

「焦れていらっしゃるようだし、いい加減に空気を変えようか」

 

 唐突に、ヴヴヴヴとクマンバチの羽音のような音が響いた。二階堂がハンディタイプの電動マッサージ器を手に取って、パンドラの前でゆらゆら振ってみせた。

 

「……使ったことある?」

「ないに決まってるでしょ」

「じゃあもしかすると、足首もしばらなきゃいけないかも」

 

 ヴヴヴヴと鈍く細かく唸りながら、こぶし大の丸い先端がパンドラの下着ごしの秘所にあてがわれる。

 

「んっく――ひゃああっ!?」

「これをやられて声は殺せないと思うよ。好き嫌いはあるけど、とにかく刺激がきつい」

 

 マッサージ器の先で、内ももとクロッチ部分をなぞられる。脚をバタつかせて抵抗するが、二階堂の体重をかけて抑えつけられる。ベッドの上に衣擦れを立てたりシワを寄せたりするばかりで、刺激からさっぱり逃れられない。

 

「あ、あ、んんっく……ぁぁあ……っ!」

 

 ほんの数秒。心の中では、もうこれはダメだ、と悲鳴を上げていた。殴り飛ばされるように強引な性感は、快楽という以上に苦痛だった。息が苦しいし四肢も胴も勝手に痙攣する。熱いものが勝手に込みあげてくる。

 自分の体が自分を裏切って屈服してしまう。

 

「はぅ、ぁ、あ……ほぁっ、はぁっ……あああっ!」

「きついでしょう」

 

 絶頂寸前、マッサージ器の暴力的振動がふっと離される。二階堂が気遣わしげにささやいてくる。助かった、と思ったより2倍口惜しい。いつの間にか下着がぺったり貼りつくほど濡れて、失禁のように恥ずかしい。

 クリトリスと割れ目とその周りが震えるだけなのに、気持ち悪くて、気持ちいい。

 

「離しなさいよ……こんなの、ぜんぜん……っ」

「しゃべってると舌を噛んでしまうよ」

 

 振動音が鳴ると言葉を失ってしまう。

 

「っふ……ぁ、ぐ……ぐぅうゔうっ……ほぁっ、あああっ!」

 

 手はしばられ、脚は抑えつけられ、首や胴だけベッドから浮かせたり押しつけたり。摩擦と脂汗で髪と制服がくしゃくしゃに乱れる。すっかり固くなったクリトリスに攻撃を集中させられ、勝手に割れ目がひくついて止まらない。

 

「や、やめっ……や、あ……あっ!」

「ちょっとだけ休憩しようか。これ、持ってる手にも少なからずくるからさ」

 

 二階堂が微笑みながらマッサージ器を持ち替える。握っている側にも振動が波及して、しかもそのあてがい方を繊細にコントロールするとなると神経を使うらしい。なんなら手に汗を握っているかもしれない。

 

「く……ふゔう、うー……っ!」

 

 本当に〝ちょっとだけ〟の休憩で責めが再開される。繰り返されて、さらに下着が濡れて振動で鳴る音がぶじゅぶじゅと濁ってくる。割れ目が充血して腫れぼったくなって、けれど感覚が鈍るどころかますます敏感になる。クリトリスが勃っている、と見てもいないのにわかってしまう。

 

「あ……っ、ふ、んん……ンああぁああ……っ!?」

「こら、動いたら加減が……」

 

 またマッサージ器の振動が、と思い込んで構えていたところに指先でクリトリスをくすぐられる。下着をずらされ、膣のごく浅い部分とクリトリスを繰り返し刺激される。

 

「あっ、ああっ……ぅう……! んあああっ、あああっ……!」

 

 電動マッサージ器の刺激がパンドラの肉体を折りにかかっているとすれば、指の愛撫は心を折りにかかっているようだった。より繊細で、優しげで、水際までじりじり追い詰めてくる。もう達してもいいんじゃないか、と言い聞かせるように繰り返される。

 

「んひゅ、かは……ぁ、あッ、は、ぅ、ぁあぅ……っ!」

 

 恐ろしくなって本気で脚をばたつかせると、さすがの二階堂も手を止める。ヒザかカカトか、とにかくどこかをしこたまぶつけてしまった。

 

「ぁ、ァ……ぅ、う……」

「レイプって重労働なんだなぁ」

 

 二階堂が笑いながら、愛液をつけたままの指先で彼自身の首筋をさすっていた。もう少しで、あの指でイカされた、と思ってしまう。切望と落胆だけで触られていないクリトリスと膣口がむずつく。

 

「もうけっこう愛撫パート撮れたと思うよ」

「まだ続けます」

「時間だいじょうぶ?」

「入れてください、ってパンちゃんにお願いしてもらえるまで」

「レイプはどこに行ったのよ!?」

「僕はここまでみんな同意の上でやってきたんです」

「私とのことも同意の上扱いなのかな?」

「このまま強がってうんと言ってくれないままなら、考えますけど」

 

 尉子が二階堂を制止したのは一度だけだった。呼吸をかろうじて整えたころ、再びパンドラは責めにさらされた。

 

 

 

「く、んんっ、おほっおおぉおおォっ……!」

 

 パンドラがすっかり汗だくになりながら低いうめきを漏らす。ゲーム配信で漏らしてよく切り抜かれネタにされる悲鳴とは天と地の落差だった。そう落ちるまで、少なくとも当人たちの体感ではあっという間だった。

 

「僕、こう見えて、自分が気持ちよくなるより人を気持ちよくさせるほうが楽しめるタチなんだ」

「っ……っうぅー……ぅ……! あ……あ、あっ、あ、だ、めぇっ、来るっ」

「チンポをいじるなら自分でもできるし、なんなら一人のほうが気楽で気持ちいい」

「……ぜぇっは、ひ、はっ……あっ、あっ、はひっ、はっ……!」

 

 パンドラから何度か愛液が漏れて、下着だけでなくスカートやソックスまで汚れてしまっている。寸止め、というにはいくらか絶頂へはみ出している。絶頂、というにはほとんど波が引かず粘膜も意識も高ぶったまま、また水際まで押しやられる。

 

「くう、うっ……! んんんんんっ……ううはぁっあ、んああ゙ぁ……っ……」

 

 パンドラも歯を食いしばって耐えるが、すぐに抵抗を割られて、嬌声すらか細くなって、マッサージ器の振動や、にちゃ、くちゃと粘っこくなった水音に紛れる。少し彼の指先を入れられるだけで腟内が縮こまって、なめしゃぶるように絡みついてしまう。

 

「せっかくかわいいパンちゃんが付き合ってくれてるし、できるだけこうやって楽しみたい」

「かっ……ハァッ……あはぁっ……はぁっはぁっ……」

 

 かわいい、が尉子の耳に皮肉に聞こえるほどパンドラの表情は悲惨になっている。べたつく髪と脂汗のほか、瞳孔がすっかり開いて端から見ているだけで背筋がむずつくほど瞳が真っ暗になっている。半開きのくちびるの両端からよだれが幾筋か垂れているらしいが汗と混じってあいまいになっている。それらに生気がないいっぽう、頬や首筋の血色が真っ赤だったり、ぜぇぜぇと喘鳴が聞こえたりで、異様なコントラストを作りあげている。

 もともとのかわいらしい面影が想像できるだけに、本当にレイプされてしまったのでは、というほど悲惨な印象が引き立つ。

 

「ふ、くっ、ふーっ……!! んっん、っくぅゔ……は、ぉ、ァ、あ……ッ!!」

 

 またマッサージ器と指の連携で秘所を責められる。まだ歯を食いしばって耐える。動きとしては単調だが、それは効果がある責めだけを繰り返していることを示す。少なくとも、立ち会っている尉子にはそう伝わる。

 

「パンちゃんってさぁ、配信とかでは男のことをケダモノ扱いするキャラだよね」

「ひぅっ、く……んっ、く、は、く……んんっふうんん゙ん゙……っ!」

「こんなえっちな体で男を釣っておいてさぁ……ファンには隠せてるのかな、こんなえっちな体なの……男嫌いはうっすらボロが出てるけど……」

 

 もう二階堂からどれだけ押しつけがましく与えられた愛撫でも、それを快楽と認識してしまう。体に蓄積しきって、ほんの少しあふれて絶頂してしまっただけだとすぐまたいっぱいになる。

 

「しょうじき、触ってるだけなのに勃起して入れたくなっちゃってる」

「……やっぱり、ケダモノ……んぉ、いや、ぁ……! ぉお、ッほおぉ……!」

「入れてパンパンってしたらすぐ出しちゃったら終わりかな……僕はそれでもいいけど、パンちゃんはそれだとダメだよね」

「はっ、はひっ……っ……っうぅー……ぅ……!」

 

 自分が本当は何を言おうとしていたのか、当然だと思っていたことがあいまいになって無性に気持ち悪くなっていた中で、快楽が体をひりつかせるほどむしばむ。あまりに強引で疑いを一片も挟ませなくて、ウソや疑いとかけ離れていた。それ以外のすべてがちっぽけに思えてくる。

 

「ねぇ、1回だけでもいいんだ。自分も本当はセックスしたいです、って言ってくれれば」

「っく、ううぅ……ぜったい、そんな、こと……」

「攻めがいがあるね」

「ハァッ……ぁ……だ、めぇ……ン゙んん゙ん゙っ……!」

「こんなにヒクつかせてるけど、泣くほど嫌かな」

「く、う……、ひぃ、ひっ……う、ゔ……ウっ……ゔ……ッ……」

「男だったらしたくなるとすぐおっ勃って、わかりやすすぎるぐらいなんだけど」

「っく、ひぃ…っぐ………ふウウウ……ん゙ん゙っ……!」

 

 また絶頂を重ねられたパンドラがくちびるを噛んで必死に声を殺す。首筋や目元まで引き攣って、子供が見たら泣き出してしまうであろう形相になっていた。

 

「あ゙、あ゙っ……や、や……やすま、あ……っくぁゔんン゙……っ!」

「もっとがんばったら、何も考えなくて済むようになるよ」

「いや、いや……これい、や……ああァああ゙っ!!」

 

 相変わらず、マッサージ器と指による、クリトリスや膣の浅いところへの責めが続く。パンドラはもだえたりくねったり痙攣したり、ぶしゅ、ぶしゅと何かを漏らしたりを繰り返す。

 

「ぁああ……あ、ああっ! はぁ……そぇ、ダメ、だ、めぇ……も、もう、いっ、いっちゃ、ぁ……!」

 

 やがてパンドラが絶頂を吐露するようになる。二階堂が一息だけ、手を止め、無言で再開する。

 

「ひぅっ、きゅ、ぅ……ひっぃっ!? ゔぅー……あぐ、く、ぁ……も、ぅ……むり、むぃ、やめっ……お、ねが……とめぇ……えああっ!」

「ここで止めるレイプ魔はいないと思うよ」

「あっ、だっ……そこ、や、め……ぁ、あ、い、イク、ぅ、ぁ、ああぁあっ……!」

 

 首を横にぷんぷん振りながら、下腹部や腰を前後にへこへこ揺らして、それでもどうにか抵抗し続ける。何度か白目を剥き、口元から泡混じりのよだれを垂らす。

 絵面が紛れもなくレイプであった。

 

「……粘るねぇ、パンちゃんも。好きだよ」

「時に、二階堂くん……そろそろ」

「いまいいところなんですけど」

「そろそろハメるシーン撮ったほうがいい時間です」

「……そんなに?」

「團十郎と平九郎みたいな演技合戦を続けてくださっても私はよろしいんですがね」

 

 空調とパンドラの喘ぎと、ベッドシーツに置かれて鈍くなったマッサージ器の音だけがしばらく響いた。

 

「ぃ……れ、て……」

 

 二階堂が黙ってパンドラの身を起こしてやった。手放してはいけないと思っていた重荷が滑り落ちた。

 

「……いれて……おかしく、なっちゃう、よぉ……」

「ちょうど僕も入れたいと思ってたところだったんだ」

 

 パンドラを押し倒す二階堂を見ながら、尉子が――(これも〝同意の上〟にカウントされるのかしら)――こっそりとぼやいた。

 

 

 

「……いっ、っっうぅー……!!」

 

 正常位で奥まで一気に貫かれたパンドラは、まともに声も出ないほど背中と首を反り返らせながら痙攣する。あたかもAVの演技のように大げさな絶頂の所作だった。

 

「……ハッ、はっ、ハッ、はぁっ……!」

 

 絶頂が終わっても、犬のように舌を出して荒い息をついてばかりいる。表情も苦悶と快楽と汗と涙と鼻水とよだれとそのほかいろいろでくしゃくしゃに成り果て、尉子が同情しつつ撮影を続ける。

 

「あ、はっ……んぐ……うっ、あお゙……ぉお゙ッ、い、いっ……」

「ぎゅーってめちゃくちゃ締めつけてくる、気持ちいいよ」

「んひぃっ、お゙っ、おっぐ、んんっあ……ま、まらっ……っく、いく、いッぐううゔッ!」

 

 二階堂の抜き差しは、尉子からすればゆったりと余裕をもって構えていると見える。じっくり腟内を往復して味わっていて、すがりつく膣口がペニスの抜き差しで引っ張られてしまうようすまでわかる。

 いまのパンドラからするとそれさえぎりぎりらしい。

 

「おォおお゙……ッ!! お、おくッ、ふかぃのっ、いや、いやこれいやあ゙っ……!」

「じゃあクリトリスを」

「ダメっこれダメ……あ゙ッ! あああっ……ダメ、ダメなの……ぁ……だ、めぇ……も……っお、っ……!」

「うわ、うわ、僕もちょっと持たないかも、焦れちゃっててさ」

 

 二階堂のペニスで膣奥をこつこつ突き回され、指先でクリトリスも同時にこすられ、たまらずウエストをよじる。膣壁のこすられ具合が変わって新鮮な刺激でさらにもだえてしまう。

 

「あっ、あっ……んくっ、ん゙っ!」

「もう少しで終わると思うよ」

 

 パンドラが片足を抱えあげられて、正常位から半ば側位に移行させられる。尉子がパンドラの胸や結合部を映しつづけようと近寄りつつ立ち位置を変えると、ぴゅっとした潮吹きが一筋彼女のところまで飛び散ってくる――(片足開かされてるせいで、失礼だけど、犬が電柱におしっこしてるところみたい……)――レンズまで飛んだ一雫を拭う。

 

「いやっ、あっ……ああ、あっ、ふぎゅっ……! っくぅうっ……!」

「もう他人のことをケダモノなんて言えないね」

 

 二階堂がパンドラの腰、太ももをつかみながら、自分の腰を確かめるように一往復させる。尉子にはただの一往復に見えたが、パンドラは何か不穏な気配を感じたのか首をぷるぷる振る。

 

「もっとしてもいいかな」

 

 それから腕と腰をともに使って、ぱちゅ、どちゅっと勢いよく音が鳴るほどピストンを激しくする。

 

「あああ゙っ、ふわあぁあううっ、うゔ-っ……うああ、あっ……あっ、あ゙っ……!」

「……パンちゃんにはケダモノ呼ばわりされたい、って需要もあるかも」

 

 パンドラも必死で首を振りながら抵抗するが、もとより快楽を覚えさせられたばかりの女体に耐えられる次元ではない。奥に数回叩きつけられ、切れ切れの吐息、嬌声とともに激しく痙攣する。拘束されたままの指先が激しくシーツを掻きむしっていた。あまりに激しくて尉子は爪割れを心配した。

 

「くひぃっ……はぁーっ、はーっ……ッふ、ぅ、ぐ……あああっうっ……ひ、ひど、ぃ、よぉ……」

「かわいそうなパンちゃん、こんなにめちゃくちゃにされなきゃ……僕には役得だけど」

 

 しょろしょろ、ぷしゃぷしゃと何が何やら、パンドラがこんどは弱々しい水流を漏らしつつ、ついにがっくり首を垂れた。それからも二階堂がいくらか腰を打ち付けると、彼女の下腹部や尻がぎゅうぎゅうと張り詰めたりくねったりした。

 

「……パンちゃん気絶してない?」

「そうしたら、側位か後背位で最後までやると決まっています」

「なんで?」

「あお向けだと、パンちゃんが自分の唾液で窒息しちゃうかもしれないです」

「まるで酔っぱらい扱いだね」

 

 パンドラは半死半生のまま後背位でも責められ、声も出せないまま震えてうずくまっていた。ケダモノというより性処理人形のように見えて撮れ高としてはピークアウトした印象だった。

 

「射精まで撮る?」

「時間がなければ切り上げていいです、どうせゴムつけてるんで」

 

 初めて二階堂に気絶させられたときの自分もこんな感じだったかも、と思いながら尉子は自分だけさっさとラブホテルのシャワーを浴びに行った。

 

 

 

※

 

「いこちゃんが思ったより頼りにならなかった、女優あがりのはずなのに」

「あらら、そんなに頼りにしてくれていたとは露知らず」

「いこちゃん顔をアップで撮りすぎ」

「明らかに撮るべきだったもの」

「パンちゃん顔出しダメって言うから、これ全部処理しなきゃ」

 

 いやいやながらという気持ちは、すげない拒絶と違って、妥協や好奇心や欲望が裏写りしている。

 

「うわぁ……あたし、こんな……」

「ねぇ、あらためて相談が」

「ダメはダメよ」

「……こんどもっとリクエストに応えてあげるとしたら?」

「もし、そこでうんって言ったら……〝私はいい思いさせてもらえたら簡単になびくチョロいやつです〟って吹聴してるみたいじゃないの~っ!」

 

 そう言われてからパンドラの演技を見直すと、二階堂は前より笑いがひどく込みあげてきて、さっぱり編集がはかどらなかった。

 

 

(おしまい)

 

 

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