15年前に死んだ幼馴染が水の精霊になって帰ってきた 作:我島甲太郎
白い壁紙に白いベッド、天井さえ真っ白な白ずくめの部屋。
吊り下げられたホワイトスクリーンを背景に、舞踏会に行くようなドレス姿でポージングを取っ
ているのは、美しい白髪に大きな蓮の花飾りを乗せた絶世の美女だった。
その手足はまるで夜の星空を閉じ込めたかのような色合いで蒼い輝きを放っていて、人ならざる者の神々しさを演出している。
「悠里、もうちょっと目線上げて」
「こう?」
「そう、そんな感じ……」
俺が構えた一眼レフカメラに妖艶な流し目を向けているのは、とある人気ソーシャルゲームのキャラクターに擬態した水の精霊――ウンディーネのユーリだ。
冬のある日のこと、俺達は週に何度か行っているコスプレ写真の撮影に励んでいた。
「よし、今回の分はこれで終わりだ」
撮影が終わった途端、悠里はにへらと表情を崩した。
派手で重たいドレスを身体の中に吸収して一糸纏わぬ姿になると、そのまま白いシーツの敷かれたベッドにダイブする。
いつものことながら、物理法則がどうなっているのか不思議に思う。
多分、マナでどうこうしているのだろうけれど。
「最近は知らないキャラのリクエストばっかりで大変。いやー、人気者は辛いね!」
ベッドにうつ伏せになってスマホを弄り機嫌良さそうに足を前後させている悠里を横目に見ながら、俺は撮影に使った光源機材の電源を落として邪魔にならない部屋の隅に片付ける。
うっかり倒して故障でもしたら大損だ。
「負担になるなら少し減らすか?」
「いやいや、減らすなんて勿体ない! せっかく売れてるんだから、ケンちゃんの時間がある冬のうちに稼げるだけ稼ぐよ!」
「それならいいんだが。気になることがあったらいつでも言えよ」
異世界にTS転生して帰ってきた水の精霊――という設定のバ美肉系コスプレイヤーYÛÛRIとして活動している彼女だが、こうして一定の成功を収めるまでにはそれなりの苦労があった。
と言っても、あれこれと手を出してはすぐに投げ出しロクに成果も出せず泣き付いてきた悠里を軽くプロデュースしただけの話に過ぎないのだが……。
悠里の承認欲求をほどほどに満たしつつ、彼女しか持たない能力を活かすならコスプレが最適なんじゃないかなと思ってやらせてみたんだけど、まさか短期間で二桁万円の月収を稼ぎ出すようになるとは驚きだ。
今時はどこもかしこも生成AIでこの手の活動もレッドオーシャンだとばかり思っていたのだが、見る人が見れば違いが分かるらしい。
自称有識者のファンによると、まるで無加工のように見せる自然な合成技術 (?)と中の人が持つ魂の輝き (?)が非常に魅力的なのだとか。
「ケンちゃん、早くシようよー」
「はいはい」
壁に背を預けて撮った写真をチェックしていたら悠里に催促されたので、俺は一眼レフカメラを機材のそばに置いて彼女の待つベッドに向かった。
撮影終わりにそのままの恰好で行為に及ぶのが、ここ最近の恒例行事になっていた。
付き合う側としては心の準備が出来るだけ有り難い話だけれど、逆に言えば撮影の回数だけしないと満足してくれないということでもある。
「今日はどういう風にしよっかな。うーん……」
ベッドの上でゴロゴロしながら思い悩む悠里の声は、普段とはまるきり別人だ。
コスプレらしさを残す為に完全に擬態はせず元の体格と容姿を残してはいるものの、本当にゲームのキャラがそのまま外に出てきたかのように思えるほどのクオリティに僅かな罪悪感を覚える。
日替わりで別の女を抱いているような感覚は、いつまで経っても慣れることがない。
演技のえの字も知らない悠里が相手じゃなかったら、とうに頭がおかしくなっているところだ。
「まぁいいや、ごっくんフェラして後は流れで!」
「適当だな……」
水の精霊の力によって快適な室温に調整された撮影スタジオの中、服を脱いで上がり込んだ真っ白なベッドの上で腰を下ろした俺のまたぐらに悠里はかがみ込んだ。
柔らかな息子を口いっぱいに頬張り、もごもごと愛撫する。
「
「ああ……いいぞ……」
硬くなった肉棒を喉奥に飲み込み、上目遣いで奉仕する悠里の九十九髪を優しく撫でる。
今日のディープスロートはいつにも増して気持ちがいい。
もしかすると、擬態先が性愛の神に由来しているからかもしれない。
「はっ……はっ……」
俺の呼吸が荒くなったことでそろそろだと分かったのだろう、口淫はより激しくなる。
宇宙を型で抜いたかのような異形の指先で玉袋を揉みしだかれ、送り出された精液は彼女の喉奥に放たれた。
「んっ……ぷはっ。いっぱい出たねー♡」
嬉しそうに顔を上げた悠里の口の中にはドロドロとした白濁が溜め込まれていた。
見せびらかすようにくちゅくちゅと味わい、そしてもう一度嚥下した彼女は先ほどの俺と同じ股を開くような姿勢を取る。
「さ、今度はケンちゃんの番だよ」
「分かった……って」
悠里の秘部の周りは蒼い炎のようなエフェクトによって目隠しがされていた。
ここまで再現する必要はないだろうに、無意識でやっているのだろうか。
恐る恐る指先で触れてみたが熱さはなく、もにょっした不思議な感触が伝わった。
「ごめんごめん、忘れてた」
炎のエフェクトが消えると、綺麗な一本筋が露わになる。
俺はそこに顔を近付け、舌でぺろりと舐め上げた。
「んにゃっ!」
元々水で出来た身体だ、味も臭いもしない。
彼女の反応を探るように、舌先で探るように隅々まで愛撫する。
「むふっ、ケンちゃん、犬みたいっ」
悠里が感じるたびに割れ目の奥からとろりとした愛の蜜が溢れてくる。
チラリと顔を見上げてみると、彼女の表情は嗜虐的な色に染まっていた。
どれだけ愛撫を続けただろうか、いい加減に顎が疲れてきた。
舌の運動のし過ぎで小顔になってしまうよ。
「悠里、そろそろ……」
「待ってっ、もう少しだからっ……」
そこまで言うなら、もうちょっとだけ頑張ってみよう。
特に弱いクリトリスの辺りを舌先で念入りにねぶり、力加減を調整して慎重に噛む。
「んっ、あああっ!」
「!?」
びくびくと震えた悠里の両手が、俺の頭を無理矢理股間に押し付けた。
激しい水音を立てて口元に流れ込むのは、尿を模した甘露の味。
毎日のように飲まされている精力増強剤を、俺は条件反射的に飲み込んでしまった。
「ごほっ、ごほっ……」
咳とともに口から零れ落ちた水滴がシーツに跡を残す。
ほんの少しで十分な効果がある甘露を、誤って大量に服用してしまった。
「あ……やっちゃった。早くシないと不味いかも!」
もう薬が効き始めたのか、全身が段々と熱っぽくなってきた。
倒れるようにベッドに背中を預けた俺の痛いほど勃起している剛直に、ひんやりとした悠里の指先が触れる。
「くっ……」
たったそれだけで、俺はイってしまった。
二度目とは思えないほどの量の精液は、悠里の前髪や顔、豊かな胸元を白く染め上げる。
「うわぁ、すっごい量。なんだか楽しくなってきちゃった」
「いいから、早くどうにかしてくれ……金玉が爆発しそうだ……」
「大丈夫、ボクに任せて!」
むせ返る様な男の性臭を身体中から漂わせている悠里は俺の上に跨ると、まるで衰える気配のない剛直に腰を下ろした。
普段の姿とはまた違った、生温かい膣内の感触に俺の腰が跳ねる。
「また出ちゃった。それ、もっと、もっと♡」
熱に苦しむ俺とは対照的に、嗜虐的な笑みを更に深めた悠里に攻め立てられる。
何度も何度も吐精を繰り返し……俺は、ついに気を失った。
目が覚めると、張り付くような強い喉の渇きに襲われた。
布団から背中を起こし、辺りを見渡す。
見慣れた風景と石油ストーブの匂い、どうやら俺は畳の間に寝かされているようだ。
「あ、起きた?」
ノートパソコンの前に座っていた蒼髪の美少女が、布団の擦れる音に気付いて振り返った。
「み、みず……」
掠れた声で要求すると、悠里は俺に近寄ってこう告げた。
「はい、あーんして」
その言葉に、記憶がフラッシュバックする。
そうだ、俺はこいつの甘露で……。
「どうしたの、いつもみたいに口開けてよ」
「ふつうの、みずをくれ……」
「しょうがないなぁー」
悠里は部屋の隅の飲料置き場からお茶のペットボトルを一本持ってきた。
震える手で受け取り、生ぬるいお茶をゴクゴクと一息に飲み干す。
これぞ命の水、生き返るようだ……。
「今、何時だ」
「夜の1時だよ」
そうなると半日は眠っていた計算になる。
道理で腹が減っているわけだ。
俺は着せられていたシャツ越しに、お茶でたぽたぽになった胃の辺りを擦った。
「いつまで経っても起きないからさ、ケンちゃんの代わりに投稿しておいたよ」
「何か、変なことはしていないだろうな?」
「そう思うなら見てみれば?」
はい、とノートパソコンを差し出されたので、布団越しに膝の上に載せてマウスを動かす。
大手パトロンサイトに掲載された悠里のコスプレ写真を一枚一枚細部までチェックし、瞳などに映り込みがないことを確認した俺はホッと息を吐いた。
「……よし、問題はないみたいだ」
「そこまで気にする必要あるかな?」
「結構、見ているもんだぞ。仮にも商売なんだから、極力手は抜かない方がいい」
「ふーん、ボクには分かんないや」
心底どうでもよさそうに返した悠里は、テレビの前に転がっていたコントローラーを拾い中断していたゲームを再開した。
俺はちゃぶ台に手を伸ばして取った干し柿を齧りながら、記事のコメントやSNSに投稿されたサンプル写真の反応を一通りチェックする。
定型文のように褒めそやす文章の中に混じった、AI利用を責めるアンチコメント。
現代のネットをうろつく生ける怪異の中傷攻撃に安心感すら覚える。
彼らがいる限り、悠里の正体が悟られることはないだろう。