15年前に死んだ幼馴染が水の精霊になって帰ってきた 作:我島甲太郎
薄暗い闇の中、石油ストーブの放つ赤い光が真っ黒なテレビ画面を反射していた。
障子越しに聞こえてくるのは、雪を纏った暴風が閉め切った雨戸を揺らすガタガタという音。
「電気、なくなっちゃったね……」
「そうだな……」
年開け早々に東北地方を襲った記録的豪雪は、三が日が過ぎても終わる気配が見えない。
幸いなことに悠里という守り神がいる我が家ではこれまで積雪による被害は出ていなかったのだが、ついに最悪の事態が起こってしまった。
それは日照量不足による影響――電力の完全な喪失。
電力会社から完全に見放された廃村に住んでいる俺達にとって、屋根に設置されたソーラーパネルで蓄電池に溜め込んだ電力だけが全ての文化的な生活を支えていたのだ。
俺はこの事態を見越して涙ぐましい努力を行ってきた。
冷蔵庫のコンセントを引っこ抜き、電子レンジの利用を諦め、コスプレ写真の撮影日を延期し、ノートパソコンすら使用を控えてスケッチブックと鉛筆で暇を潰した。
それなのに悠里は、俺の警告も聞かずに朝から晩までテレビを使って大画面でモインクラフトの建築作業を続けていた。
こうなるのも自業自得、当然の結末である。
「これからどうしよう。ねえケンちゃん、物置に非常用の発電機とか眠ってない?」
「あるわけない。残念だけど、天候が回復するまでこのまま過ごすしかないな」
一応、軽トラのシガーソケットを使えばスマホの充電くらいは出来るだろう。
とはいえ、それは最終手段。
悠里の使い方では、ガソリンが尽きて麓に降りる手段がなくなる方が先だ。
「こうなったら、ボクの力で雪雲を吹き飛ばして……」
「うちの上空だけいつまでも雲が無かったら不自然すぎて人工衛星でバレる。というか、今は夜だからそんなことをしても意味ないぞ」
「むー、このままじゃ暇すぎて死んじゃうよー」
畳に転がった悠里は、じたばたと大げさに駄々をこねて不満を露わにする。
彼女は人外に生まれ変わったせいで精神年齢が退行しているのではなかろうか。
寝間着姿で布団に横になって就寝体制を取っていた俺は眉間にしわを寄せた。
「やることないなら寝なさい」
「ケンちゃん、ボクが眠れないの忘れてない?」
「契約者の魂の
剣と魔法の異世界ピスピリットに水の精霊として転生した悠里は、内乱で国を追われた王女と出会うまではずっとそこで暮らしていたという。
地脈から噴き出したマナが溢れるその泉は生まれたばかりの小精霊が放つ蛍のような幻想的な光に彩られており、それはもう美しい場所だったらしい。
さっきもモインクラフトで再現しようとしていたけど、クオリティは余り高くなかった。
なんとなくの感覚で上手く行く精霊魔法と違って、ゲームの世界は甘くないようだ。
「あの頃は魔法の練習をしてるだけでいくらでも暇が潰せたもん。先に泉で生まれた先輩の精霊と楽しくおしゃべりだって出来たしー」
「魔法、魔法なぁ。一度くらい俺も使ってみたいよ」
今でもか細い糸のような悠里との繋がりはなんとなく感じるのだけど、俺はその繋がりから流れ込む謎のエネルギーを扱う術を何一つとして持っていなかった。
普通はもっとこう、精霊から得たチートな力を扱えるべきではなかろうか。
なんともまあ、現実は非情なものである。
「地球人はマナを溜め込む内臓器官がないから絶対に無理だもんねー」
「知ってた。もう寝る、おやすみ」
「おやすみー」
携帯ゲーム機の内蔵バッテリーに頼り建築作業の続きを始めた悠里を尻目に、俺は羽毛布団を深く被った。
一酸化炭素中毒対策に換気が必要な石油ストーブを使う関係上、この部屋は気密性が低くて思いのほか寒いのである。
夜分遅く、身体をまさぐられるようなモゾモゾとした感覚に襲われた俺は目を覚ました。
吹雪は未だに収まっていないようで、雨戸は相変わらず風でガタガタと揺れている。
「あ、起きた?」
「起きた、じゃない……」
羽毛布団と俺の間に挟まっていたのは、一糸纏わぬ姿となった蒼髪の美少女――ウンディーネのユーリだった。
その右手はスウェットの中に潜り込んで俺の息子を握り締めている。
どうやら水温を人肌に調整しているようで、その手は普段よりも幾分か温かく感じた。
湯たんぽとして使う分には非常にありがたいのだが、残念なことに悠里はそこらの犬猫よりも落ち着きがないのですぐにどこかに行ってしまう。
だから普段はジップロックに温かいミニスライムを詰めた巾着袋なんかを懐炉代わりに懐に入れるようなやり方をしている。
ここ最近は、これがないと寒空の下で野良仕事をしたくないくらいには重宝していた。
「暇つぶしにお酒飲んでたらさぁ、久々にムラっとしちゃったんだよね。シよ?」
「久々って、たったの数日だけだろう……って」
ちゃぶ台の上に見覚えのあるラベルの貼られた日本酒の一升瓶が転がっていた。
それ、俺が台所の下にずっと隠していたやつ。
「高かったのに……」
「美味しゅうございました♡」
「今からでいいから返してくれないか?」
「どうしよっかなー?」
悠里の左手の指先が透明になり、色の濃い液体が満たされていく。
どうやらまだ飲んだばかりで全ては吸収されていなかったようだ。
「ほらあーん、して。あーん」
「あー」
俺は口の中に突っ込まれた指を舌先でしゃぶった。
フルーティーな香りの混じった日本酒の精霊割りをゆっくりと味わう。
「んあっ、ケンちゃん、そんな強くしゃぶらないでっ! イっちゃう、イっちゃうからぁ!」
指でイくなというツッコミを入れたい。
軽く歯を立てて固いゼリーのような感触の指先を薄く削り、ザラザラになった傷跡を舌で責め立てると、悠里は目を見開いて絶頂した。
「あああっ……!?」
指先を食い千切って飲み下すと、喉の奥がカッと熱くなった。
これで少しは元を取れただろうか。
すっかり眠気も覚めてしまったし、このまま続きをしてしまおう。
俺は彼女の背中に腕を回して優しく抱き締め、くるりと位置を逆転させるように放心状態の悠里を枕に寝かせた。
薄暗い部屋の中、石油ストーブの放つ赤い光が、純水で構成された彼女の瞳を微かに輝かせる。
「悠里、挿れるからな」
「う、うん……」
羽毛布団を背に、勃起した肉棒に右手を添えてスリスリと割れ目に擦りつける。
薄暗い闇の中、石油ストーブの放つ赤い光に照らされた悠里の頬は心なしか紅潮しているように見えた。
「んっ……」
一息に膣内に沈んだ肉棒を、柔らかな締め付けが襲う。
俺はゆっくりと腰を動かして、彼女の中を愉しむことにする。
あまり激しくするとゼリー状の身体が崩れて布団が濡れてしまうからだ。
初めの頃は何度も何度もそれで失敗したが、慣れた今はそれなりに上手くやれている。
「これじゃあ、全然足りないよ。ケンちゃん、もっとぉ……」
「これならどうだ」
俺は左腕を敷布団に押し付けて体重を支え、空いた右手を悠里の胸に添えて揉み込んだ。
たぽりたぽりと揺れるプリンに浮いた桃色のさくらんぼを親指の腹でコリコリと撫でる。
「あっ、あはっ、んんっ♡」
もう片方の突起に顔を寄せて舌で舐めると、悠里はより嬌声を強めた。
「あんっ♡ ケンちゃん、おっぱい好き?」
「嫌いな男は見たことない」
「そうだよねっ。もっと吸って♡」
ご要望にお応えして大きく開けた口に乳房ごと含んで強く吸うと、悠里は乳首の先から薄い酒精を吹き出しながらびくりびくりと身体を震わせた。
俺は二度目の絶頂の波に乗り始めた悠里の首裏に両腕を回し、ピストンを僅かに早める。
「おちんちんの頭が膨らんでるのが分かるよっ、イきそうなんだよねっ! いいよっ、出して!」
「くっ……!」
込み上げる獣欲に身を任せ、深く中に付き込み精を放つ。
俺は脈動に合わせて得られた大きな快楽に身体を震わせる悠里の、その赤く染まった瞳の奥に潜んだ感情を探るように尋ねる。
「……満足したか?」
しばらく繋がったまま情交の余韻に浸っている悠里を見降ろしていたのだが、いい加減に腕が痛くなってきた。
体幹トレーニングのプランクをするのは昼間だけでいい。
「全然。もっとシよ……?」
「そうか……分かった。もう少しだけな」
「えへへ、嫌々でもちゃんと付き合ってくれるケンちゃん大好き♡」
「別に、ただ眠気が飛んだだけだ」
位置を交代して枕に背を預けた俺は、悠里を湯たんぽ代わりに抱き締めて二回戦へと移った。
依然として止む気配がない吹雪の音に紛れて、高い嬌声と水を打つ音が部屋の中に響いている。
今日もまた随分と、長い夜になりそうだ。
翌日、俺は肌を刺すような寒さに目を覚ました。
「さ、寒い……」
どうやら寝ている間に石油ストーブの灯油が切れてしまっていたようだ。
普段から切らさないように注意していたというのに。
寝る前に服を着ていたからよかったものの、そうでなければ凍死していたかもしれない。
布団から出した手を枕元に伸ばして探ると、指先が冷え切ったスマートフォンに当たった。
充電がそろそろマズいかもと思いつつ、待ち受け画面で時間を確認する。
「今、昼の3時か……」
道理で腹が減っているわけだ。
暖かい羽毛布団の外には出たくはないが、動かなければ状況は絶対に改善されない。
寝起きでぼんやりとした頭で身体を起こした俺は、部屋が明るくなっていることに気が付いた。
昨晩のうちに尽きていたはずの家の電気が復旧している!
「天候が回復したのか。いや、待てよ……?」
俺は目を閉じて悠里の存在を探る。
すると、か細い糸のような感覚が闇の中に浮かび上がった。
ここから北の方角、位置はちょっと高め。
「まさかな……」
スウェットの上から冷たい防寒着を着込んだ俺は、寒さを我慢しながら廊下に出る。
玄関に置かれていた空のポリタンクと灯油ポンプを手に、玄関の扉を引き開けた。
「おはよー、ケンちゃーん!」
俺の目に飛び込んできたのは向かいの空き地に氷のブロックで造られた巨大建造物と、その屋上に腰掛けて手を振る悠里の姿だった。
空に浮かんだ雲は薄くなっていて、俺の想像が思い過ごしであったことを証明してくれている。
「なんだこれ……?」
玄関先に設置してある灯油タンク――490Lタイプが2基――のそばに持っていたポリタンクを置いた俺は、彼女のもとへと向かった。
近くで見るとよく分かるが、これは悠里がモインクラフトで作っていた精霊の宮殿だ。
王女が国を取り戻した後、それを助けた悠里が守護精霊として祀り上げられていたという場所。
「俺が寝てからずっとこれを作っていたのか?」
「遠くに雪を捨てるの面倒だったから固めていたらなんか楽しくなっちゃってさ。ケンちゃん、今日はここで撮影会しない?」
悠里はふわーっと空を飛んで俺のところに降りてきて、顔色を窺うように尋ねてくる。
「どうせ背景も全部AIだと思われているから別に構わないが……その前に飯を食わせてくれ」
「ケンちゃん、お風呂はいいの?」
「余計なことしないならな」
「じゃあ、今日も一緒に混浴しようね♡」
俺の背中にくっ付いたまま離れない悠里を連れたまま、ポリタンクに灯油を移して家に戻る。
長い吹雪を乗り越えて数日ぶりに顔を覗かせた太陽の光を一身に受けた氷の宮殿は、キラキラと美しく輝いていた。
さて、今度のコスプレは彼女の望み通りにバズってくれるだろうか。
それは明日になってからのお楽しみだ。
ご無沙汰しております。
一般向けの新作を投稿しておりますので、できればこちらも読んで頂けると嬉しいです。
タイトル:ドールマスターヒロシ
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