15年前に死んだ幼馴染が水の精霊になって帰ってきた 作:我島甲太郎
ピンポーン、と家のチャイムが鳴った。
「誰だろう。通販で買い物はしてなかったはずだし……」
俺は作業の手を止めて小さくぼやいた。
目の前のノートパソコンの画面には描きかけの二次元イラストが映っている。
クトゥルフ神話を基にした版権物のグロかわ系スライム娘。
趣味ではないんだけど、久々にスケブでリクエストされたので気合を入れて描いていた。
再びピンポーン、とチャイムが鳴る。
何はともあれ、来客が来たからには対応をしなければならない。
「はーい、今行きまーす!」
タッチペンを板タブの上に転がして座椅子から立ち上がった俺は、ところどころに傷みが目立つ古ぼけた畳を踏みしめながら冷房の効いた唯一の部屋を密にしている障子を開いた。
廊下の先から、玄関の扉をバンバンと叩く音が聞こえてくる。
DIYでリフォーム済みとはいえ築60年のおんぼろな古民家なのだから、もう少し大事に扱って欲しいものだ。
「どちら様ですかー!」
やっと家主の声が伝わったのか、扉を叩く音が止まった。
俺はギシギシと軋む音を立てる木の廊下を歩いて玄関へ向かう。
真夏の日光が差し込む玄関扉の曇りガラスの向こう側には、一人分の影が見えていた。
「ボクだよ、開けてー」
若い女性の声だ。
誰だかはまるで見当も付かないが、どうやら物盗りの類ではなさそうだ。
ホッと胸を撫でおろした俺は、手に持っていた金属バットを靴箱の陰に隠した。
鍵を開けて扉をガラリと横に引くと、そこには透き通るような蒼い髪を背中まで伸ばした蒼い瞳の美少女が立っていた。
しかもやけに薄い、白い肌が透けて見えるような羽衣みたいな服を着ている。
「ん? 何だこれ、おかしいな」
目をこすって再び見てみるが、目の前に謎の美少女が立っているのは変わらない。
どうも俺の頭がおかしくなったわけではなさそうだ。
その美少女は何に驚いたのか目を丸く見開いて、鈴を転がすような声で呟いた。
「老けてる……」
俺はまだピチピチの31歳なんだが。
最近生え始めた若白髪をちょっと放置しているくらいで、そこまで老けているわけではない。
「あのー、どちらさんでしょうか?」
町まで車で1時間くらいの距離にある岩手の山奥で一人暮らしをしている俺に、こんなアニメから出てきた外人みたいな知り合いなどいない。
というか、彼女はどうやってこの家までやってきたのだろうか。
庭先にある砂利が敷かれた簡素な駐車場には、俺の軽トラックの他に乗り物は止まっていないように見える。
「ボクだよボク、
今度は俺がポカンと口を開けて放心する番だった。
なぜなら、彼女が口にしたのは15年前に死んだ幼馴染の名前だったからだ。
死んだはずだった。
「――それで、その
「なんだよもー、他人行儀だなー。ケンちゃんのいけずぅー」
ちゃぶ台の前で座布団に座って口をとがらせる美少女に、俺は急須から注いだ玄米ほうじ茶の入った湯呑みを差し出した。
「ケンちゃん、か。懐かしいあだ名だ」
俺の名前は
そして俺のことをケンちゃんなんて呼ぶのは昔から一人しかいなかった。
「ゲームをしてたらいきなり剣と魔法のファンタジー世界に転生してさ、日本に戻ってくるのには苦労したよ本当に。しかも帰ってきたら実家が森に沈んでいるし……」
「そりゃ、前の地震でウチ以外全部潰れちまったからな。みんな村を捨てて出て行っちゃったよ」
「地震?」
「そ、地震。2011年3月11日……東日本大震災。15年前のあの日、お前は俺の目の前で倒れたタンスに押し潰されてぽっくりあの世に逝っちゃったんだ……」
今でも覚えている。
俺の隣に座ってテレビゲームをしていた悠里の上に倒れてきたタンスと、そのタンスの下から広がる赤い血を。
……忘れられるわけがない。
「まあまあ、いいじゃないか! ボクはこうして生きているんだからさ!」
「異世界転生が現実にあるとは夢にも思わなかったが……アレを見ちゃうとな」
「へへへ、凄いでしょー」
悠里はドロリと溶けると透明なスライムみたいな姿に変わった。
ぐにょぐにょとSAN値が減りそうな動きをした後、再び人型に戻る。
彼の転生先の種族名はウンディーネというらしい。
なんでも水を司る精霊なのだとか。
「それさ、元のその……前世の姿には戻れないのか?」
「できるよ?」
悠里は再びにゅっと液状化すると、学生服を着た黒髪の少年に変わった。
くりくりとした大きな褐色の目と綺麗に整えられたサラサラのショートヘア。
懐かしい、16歳の沢木悠里そのままの姿だ。
「最初からそれにしてくれたら話は早かったんじゃ……」
「でも、なーんか落ち着かないんだよね。まるで着ぐるみを着ているみたいな感覚がするんだ」
悠里はすぐに元の美少女の姿に戻ってしまった。
それから湯気の立つ湯呑みを細い白魚のような手で持ってズズズとすする。
「うーん、玄米の香ばしい風味と機械焙煎された茶葉の際立つ風味が合わさってまるで田舎の水田を吹き抜ける爽やかな風のような味がする……」
「なんだその、下手くそなワインソムリエみたいな例えは」
「ボクはウンディーネだからね。飲み物の味にはうるさいんだ」
お茶を一息に飲み干した悠里は蒼い瞳で俺をじっと見つめた。
彼女の中身が気心の知れた幼馴染だと分かっていても、つい胸がドキリとしてしまう。
「それで……ケンちゃんは今、何をやっているの?」
「仕事のことか?」
「うん。それとケンちゃんだけこの村に残った理由が知りたくてさ」
「理由って言ってもな……」
俺は彼女から目をそらして、ところどころに白髪の浮いたぼさぼさの頭をポリポリと掻いた。
「一昨年に肺炎で入院していたじいちゃんが亡くなって、遺品整理の為にこの村に来たらなんだか帰りたくなくなってな。それなりに遺産も入ったし、いい機会だから仕事を辞めてここで暮らすことにしたんだ」
「じゃあ今は無職なんだ」
「無職言うな、俺はFIREしたんだ」
「ふぁいあ?」
俺の言葉に悠里は首を傾げた。
そうか、彼女は15年の空白期間がある浦島太郎状態だから最近のネットミームを知らないのか。
「早期リタイアって意味だ。俺には身寄りもないし、無駄遣いをしなければ死ぬまで食っていけるだけの蓄えがあるから自由気ままなスローライフを送れるってわけ」
ちなみに今の趣味はエロいイラストを描いてSNSで公開することだ。
クソ寒い岩手の山奥で雪に閉ざされた冬にやることっつったらネットくらいしかないからな。
お金も一切掛からないし、暇つぶしのついでに承認欲求が満たせて一石二鳥だ。
「ふーん……」
悠里はちゃぶ台に肘をついてニヤニヤとした笑みを浮かべている。
「なんだよ、悪いか?」
「ケンちゃん、そういうのが趣味なんだ」
スッと悠里は俺の後ろを指差した。
あっ、やべっ。
「こ、これは違うんだ。スケブでリクエストされたもので他意は……」
「こんな感じかなぁー」
悠里はぐにゃりと液状化すると、開きっぱなしになっていたノートパソコンに映った描きかけのイラストと同じ見た目のスライム娘に変化した。
名状しがたい粘液状の下半身に浮いた幾つもの眼球がぎょろりとこちらを凝視する。
「ケンちゃ~ん、食べちゃうぞ~♡」
前かがみになった悠里は畳の上をずるりずるりと、
「おま、お前……!」
余りの恐怖に腰を抜かして後ずさる俺に、悠里は粘性状の身体で覆いかぶさった。
びちゃりと音を立てて、生暖かい冒涜的な感触が俺の下半身を包み込んでくる。
「ボクはさぁー、ケンちゃんにずっと会いたかったんだよ。ずっと、ずっと、ずっと……だから、イイよね?」
畳に背中から倒れ込んだ俺の顔の横に両手をついて見下ろしながら、悠里はニタニタと狂気に満ちた笑みを浮かべている。
「よくない……」
俺の心情を表すかのように、息子は恐怖で小さく縮こまっていた。
うう、SAN値がガリガリと削れる幻聴がする。
「この姿じゃ駄目か。じゃあこれは?」
悠里はにゅっと元の美少女姿に戻った。
いや違う、今の彼女はあの羽衣みたいな服を着ていない!
「う……」
きめ細かく白い肌に乗っている豊かな双丘が俺の胸元に押し付けられ、ワイシャツ越しに硬く尖った突起の感触を伝えてくる。
すりすりと胸に擦りつけられたその感触に、俺は思わずピクリと反応してしまった。
少し硬さを取り戻した息子がズボン越しに悠里の股に触れあって更に元気になっていく。
「ケンちゃんの、おっきくなっちゃった……。これはもう合意だよね?」
「落ち着け、今ならまだ――」
両手で悠里の肩を抑えようとしたが、その両腕はずぷりと音を立てて彼女の中に沈み込んだ。
柔らかいゼリーを掻き分けるかのような感触が、俺の抵抗が全く無意味なものだと証明する。
「んっ、あっ! ケンちゃん、激しい……!」
ぐちゅぐちゅと体内を犯されて嬌声を上げる悠里の姿を見て、俺は諦めの境地に達した。
彼女の中から両腕を引き抜いて畳に背中を預け、ぼんやりと天井の染みを見つめる。
「もう、好きにしてくれ……」
ジェットコースターみたいな展開の連続に、俺のガラスのハートは限界を迎えていた。
平和な日常に突如現れたこの化け物みたいな幼馴染にどう対処したらいいのか分からない。
「本当に? じゃあボクと契約してくれる?」
いきなりそんなこと言われても困るが……。
それによって何が起こるのかが問題だ。
「何の為に、契約するんだ」
「日本はマナが薄くてさ、つらいんだ。このままじゃボクは何日も持たないかもしれない……」
悠里は泣きそうな顔をしながらそう告げた。
先ほどのおちゃらけた様子とはまるで別人のようなその姿に、俺はただただ困惑していた。
「契約したら何とかなるのか……?」
「うん……今のボクは宇宙に浮かぶ宇宙飛行士みたいなものだから、現世に存在を繋ぐ命綱が必要なんだ」
その場合は俺が宇宙船のような扱いになるのだろうか。
「デメリットは何だ。例えば契約している間ずっと生命力を吸われ続けるとか……そういうのは困るぞ」
「そんなことがあるなら誰も精霊使いになったりしないよ! ボクみたいな高位精霊は自前でマナを生成できるからね、契約するだけで戦力が何倍にもなる超チートな存在なんだよ!」
「それ、本当かなぁ?」
戦力が何倍になったところで平和な日本では何の役にも立たないぞ。
せいぜい人里に熊が出た時に命拾いをするくらいだろう。
「本当だって!」
少なくとも、それは嘘ではないようだ。
悠里は嘘をつく時、無意識に指先を擦り合わせる癖がある。
俺はそれを確認したからこそ、彼女の言い分を信じたんだ。
「分かった。それが悠里の為になるのなら……契約しよう。でもどうやって――」
「えへへ、こうやるの」
調子を取り戻した悠里が下半身を液状化させると、その液状化した下半身が触手のように蠢いて俺のズボンのベルトをカチャカチャと器用に外しパンツごと下にずり下ろした。
抑圧から解放された息子が起き上がり、クーラーから吹き付けるひんやりとした空気に触れる。
「ケンちゃん凄い……! 前のボクよりも、ずっとずっと大きいよ!」
液状化した下半身を人型に戻した悠里は、俺の腰を太ももで挟んだ状態で喜色を浮かべた。
「比べないでくれ、というか結局こうなるのか……」
「だってケンちゃんは契約魔法使えないし。一番原始的な方法に頼るしかないもん」
「俺は魔法使いだ。契約魔法ぐらい使える」
30年間童貞を守り通したら魔法使いになれるのはこの世界の常識だ。
問題はその魔法の使い方を誰も教えてくれないことだな。
「無職童貞の間違いでしょ。ねえ、いい加減諦めてくれない?」
「お前が元男でさえなければ俺だってな……」
「でも、今は女の子だよ?」
キョトンとした顔で首を傾げる悠里。
「精霊に男女の区別なんてあるのか?」
「ないよ。ないけど、ケンちゃんは女の子の方がいいでしょ?」
冗談でも男の方がいいと言ったら、悠里は男に戻るのだろうか。
いや、やめておこう。
ついててお得そうだが、初めてをアブノーマルなプレイに費やすほど俺は変態ではない。
「それは、まあ……」
「じゃあいいじゃん!」
悠里は騎乗した状態で、細い指先を巧みに使って萎えかけていた息子の頭を撫でさすった。
彼女の両手から分泌されたローションみたいな粘液が、ぐちゅぐちゅと音を立てて激しい快楽を与えてくる。
「うっ、ぐっ……」
30代に入って性欲の衰えを感じていた今日この頃、日課をサボってきたツケが回ってきた。
これはもう、すぐにでもイってしまいそうだ。
「おっと危ない。終わらせちゃうところだった」
悠里は硬く反り返った息子から手を離すと、俺のお腹に両手を乗せて自身の腰を持ち上げた。
そして怒張した肉棒に割れ目をスリスリと擦り合わせる。
「ケンちゃん、いくよ……」
そのまま悠里は思い切り、ズンと腰を落とした。
ずちゅりと音を立てて、肉棒が深く深く彼女の胎内に沈み込む。
「んっ、入ったぁ……♡」
想像とは違い、彼女の生暖かい膣内はまるで極上のオナホールのように弾力に富んでいた。
疑似的な呼吸の動きに合わせて、ぐにぐにと俺の肉棒を締め付けてくる。
「分かる? ボクとケンちゃんの魂が繋がったの……」
「ああ、分かるよ……」
目を閉じて精神を研ぎ澄ませると、薄っすらと感じていた心臓の奥に得体の知れないものが流れ込んでくるような奇妙な感覚が鮮明になった。
これが精霊と契約をする、ということなのだろう。
「エッチの途中で寝ないでよ。もういいや、勝手に動いちゃうもんねー」
悠里が腰を上下させると、ぐちゅりぐちゅりと淫靡な音が室内に響き渡った。
俺はグッと奥歯を噛み締めて、荒れ狂う波のように押し寄せる射精感を堪える。
「んっ、ふっ、ふっ……♡」
性感を押し殺した吐息に混じった強い水の匂いに、まるで飛沫を上げる滝壺のそばで行為にふけっているかのようなイメージが脳裏に浮かび上がってくる。
「悠里っ……!」
男の尊厳を無視する乱暴なやり様に、俺はたまらず目を開いた。
彼女の下半身の動きと連動して、たゆんたゆんと揺れ動く乳房に視線が奪われる。
「見てっ、ケンちゃんのおちんちんがこんなに深くボクのナカに入ってるよ!」
悠里が腰を動かしながら自身の下腹部から喉元までをスッと指先でなぞると、皮膚が透けて彼女の体内が露わになった。
透き通るような水の身体に、透明な子宮と肉棒に貫かれた膣だけが浮いている。
これはまるで、快楽を追求する為だけに構成されたかのような肉体だ。
「あっ、あっ、んっ、ケンちゃん、ケンちゃん……!」
腰を動かして抽挿を繰り返す度、膣奥を突き抜けた肉棒が彼女の子宮を揺さぶった。
「悠里っ、俺はもう……!」
視覚から本能に訴えかけられて、俺の我慢がついに限界に達した。
「いいよ、きてっ! ケンちゃんの全部、ボクにちょうだい!」
「くっ……!」
ばちゅんと強い水音を立てて腰に深く突き入れられると同時に、勢いよく吐き出された精液が悠里の体内に白線を引いた。
その余りの勢いに喉奥を飛び越えた精液は、彼女の頭の奥の奥までを犯していく。
「〜〜〜!!!」
俺の認識の範疇を超えた嬌声を上げながら、悠里は細い身体を弓なりに反らして絶頂した。
おわんのような形をした豊かな胸が天を仰いで、皿の上に乗ったゼリーのようにふよふよと揺れ動いている。
ぎゅうぎゅうと絞り上げられるようにすべての精を吐き出したことで一足先に賢者タイムを迎えた俺は、イキ狂う彼女の姿をぼんやりと眺めていた。
「はあぁ~……」
長い絶頂の波を越えて大きく息を吐いた悠里は、繋がったまま畳に寝ている俺に抱きついた。
「ケンちゃん、大好き。これからはずっと一緒にいようね」
「……俺はそんなに長生きできないぞ」
うちの母方の家系は代々短命だった。
母も祖母も曾祖母も、みんな癌で亡くしている。
その血を引く俺もいつかは同じように病で命を落とすだろう。
俺が死んだら、一人残された悠里はどうなるのだろうか。
「大丈夫、精霊の契約は輪廻を越えることができるから。ケンちゃんが生まれ変わってもずーっと一緒にいられるよ」
それって死んでも外せない呪いの装備がくっついた状態ってことじゃないか。
悠里が精霊生に飽きるまで、俺は未来永劫付き纏われるのか……。
「聞いてないんだが」
「言ってないからね!」
ニコニコとした笑みを浮かべる悠里。
こいつは昔からそうだった。
いつも自分のことばかりを考えて、俺の気持ちなんてちっとも考慮しない。
お前がいなくなってから、俺がどれだけ辛く苦しい思いをしたかなんて想像すらしたこともないのだろう。
「仕方ない奴だな……」
俺は悠里の背中に腕を回して抱き返した。
今度は腕が彼女の中に潜り込まないよう、そっと。
「ケンちゃんにボクのいた異世界の話をしてあげる! ねえ、何から聞きたい?」
「その前にズボンを履かせてくれ。できれば風呂にも入りたい」
「そっか、ケンちゃんはもうおじさんだもんね。このまま2回戦はできないかぁ」
「おじさん言うな。俺はまだ31歳の若者だ」
現世の苦しみから逃れるようにやってきた山奥の廃村で出会った水の精霊と二人暮らし。
享楽と性愛に満ちた俺達の日常は、こうして始まりを告げたのだ。