15年前に死んだ幼馴染が水の精霊になって帰ってきた 作:我島甲太郎
薄めた洗剤で満たされたバケツから引き上げた雑巾をぎゅうと絞る。
床に這いつくばり、ほどよく濡れた雑巾を床板に強く擦りつけた。
場所を変え、何度も何度もそれだけを繰り返す。
途方もなく見えても、終わりはいずれやってくるのだから。
「ケンちゃん、まだ終わらないのー?」
本格的な冬がやってくる前にと朝から一人で家の大掃除をしていた俺に、畳の間からふわふわと飛んでやってきた蒼髪の美少女――ウンディーネのユーリが茶々を入れてきた。
俺は眉間に皺を寄せつつ、床から顔を上げて返事をする。
「お前が掃除を手伝ってくれたら、もっと早く終わるんだがな……」
「やだよ、面倒臭い」
悠里はぷいっと顔を背けた。
彼女のサボり癖は生まれ変わっても変わらないようだ。
「面倒面倒って言うが、お前の精霊魔法でラクを出来たりはしないのか?」
「精霊魔法はそんなに自由の利く魔法じゃないよ。人を殺すのは簡単なんだけどねー」
異世界で王女の国盗りを手伝ったからか、悠里はサラっと怖い言葉を口走ることがある。
突っ込んだことを聞いてギクシャクするのも嫌だから、俺はスルーするよう心掛けていた。
「あの身体をスライムみたいにする奴でしつこい汚れを吸着させたりするとかはどうだ? 割といけそうな気がするんだが」
「酷いなぁ、ケンちゃんはボクにゴミを味わえって言うの?」
「いや、別にそういうつもりじゃないんだけど……はぁ、もういい」
説得することを諦めた俺はため息を吐いて、雑巾で廊下の床板を拭く作業に戻った。
去年も一人でやったんだから、別にラクをしなくたって構わない。
「ご褒美をくれるなら手伝ってあげてもいいけど?」
「俺はつい最近、誰かさんの為に一仕事したはずだが?」
具体的に言うと、空き部屋の一室を悠里専用の撮影スタジオに改装した。
もちろん全部DIYで、部屋の全面を真っ白な感じに仕上げてある。
この辺りは昔取った杵柄というか、前職のおかげといった感じだ。
「それはそれ、これはこれでしょ。だって必要なお金はボクが全部稼いだんだから!」
悠里は現在、SNSを中心にコスプレアイドル的な活動をしている。
人間離れした容姿と異様にクオリティの高い衣装が極一部の界隈で評判を呼んでいるらしい。
まぁ、その辺についてはまた今度。
「確定申告をするのは俺だけどな」
「稼げば稼ぐだけ税金取られるなんてズルいよねー。精霊は免除して貰えたらいいのに」
「それが現代社会の恩恵を受けるってことだ。それで、何をしたらお前は働いてくれるんだ?」
「それはね――」
悠里の返答を聞いた俺は少しだけ悩んだ後、彼女の要求を受け入れることにした。
ずっと先延ばしにしていた宿題を片付けるには、いい機会だと思ったからだ。
真っ黒に汚れたバケツの水を新しいものに入れ替え、掃除道具を手にやってきたのは開かずの間――という名前の子供部屋だった。
ここは俺が幼少期を過ごし、そしてあの日に悠里の死を看取った場所だ。
扉を塞ぐ棚をどけて中を覗いてみる。
15年ぶりに開いた割には、部屋の中には埃はそれほど積もっていなかった。
きっと、爺ちゃんが定期的に掃除をしてくれていたのだろう。
思えば、俺は親不孝な孫だった。
嫌な思い出のある家に居たくないからと村を出て、大学にも行かず就職した。
仕事が忙しいと言い訳をして、帰省もほとんどしなかった。
それでも……最期に爺ちゃんの頼みを聞いたことで、俺は悠里と再会することが出来たんだ。
だから俺は、村が無くなってもずっとこの家を一人で守ってくれていた爺ちゃんには本当に感謝をしている。
「そうだ、久しぶりに卒アル見てみよーっと」
複雑な心中を胸の内に抱えている俺とは違い、悠里は床板の染みを気にも留めずにスカスカな本棚の物色を始めた。
言っておくがお前の死因、そのスチール製の本棚だぞ。
「仕事はどうした、仕事は」
「まあ見ててよ、そーれっ」
床に腹ばいになって中学校の卒業アルバム(運よく血で汚れず無事だった)を見ながら、悠里は右手の指先を上に向けた。
すると空中に、ぷくりと拳サイズのミニスライムが生み出される。
「この子にボクの代わりに掃除して貰うんだ。スマホで自撮りをしている時に気付いたんだけど、分体だと味がしないみたいなんだよねー」
床にべちゃりと落ちたミニスライムは、悠里の意思に従って部屋の中をうろつき始めた。
内部に取り込まれた細かい汚れや埃で透明だった粘体は少しずつ濁った色に変わっていく。
集まった汚れは固めてバケツにポイ、ちぴロボみたいに働き者で眺めているだけで癒される。
「なるほど、これは便利だ」
手持ち無沙汰になった俺は、学習机の椅子に腰掛けてミニスライムの仕事ぶりを観察していた。
「ケンちゃんサボってる。いーけないんだー」
「この後に備えて、英気を養っていると言って欲しい」
俺は学習机の上に置いていた、先ほど悠里から預かった台本を手に取ってペラペラとめくった。
こいつ、無駄に凝った設定を考えるな……。
「期待してるからね?」
「まぁ、努力はしよう」
それから小一時間ほどでミニスライムによる子供部屋の清掃は終わった。
どうやったのか、決して消せなかった床板の染みもすっかり消えてなくなっている。
悠里は分体を水に戻してバケツに突っ込むと(ああ、みにスラが……)じっと俺を見つめた。
「じゃあケンちゃん、シよっか?」
契約精霊にさせる仕事の対価は身体で払う、それが俺達の間で暗黙の了解となりつつあった。
古い木製ベッドに畳の間の押し入れから持ってきた予備の布団を敷いた俺は、悠里の要望に応じてイメージプレイを始めることになった。
セーラー服姿のセミロング黒髪JKに変身した、幼馴染の沢木悠里とベッドに並んで腰掛けた俺の脳内に溢れ出すのは存在しない青春の記憶――PART2。
「ケンちゃんの部屋に来るの、久々だね。なんだか少し緊張しちゃうかも」
悠里は少しそわそわしたような、浮つかない様子で部屋の中を見渡した。
「言っても一年ぶりくらいなんだから、そんなに変わっていないだろう」
「そうかな。ボクが来ないからって、変な物買ってたりしてないよね?」
「俺の小遣いで何を買おうが俺の自由だ。……家探しすんなよ」
「どうしよっかなー?」
先天性性転換症候群――通称TS病。
それは第二次成長期の男性に極めて稀に発病することがある、遺伝性の難病だ。
何一つとして治療法のない、不可逆の突然変異。
悠里がそれを発病したのは、中学校を卒業する少し前のこと。
授業中に高熱で倒れて病院に搬送された悠里が退院して村に帰ってきた時には、髪型と輪郭に過去の面影だけを残して完全な女の子に変わっていた。
悠里の両親から何も聞かされていなかった俺が驚き慌てふためく様を見て、彼女は以前と変わらない笑顔でカラカラと笑った。
それからまた一緒に麓の学校まで通学するようになったわけだけど、高校に進学してからは少しずつ悠里との距離が離れてしまっていた。
少なくともどちらかの家に遊びに行ったり、休日を二人で過ごすようなことはなくなった。
高校デビューした悠里には女子の友人がどんどん増えていたし、クラスメイトから付き合っているんじゃないかと
安全の為にと悠里の両親に送迎を頼まれていなければ、とうに疎遠になっていたことだろう。
この関係のまま高校を卒業して、別々の大学に進学して。
それぞれ知らない相手と恋をして、何かの拍子にばったり再会する。
俺達にはそんな未来しか残されていないと、ずっと思っていた。
「お父さんもお母さんも、急に旅行に行くからケンちゃんちに泊まってーって言うし。ボク、ビックリしちゃったよ」
「商店街の福引で当たったのに、すっかり存在を忘れてて期限が切れそうになってたんだっけ?」
「そうそう、どうせならもっと早くボクにくれたら良かったのに。そうしたら夏休みにケンちゃんと二人で遊びに行けたんだけどなー」
「別にそれは、俺じゃなくたっていいだろう。仲のいい友達でも誘えばいい」
「やだ。アイツらアレしろコレしろっていちいちうるさいし。そのくせ無視したらハブる気満々でムカつくんだよね」
女社会の洗礼という奴だろうか。
すぐに順応したとばかり思っていたが、悠里には悠里なりの苦労があったらしい。
「ねえ、ケンちゃん」
悠里はにっと笑うと、ずいっとこちらに顔を寄せてきた。
薄っすらと化粧とシャンプーの匂いが混じった女の子の香りがして心臓に悪い。
「な、なんだよ」
「ケンちゃんはさ、高校で好きな子出来た?」
「出来ても言わない」
内心の緊張を悟られたくなかった俺は、彼女の追求から目を逸らした。
「ちぇ、ケチんぼー」
唇を尖らせてベッドからはみ出した足をぶらぶらとさせる悠里に、俺は反撃したくなった。
「お前の方はどうなんだ。最初の頃はあんなに女子更衣室覗き放題だー、って喜んでいただろう」
「漫画と違って、あんまりいいものじゃなかった。ぶっちゃけ他の子よりボクの方が可愛いし」
「ナルシストかよ」
「だって、事実だもん」
そう口にする悠里の横顔は、確かな自身に満ち溢れていた。
TS病患者はその多くが容姿に優れていると言われている。
それはいわば、神話の代から続く生命の神秘だ。
彼女達が女優やタレントに積極的にスカウトされるほど市民権を得ているからこそ、元男というハンデがあっても悠里はいじめられたりせずに女子グループから受け入れられている。
彼女の将来性を考えたら、ツバを付けておくに越したことはないと思われているわけだ。
「最近はさ、知らない男子からラブレター貰ってばっかりで面倒なんだよね。ボクが元男だからってチョロいと思われてるのかな?」
「そうか、大変だな」
「他人事だと思って。これも全部、ケンちゃんのせいなんだからね!」
「俺のせいにするなよ」
「男除けで付き合ってることにしようと思ったのに、あんなに強く否定されたら困るじゃん」
そう言って、悠里は不愉快そうに眉を歪めた。
どうやら彼女がヘソを曲げたのは俺が直接的な原因だったらしい。
だからといって、省みるつもりはないけれど。
「お前は俺に彼女を作るなって言いたいわけ?」
「一年経ってもまるで出来る気配がないのに、ケンちゃんは何を夢見ているの?」
「うぐっ……」
これは痛いところを突かれた。
「もうさ、この際ボクでもいいじゃん。ね?」
悠里はいきなり俺の手を取って、自らの胸に押し付けた。
セーラー服越しに伝わる、ブラジャーの少し固い感触。
一瞬だけ思考を停止した俺は、慌てて腕を引いた。
「じょ、冗談じゃない。もっと――」
自分の身体を大事にしろ、そう口にしようとした。
しかし言葉の途中でガッと肩を掴まれ、ベッドに背中から押し倒されてしまった。
天井から吊るされた照明の明かりが悠里の頭で遮られ、俺の顔に影が落ちる。
「ケンちゃんのバカ、いくじなし。誘ってるんだから、分かってよ」
潤んだ褐色の瞳からぽたりと落ちた一滴の雫が、俺の頬を伝ってベッドを濡らした。
「本当に、俺でいいのか?」
「だって、ボクにはケンちゃんしかいないんだから……」
長く伸ばしたサラサラの黒髪で窓の外からの視線を覆い隠すように、悠里は俺に口付けをした。
歯をこじ開けるように入り込んできた舌が俺の舌を絡め取る。
貪るように行われたファーストキスは、彼女が本気であることを証明するに十分なものだった。
息が続かず苦しくなった俺が悠里の背中を叩くと、彼女はゆっくりと顔を離した。
架け橋のようになった一本の糸がつうと細く伸びて、ぷつりと切れる。
「キス、しちゃったね……」
「そうだな……」
俺達はついに一線を越えてしまった。
もう、後戻りはできない。
閉め切られたカーテン、閉じられた部屋の鍵。
密室となった子供部屋の中に響くのは、じゅぷじゅぷとした何かが前後するような音。
「ん、んんっ……♡」
それはしゃがみ込み、ベッドに腰掛けた俺の股間にむしゃぶりつく悠里が発したものだった。
俺は今、赤ん坊の頃からずっと一緒だった幼馴染にチンポをしゃぶらせている。
そう考えるだけで、背徳感と快感が頭の中で混ぜこぜになっておかしくなりそうだ。
「く、もう……」
「らひて、ほのまま……♡」
「出るっ……!」
頭を掴んで喉奥に突き込んだチンポから注ぎ込まれる、大量の精液。
悠里は苦し気な表情をしながらも、嬉しそうにごくりごくりとそれを嚥下していた。
尿道に残された精液まで吸い出して少し柔らかくなったチンポから口を離した悠里は、上目遣いに俺を見つめて満面の笑みを浮かべた。
「ケンちゃんの精子、飲んじゃった♡」
「俺は今、お前が男のチンコを喜んでしゃぶるような変態だったことを知ってショックを受けているところだ」
「ボクのフェラで情けなくイっちゃった癖に。賢者タイムにはまだ早いよ?」
悠里はツンツンと、細い指先でチンポをつついた。
そしてそのまま、優しく竿を握り込んで愛撫する。
射精したばかりで敏感なチンポのいたわり方は、経験者でなければ分からないようなものだ。
「ケンちゃん、次はボクを気持ちよくさせてよ」
立ち上がってするりとショーツを脱いだ悠里は、ベッドの上で腰を下ろして股を開いた。
はだけたスカートの奥から覗く秘裂に、思わずごくりと喉が鳴る。
「女の子のココを見るのは初めてでしょ。ここにおちんちんを入れるんだよ?」
俺は膝立ちでベッドに上がり込むと、食い入るように悠里の秘部を観察した。
アダルトサイトで見たものとはまったく違う。
絵に描いたような、綺麗な形をしている。
――気付けば、俺は彼女のそこを一心不乱に舐めていた。
「あはっ。ケンちゃん、まるで犬みたいっ」
悠里も興奮しているのだろう、しとどに溢れ出す愛液はまるで尽きる気配がない。
舌先が包皮に包まれた小さな蕾を掠めると、彼女はびくりと身を震わせた。
「んんっ……♡ もう、離れて!」
手で押しやられたことで、俺はハッと正気を取り戻した。
「悪い、悠里」
「あんまり遊んでたらお爺ちゃんが帰ってきちゃうでしょ。シャワーも浴びなきゃだし、早く本番シちゃおうよ」
閉め切ったカーテンの隙間からわずかに射し込む日光は、若干の赤みを帯びていた。
「わ、分かった。ええと、ゴム……」
昔に買ったものが財布に入っていたはずだ、と探そうとして腰を上げた俺の腕を悠里が掴んで引き留める。
「今日、大丈夫な日だから。ね?」
「そんなに都合のいいことがあるわけ――」
「女の子に恥をかかせないの! 安全って言ったら安全!」
悠里はこうなったらテコでも聞かない。
少し心配だが、外に出せば大丈夫か。
枕に頭を預けた悠里に足を広げさせ、割れ目に亀頭を擦りつける。
先ほど一回出したばかりだというのに、俺のチンポは痛いほど硬く勃起していた。
「じゃあ、挿れるからな」
ぐっと先を押し込むと、強い締め付けが襲ってくる。
悠里はぎゅっと目を瞑り、破瓜の痛みを受け入れていた。
心配になって動きを止めた俺に、彼女の声が囁きかけてくる。
「ボクは気にしないでいいから、もっと……」
それは魔法のような、免罪符の言葉だった。
我慢できなくなった俺は彼女の腰を掴んで、一息に奥まで突き込んだ。
「は、
「ねえ、キスして……」
目尻に涙を浮かばせる悠里に覆いかぶさった俺は、彼女に深い口付けをした。
舌が絡み合うたび、中がきゅうきゅうと優しく俺のチンポを締め付ける。
「少し、慣れてきたみたい。動いていいよ」
「いいのか?」
「うん」
俺がゆっくりと抽挿を始めると、次第に彼女の吐息にも快楽の色が滲み出てきた。
彼女もしっかりと感じているんだと思うと、それだけで興奮が湧き上がってくる。
「んっ、んっ、あんっ……」
「気持ちいいか、悠里」
「気持ちいいっ、ケンちゃんのおちんちん気持ちいいよっ♡」
たくし上げたセーラー服とブラジャーの下から現れた小ぶりなおっぱいがゆさりと揺れる。
限界の近付いてきた俺は両手で悠里のおっぱいを揉みしだきながら、スパートを掛けた。
「悠里、出していいか!」
「いいよ、出して! ボクをケンちゃんのものにして!」
「くっ……!」
抱き着くようにしてひときわ強く挿し込んだチンポから、彼女の奥深くに精液が注ぎ込まれる。
二度目とは思えないほどの激しい吐精を、悠里は俺の背中に腕を回して受け止めていた。
俺が悠里から離れると、膣内から溢れ出した白濁がスカートの上に広がった。
「はぁ、はぁ、はぁ……あー、気持ちよかった」
ぐにゃりと水の塊に変化した悠里は、元の蒼髪美少女姿に戻ってぐーっと伸びをした。
どうやらこれでイメージプレイは終わりらしい。
もう少しくらい余韻を残したかった感じもするが、悠里が満足してくれたならそれでいいか。
正直な話をすると、三十代のおっさんに十代のロールプレイは心にクるんだよな……。
「はぁ、夕飯どうしようか……」
朝からずっと家の大掃除をしていた上に、激しいプレイをしたせいで心身ともにくたくただ。
これから布団の後片付けをして、夕飯を作って……もう何もかも投げ出して眠ってしまいたい。
「ケンちゃん見て、雪が降ってるよ!」
悠里がシャッと開いたカーテンから見える窓の外はすっかり夜の闇に染まっている。
そして部屋から漏れ出た蛍光灯の光を反射してキラキラと輝く小さな氷の結晶は、俺達に本格的な冬の訪れを告げていた。